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ミステリの祭典

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死の接吻

作家 アイラ・レヴィン
出版日1955年01月
平均点6.91点
書評数23人

No.23 6点 三枝
(2024/10/04 11:22登録)
既に多くの方が触れていますが、一章での倒叙部分を「彼」という表記にすることで犯人の正体を読者に伏せ、二章では探偵役が犯人捜しをするという一粒で二度おいしい作りになっているのがうまいです。

他方、犯人発覚以降の第三章はパワー不足が否めず、探偵役が犯人にたどり着くための推理も弱ければ最後は犯人の自白頼みという始末。
尋問の場面も読者が犯人を知っているからかろうじて成り立っているものの、犯人不明の状態で読めば強引な当てずっぽうとしか思えなかったでしょう。
風呂敷を広げるのはうまかったものの、畳むのに失敗した印象です。

犯人と探偵役の二視点といいなんとなく浦沢直樹の『Monster』を思い起こしました。

No.22 8点 YMY
(2021/05/07 23:10登録)
ドライザーの「アメリカの悲劇」を下敷きにして、アイリッシュ風のムードで味つけし、現代的なサスペンスに仕上がっている。
貧しい大学生が出世のために恋人の女子学生を殺害し、金持ちの令嬢と結婚しようと画策するが失敗、身を滅ぼす。
よくあるストーリーだが、その構成とトリックの目新しさ、サスペンスを盛り上げる技巧、結末の意外性は買う。

No.21 7点 ◇・・
(2020/03/21 20:22登録)
前半は犯人側から描く倒叙ミステリ。ある青年の犯罪が描かれるが「彼」とあるだけで、それが誰かはわからない。
大胆にして緻密な構成が圧巻のサスペンス。第二次世界大戦後の身勝手な若者像をリアルに描いた、青春小説でもある。

No.20 7点 クリスティ再読
(2019/10/05 16:24登録)
「アメリカの悲劇」をやったこともあって、本作を取り上げることにする。クライド・グリフィス君の名誉のために言うけど、本作の犯人、クライド君よりワルい奴だよ。最初っから狙いに狙って計画を立ててるわけで、伊達邦彦の方がずっと近いや。非情で良心ゼロで几帳面なほどに計画的....まあそれでも伊達邦彦みたいな超人じゃないから、特に第一部で計画が思い通りにいかなくてヒヤヒヤするのが読みどころではあるんだけどね。
で第一部で「彼」でやる叙述の手口はさんざん模倣されて目新しさはもうないんだけど、本作の良さ、というのは「ミステリ」というものをデザイナー視点で眺めて、編集しなおした「編集感覚」みたいなものなんだと思う。そういう意味で「新しくない」けど「新しい」、一風変わったポジションにあるのが強みだ、第一部の倒叙風、第二部のエレン視点の素人探偵ぶり、第三部の「追い詰める」サスペンス....「編集感覚」の冴え、というものだろう。
それにしても文章、上手だな。23歳でこれだけ書けるのはオカシイようなレベルだよ。本作のあと期待され続けたのがわかるけど、期待ほどには...と思うのは厳しい見方かな。

No.19 6点
(2019/04/03 10:13登録)
三部構成のミステリー。
第1部は犯罪者視点によるクライム・サスペンス、第2部は素人探偵1による捜査ミステリー&サスペンス、第3部は素人探偵2による真相解明推理&サプライズ・エンディング。
総称すれば、恋愛要素ありの半倒叙・半謎解き・全サスペンス作品といったところでしょうか。
いまなら、複数視点による章立て、カットバックなどのテクニックや、それらの複合ワザは、あたりまえのように使われますが、当時としては、メリハリをきかせた画期的なアイデア作品だったのではないかと想像します。
種々のテクニックを使って読者を楽しませてくれる。本当にすばらしい作品です。

じつは、文庫裏の解説と登場人物表だけで瞬間的に犯人を当てちゃいました。というか倒叙モノかと勘違いしたぐらいです。
第2部で犯人は明かされますが、個人的には上記の理由からもちろんOKですし、第2部につづく、すさまじき場面転換のある第3部があるので問題はないように思います。
この第3部では、著者がヤケクソになったか、と思えるぐらい唐突感ありの劇的な幕引きが待ち受けています。これには少しだけ絶賛するも、多大なる呆れも感じられました。

