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ミステリの祭典

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殺しの双曲線

作家 西村京太郎
出版日1977年09月
平均点6.63点
書評数30人

No.30 3点 虫暮部
(2023/09/30 12:48登録)
 何か変だ。
 なかなか面白くはあったのだが、ネタバレしつつ指摘せねばならない。

 “瓜二つ” と言う要素は、雪山ホテルの事件ではあまり意味が無いのではないか。冒頭のトリック宣言や、強盗事件と平行させる書き方のせいで、ついそれが必須であるかのように錯覚してしまうけれど。
 ホテル内は全員死亡で “犯人はこの人です!” と証言出来る者はいない(強いて言えば駅前食堂の主人?)。
 従って、別にそっくりではない(仮名)鈴木ヒロシと鈴木タカシが出頭して、“手記に登場する鈴木とは自分ではなくアイツの方ですよ” と主張しても、概ね同じ状況になる。
 だって言葉による情報しか無いんだから。作者は、記念撮影をするとかの工夫をしておくべきだった。
 (被害者の一人が手記を残し、警察はそれによって事件の成り行きを知った。この流れは犯人の意図したものではなく犯行計画には組み込めない。本来どうする心算だったのかは、作者が伏線を用意していないので、この際置いといて。)

 そもそも、ホテルに殺す相手を集めること(これが一番難しそう)が出来るなら、どんな計画が適切か。
 シンプルに全員殺して、自分は安全に下山すればいいのでは? その上で二人で警察に通報なり出頭なりすれば、もうそれで実際にホテルにいたのがどちらだか判らなくなっている。
 そう考えると、計画後半の “自分が殺されたフリ” とか “警察やマスコミを集めて入れ替わり” とかは、読者の目を意識したメタ的な演出としか思えない。犯人にとっては利が無い。ましてあんな無謀な下山(雪上車を本当に壊されたのは計画外とは言え、スキーを隠しておくくらいすればいいのに)……。
 トリックの行使に犯人が淫していた、と片付けるには当人の命にも関わる事柄だしねぇ。あっ、そうやって口封じして相方に責任を押し付けようって腹か?

 因みに、2009年、マレーシアで、一卵性双生児の見分けが付かず無罪判決との事例あり。違法薬物関連の罪で、有罪なら死刑だったそうです。

No.29 5点 みりん
(2023/03/04 16:45登録)
新装版の表紙に双子トリックだと宣言してあったので逆に気になって購入した。

読み終わった後もタイトルの"双曲線"がしっくりこない…

No.28 6点 パメル
(2016/10/07 12:47登録)
東京での連続強盗事件と東北の雪に閉ざされた山荘での殺人事件が交互に語られていく
双生児のトリックを使うと明言している点とこの事件がどのように繋がっているのかと
興味をそそられる
テンポが良くリーダビリティが高い点は評価できる
ただ緊迫感が足りないし動機も今一つ

No.27 7点 メルカトル
(2016/06/14 22:03登録)
冒頭の双子トリックをやりますよという宣言が、逆に真のトリックを隠ぺいするという騙しのテクニックに。これはなかなか心憎い演出だと思う。
二つの異なるストーリーがどう考えても繋がりそうにないが、結局うまく一つに収束する辺りはプロットのうまみを味わえる。しかし、肝心の吹雪の山荘というクローズド・サークルのパートに緊迫感と迫力が不足しているように感じる。さらに文体が軽い分、全体的に希薄さが拭いきれないきらいがある。はっきり言ってしまえば、薄っぺらな感じがして仕方ない。重厚さに欠けるのである。
ラストは余韻を残す感じで、個人的には好みの範疇。

No.26 8点 パンやん
(2016/04/28 09:18登録)
随分前の作品なれど、古臭さ、今さら感も無く、紛うことなき傑作!重すぎず軽すぎない文体、プロットのうまさが作り上げたテンポといい、これぞミステリー!また、ボウリングブームの頃の作品なれど、知らない内に恨まれて身に覚え無く殺される、現代に通ずる動機にも戦慄!

