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ミステリの祭典

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聖女の救済
探偵ガリレオシリーズ

作家 東野圭吾
出版日2008年10月
平均点6.85点
書評数47人

No.47 7点 ミステリ初心者
(2023/10/17 19:29登録)
ネタバレをしております。

 たぶん、容疑者Xの献身以来?の探偵ガリレオシリーズを読みましたw ガリレオの湯川は個人的にはあまり好きになれない人物ですw ただ今回は(今回も?)安楽椅子探偵的にちょくちょくでる感じで、あくまで草薙と内海が主人公格な視点で進んで行くため、ほとんど気になりませんでしたw
 非常に読みやすかったです。アリバイトリック系の推理小説として完成度が高いです。少し違うかもしれませんが、鬼貫警部シリーズのような感覚で読めました。あまり無駄な点がなく、アリバイトリックを楽しむことに特化した文章が心地よかったですw
 エピローグの使い方も非常にうまいですね。物語の最後に、犯行直前の会話ではなく、殺意が芽生えた1年前の会話だったことが明かされるほのかな叙述トリックのノリで(?)、亜ヒ酸の袋の存在がミスリードになっておりますね。この文を読むと、まるで、殺害直前に毒を仕込んだように錯覚しますw 

 推理小説部分について。
 私は毒殺トリックに飢えておりますw 単に犯行方法が毒殺というものではなく、どうやって毒を入れたとか、どうやって特定の人物だけに飲ませるとかそういうトリックが読みたいのです。本作品は毒殺トリックとして満足の出来でした!
 トリックについては、現実にはかなり難しいのではないかと思います。やはり、誰かが浄水器を使うと破綻してしまいますし。ただ、小説上はそれが可能に思えるような細かい伏線が張られており、作者の実力の高さがうかがえました。
 ただ、あの毒の仕掛け方では宏美が巻き添えになってしまう可能性もあった気がするのですが、どうなのでしょうかね? 読んだ感じでは、絶対に宏美が浄水器を使わないとは言えない気がするのですがどうでしょうか。綾音は宏美を巻き添えに真柴を殺すような人物には書かれていないと思うのですが。

 総じて、非常に本格度が高く無駄な点が少ない質の高い推理小説でした! 容疑者Xの献身や、短編での探偵ガリレオシリーズはあまり好みではなかったのですが、この作品は私の好みでした。

No.46 6点 ボナンザ
(2022/07/08 12:45登録)
一点突破のシンプルゆえに凄まじいトリック。
動機はそれほどでもなかったような・・・。

No.45 6点 makomako
(2021/02/27 21:47登録)
 トリックが好きで、といった方には評価が高いのでしょう。
 なんせ登場人物は少なく、ほとんど初めから犯人がわかっているのにどうやってが、なかなか分からない。作者は一つのトリックだけで長編を書いてしまったのです。
 結果がわかると、まあこんなことはほとんど考えにくいのですが、なるほどと思ってしまう。ある意味お話としては全く単純。それを最後まで読ませてしまうのはさすがです。

No.44 8点 じきる
(2021/01/27 15:11登録)
これは本格ミステリとして読み応え十分。
「虚数解」のトリックには感心したし、ストーリー全体を通しての完成度も高い。

No.43 8点 E-BANKER
(2019/12/30 23:46登録)
ガリレオシリーズの長編としては「容疑者Xの献身」に続いて発表された作品。
「オール読物」誌に連載後、2008年に単行本として発表。

~資産家の男が自宅で毒殺された。毒物混入方法は全く不明。男から一方的に離婚を切り出されていた妻には鉄壁のアリバイがあった。難航する捜査のさなか、草薙刑事が美貌の妻に惹かれていることを察した内海刑事は、独断でガリレオこと湯川学に協力を依頼するが・・・。驚愕のトリックで世界を揺るがせた東野ミステリー屈指の傑作~

