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ミステリの祭典

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奔流の海

作家 伊岡瞬
出版日2022年01月
平均点7.00点
書評数2人

No.2 7点 makomako
(2024/10/09 21:22登録)
一気読みされたとの評がありますが、私は一気読むことはとてもできませんでした。
まず初めのあまりに悲惨なお話。
若いころなら何とか読んでしまうのですが、最近はこういったひどい境遇のお話を読むのが苦痛になり、一度ならず読むのをやめていました。
でも思い立って読み進めると意外にそこからは読みやすい。
一見無関係なお話が最後に行くにしたがってつながってきます。
最後はハッピーエンド風となり、読後感はよい。
でもある程度展開は読めてしまうところがちょっと残念。
推理の要素は少ないが、読む人によってはとても感動的なお話となると思います。

No.1 7点 人並由真
(2022/11/25 07:18登録)
(ネタバレなし)
 1968年の夏。静岡県の千里見町を襲った巨大台風は、未曾有の被害をもたらした。そんななか、赤ん坊を抱えた若夫婦は避難を試みる――。
 それから20年。千里見町のさびれた旅館「清風館」に、東京からひとりの大学生、坂井裕二が宿泊する。女将である母・智恵子とともに、旅館を切り回すバイト女子・清田千遥(ちはる)は、そんな裕二に次第に関心を抱いていくが。

 途中で一回、飲み物を取りに行ったくらいで、三時間前後でほぼ一気読み。
 リーダビリティの高い新刊には今年も何冊も出会ったが、これもまたトップクラスの一冊だとは思う。

 とはいえ何か物足りないのは、あまりにドラマのためのドラマとしてお話が進んでいくからで。大体、(中略)と思った(中略)がみんな(中略)。

 何世紀もあとに残るようなおとぎ話の大人向け版をじっくりと読まされた感じで、ミステリ成分は確かにあるけど、それはあくまでドラマに、小説に奉仕するように組み込まれている。
 あー、シドニイ・シェルドンあたりのA~S級通俗大衆向けエンターテインメントを、わさび醤油で煮込んだらこんな感じの作品になるかもしれヌ。

 ひとばんじっくり読めて楽しめたし、伊岡作品の系列では懐かしの『もしも俺たちが天使なら』みたいなティストも感じたりもしたけど(どこがじゃ?)、個人的にはこーゆーある種の優等生的な作品には、イマイチ思い入れが育たない面もある。
(というか、第二部の六章の最後では、小説のあまりに(中略)な作り方に、おひおひ……いとうホンネであった・汗。)

 イヤミや悪口でなく、中高校生の頃に出会っていたら、もっと素直にナチュラルに、受け入れられたかもしれんな。そんなことを思ったりする作品。

 これだけ不満タラタラ。でも一方で、力作だともいい作品だとも思うんだよ。
 自分に苦笑しながら(もしかしたらこういう作品をキライになりきれない己に酔いながら)、この評点(汗)。

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