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ミステリの祭典

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ゴルフ場殺人事件
エルキュール・ポアロ/別題『ゴルフ場の殺人』『リンクスの殺人事件』

作家 アガサ・クリスティー
出版日1939年01月
平均点5.57点
書評数21人

No.21 6点 たかだい
(2024/11/12 23:44登録)
クリスティの作品は「ABC殺人事件」や「そして誰もいなくなった」、「オリエント急行の殺人」といった超有名所しか読んだ事がなかったが、改めて他作品も読んでみようと手に取った1冊
内容は割と地味な感じだが、主人公・ポワロと火花を散らすパリ警視庁の刑事、相棒にして語り手のヘイスティングスと謎の美女など、各々キャラ同士の絡みが濃かった印象
また、さらっと地味とは言ったが、単純なようでいくつかの要素が絡み合った真相は「なるほど」と思わせる部分もあり、内容自体は面白かった
特定の作品に関するネームバリューが大き過ぎるが故に本作はマイナー扱いで不利な立場だが、読んでみるとそんなビックネームに負けないだけの面白みも確かにあると思える作品でした

No.20 7点 みりん
(2024/07/17 00:26登録)
評点が5点台で全く期待してなかったのだが、ふつうに面白い。この人もしかして代表作群が凄すぎて、他のパッとしない作品の評価が霞み&厳しくなりがち?なんとなくロジックを重視する方は合わないかなあと。ポアロが超人すぎて、作者の思いつきをそのまましゃべっているようにしか見えないほど(笑)
複雑な人間関係トリックによる入り組んだ真相が明かされた時の快感たるや。あとベッタベタのメロドラマも自分好みで、読後感も心地よい。

No.19 7点 人並由真
(2023/06/07 17:45登録)
(ネタバレなし)
 今回は、出先のブックオフの100円棚で見つけたポケミス版で読了。数十年ぶりの再読で、前回は創元文庫版だったような気がする。
 犯人もトリックも大筋も忘れていたが、読んでるうちに一部の情報を思い出した。

 本当に初期作、ポアロの第二長編ということもあってところどころ粗削りだが、その分、妙なパワーを感じて面白い。
 はっとなったのは、のちのクリスティーの十八番となる、ミステリ的な趣向を早くもここで使っていたことで、その点では実は『スタイルズ』とはまた別の意味で、非常に重要な作品だといえよう。

 ヘイスティングとシンデレラのラブコメ模様は楽しく、読後、試みにTwitterでこの二人の名前を同時に打ち込んでみると、ファンが結構、キャーキャー言ってるのがわかって微笑ましい。
 そーか『カーテン』で、この二人が(中略)ということはわかるんだっけ。さすがに両作品の情報を、整理して記憶してはいなかった。
 たしかに四十男と17歳の女子の恋愛というのはアレだね。赤川次郎みたいだ。
 
 タイトルが地味な分、こーゆーものは面白いのだろう(面白かったはずだろう)と期待して読んで(再読して)、いろいろと楽しませてくれた作品。大きな記号的なトリックやギミックはないが、結構中身は濃い作品であった。

