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ミステリの祭典

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生ける屍の死

作家 山口雅也
出版日1989年10月
平均点7.00点
書評数63人

No.63 7点 虫暮部
(2024/09/05 12:01登録)
 被害者は増えても容疑者が減らない画期的な連続殺人。 
 欧米文化のパロディ的なコンセプトは好きだが、その手法としては私の嗜好と食い違うところがあり、作品に対して若干の歩み寄りを余儀なくされたことは否定出来ない。
 その理由の一部は長さに起因するけれど、単なる “謎とその解明” ではなくタナトロジーの一大伽藍になるのは作品成立上の必然であって、余計な部分が沢山あるように見えてもでは何処を削れば良いのかと問われると判らない。

 不満を抱えつつ “これがあり得るベストの形” と受け入れるしかないのか。ホワイト・アルバムは1枚ものにまとめればもっと名盤になったのに、みたいな話?

No.62 9点 みりん
(2023/08/03 20:51登録)
とんでもないのを読んでしまった。
いやこれはすごい。人生何周したらこのシナリオを思いつくのでしょうか??
特にこの作品のあのミスリードは国内最高峰ではないですかね。「なぜ死人が甦る世界で殺人が起こるのか?」動機には無限の可能性があることを示してくれました。そして「永遠」を失った人間がその代償として得た対価について問うエピローグはミステリの域を超えた。"性愛と死は兄弟" たっぷり謎解きを読ませたその先に作品の根幹にあったこのテーマを描き切った作者に拍手を。まさしく傑作中の傑作、大傑作です。

東西ミステリー15位とか10年間のミステリーで1位とか過大評価ではないと思う。審査員ウケも良さそうだし(笑)
は?じゃあなんでお前満点つけねえんだ?って言われると、エンタメ大好きマンにはキツいんだよ特に前半とか。ファストフード大好きな奴がマクドナルド行ったら高級フランス料理出てきたみたいな感じ。十分エンタメ作品ではあるし面白くないわけではないけど"すごい"って感情が勝つ。
なんか作品の重厚さに対して薄い書評になっちゃいました。

No.61 10点 密室とアリバイ
(2023/05/02 09:30登録)
この設定でこんなにも面白くできる作者は紛れもなく天才だ。

No.60 9点 モグラの対義語はモゲラ
(2022/09/26 23:06登録)
読んだのは96年の文庫本版。
めちゃくちゃ面白かった。死体特有の特性を使った前振りに、死者が蘇るという世界ならではの動機やトリック、かなり古い作品であるにもかかわらず非常に新鮮で面白かった。特に指紋の件やジョンの動機。確かに死んだ後は子供と財産の行く末を気にするよなあ。
ミステリ的な観点を抜いた、小説としての面白さある。死者となってからの生死への哲学や、死者なりの感情の機微が良い。ラストシーンの余韻も最高だ。適度にコミカルなのも、ある意味バッドエンドが確定している重たいストーリーを読ませやすくしていて個人的には良かった。普通はくどかったり場違いであると感じられて、そうした要素が受け付け難いことも少なくないのだが。
そりゃあ過去10年間のベストミステリに選ばれるわ。

No.59 9点 okutetsu
(2021/08/15 23:34登録)
死者が生き返るという設定の時点で殺人事件として面白くするというのは難しそうなのにそれをあれだけの大作で完成させているのは本当に凄い。
確かに事件が起こるまでが長いし挫けそうになる瞬間も多かったが、最後まで読めば納得する出来である。
人が生き返る世界でなぜ殺すのかという動機の解明も納得がいくものだったし、ラストシーンはミステリとは思えない感動があって泣きそうになった。
素晴らしい名作。

No.58 7点 名探偵ジャパン
(2019/06/01 01:07登録)
初出版が1989年ということに驚きです。平成元年じゃないですか。この時代に、すでにこういうものを書いていたというのが凄い。
死者が「生ける屍」になる理由というものを一切明かさず、起きた事実だけを書いていく手法も思い切っています。そこ(ゾンビ化する設定とか)はこの作品の肝じゃないし不要、と作者が判断したのでしょう。正解だと思います。
謎の一つ一つが特殊設定と絶妙に絡み合い、ただ単に奇をてらうための設定ではないことが分かります。こういったものはどうしても色物として見られがちですが、変な言い方かもしれませんが真面目な、優等生的な特殊設定ミステリでした。
主人公のキャラクターにも救われて、そこまで深刻な話にもならず、しかしラストは切ない幕引きで余韻を残しました。

No.57 7点 好兵衛
(2018/10/31 13:42登録)
『ネタバレあります』

7・5点くらい。
世界観が面白く、キャラクターも個性にあふれていて
ストーリーも読みやすかったです。
舞台設定が、SFでも、ファンタジーでも
しっかりとそのルールが提示してあり、
謎解きが出来るようになっているならばOKです。
この作品は、そういった問題の提示と、答え合わせがしっかり
できる作品だと思います。

