厭魅の如き憑くもの 刀城言耶シリーズ |
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作家 | 三津田信三 |
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出版日 | 2006年02月 |
平均点 | 7.24点 |
書評数 | 46人 |
No.46 | 7点 | 猫サーカス | |
(2023/07/11 18:37登録) 舞台は、神隠しの村・案山子村・憑き物村などの禍々しい別名を持つ神々櫛村。この村には、代々巫女の役割を務めてきた憑き物筋の「黒い家」と非憑き物筋の「白の家」が混在し、陰湿な対立を繰り広げている。この迷信と因習で塗り固められたような山村を訪れた刀城は、奇怪な変死事件に遭遇する。そしてこの事件を皮切りに、変死体が村のあちこちで次々と見つかった。本書で発生する事件のうちいくつかは不可能犯罪であり、死体に施された装飾とともに不気味さを演出している。しかし、物語全体の充満する不気味さの真の源は、神々櫛村という舞台そのものにある。現実にはあり得ないほどに誇張された因習の積み重ねと、登場人物たちを襲う怪異の描写は、人間による犯罪なのではないのかもという不安を感じさせる。ラストで解明される真相は、本格ミステリではお馴染みのトリックのパターンを巧みに三種類組み合わせることで、抜群の意外性を演出している。 |
No.45 | 7点 | バード | |
(2023/05/09 22:47登録) 初めての三津田さん本。 課題もあるとは思うが、全体的な出来は良いと感じた。この手の和風ホラーテイストの強い物語に対しては苦手意識もあるが、シリーズを継続して読んでみようと思えた。刀城言耶シリーズの中には本サイトでも高評価なものがあるので、非常に楽しみだ。 (点数内訳) 前半:4.5点(事件が起こるまでが長く、少し退屈) 後半:6.5点(面白いが、複数の視点をまたぐため冗長感はぬぐえない。) →物語の面白さは平均で5.5点 ・メイントリックに+1(書き方を考慮するとフェアな仕掛けで、意外性もあり良かった。) ・シリーズ1作目補正で+0.5 →合計7点 |
No.44 | 10点 | 密室とアリバイ | |
(2023/05/03 22:34登録) 1作目から既にこのシリーズの方向性は決まっていたんですね。 この頃の三津田先生は文章がイマイチ分かりづらいので、刀城言耶シリーズは「凶鳥の如き忌むもの」から読むのがおすすめですよ。 |
No.43 | 7点 | みりん | |
(2023/01/06 05:58登録) 刀城が先に仄めかした推理の方が衝撃的でこちらに結論に持ってきて欲しかったなと思いました。 |
No.42 | 6点 | ALFA | |
(2022/07/15 10:18登録) 「首無」や「忌名」といった名作を先に読んでいるため、どうしても辛口になる。 シリーズの第一作だが、作者が創りたい世界観が早くも現れている。 この世界観や構成上の個性は最新作「忌名」に至るまで変わらない。 文体はまだ生硬で、一人称三人称ともに説明的。同じ世界観を持つ横溝正史の饒舌にして滑らか、芳醇な文体には及ばない。 叙述の「視点」による違いは非常に面白い。 |
No.41 | 8点 | のぶゆき | |
(2021/08/25 16:43登録) ネタバレあります。 最初はどこから考えれば分からなくて、その後、可能性の点から色々と考えましたが、単独犯では不可能としか思えませんでした。かなりホラー度が強いので、どこまでがミステリーで、どこからをホラーとすれば良いか分からず、ホラーの部分を多くすれば、解決できるかもと思いました。 解決を見てから読み返して、なるほど目線に気づいけば、私も解答に辿り着いたのにと思い残念でした。部屋、人物の位置関係を把握しようとして、何度やってもうまくいかず、諦めたのが失敗です。 誰とも口を聞かず、カカシの中に居て話を聞いているというのは、かなり怖いシチュエーションで、小説のすべての場面よりも、そのことが怖いと思いました。 |
No.40 | 8点 | じきる | |
(2020/09/13 00:11登録) 世界観や雰囲気は非常に私好み。 粗さは感じるが、ミステリーとホラーを上手く融合させている。 |
No.39 | 5点 | 葉月 | |
(2020/09/07 11:52登録) メインのトリックにはあまり感心できず、全体的に今ひとつといった印象を受けました。歴史的傑作と言われている「首無」や、シリーズの中でも評価の高い「山魔」などと比べると、少し苦しいのではないでしょうか。 |
No.38 | 8点 | Kingscorss | |