No.25 5点 whoinside
(2016/02/16 04:03登録)
クローズドサークルもの。
好きなジャンルだけにかなり期待したが、他の方々も述べているように緊張感に欠ける。
また目玉の双生児トリックがとってつけたようなものでいざ真相が明らかになってもスッキリしない。

No.24 8点 斎藤警部
(2015/06/02 12:19登録)
いきなり「双子トリック宣言」! 前のめりな京太郎さん!
例によって冒頭の謎が派手で魅力的な割に謎解きが小出しに行われるゆえ一気にガツンと来ないきらいはあるけど、その癖を差し引いても充分エキサイティング!! 詰めの粗っぽいトコもあるが、肩透かしな部分もちょっとあるんだが、とにかく楽しませてくれました、ありがとう。 夏場の大ジョッキビールの様な魅力が満載です。

No.23 4点 文生
(2015/03/07 12:33登録)
西村京太郎本格の最高傑作と呼ばれている作品だが自分には合わなかった。
まず、多くの人が指摘している通りクローズド・サークルものなのに緊迫感が今一つなこと。それに肝心の双子トリックがそれを使用する状況を作りだす手順に無理があり、たとえ成功してもそれほど効果的なトリックだとは思えなかったのが評価を下げた大きな理由。

さらに加えるならば、動機も気に入らない。犯人に同情的な書き方をしているけれど単なる逆恨みとしか思えない。そして極めつけは、純粋なパズラーとして書いているのにもかかわらず、逮捕する決定的な証拠がないからといって犯人の情に訴えて自白を引き出そうとしている点だ。
新しい本格ミステリーを書こうとした当時の意気込みは伝わってくるのだが、どうも自分の求めてたものとは違っていたという印象だった。

No.22 7点 ボナンザ
(2014/06/10 14:44登録)
西村京太郎異色の名作。当然先にそして誰もいなくなったを読んでおく必要はある。
大胆不敵なトリックの数々。隠し方がややぬるいと思わされる部分もあるが、それでもなお名作と呼ぶべき内容であろう。

No.21 9点 sophia
(2014/04/13 21:31登録)
西村京太郎を2時間ドラマ御用達の時刻表トリック量産作家だと舐めてはいけません。古臭さはどうしても否めませんが、これはクローズド・サークルものとしては高レベルの作品であると思います。あ、そこで切るのかという余韻の残る終わり方も好き。

No.20 5点 蟷螂の斧
(2013/07/07 17:43登録)
クローズド・サークルものでありながら、ハラハラ・ドキドキ感があまり感じられなかったことが、残念な点です。双子の特性をうまく扱った犯罪小説であることは、高く評価できると思います。

No.19 6点 okutetsu
(2013/02/22 01:33登録)
途中まで謎が多くて非常に楽しめた。
ただラストの種明かしがちょっとずつ行われるのでここという驚きポイントもなく淡々と進行していくのが残念でした。
トリックそのものもあまりメリットを感じられないし、なにより動機が微妙で残念でした。
それでも読ませる内容にはなっているのでこの点数で。

No.18 5点 いいちこ
(2011/12/23 19:54登録)
さすがに読ませる作品に仕上がっているがkanamoriさんのご指摘に全く同感。
冒頭に宣言しておきながら連続強盗事件が単なるミスディレクションであり必然性が欠如、重要人物が終盤に登場する点で納得感に乏しい点が減点材料

No.17 4点 好兵衛
(2011/04/24 02:35登録)
本格色がつよい&クロースドーサークル
そしてこのサイトで評価が高いので読んでみた。

結果はあまり面白くなかった。

よくあるクローズドサークルものといった感じだった。

机の上のマークの意味も、知識が必要。
犯人もよくある一人で、
決め手になる物もわかりやすい。
最後の方の展開も予想できてしまう。
というかそこじゃなくて事件を楽しみたい。

平行して行われるもうひとつの事件も
あまり必要がないように感じる。

この作品にながれるテーマ的なものが面白く感じなく
そんな自分には向いていない作品だった
どこが謎なのかもよくわからなかった。
クローズドサークルの方の事件に焦点を当てて欲しかった。
もっと犯人あての謎解きがしたかった。

No.16 6点 あびびび
(2011/03/21 01:12登録)
動機が弱すぎるような感じがした。連続して起きる殺人事件にしても淡々…という感じでもうひとつ緊迫感が足りなかったのではないか。