No.18 5点 レッドキング
(2018/06/18 21:47登録)
うーん 第三部で もうひとひねりほしい 

No.17 9点 青い車
(2016/10/18 14:21登録)
 今まで読んだ中で、もっともサスペンスに満ちた小説でした。
 「犯行に至るまでの心理」「誰がやったかの謎」「事件がどう終着するか」と、三部構成でそれぞれ違った見せ場があります。特に、第二部の最後ですべての真相が割れたかと思いきや、残りの3分の1でもなお読者側に対しスリルを維持してみせた作者の筆力は圧巻です。あらすじだけ取り出すとジメジメしたサイコスリラーっぽいですが、胸の悪くなるような表現はほぼないと言ってよく、純粋にストーリー運びのキレで読ませてくれます。翻訳ものとしては異例の読みやすさも特筆もので、とにかく無類の面白さです。

No.16 7点
(2016/04/28 00:05登録)
久々の再読で、第1・2部は多少覚えていたのですが、第3部は全く記憶に残っていませんでした。
殺人者の側から描かれた犯罪小説である第1部は使われた工夫を考えると、読者に意味を悟られにくいよう、ここだけ一人称形式にしてもよかったかもしれません。それにしても、第1部の緻密な殺人者の心理描写は、作者が23歳の新人だとは信じられないくらいうまい。
第2部で、被害者の人物像を覆すような展開になっているのには驚かされました。エレンのユーモア・ミステリにでもなりそうな間抜け探偵ぶりは、気恥ずかしくなるほどですが、それでサスペンスが生まれていることも確かです。
で、最後が記憶から脱落していた第3部ですが、ここでの捜査も随分乱暴粗雑です。しかし齋藤警部さんも書かれているように、クライマックスは実に映画的で、迫力がありました。さらにその後の幕切れの微妙な味わいがいいのです。

No.15 9点 HORNET
(2016/04/16 11:08登録)
 古典作品ではあるが、いつの時代に読んでもまったく色褪せず楽しめる名作。
 「ドロシイ」「エレン」「マリオン」と三姉妹の名が冠された3部構成の仕組みも非常に巧み。第1部「ドロシイ」は犯人の視点から一人称で描かれ、第2部「エレン」は第1部の一人称=つまり犯人を探るフーダニット、そして第3部「マリオン」は犯人を追い詰める倒叙的なサスペンス。厚みのある作品だが、一本槍ではないこうした仕組みが、ラストまで飽きさせることなく読者を引き付け続ける力をもっている。
 不思議なことに、第1部ではどこか犯人に気持ちが寄ってしまい、予定外の展開に「畜生!くそ!」と毒づいているときなどは共感的に読んでしまう。第2部のラスト、真相が明らかになる場面の展開は背筋がぞくっと。そして第3部物語自体のラスト、絶妙な幕引きに最後まで息を呑む。
 それほど数は読んでいないが、海外古典の中も強く印象に残る一冊だった。

No.14 8点 斎藤警部
(2016/03/04 04:43登録)
ビートルズの全米連続一位記録をストップさせた故事でも名を馳せるサッチモのポップ・ヒット「ハロー・ドーリー」はまさかこの作品の台詞から出来た曲じゃないだろうか、と想いを馳せます。

社会派の熱、サスペンスの冷気、叙述操作の妙、恋愛ファクター、分厚い人間悲劇。。 と欲張りな重要因子を抱合しつつ、社会派と恋愛、そして悲劇要素については絶妙な地点でリミッターを掛けたのが功を奏したか、叙述云々についてはもう少し引っ張ってもいいんじゃないかとも思えるが、ともかく濃密な内容群が際どいバランスの良く取れた枠組で高速進行する、サスペンス型ミステリーの古典良作です。

何と言っても映像的、音響的、更には高温度、高湿度に鋭角的な匂いの感覚まで強烈に迫る、あまりも素晴らしく映画的な終盤のクライマックス・シークエンス、そしてそれに続く、これで終わるのではなく’これから始まる’嵐の前の静謐なエンディングには今にもエンド・ロールの文字群が被さって来そうだ、いや、映画だったら後日談までじっとりと描いてから締める所か。
正直なところ、7点で終わりそうでしたが、このクライマックスの強烈さ(ミステリ的面白さとは違う)で1点アップしてしまいましたよ。(細かく言えば7.2点から7.8点に0.6点上がったくらいの感覚)