(2020/08/08 01:59登録) とても楽しく拝読しました。トリックも前例があるかもですが、今どき前例のないものは書けないと思うので、あからさまなやつ以外ならOKかと… マイナス面はとにかく漢字の読みが難しいのと、登場人物と地形、家元とかが多くてこんがらがりやすいので、それらを覚えるまでが結構苦痛でした… 未読のシリーズ3作目がかなりの傑作らしいので今から楽しみです。 |
No.37 | 7点 | 人並由真 | |
(2020/07/12 05:33登録) (ネタバレなし) 現状の評者は刀城言耶シリーズは、長編、短編集のそれぞれ一番新しいものをいきなりそこから一冊ずつ読んだきり。 今回改めて、シリーズの第一作から読んでみた。いや、本そのものは大分前から入手していたが、一度、少し読み始めてみたら、イントロ部分の物々しい演出がどうも敷居が高く、なんか気後れしてしまっていたのであった~汗~。 それでも今回は何とか、実質丸一日で読了。総体としては普通に(それ以上に)面白かったけれど、中盤がやや冗長。その理由を考えるに、連続殺人の災禍に遭う被害者連中に読み手の関心を誘うようなキャラクター性が希薄だからではないか? とも思う(ちょっとヘンな? 言い方&読み方ではあるが)。 とはいえ後半から終盤にかけて、物語のギリギリまで事件が継続する外連味はたまらないくらいのテンションの高さ。二転三転する謎解きの緊張感も、あえて破格さに踏み込んだ事件のデティルも、それぞれとても楽しかった。 ただし真犯人だけは、結構早めに見当がつきました。言耶シリーズはこれでまだ3冊めだけれど、ほかの三津田作品も合わせればのべ5冊は読んでいて、さすがになんとなく、この作者がやりそうな仕掛けの勘所はちょっとぐらいは見えてくる。さらにこの作品は途中の手掛かり&伏線が結構あからさまで、その辺りがフーダニットのパズラーとしては、ややイージーモードのようにも思えた。 しかし本サイトの本作品の先行のレビューで、この大技トリック(の類似例?)を先に使っているらしいミステリの具体名を書かれていて、そっちの作品をまだ未読だった当方は、かなりショボーンでした(……)。 いや、メイントリックに前例があるという物言いそのものは、この作品のひとつの評価(「意外なトリックのようだが、決して革新的なものではない」という指摘の公言)として、適宜にやっていいと思います。 ただできれば、引き合いに出されるそっちの作品のネタバレにならないように、当該の前例にあたる作品については、(たとえば)1990年代半ばの国産作品とか、せいぜい作家の名前だけにするとか(それも相応の冊数を書いている作者限定)、なるべく曖昧な形の記述に留めてもらえると、とてもありがたいのですが(涙)。 |
No.36 | 8点 | 雪の日 | |
(2020/04/14 16:07登録) 東野の作品に同じトリックのものがあるが、こちらの方がおもしろかった。 |
No.35 | 8点 | ボナンザ | |
(2020/04/09 22:05登録) シリーズ冒頭を飾るにふさわしいムード満点、本格度満点の傑作。刀城の推理シーンが頼りないが、まあ、ああゆうエンディングにするには仕方いか。 |
No.34 | 7点 | メルカトル | |
(2020/01/07 22:19登録) 神々櫛村。谺呀治家と神櫛家、二つの旧家が微妙な関係で並び立ち、神隠しを始めとする無数の怪異に彩られた場所である。戦争からそう遠くない昭和の年、ある怪奇幻想作家がこの地を訪れてまもなく、最初の怪死事件が起こる。本格ミステリーとホラーの魅力が圧倒的世界観で迫る「刀城言耶」シリーズ第1長編。 『BOOK』データベースより。 横溝正史と雰囲気は似ているかも知れませんが、それとは一線を画すものだと思います。ホラーとは言ってもホラー小説ではありませんので、それ程怖い恐ろしいってことはなくて、少しだけゾッとする程度です。特に冒頭の憑き物落としのシーンなどは興味深いと同時に、後々の伏線であったり本書の特徴を印象付けることに成功しています。しかし、あくまで本線は本格ミステリですので、あまりそちらにばかり目を向けると、肝心な布石を見逃すことになりますよ。因習や伝説などをそのまま殺人装置として具現化させている点もポイントが高いです。 正直『首無の如き祟るもの』程完成度は高くないと思います。しかし、シリーズ第一作としてその方向性を位置付けた点に於いて評価されるべき作品ではないかと思います。その造りは重厚で、何と言っても七章とおわりには圧巻です。多重推理と言えば聞こえがいいですが、刀城はわざとなのか読者を迷わせるようないくつもの仮説を繰り出します。結局最後は落ち着くところに落ち着くわけですが、なら最初からそう言えよとか言ったりしてはいけないんでしょうね。まあ一人推理合戦とでも解釈すれば問題ないかもしれません。 |
No.33 | 9点 | mediocrity | |