うーん。すごい作品だ。やはり並みの作家ではない、東野圭吾は。
そんな思いを強くした作品だった。

まずはこのタイトルに脱帽。てっきり『聖女』が『救済』される話だと思っていたよ・・・
まさか真逆だとは思っていなかった。
そして「虚数解」の話・・・。「理論的には考えられるが、現実的にはありえない」トリック。
個人的に、このトリックが非現実的だとか、無理があるというのはやや筋違いのように思える。
そもそも作者自身が「ありえない」と断じているのだから。
本来なら無理筋であるはずのトリックを成立させるための設定、人物造形、そして何より湯川学という比類なき探偵役。
作者が企図したすべてのプロットがこの「虚数解」を成立させたのだ。
これこそが作者の力量、作品の力と言わずして何というのか?
こんな作品、なかなかお目にかかれないと思うのは私だけだろうか。

湯川、草薙、内海、そして聖女こと真柴綾音・・四人の織り成す物語も本作の読みどころ。
もしかしたら本作は読者がどの立ち位置で感情移入できるかで感想が違ってくるのかもしれない。
特に草薙刑事。綾音の魅力に取り憑かれながらも、最後には刑事としての矜持をしっかりと示してくれた。冷静な観察眼と女性特有の鋭い勘をもつ内海刑事とのコンビは地上波ドラマ以上に魅力的だ。

ということで改めて作者のスゴさを認識させられた作品だった。
でもちょっと褒めすぎかも。動機が後出しだとか、フーダニットの面白さが全くないというのは確か。
でもまぁ、年末にいいもの読ませていただきました。
(如雨露は絶対伏線だろうなというのはミエミエだったなー。内海刑事がi-potで福山雅治を聞いてたのは作者のサービスかな?)

No.42 5点 take5
(2019/09/08 20:59登録)
自分としてはページの割りに物凄く速く読めました。二時間位。
犯人もはっきりしているし、後から出てくる人物がwhy に関わってくる事必至なので読みやすいのでしょう。
でも一年間は強引だなぁ。

No.41 6点 測量ボ-イ
(2019/02/20 19:11登録)
職場の人からもらった本を読みました(笑)

さて肝心の書評ですが、トリックはしっかり本格仕立てであるものの、
これはどうか・・
他の方の書評にもあるように、理屈では可能でもそんなことするか、
というツッコミですね。
○○○を一定期間一切使わない、という縛りもありますし。
また○○○に毒を仕込むトリックも文章だけの説明なので、よくわから
ない(本当にこういうのが苦手)。

でも、文章に変なクセがなく読みやすさは相変わらずです。

No.40 6点 斎藤警部
(2017/02/07 18:56登録)
俺の東野とは思えないほど、つかみが弱い、引き込み緩い、落としは、、 最後までなんだか出涸らし番茶味のガムを噛まされてるみたいなもどかしさ。逆トリックならぬ逆犯行てが? 大胆企画を消化しきれなかった試作品ってんじゃ。。森博嗣の失敗作っぽくないか?(って氏の作品はまだ数えるほどしか読んでませんが。)

でもまあ湯川教授はいいこと時々言うよ。「たとえ虚数解であっても。。」その虚数解の正体に魅惑されそこなったのが残念なんですけどね。 少なくとも例の(そうは言ってもなかなか凄い)トリックの方はね。。

微妙にネタバレ交じりの褒め言葉でフォローさせてもらうと、本作はフーよりハゥよりホヮイよりホヮットより「ホェンダニット」の’大きさ’で魅せる、というなかなか画期的な作品なのかも知れませんね。それともう一つ、何ダニットと呼んでいいのか全くわからない、真犯人の”その間”の気持ちね。「別な意味のハゥダニット」とでも言ったらいいのか。 うん、中盤はイマイチでも、最後に明かされる真相はやっぱなかなかだよな。そうそう『最後の物証』を巡るちょっと切ない背景物語もね。。本格推理(というか犯罪捜査)として全く無駄になってなかったってのが分かるあたり、振り返れば泣けますよ。 「存在の有無を確認するという作業は曲者でね。。」 そんなわけで読後じわじわ来て、4点⇒5点⇒6点とぐいぐい上がっちゃいましたね。 

川崎フロンターレの人気サブマスコットを連想させるキャラクターが登場したのは萌えた。
それと、湯川教授と福山雅治が同一人物ではない設定だったのには笑いました(笑)。

No.39 5点 itokin
(2016/12/10 19:56登録)
東野さんの作品にしては期待はずれ、途中ダラダラして堂々巡り、トリックに期待したがたまたまうまく行ったという感じで相当無理がある、最後に持ち上がりも無しで私としてはこの点数が精一杯です。