【以下、本作での反転のあり方についてネタバレあり】

どんでん返しが最後じゃなくて中盤に来るのは「あれ!?」って思っちゃいましたけどね(多くの皆さんが語られたと同じく、もう一ひねり有るかと期待してしまいました)、それでもサスペンスいっぱいの場面がふんだんにあって緊張は途切れません。’手紙’を投函のリミットとかね、手に汗ですよ。。’新婦の持ち物’の手掛かりも唸ります。

もしも本作に「更なるどんでん返し」を付するとしたら’三姉妹の別れた母親’又は/及び’亡くなった真犯人の父親’に何らかの重要な役割を持たせるとか、だろうか。

だけどやはり、真犯人を最後に明かすというやり方をどうして取らなかったのか(この作者の頭脳なら出来たんじゃないか?)、それをやったら衝撃も如何ほど甚大だったろうか、と不思議に思う気持ちは消え難し。(当時既に作者はそれを「あざとい」と認識していたのか?)
それでも「構成の妙」には充分納得。基本アイディアから小説の実体構築まで、実に鮮やかと思います。

【ネタバレここまで】


終わってみると、本作の最重要テーマの一つが「親子愛」であった事に今さらながら気付かされ、泣けます。
そして彼は本作を両親に捧げた、か。

原題は’KISS OF LIFE(マウス・トゥ・マウス人工呼吸のこと)’をひねった’A KISS OF DEATH’かと思いきや、’KISS BEFORE SLEEPING(おやすみのキス)’をもじったと思われる’A KISS BEFORE DYING’。そちらの方がちょっとだけ甘美なニュアンスが拡がりますが。。

知られた所で二度映画化された様ですけれど、両者とも(犯人の正体を伏せた)ミステリー仕立てにするのは放棄しています。しかし「イニシエーション・ラヴ」や「ハサミ男」をまんまと映像化してしまった今の日本映画界だったら、原作に忠実にやる事も不可能ではないのでは? と夢見てしまいますが。。若いイケメン俳優たちの配置はどうするのかな。。 ってそんな単純なもんでないだろ、的な?
(そうそう全く内容の違う「死の接吻(KISS OF DEATH←前述のコトバ)」なる映画もあるのでね、注意が必要ですね。)

ところでハヤカワから出てる新装文庫版(新訳ではない)のカバー、素晴らしく良いですね! 美しくて、不気味で!! うちの小さい息子が「あ、『の』ってかいてある!」だって、あはは。

あとね、訳者あとがきで長々と引用される、様々な"当時の反響"、これがじぃつに愉しくてね!

No.13 6点 ボナンザ
(2014/04/09 15:00登録)
結構スリリングだった。
黄金期以降の名作としてあげられることが多いが、期待には添う作品だと思う。

No.12 7点 蟷螂の斧
(2013/03/18 17:10登録)
(東西ミステリーベスト13位)サスペンス感があふれており楽しめました。倒叙形式で物語は展開されますが、犯人が「彼」としか表記されていないところがミソでしたね。それが第2部での「驚き」に繋がります。当時としてはインパクトがあったと思います。(現在では、折原一氏の「叙述」に慣れ親しんでしまっているので不感症気味?(笑))第3部での長女との婚約までは良かったのですが、証拠、自白に至る過程はいただけなかったですね。

No.11 7点 makomako
(2012/12/18 19:49登録)
 なかなか面白かった。三姉妹が順番に登場して各々の特徴がきちんと書き分けられており、章がすすむにつれ違った興味を持てるよう物語の展開は素晴らしいと思います。
 物語の最初は犯人が分からないのだが、途中からは犯人がいかに追い詰められていくかを楽しむといった展開となる。そういった意味ではいわゆる本格推理小説とは異なったお話ではあるが、これはこれで興味深い。
 アメリカの女性はお世辞に弱い(どこの国でも同じか?)ようで、ハンサムな男が下調べを行って近づいたらみんなころりと陥落してしまった。羨ましいような情けないような。
 まあ世の中はこんなものなんでしょうね。
 翻訳ものがあまり好みとはいえない私が読んでも途中から止められなくなったのですから、外国ものが好きな方にはたまらないのでしょう。
 

No.10 7点 E-BANKER
(2012/03/13 22:49登録)
作者23歳の処女作かつ1953年のアメリカ探偵小説最高のエドガー賞受賞作。
海外ミステリーのランキングには必ず登場する有名作。