(2019/10/25 00:44登録) 刀城言耶シリーズの第1作目。 最初数ページは取っつきにくかったですが、その後は思ったよりも読みやすく、個人的には冗長さを感じることもなく楽しめました。横溝作品と同じく、推理部分だけでなく、小説としても非常に面白い。満足です。 ミステリとしては『首無の如き祟るもの』の方が上でしょう。あちらは、読んでいる途中何度も茫然としましたから。本作はかなりの部分の謎解きは想定内でした。ただ、全体としての仕掛けは驚きでした。もう1回読まなきゃ。 ところで、以前読んで自分は2点を付けた『隻眼の少女』ですが、今思い返すと、この作品の劣化版しか思えない。 |
No.32 | 7点 | 斎藤警部 | |
(2019/08/27 05:25登録) コージーに過ぎる長い長い怪奇譚の末、まさかそんなちっぽけな真相?。。 と鼻白まずに済み助かった。何しろなかなかに大きなどんでん返しに襲われたもんだ。何処かで見たことあるアレだけど、物語の演出が違うだでに、驚きの感覚もやはり違う。真犯人暴くまでのステップに冗長感アリのため、驚きが微妙に薄れたのは少し残念。でも少し程度。 探偵役が真相を悟ったのが、そのアレの何とかを知る前だ(物語の構造上、そういう事になりますよね?)と思うと、しかも核心暴露へ至るまでの試行錯誤というか推理の執拗な積み重ねを経ているのだと考えると、そりゃあミステリとしての感動もなるほどひとしおだ。 最後に探偵役(ほとんど作者目線)が伏線を丁寧に説明してくれるとこ、まるでイニシエーションなんとかのネタバレ解説サイトのような感触で若干苦笑。でもこれあると助かる。最後のヒョッコリは、もしかして取って付けのオマージュ?おまけにしか見えない(この最終フレーズがどんでん返し最後の大締めにはとても見えない)んですけど、比率的にミステリ要素に較べると軽すぎて。 でもまあ、こういう感想が出てしまうのは私がちっともホラーマンじゃないからに過ぎないんでしょうなあ。 ところどころ、文章構成というか文の置き方が下手ッび過ぎて、誰が何を発言してるんだか分からなくなる箇所散見。もしやこれも叙述欺瞞の一環だか核心かとちょっぴり疑っちゃいました。それと、どうにも昭和の終戦直後が匂わないというか平成感丸出しの文章で、どうしてこいつらガラケーかせめてポケベルで連絡取らないんだろう?交番にキャプテンシステムは無いの?なんてうっかり思ってしまったり。あキャプテンシステムはむしろ昭和末期か。でもこのへんはシリーズ第二作以降順次改善されて行くのかしら?そもそもそこは改善すべきポイントではさらさらない? 【以下本作のトリック核心にさわるネタバレ(特に後半)】 さて、本作の叙述トリックの、心理的ではなく物理的側面のほうの肝となる部分、もしかして一種の洒落から発想が始まったのかな。。? んでこの系統の叙述トリック(心理的側面のほう)って、もの凄く大まかに捉えればブラウン神父の郵便配達のアレの応用篇、と言えるんですかね。 つまり、小説構成のあの部分が郵便配達人に相当する、という意味ですが。 |
No.31 | 6点 | okutetsu | |
(2019/08/20 20:31登録) 作品の設定や雰囲気はかなりよかった。 しかしミステリとしての真相は微妙な感じ。 あんだけ推理が二転三転したら探偵役の意味ないでしょ。 |
No.30 | 8点 | 新世紀ミステリー | |
(2019/06/22 21:59登録) 2006年発表。ホラー表現によって、犯人の叙述トリックを包み込む手際が、実に見事だと思いました。 |
No.29 | 6点 | monica | |
(2019/02/27 18:34登録) 前々から気になっていたので挑戦。 登場人物の手記は単純に楽しめました。 ホラー的な雰囲気もバッチリで 恐る恐る読みました。 最後の刀城言耶の謎解きも かなりびっくりな展開で良かったです。 ただし、文章が冗長。 面白いエッセンスが薄まる感じ。 もっとキュキュッと書いて欲しかった。 まぁ次も読んでみようという気になったので この評価。 |
No.28 | 7点 | レッドキング | |
(2018/06/02 17:56登録) 作中で 何回も「犯人は〇〇だ」と登場人物たちに露骨に「正解」されているのに、読者はそれを ごく自然にスルーしてしまう。ホラーと叙述トリックが機能しあって その仕掛けを構成しているところがすごい。 |
No.27 | 7点 | 青い車 | |
(2016/10/26 16:53登録) 賞やランキングを総なめにした作者のシリーズ第一作。こういう人は少ないかもしれませんが、刀城言耶のキャラクターが好きです。彼の存在が奇怪な連続殺人の殺伐さを緩和してくれる気がします。内容の方も終盤にかけてのエンジンの掛かり方が凄まじく、神の視点を利用した伏線もユニークです。ダミー推理の方にもちゃんと多少の根拠に基づいている点もまた感心させられます。総じてこれ以降の諸作の要素をいくつも含んだ秀作です。 |