ただ、ミステリとしては本格的ではないかと思った。一気に読める構成ではある。

No.15 8点 まさむね
(2011/02/10 23:25登録)
 このサイトにおける隠れた高評価に刺激されて読んでみました。
 いやはや,作者に対するワタクシのこれまでの印象が,良い意味で崩れちゃいました。
 本格ミステリとして秀逸だと思いますね。ラストの数行も印象に残ります。1977年の作品であることを考慮すればさらにプラス評価。国内双生児モノの傑作と評価いたします。

 東京の連続強盗事件と宮城の雪の山荘(ホテル)における連続殺人事件が交互に語られていきます。
 それぞれの事件自体が興味深いですし,その2つが結びついたときに一体何が…という期待で,序盤から一気に読ませてくれました。
(以下ややネタバレ的な要素を含みます。)
 結果的には,前者の事件は後者の事件の「引立て役」なのであって,前者の犯人が想定どおりに犯行を行った必然性が感じられません。正直,相当な違和感を覚えました。
 しかし,前者の事件がないと,読書の楽しみが激減してしまうのもまた事実。
 読者としては何とも悩ましいところですが,作者の仕掛け具合はその違和感を補って余りあるものと判断して8点!

No.14 6点 kanamori
(2011/02/01 18:03登録)
作者の作品の中では、マニアックな趣向が施された本格ミステリですが、今回久々に再読してみて、下記の不満点が目につき初読時よりだいぶ評価が下がった。
以下はネタバレを含みますが、

①閉された雪の山荘の連続殺人という設定の割にあまりサスペンスが感じられない。(シーマスターさんに同じく、「りら荘事件」を読んだ時と似た印象)
②並行して語られる双子の兄弟による連続強盗事件は、そこまでやる必然性に欠ける。犯人による工作というより、単に作者の読者に対するミスディレクションの意味合いとしか受けとれない。
③重要人物の登場が後出し。新聞記者はともかく、顔のない死体の身代わりについては全く伏線もない。
④ラストシーンの、犯人に対する刑事の痛烈なひと言は、ゲーム性の強い全体のプロットから浮いていてチグハグな感じを受ける。

No.13 8点 りゅう
(2010/12/10 18:39登録)
 西村京太郎氏は2時間ドラマのイメージが強く、自分には縁のない作家だと思っていましたが、このサイトで高評価だったので読んでみました。満足できる内容でした。犯行計画が実に巧妙です。これくらい頭脳的な犯人にはミステリを読んでいてもなかなか出会えません。2つの物語が並行して進んでいきますが、仕掛けがあると思って読んでいたため、犯人の設定、最後の犯人の言い分など真相の半分以上は推測することが出来ました(論理的推論ではなく、単なる勘によるものですが)。最後の犯人の言い分は前半の進行を再現し、警察関係者を再度歯ぎしりさせるもので、ふるっています。犯人が犯行に及んだ動機には考えさせられるものがありました。ところで、作品中の強盗の手法は、今でも罪に問われることがないのでしょうか?

No.12 9点 E-BANKER
(2010/10/11 00:14登録)
ゾロ目(333番目)の書評は、個人的に氏の最高傑作間違いなしの本作で!
初期の本格ミステリーで、特に探偵役は登場しません。
冒頭で「双子トリック」の使用を堂々と宣言しながらも、中盤以降さらに読者を二重三重に欺くという最高レベルの「仕掛け」が炸裂します。
①なぜ、東京の街中で双子の兄弟が引き起こす連続強盗事件とクローズドサークルでの連続殺人が交互に語られるのか、②なぜ、名作「そして誰もいなくなった」を模倣しながらも、相違点も読者へ明らかにしているのか、その他魅力的な謎が目白押し、伏線も見事だと思います。
それでいて、無駄な部分は極力削ぎ落とされており、冗長なところは一切ないのも西村流本格ミステリー・・・
この頃は、印象的かつ画期的なプロットが光る作品をつぎつぎに生み出しており、やっぱり「並みの作家ではない」ことを十二分に感じさせられます。

No.11 7点 測量ボ-イ
(2010/01/13 21:06登録)
氏の初期作品。
久々に再読しましたが、なかなか楽しめました。
よくある双生児トリック(ネタばれに非ず!作品読めば
判ります)ではなく、もうひとひねりが利いています。

現在の氏のイメ-ジとはかなり遠い、本格色の強い作品
です。氏の作品では、これと中編ですが「雷鳥九号殺人
事件」が本格色の強い作品で、お勧めです。

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