~2人は学生同士の恋人だった。女性は妊娠しており、男性は結婚を迫られていた。拳銃、薬物、偽装事故と、いく通りかの殺人方法を調べ上げてみた。結局偽装自殺に決めたのだが、遺書のために女性の筆跡を入手しなければならない。自信はあった・・・戦慄すべき完全犯罪を行おうとするアプレゲールの青年の冷酷非情な行動と野心とは・・・~

まずは評判通りの面白さではないでしょうか。
冒頭からしばらくは三人称(彼は・・・)で物語が進行したため、勘のいい(普通?)読者なら、何らかの叙述的なトリックが仕掛けられるのを感じる。
ある一家の3姉妹が順に登場する3部構成となっているが、連続殺人事件が起こる2部の終盤で読者は「アッ」と言わされるはず。
この辺りは発表された年代を勘案すると、実に斬新で読者の心を惹きつける小憎らしい演出だと思う。

ミステリー的な観点でみると、第2部の終了時点で事件の構図が大筋見えてしまうため、第3部が若干冗長に感じるのが難。
「因果応報」というのが第3部のテーマなのだろうが、もう少しサスペンス性というか、欲を言えば「ドンデン返し」的趣向があるとさらに高水準なミステリーにはなったんだろうなぁ・・・
真犯人が弄した犯罪もやや雑だなぁという印象は残った。

まぁ、でもこれはこれでシンプルだし、余計な演出を加えなくても十分に楽しめる作品なのは間違いない。
なかなかお勧め。
(23歳でこれを書いたのは確かにスゴイこと)

No.9 8点 isurrender
(2011/05/05 14:14登録)
確かに、ラストでのもう一展開を期待しただけに、がっかりという思いもある
しかし、あのトリックでの衝撃はそれでも色褪せない

No.8 7点 りゅう
(2011/02/08 20:56登録)
 3部構成で視点をそれぞれ変えた構成のアイデアは、素晴らしいと思います。第1部は犯人視点の倒叙形式で進み、女子学生(3女)が殺害されますが、犯人は「彼」としか表記されず、名前が明かされません。第2部は、自殺説に疑いを持った被害者の姉(次女)の視点で進み、疑わしい人物に接近して追い詰めます。第2部に至って、第1部で犯人の名前が明示されなかった理由がわかり、なるほどと思わせます。第3部は視点が複数の人物に分散されますが、ラストの銅精錬所での状況描写がわかりにくく、犯人の名前が既に明かされていることもあって、盛り上がりに欠けます。犯人が3女を殺害する場面や、次女が疑わしい人物を追い詰める場面は、サスペンス性十分です。

No.7 8点 測量ボ-イ
(2011/01/28 19:45登録)
海外古典作品で固定的評価を受けている作品。
ただ古典といっても、戦後の作品だけに古典といえるか
どうか微妙ですが・・・

でも内容は期待以上の内容で良かったです。何より文章が
読み易い!
構成も最近出版されたものならありきたりかも知れません
が、当時としては斬新なものだったでしょう。
最後の第三部でもうひとひねり(というか、どんでん返し
?)を期待したのにという意見が多いようですが、僕は
特に気になりませんでした。

No.6 7点 kanamori
(2010/07/18 16:54登録)
「アメリカの悲劇」をテーマをしたこういったサスペンスは当時としてもそれほど斬新さを感じなかったと思いますが、三部構成でそれぞれ視点を変えて、物語の様相を一変させるスタイルが目新しかった。
もはや、新本格以降の読者が読んで、感心するようなプロットではないと思いますが。

No.5 5点 あびびび
(2010/03/03 12:11登録)
23歳にデビュー作として世に出したという驚き。美貌の主人公が、お金持ちの女性を財産目当てに狙うストーリーだが、なんと3姉妹と関わる。

その3姉妹による3部構成になっているのだが、2部まではミステリらしい流れでワクワクした。ただ最後はわかり切った部分が多々あり、少しスピード感が鈍った。

しかし、常にランキング上位の名作にはちがいない。

No.4 7点 okutetsu
(2010/02/13 19:37登録)
構成のうまさは現代のミステリにも通じるところですね。
犯人の正体にはアッと言わされました。
ただそれだけに後半のグダグダ感が残念。
もうひと驚き欲しかったところです。
ただ終わり方には満足してます。

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