死者が蘇るという、設定が面白く。
グリンの死から、ある程度死者が割り出せ…そこから…と
芋づる式に推理を展開するのがとても爽快でした。
推理小説を読んでいるという実感。

ただ、謎解き前までは「何が謎」なのか全くわからず
読み続けていたのですが、
挑戦状的なものがあると、とてもいいと思います。
謎解き前に、じっくり、推理する価値はあります。
(私の場合は、先に読んでもくれた人にどこから、謎解きページか
 聞いて、いったんおいて謎解きしました。)

動機面は、どうしても個人の好みが反映されてしまうものだと思いますが。
個人的には、とても面白かったですが、分かりやすかったです。
好みと相性の問題です。

犯人である、モニカが呆けが入った状態にもかかわらず。
福音書にちなんだ、脅迫状をわざわざタイプしたり。
ずっと屍状態を隠せていた事は、少しひっかかりました。
(立ち上がったりしそう)

No.56 7点 ミステリ初心者
(2018/08/06 03:19登録)
ネタバレをしています。



 紹介文をみてすぐ買いましたw ちょうど新装文庫版が発売されていました。
 人を殺しても生き返る(?)世界でのミステリはオリジナリティが高く、かつ登場人物も面白い人が多く、単純に読み物としての評価が高いです! しかし、上巻途中までの衒学がすこしだけ冗長に感じることもありました。ほとんどは楽しく読めましたが・・・ 逆に、衒学の中にヒントがあるのなら、仮死状態→復活を何かトリックに使ったのか?とか序盤は考えていました。

 この本はいろいろな要素が入っていますが、もっとも大きい謎は、生き返るのになぜ殺すのか?ということだと思ってます。
ジョンの、遺産相続のなんやかんやで殺されたことを演出することは生ける屍についての法律がよくわからなかったのでピンとはきませんでした(記述があったら申し訳ありません)。 
モニカのほうは、納得がいきました。モニカの殺害動機がこの作品のなかでもっとも好きな部分です。

 あまり不満がありません。
あえてあげるなら、生ける屍がその1度目の死を隠し、生きている人間ではおこるデメリット(睡眠薬で眠らないなど)を回避することやそれを使ったトリックはあまり驚きがなかったです。
生ける屍を化したモニカの身体能力も、生ける屍のサンプルがグリンだけであったためピンときません(最初にすこしありましたね)。さらにモニカの痴呆具合もやや不明で、スマイリー達がモニカの足の不自由を隠していたとしても急にたってしまったりしないのか疑問でした。
と、文句を書きましたが、かなり楽しめた作品でした! 次は日本殺人事件を買おう!

No.55 6点 蟷螂の斧
(2018/03/28 22:32登録)
(東西ベスト15位)長いっ!(笑)。読まなければならないとずっと頭の中にあった1冊で、やっと手に取りました。ユーモアミステリーでもあり、SFでもあります。死者が蘇るという特殊設定の中での殺人事件。犯人の設定、動機が巧い。

No.54 6点 yoshi
(2017/10/05 16:36登録)
楽しめはしましたが、ちょっと過大評価気味ではないですかね。
今さらながら、アリバイやら物証やら、あらやる推理の手掛かりが、
「死んだ人はもう自力では動かない」という大前提の下にあることを再確認しました。
その前提が崩れた時点で、もう何でもありの世界になってしまう。
SFだという意見も散見されますが、SFだったらどうして死者が蘇るのか、
擬科学的でいいから一言説明が欲しいところ。

No.53 10点 sophia
(2016/05/20 00:16登録)
SFと本格ミステリーが融合した奇跡的な傑作。
全編に散りばめられたユーモアがまた心地よい。
この作者はこの一作を世に出しただけで天晴れだと思います。
ほったらかしにされた(と思われる)伏線があるのが少し気にはなりますが目を瞑ります。

No.52 6点 E-BANKER
(2016/04/13 20:31登録)
1989年発表。
作者のデビュー長編であるとともに、ミステリー史上に残るエポック・メイキング的作品となった一冊。
前々から読もう読もうと思っていた作品を、今回やっと読了したのだが・・・

~米・ニューイングランドの片田舎で死者が相次いでよみがえった! この怪現象のなか、霊園経営者一族のうえに殺人者の魔の手が迫る! 死んだはずの人間が生き返ってくる状況下で展開される殺人劇の必然性とは何なのか? 自らも死者となったことを隠しつつ事件を追うパンク探偵グリンは、肉体が崩壊するまでに真相を手に入れることができるのか? 作者会心の長編第一作~

なるほど・・・こういうプロットだったのか・・・
ようやく作品が終わりに近づいたところで、作者の大いなる企みに気付かされた!
そんな感覚。

とにかく終盤までは、「(作者は)一体何が言いたいのか?」全然分からない感じだったのだ。
死んでも死なない(?)という超特殊な設定下で起こる連続殺人事件。
ましてや探偵さえも死人なのだから・・・
この冗談のような設定にも意味はあったのだ!

