home

ミステリの祭典

login
先祖探偵

作家 新川帆立
出版日2022年07月
平均点6.33点
書評数3人

No.3 6点 SU
(2024/10/09 21:14登録)
依頼人の先祖を調査する専門の探偵、邑楽風子。高校卒業以来、興信所で働き二十六歳で独立、東京の下町に個人事務所を開いた。風子は何百年も前の先祖がどんな身分でも構わないではないかと思いながらも、遠い先祖をたどれる人を羨ましく思ってしまう。なぜなら彼女に母以外に係累の記憶がないからだ。
それぞれの依頼に応じた風子の調査を通じて、各編のタイトルに含まれる幽霊戸籍や消失戸籍など、特殊な事情が絡んだ戸籍をめぐる諸問題が浮かび上がってくる。本書は戸籍をめぐる蘊蓄ミステリとしての一面に加え、風子の両親探しという縦糸で全編が貫かれている。
誰から生まれ、誰と繋がっているのか。それを知ることが風子のアイデンティティの確立と不可分に結びついている。紙切れ一枚で示される戸籍から色々な感慨を覚えさせてくれる作品。

No.2 6点 makomako
(2024/08/03 07:08登録)
先祖を探す専門の探偵とはなかなかユニークな職業のお話し。
主人公はちょっとクールな感じだが、どこか謎がある女性。
依頼人の先祖を探していくと同時に、この女性のルーツも探し出すといった連作です。
お話は一つずつが独立しており、この作者があまり描かなかったオカルチックなお話もあります。
はじめはこんなお話で大丈夫かと思ったのですが、作者は上手にストーリーを続けていきすらすらと読めました。

No.1 7点 HORNET
(2022/12/18 23:25登録)
 「あなたの先祖を調査します」―邑楽風子は、母と生き別れてから20年以上、東京は谷中銀座の路地裏で、探偵事務所をひらいている。様々な先祖の調査依頼が舞い込む中、マイペースで仕事をしている風子。いつか、自らの母を探したいと思いながら――

 先祖を専門的に捜査する探偵という、面白い設定で作られた連作短編集。高貴な先祖を期待する人だけでなく、実生活上必要に迫られて係累を探る人など、確かに目の付け所は面白い。連作短編の形で最後は風子自身の「親探し」に至るのだが、その真相にたどり着いた時には作者の企みに「ほぅ」と唸らされた。社会派的なテーマも含み、なかなか読ませる快作だった。

3レコード表示中です 書評