 話の作りには、ドイル以前の時代の英国伝奇推理小説の主流を感じる。といってもこの作品が書かれたころには、まだホームズは現役だったんだよな。いろいろと興趣深い。

No.18 7点 弾十六
(2021/01/17 19:50登録)
月刊誌Grand Magazine 1922-12〜1923-3 (4回 挿絵ありと思われるが画家不明、連載タイトルThe Girl with the Anxious Eyes) 単行本: 米版Dodd, Mead(1923-3) 英版Bodley Head(1923-5) 原題はいずれもThe Murder on the Links。ダストカバーは米版が特徴的なナイフ、英版は帽子とコートでなんか持ってる髭の男。
早川クリスティー文庫の田村隆一訳で読了。
昔から本作は大好き。敵役の名刑事ジローとか、冒頭に登場する謎の娘とか、ワクワクして読んだ。今、再読してみると、ちと安易で甘めのストーリーだけど結構、工夫が見られる展開が豊富な作品。無邪気なところが非常に良い。
船酔いのくだり(ここでは、またやってるよ、という感じ)とかプリマス急行への言及があり、発表は各短篇(最初にヘイスティングスがポアロの船酔いにビックリしているのは『首相誘拐事件』(Sketch1923-4-25)、『プリマス急行』は同1923-4-4の掲載)が後になっているが、実際の執筆順は、短篇が早いのだろう。アガサさんはクリスティ大尉と世界旅行に行く旅費を稼ぐため、この頃、結構な数の作品(この作品を含め)を書いている。
本作に言及されてる事件の元ネタについて、何処かに書かれていたような気もするが、今はちょっと見当たらない。(2021-1-18追記: Marguerite Steinheil事件(1908年5月)と判明。ネタバレ物件なので読了前に見ないこと。「スタンネル殺人事件」で検索。詳細は英Wikiで。アガサさんは自伝で「関係者の名前はもう忘れちゃったがフランスでずっと前に起きた有名な事件」と書いている。)
トリビアは例によって徐々に埋めます。
(以上2021-1-17記載)
献辞はTo My Husband. A fellow enthusiast for detective stories and to whom I am indebted for much helpful advice and criticism。アーチーも探偵小説好きだったんだね。
p9 「ちくしょう!」と侯爵夫人はおっしゃいました(‘Hell!’ said the Duchess)♦︎お馴染みEric Partridgeの辞書にDating from c1895, it was frequently used in WW1, although seldom in the ranksとある。詳細不明だが、結構、起源は古いようだ。
(以上2021-1-17記載)
p16 ミステリ映画はかかしたことがない(go to all the mysteries on the movies)♦︎英Wikiの“1920s mystery films”に当時のリストあり。もちろん全て無声映画。1910sや1930sのリストもあり。どれも面白そうだ。
p21 mediocrityさんの評にある通り、田村隆一訳は省略版の原文によるもの。gutenberg版では「最近面白かった事件はYardly diamondの事件くらいだ」と手紙の封を切る前にポアロが言っている。<西洋の星>盗難事件(Sketch 1923-4-11)のこと。英Wikiによると米版初版298頁、英版初版326頁とある。クリスティー文庫で完全版から訳し直して欲しいなあ。(2021-1-19追記: 書店で最新のクリスティー文庫、田村義進訳2011をチェックしたが、田村隆一訳と同じ原文のようだ。ポアロとヘイスティングスの会話の調子は義進訳が良い。重ねて言うが早川さん、完全版でよろしく。)
p21 アバリストワイス事件(Aberystwyth Case)♦︎ポアロの語られざる事件のようだ。
p31 ハイヤーで行く(hire a car)♦︎ルノーのType AGかな?
p32 スコットランド人が言う“瀬死者の心の昂ぶり”(what the Scotch people call ‘fey,’)♦︎死や不幸や災厄の予感、というような意味らしい。
p61 千ポンド♦︎英国消費者物価指数基準1923/2020(60.87倍)で£1=8555円。
p79 旅行用の八日巻き時計(an eight-day travelling clock)♦︎1920年代のをWebで見たが結構コンパクト。週一で巻くのでプラス1日分動くのがミソ。
p85 [短刀は]流線型の飛行機のワイヤーでつくられた(made from a streamline aeroplane wire)♦︎Bruntons社のWebページから: Streamline Wires and Tie Rods are used for internal or external bracing on aircraft (wings, tail surfaces, undercarriages, floats etc.)... wherever a load in tension must be carried. 「航空機に使われる流線型ワイヤー」の事のようだ。確かに短刀になりそうなデザイン。英Wikiのカヴァー絵参照。
(2021-1-18追記、未完)