No.38 8点 青い車
(2016/11/09 14:11登録)
 小難しいトリックを用いなくても、斬新な長篇が書けるということを証明しており、犯人もほぼ絞られていてWhoの楽しみを捨てているのに、なお面白く読めます。トリックが不合理・不自然に陥らず、犯人の心理や動機と有機的に結びついているのも良かったです。あと、今回は草薙刑事がいつになく活躍を見せてくれます。伊達に売れているわけではない、と改めて感心。

No.37 6点 ia
(2016/05/18 01:25登録)
あーなるほどねー
と思わせるトリックの出来の良さだった。

ただ、犯人がそこまでするような愛憎を読んでてまったく感じなかった。
リスクと根気で大変な計画殺人に結びついてない。
犯人がただのトリックの為の装置になってて物語としても響いてこない。
だからふーんで終わった。

読んでる最中はトリックが気になってそこそこ面白かった。

No.36 6点 パメル
(2016/02/08 10:27登録)
完全犯罪?
このトリックは無理がありすぎる
犯人の執念は認めるけどよくぞこんな事を考えたもんだ
トリック的にはバカミスに近いと思ってしまった
タイトルはいいと思う

No.35 6点 風桜青紫
(2016/01/18 02:22登録)
単純ながら強烈なインパクトを残すトリックはさすが東野圭吾というべきか。人間描写を作品の面白味にする一方で、そこから意外性をもたらす結末に着地させてくれる。「この人がこんなことを!?」という驚きは、トリックの骨格があるだけは演出できまい。綾音のいかにもな計算高さに終始ワクワク。東野作品って犯人サイドも頑張りが伝わってくるので、なんとなく応援したくなってしまう。草薙、胸を熱くさせんなよwww。

No.34 8点 Tetchy
(2015/07/05 00:32登録)
トリックは湯川をして「理論的に考えられるが、現実的にはありえない。まさに完全犯罪だ」と云わしめるほどの難問。

元来ミステリでは毒殺物は古今東西に亘って多数書かれている。やはりこの毒殺トリックというのは本格ミステリの書き手ならば一度は手掛けたいものなのだろう。毒をいかにして標的に飲ませるか?そしてどんな毒を使うのか?殺害方法は単純ながら、そのヴァリエーションは多岐に亘っている。そして本書はまた毒殺トリック物に新たな1ページを刻むことになった。

しかし本書で最もミステリアスなのはこのトリックよりも実は容疑者である被害者の妻真柴綾音だ。彼女は自らを容疑の外に置きながらも、第一容疑者で夫の不倫相手兼自分の会社の従業員である若山宏美を擁護し、あまつさえ自らも場合によっては犯行が可能であったとさえ、内海・草薙らに仄めかす。

慈愛に満ちた表情を湛えながらも、自分の教え子を護る時には毅然とした厳しい眼差しを向け、自分も容疑圏内に置こうとする。その姿は題名にもあるようにまさに聖女のようだ。この常人の理解を超えた綾音の心理は慈しみを超えて、時に読者に判じ得ない恐怖を覚えさす。

捜査に当る警察官が容疑者に惚れる。このハーレクイン・ロマンスのような設定をまさかこのガリレオシリーズで読むことになろうとは思わなかった。しかもその刑事が草薙。ガリレオシリーズでは科学に疎い読者の代弁者として名探偵湯川学に事件の解決を依頼するパートナー的存在だった彼も本作で恋する人間臭さを備える。

草薙を翻弄し、内海も歯噛みし、そして湯川をも唸らせる完全犯罪のトリックは実に驚くべきものであった。

それは子供がほしいがゆえに独善的な約束事を押し付ける夫に対して、その支配に対する綾音にとっての“銃”だったのだ。いつでも引鉄が引けるように常に装填された銃を彼女は心に持っていたのだ。
正直このトリックは現実的に考えるとどう考えても無理があるだろう。恐らく読んだ人全てが納得するトリックでは決してないだろう。しかし私はそんなありえない殺害方法を肯定的に受け止める側だ。このトリックはやはり真柴綾音という存在あってのものだと思うからだ。これが他のキャラクターならば到底納得できなかっただろう。そしてこれこそが東野マジックなのだ。