でもまぁよくも理屈付けできたよなぁー
あくまでも「死者が死者でない」という特殊設定だからこそのロジック&トリック。
動機もまさかそんな遠大なものだとは・・・

でも長いよなぁ・・・
正直なところ、中盤はかなりキツイ!
かなり多めの登場人物だし、似たような名前が多いし・・・途切れとぎれで読んでると、何がなんだか分からなくなってくる。
でも、特殊設定のミステリーという意味ではエポックメイクなのは間違いない。
本作にカタストロフィを味わう読者もいることだろう(いるか?)
評価はこんなもの。

No.51 8点 ロマン
(2015/10/21 09:47登録)
死者が蘇る世界。理由は不明。そんな世界で殺人事件が起きる。何故そんなナンセンスなことが? という感じの謎で引っ張っていく斬新なミステリ。著者が博学なこともあり、死と死体に関する知識も作中に散見される。これはミステリ小説にとって理想的な姿ではないか。死体を扱った思考ゲームでありながらロジックやトリックばかりが重視されているのはどうなんだろう、という疑問を持っていた私にはそう思えてならない。でも長い。が、投げてしまおうかと思ったところで大笑いするようなギャグを挟んでくるので読んでしまった。上手い構成だと思う。

No.50 6点 斎藤警部
(2015/09/23 07:31登録)
死人もしばらく考えたり行動したり出来る(ただし諸制約有り)という設定はロジックをガチャガチャやるルールの複雑化手段として目を引く。 ただ、さほどの前代未聞感は無かったな。。

長い物語ですが、会話の機微や薀蓄、引用の面白さも手伝って緊張途切れず読めました。 ただ、さほどの結末衝撃は無かったな。。 仄かな感動はあった。

これだけ登場人物(それも殆ど片仮名)が多いのにちゃんと書き分けられているのは素晴らしいですね。
敢えて人に薦めるまではしませんが、必読の書的な立場にあって色んな人に手を伸ばして欲しい一冊です。
どことなく病的なムードが作品全体に充満しているのも刺激的で、作者の人となりに思いを馳せてしまいます。

表立って記載されなかった楽曲では The Rolling Stones ”Play With Fire” と Elvis Costello “The Loved Ones ”が想出されずにいませんでした。(前者はきっと作者も意識してる。とある登場人物名には笑わせてもらいました)

No.49 5点 ボナンザ
(2014/04/08 15:26登録)
ホワイダニットに新たな可能性があることを示した問題作。
最初は設定になれるのに苦労するが、こういったルールの追加も今後はありなのかなと思わされた。

No.48 6点 いいちこ
(2014/03/20 18:42登録)
独創的なプロットと真相は一定の評価
蘇生に関するルールが冒頭に明示されておらず、作品世界に没入するまでに戸惑いを感じた点が惜しい
人によっては高く評価するのも頷ける作品

No.47 8点 アイス・コーヒー
(2013/11/08 19:20登録)
死者がよみがえり、生きているかのように歩き、喋る。奇妙な現象が多発するニューイングランドで葬儀社一族が不審死していく…

特殊ルール付きミステリの中でも第一級レベルの作品だ。死者が蘇ることの意味が明確に分かるトリックと結末は、複雑ながら面白い。しかし、あんな結末にちゃんと伏線がはられていたとは…角度を変えてみると全く違うものになっている騙し絵のよう。
「死」に関する大量の薀蓄やご都合主義すぎる展開は実験的なものを感じるが、個人的には読み物として、物語として楽しめた。何より読み終えた後の満腹感がよかった。「生ける屍の死」の本当の意味を考え見ると、「死」という人類最大のミステリに触れることもできる。メメント・モリ。

No.46 4点 HORNET
(2013/03/24 17:22登録)
 「死者の蘇り」がアリと設定された特殊舞台での本格ミステリ。その状況だからこその動機やトリックがあり、世間的評価が高いのも確かにうなずける。米澤穂信の「折れた竜骨」なども同じようなことが言え、そう考えるとこうしたスタイルの先駆的な役目を果たしたといえる。仕掛けも、解明過程もよくできたミステリだと思うのだが・・・・
 なぜか読後感は「疲れた」が正直なところ。まず第一に宗教や葬送に関する薀蓄が多い。これはまだ本筋に関わる所だからよいとしても、アメリカの国民気質とか、建築様式や生活様式とかの薀蓄は少々読むのが面倒臭かった。第二に、「死者の蘇り」に関してのルールというか、条件というか、そういったものが曖昧で、最後のほうは何となく「何でもアリ」感が漂ってしまった・・・かな?
 優れた発想と巧みな展開だと頭では分かるのだが・・・何となくしっくりこなかった作品。

No.45 6点 isurrender
(2012/11/06 22:58登録)
変わった設定が面白いが、そういう設定になったが故にトリックが読めてしまうところが残念

No.44 5点 haruka
(2011/05/29 11:52登録)
一風変わった設定を存分に生かした完成度の高い超大作であることは認めるが、ちょっと詰め込み過ぎの印象。

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