No.17 7点 レッドキング
(2021/01/06 23:32登録)
アガサ・クリスティー第三作にしてポワロ第二弾。探偵も巻き込んだ「顔無し死体殺人」事件企図が、もう一つ別の殺人企図と、更に別の偶然および誤解との複合によって、「変な」二重殺人を現象させてしまう。ポワロが現象を解き明かす丁寧な解釈が実に見事。この現象が「密室」「不可能現象」だったら、クリスティー最高作として、8~9点つけていた。女容疑者にのぼせてしまったワトソン役とのドタバタも大変に面白い。ただ、タイトルが頂けない。
※この人物トリック(顔無しなり損ねだが)、横溝「悪魔の手毬唄」の源流筋なんだろな。

No.16 8点 mediocrity
(2019/12/03 01:46登録)
フランスが舞台だからしょうがないけれど、いつも以上にフランス語が多くて大変だった。今まで読んだものは飛ばして読んでもどうにかなったが、今作は無視すると前後関係がわからなくなることもしばしばあったので、調べざるをえなかった。

あまり評価は高くないが、個人的には今までに読んだ『スタイルズ荘の怪事件』『ABC殺人事件』より好み。推理部分も十分充実していると思うし、それ以外の部分はその2作品より明らかに楽しめた。
ヘイスティングとシンデレラの関係、殊にポワロを押さえつけてしまった辺りは一体どうなるのかとハラハラし通しだった。もう1つの見どころは、ポワロとジローの勝負だろう。最初から敵意むき出しのジローに比べて、ポワロは序盤は感情を表には出さず抑えている。しかし、どんどん感情的になってきて「ジローなんて尊大さで膨らんだおもちゃの風船じゃないか。そして、ジローは私をみくびっているが、私エルキュール・ポワロはその大きな風船を突き刺すピンになるよ」という発言に到ったのを見て、ついに吹き出してしまった。できれば最後の方でもう1回ジローに登場してほしかった。

この作品、どうやら版が2つあるみたいで、最新のペーパーバックよりグーテンベルクで無料で読める物の方が内容が多いようだ。アマゾンの英語レビューで、このペーパーバックは私の持ってる版より1割くらい短い、部分的に1文省略されていたり、場所によってはパラグラフごと抜けている、というようなことを何人かの方が指摘していた。
立ち読みできる1章だけ比べてみたが、実際所々抜けている。和訳版もスマホで2種類立ち読みしてみたが、両方ともやはり省略があった。例えば1章、シンデレラが「私にはイタリアの血が入っている」という記述はどちらにもなかった。また、2章では手紙の前で「どうせまた子犬のことでしょ」とポワロが発言しているが、その少し前で「最近はとことんつまらない依頼ばっかりだ、おしゃれな女性の依頼で子犬探しするはめになった」の所が省略されていたから、なぜ「また」なのか不思議に思うだろう。(何か所か和訳しましたが正確さには自信がないです)

No.15 6点 測量ボ-イ
(2019/02/02 09:41登録)
ゴルフ好きの僕としては、題名に魅せられて(?)拝読。
けれども肝心の内容にゴルフ場がほとんど絡んで来ないのがやや
拍子抜け。
若きヘイスティングスがいろいろやらかしてくれますが、でも
憎めないキャラですよね。
この巨匠の作品にしては、サイトの評判あまり良くないですが、
個人的にはまずまず。

No.14 6点 バード
(2018/11/22 15:14登録)
クリスティ作品の中では佳作といったところ。しかし今回の謎は、私にとってそれほど興味深いものでなかったので6点とする。(読んだ直後は6~7点位でどちらの点にしようか迷った。)
終わりから100ページ前くらいで明かされる、ルノー夫妻の元々の計画はポアロの誘導があったので当てられた。しかし、殺人の犯人はほぼ考える間もなく物語が動いてあっという間に終わってしまった。

本作は殺人犯を論理的に当てられる作品なのかどうか、分からない。探偵に言われりゃなるほどそうか、と思うが。

No.13 4点 虫暮部
(2017/06/16 12:35登録)
 中盤、二つ目の死体の死因が実は……とか、被害者の目論見とか、面白味を感じる部分もあったが、全体としてはそれほどでもない。
 ポアロが、冷酷で邪悪な性格は親子で遺伝する、みたいなこと言ってるのは嫌だな~。

