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ミステリの祭典

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六法推理
古城行成&戸賀夏倫

作家 五十嵐律人
出版日2022年04月
平均点5.33点
書評数3人

No.3 6点 パメル
(2025/10/03 19:20登録)
物語の舞台は霞山大学。探偵役を務める古城行成は、学部棟の一室で無料法律相談所を運営している。その古城と法律には素人だが鋭い洞察力を持つ戸賀夏倫が、大学内で起こる様々なトラブルを法律的知見と推理力で解決していく5編からなる連作短編集。
「六法推理」夏倫は事故物件とされるアパートに住んでいるが、二カ月前から赤ちゃんの泣き声が聞こえるなど、怪異現象が起こっていた。古城と夏倫が意見を交換し合った先に現れる真相は意外性に溢れている。コンビ結成となる記念すべき一編。
「情報刺青」人気ユーチューバーの小暮葉菜は、ツイッターでリベンジポルノを流出された。古城は発信者情報開示請求をレクチャーする。法律の限界と被害者の切実な思いが交錯する。相談者の強さと悲しみが印象的。
「安楽椅子弁護」古城の友人である三船が、学園祭実行委員を相手取って起こした裁判に臨んでいる三船を、古城が陰でサポートする。モヤモヤした後味で、法律家の倫理と現実の狭間を考えさせられる。
「親子不和」自分の金や物を盗む母親と縁を切りたいと鈴木椰子実が相談に来る。法律の抜け穴とジレンマを突く問題作。結末はやるせない。
「卒業事変」夏倫にカンニング疑惑が持ち上がる。この疑惑は、別の事件に関するものと密接に関連していた。締めくくりにふさわしい成長物語で、古城と夏倫のコンビの絆が強まっていくのが伝わってくる。

No.2 4点 makomako
(2024/08/31 10:24登録)
 どうもこの作家さんとは感覚が違うようで、いろいろな事件のなぞ解きがあるのですが、私にはどれも今一つピンときません。
 よく読むときっと探偵役のきちんとした法律による推理と、相手役の女性の推理が混ぜ合わさって回答となっているように思うのですが、私にはこにある連作のどのお話もしっくりこないのです。
 また主人公の家は父が裁判官で母が弁護士で兄が検事で、家で模擬法廷を開いているといったすごい家族で、みんなそれぞれ極めて優秀。しかし考え方は職業上かなり異なるといった設定なのですが、これまた私の感覚とは多少異なった人ばかり。
 どうもついていけそうにありませんでした。
 感性が合う方なら興味深く読めるのだと思います。

No.1 6点 文生
(2024/04/16 02:50登録)
全5編の連作短編
法学部の学生である古城が法律の知識を駆使して事件の謎に迫っていくという設定がユニークで、従来のものとは異なる推理のプロセスが面白かったです。また、詰めが甘い古城を直感推理でアシストする戸賀とのコンビぶりも楽しく、学園ミステリーとしてもよくできています。ただ、古城の推理の詰めの甘さというのがちょっとわかりやすすぎて読み手側も「その推理はちょっとおかしいのでは?」とすぐに気付いてしまいます。その点が少々興醒めです。古城が推理に一定の説得力があり、読者も納得した後に戸賀がひっくり返していくという感じならもっと良かったのですが。

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