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ミステリの祭典

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死はすぐそばに
ダニエル・ホーソーンシリーズ

作家 アンソニー・ホロヴィッツ
出版日2024年09月
平均点7.00点
書評数2人

No.2 7点 HORNET
(2024/10/14 21:10登録)
 門と塀で囲われた中に、6軒の家が集う高級住宅地、リヴァービュー・クロース。そこに最近越してきた、騒音や傍若無人な振る舞いで住民に疎んじられていた男性が、クロスボウでのどを射抜かれて殺された。我慢を重ねてきた住民全員に動機があるこの難事件の捜査に、警察から招かれた探偵ホーソーン。事件はホロヴィッツとホーソーンが知り合う前の5年前、相棒はダドリーという元警察官だった。事件を解決した、というホーソーンに過去を聞き出し、小説にまとめようとするホロヴィッツ。

 裕福な層が集う高級住宅街で、住民トラブルが殺人にまで発展するという舞台設定は目新しくはないものの、興味深いストーリーではある。相変わらずホーソーンの煙に巻く物言いが読者をじりじりさせるものの、それが謎を高めていく魅力でもある。
 今回は、ホロヴィッツも一人独自に動き、事件関係者へ話を聞きに行くなどするが、その過程で真犯人をあっさり明かされてしまう。当然その結論そのままであるはずがないので、より物語が深まっていく展開となり面白かった。
 ホーソーン自身の過去がシリーズを通しての謎として描かれているが、本作ではそちらについての進展も今まで以上にあり、上手く構成されていた。

<ネタバレ>
 真犯人の意外性はなかなかだったが、密室殺人やアリバイトリックといった、犯罪の手法に関する部分については、現代的技術のツールを多用しており、ちょっと拍子抜けだったかも。

 作中で、ホロヴィッツが「最高の密室ミステリは日本から生まれている」と受戒する部分があり、島壮「斜め屋敷の犯罪」と正史「本陣殺人事件」を絶賛しているくだりは、なんだか嬉しかった。

No.1 7点 nukkam
(2024/09/10 16:59登録)
(ネタバレなしです) 2024年発表のダニエル・ホーソーンシリーズ第5作の本格派推理小説です。これまでのシリーズ作品はホーソーンとワトソン役のホロヴィッツ(トニー)の探偵コンビによる(時に対立しながらも)捜査と推理を描いていましたが本書は大きく前提条件を変更しました。作中時代は2019年、ホーソーンとトニーが出会う前の殺人事件の謎解きです。トニーに代えてジョン・ダドリーという男がホーソーンの探偵パートナーです。明らかにトニーより優秀なのですが、名探偵の引き立て役としては物足りません(単なるワトソン役でない、ある重要な役割が与えられているのですが)。第八部「真相」でのホーソーンの推理説明が実に素晴らしく、様々な手掛かりを組み立てて事件を再構築する場面は謎解きのスリルに溢れています。しかしここからの捻り方が非常に独創的で、知的バトルが思わぬ決着になります。印象的な締め括りではありますがどこかすっきり感を欠いたようなところがあり、読者の評価が分かれるかもしれません。

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