No.12 6点 nukkam
(2016/09/23 00:19登録)
(ネタバレなしです) フランスを舞台にした1923年発表のポアロシリーズ第2作の本格派推理小説です。最初は単純な事件のように思えますが人間関係は結構複雑だし、誰もかもが何かの秘密を抱えているらしいなど意外と難解なプロットの作品です。探偵対決要素を織り込んでいるのが珍しいですが推理合戦(多重解決)レベルにまで達していないのは物足りないです。珍しいといえば中盤で発生した事件をポアロがすぐに解決しているのも珍しい展開ですね。その真相が横溝正史の某有名作と類似していたのにはびっくりしました。ワトソン役のヘイスティングスの暴走ぶりも読ませどころです。

No.11 6点 蟷螂の斧
(2016/07/31 07:09登録)
この時代(1923年)で、このような複雑なプロットを考えたついたことに敬服。しかし、前半に提示される謎が小さく細かいもので、かつ数が多いので、やや読みにくい?。これは、ポアロの着眼点を引き立たせるものではあるのですが、カットしても良かったかも。また、基本構想(メイントリックとなりうる)がうまく機能しなかった感じがしました。つまり、その部分がなくても物語は成立してしまっている。この部分が機能していれば、かなりの傑作になっていたかも?。なお、「アガサクリスティー完全攻略」(霜月蒼氏)の中で、作中のトリックが、発表より約10年後にアメリカの超有名古典作品へ・・・とあり、X、Yに応用されているのか?と期待したのですが、該当するトリックはありませんでした。本作におけるチョットしたトリックであり、「三つの棺」に応用されているのですが、騒ぐほどのものではありませんでした(苦笑)。

No.10 6点 青い車
(2016/03/04 23:18登録)
ポアロ・シリーズ第二長篇。邦題も原題の『MURDER ON THE LINKS』ともに味気ないのが残念。特にゴルフ場を現場にする必然性もないですしね。
内容の方は、トリックの骨格が非常によくできています。何人もの人間の思惑が交錯することで複雑化する事件は実にクリスティー的です。ポアロも重要人物の過去を探り、そこから理路整然と謎を解き明かしてくれます。
ただし、その描き方は後の作品よりも劣ります。他の傑作で見られるような、巧みな人物描写や繊細な伏線はまだ完成されていません。他のサイトでもっと円熟した時期に書かれれば傑作になり得た、という意見を見かけましたが、そこは同感です。
その他には、ヘイスティングズ大尉の恋を読むことができる、というファンには嬉しい見どころがある作品です。

No.9 4点 クリスティ再読
(2016/01/02 22:20登録)
ある意味貴重な作品だと思う。
1つは本作くらいの内容が、1910年代のミステリのスタンダードだったんだろうな、と思わせるような「世の中で言われる探偵小説の書き方に合わせて書きました」感のあるクラシック(古臭いという悪い意味で)なクリスティらしくない探偵小説であること。「スタイルズ荘」がクリスティ「らしさ」みたいなものがちゃんと出てて、しかもそれが今につながる方向性としてうまく機能してたことを考えると、本当に「らしくない」。
クリスティは後にロマンス的要素を無類の手腕で洗練してミステリに組み込むわけだが、本作ではまったくその手腕の片鱗も見えなくて19世紀的メロドラマの定型性を出ない(無実を明かすべくかばわれていた女性が予審に飛びいるとかねぇ)。探偵競争だって「奇巌城」とか「黄色い部屋」で流行った手法のわけだしね(カーも「髑髏城」でやってるなぁ)。ロジック重視のフェアな謎解きよりも逆転・逆転の意外性で引っ張ってるわけだが、それぞれの要素が使い捨てみたいな感じで、読んでて飽きがくるような作品なのがちょいとつらい。しかしそれでも骨董品のような価値がないわけじゃないな。
であと1つの貴重な点は、ヘイスティングスがポアロに逆らうエピソードがあること。ロマンス絡みではあるが、積極的に妨害しようとするんだもの! この点「茶色の服の男」の手記の件なんかよりもずっとウェイト高く、ポアロの名声を本当に高めた次の作品につながるように思うよ。