No.33 7点 あびびび
(2015/05/23 23:31登録)
「虚数解」か…。そう表現されれば、そうなんだろうが…。ずっとそのトリックを守っていた聖女。初めからそんな場面が来ることを想定しての仕込み…。

久しぶりに東野さんの本を読んだが、相変わらずうまい。淀みなく最終章まで引っ張る作者の知識容量と発想の転換。こんなことを言うと、誰かに怒られそうだが、とても大阪の生野区出身だとは思わない。泥臭さがまったくない。

自分もそこに住んでいるから良く分かる(すみません)。

No.32 6点 いいちこ
(2014/07/23 12:00登録)
Xと同様、倒叙形式のハウダニット。
メイントリックの着想は見事。
ただ現実性に乏しい弱点を補強するために話を膨らませた分、拡散して密度が低下しているのが難点。
それでも長編として破綻なく持たせきる構成力、読ませきるリーダビリティはさすがだが。
「虚数解」も素晴らしい。
Xの「幾何の問題に見せかけて実は関数の問題」には及ばないにしても、作品の本質を一語で言い当てている。
一方、タイトルは疑問。
「聖女」にはかなりの違和感があるし、(他の方も指摘されているように)この真相を「救済」とは言わないと思う。
この著者、あまりに上手すぎるため何を書いてもヒットにしてしまう。
本作もインハイの速球を華麗なテクニックでヒットにしたが、外野の間を割る長打という印象はない

No.31 5点 りらっくま
(2013/08/01 00:07登録)
ネタばれ注意



男からすれば、この被害者の気持ちは理解できる。
誰しも自分のDNAを残したいという本能は持ってる。
ただそれを面と向かっていっちゃうところが被害者の
救いようのなさ。でも犯人も犯人で理解できない事が多すぎる。
最初から1年で子供ができなければ別れるっていってるのに、
不妊のこと黙ってたり、まぁ愛情でライフプランの変更が可能
だと思ってたからかもしれないが、そこであの仕掛けをしておく
のは自己中心過ぎだろう。不慮の事で家を空けなきゃいけないと
きだってあるだろうし、・・・・

自分には法律知識がないのでわからないけど、犯人の弟子が
被害者の子供を産んだら、遺産的にはどうなんだろう?DNA鑑定で被害者の子供が確定しても一銭ももらえないんだろうか?

No.30 7点 ドクターマッコい
(2013/04/10 17:33登録)
よくもまあこんなトリックをと思える
作品でした。
この作家さん、本当に凄いです。

しかし夫に離婚を要求される妻も
辛いものです。この部分は悲しい気分になりました。

No.29 7点 STAR
(2012/10/12 14:47登録)
読みやすいので、スラスラ読めます。
(以下ネタバレあり!)
どうして被害者はこうもモテるのでしょうね?女性からすると、かなり「イヤな奴」ですが。
あと被害者の性格からして、若い人(20代前半くらい?)の女性と最初から付き合わなかったのも不思議。その方が被害者の願望がかなう確率は高そうなのですが。

女の執念を感じて、動機はおもしろかったです。動機・トリックが「聖女の救済」というタイトルと重なるんですね。

No.28 7点 simo10
(2012/09/30 20:53登録)
--ネタばれ含みます--

ガリレオシリーズの長編第二弾。
シリーズお馴染みの倒叙形式のハウダニットものです。トリック自体は理系モノではないのですが、実際にそれが行われるということが有り得ないため、それを虚数解に据えるということで理系に結びつけたのが巧いです。
その有り得ないトリックを実行するにための動機付けが、ワイダニットとして素晴らしいと思います。
とはいえ、その動機付けはやはり多少無理矢理な印象を受けてしまいました。絶望を感じているはずなのにわざわざ完全犯罪を企てるのか?と違和感を感じてしまいました。
物理的には可能だけど実行されることはありえない、そんな虚数解トリックは動機付けが最大のキモとなると思いますが、その動機付けを放棄した歌野氏の密室殺人ゲームシリーズの設定はうまいというかズル賢いというか、特許もんだなあと思う。

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