No.8 3点 斎藤警部
(2015/05/21 10:59登録)
それなりに期待して読み始めたんだけど、最後までずっとピリッとせず、あまり面白くなかった記憶しか無いなあ。

No.7 4点 文生
(2015/03/06 20:06登録)
デビュー2作目にして後年ミステリの女王と呼ばれるにふさわしい物語運びのそつのなさは垣間見られるのですが、ミステリとしては特にひねりもなく凡作の域を出ていません。

No.6 4点 mini
(2014/10/24 09:57登録)
本日24日に早川書房からソフィー・ハナ「モノグラム殺人事件」が刊行される、文庫じゃなくて単行本なので注目され難いかもしれないが、実はこれ新しいポアロものなのである
そう、著作権などの管理団体と思われる英国クリスティー社公認の正統ポアロ後継作なのだ
公認後継作にちなんでという事になると、まぁ最後の作という事で出版上の名目的ポアロ最終作「カーテン」か、あるいは執筆順で事実上のポアロもの最終作である「象は忘れない」あたりを選ぶのが妥当だろうが、どちらも未読なんだよね(残念)
尚、「象は忘れない」の後に事実上の長編最終作「運命の裏木戸」があるがこれはトミー&タペンスものなので対象外
そこでデビュー作でもある「スタイルズ」の再書評も考えたが既に便乗企画で使用しており断念、次善の策でこれにした

マープルが初登場するのはクリスティの全作品中でも初期から中期にかけてなので、初期作はポアロものが中心だと普通思うでしょ、ところがこれが違うんだな
ある程度ポアロが軌道に乗ってからはそうなのだが、最初期のクリスティは迷っていたのかいろいろ試していたフシが有る
例えば「スタイルズ」の後すぐにポアロものの2作目ではなく、長編2作目「秘密機関」はトミー&タペンスものなのだ
第3作目は一応ポアロ再登場だが、その後を見ると第4作「茶色の服を着た男」はレイス大佐、第5作「チムニーズ館」はバトル警視、第6作目でポアロ3度目登場のあの「アクロイド」、この後2作ポアロものが続き順調にポアロに専念かと思うと第9作目「七つの時計」では再びバトル警視、第10作目がミス・マープル初登場の「牧師館」で、第11作「シタフォード」に至ってはノンシリーズだ
皮肉な事にマープルが初登場してから後の方がポアロものの比重が高まっている
これが短編だと初期はポアロものが中心なので、当初は短編シリーズ向けキャラとして考えていたのか?との疑問も有る

私は苦手なスポーツがいくつか有って、中でも嫌いなスポーツがボウリングとゴルフである、要するに腕力を使ったりとか自分の動く範囲が狭くてボールだけがすっ飛んでいく系のスポーツが嫌い
好きなのは自分自身が走ったりして広い範囲を動き回るスポーツで、陸上競技で例えるとトラック競技ならいいけど投てき種目系は全て苦手なのである
したがってゴルフというスポーツに全く興味が無い
ポアロ再登場の長編3作目が「ゴルフ場殺人事件」で、前作「秘密機関」が国際諜報スリラーだったのでまたオーソドックスな謎解き本格に戻したわけである、でもこれ本当にオーソドックスだな(笑)
「スタイルス」ではまだ大胆な仕掛けが施されていたが、「ゴルフ場」はクリスティらしいと言えばらしいのかも知れないが、古臭いトリックといい習作っぽさが抜けていない
いや習作というより前時代的なミステリー小説作法の影響が色濃いと言った方が近いか、「秘密機関」も古臭いしな

No.5 6点 E-BANKER
(2013/07/03 22:04登録)
「スタイルズ荘の怪事件」でデビューした作者&ポワロの長編二作目がコレ。
「ゴルフ場」というタイトルではあるが、単なる死体発見現場というだけで、ゴルフそのものは無関係なので悪しからず。

~南米・チリで巨万の富を築いた富豪・ルノーが、滞在中のフランスの別荘地で無残に刺殺された。事件発生前にルノーから依頼の手紙を受け取っていながら悲劇を防げなかったポワロは、プライドをかけて真相究明に挑む。一方、パリ警視庁からは名刑事・ジローが乗り込んできた。互いを意識し推理の火花を散らす二人だったが、事態は意外な方向へ進んでいく・・・~

僅か二作目としては「スゴイ」とも言えるし、「やっぱり二作目だなぁ」とも言える・・・そんな感覚。
要するに、ちょっと惜しいなという作品なのだ。
ミステリーとしてのプロットは“さすがクリスティ”という水準で、もう安定感十分。
一人の富豪の殺人事件に端を発する事件、関係者の態度や発言に隠された欺瞞から、思いもかけない事件の構図&背景が明らかにされる。
被害者は単なる被害者でなく、過去の事件と現在の事件が有機的に結び付いていく・・・
この辺りの展開はもう名人芸だな。
特に本作では、ヘイスティングスとの会話のなかで、ポワロが自身の推理法というか事件への取り組み方を詳しく解説(?)している場面がところどころ挟まれていて、こういう点でも興味深く読ませていただいた。

プロットとしての問題点は、冒頭から登場するある女性の存在&立ち位置だろう。
この登場人物は果たして必要だったのか? 
一応ミスリードとしての役割なのだろうが、あまりにも白々しくて、正直ミスリードとしてはあまり機能していない。
作者としてはラストのドンデン返しのための「前フリ」が必要だったのだろうが・・・
(ヘイスティングスとの絡みが書きたかったということなのかな?)

作者としてはマイナーな作品扱いだけど、それほど遜色は感じないし水準以上の作品だと思う。
まぁ、敢えて「クリスティならコレ!」ということにはならないだろうが・・・
(ひたすら物証に拘った捜査を行うジロー刑事をこき下ろし、人間心理に基づく推理を行うポワロ。二作目で探偵役のパートナーが登場人物と恋に落ちる展開・・・って何か意味深だな)

No.4 6点 seiryuu
(2010/11/28 17:10登録)
登場人物は多くないのに過去の事件も加わりストーリーがだんだん複雑になっていき、じわじわと面白い作品だなと思いました。
あれだけの失態をしたのに出入り禁止にもならないヘイスがすごいw

No.3 4点 江守森江
(2010/06/22 07:35登録)
マクドゥエル、全米オープン・ゴルフ40年ぶりヨーロッパ勢制覇&宮里藍、米本土初勝利記念書評。
小学生の頃からゴルフを嗜んでいたので「ゴルフ場」のタイトルにつられ、図書館の同じ文庫棚にあった「ABC〜」と共に借りた、私的な大人向け翻訳初体験作品。
小学生だった自分には人間関係や外国の風習が理解出来ず大人向け翻訳の壁は厚かった。
この体験が翻訳アレルギーを齎した事はミステリ読みにとっては非常にハンデとなったと最近実感する。
以前、NHKで日本アレンジのドラマが放送された時に再読したが、ポアロの良さより周りの滑稽さを楽しむクリスティーにしては緩い作品だと思った。
ポアロに関しては、原作をどんなに端折っていてもドラマでスーシェを楽しみたい。
それにしても、もう少し邦題を工夫して付けてくれれば翻訳アレルギーに見舞われずに済んだとの積年の恨みがある。

No.2 5点
(2010/02/09 21:06登録)
ポアロもの第2作は、送られてきた事件依頼状から始まり、ポアロが出向いて行った時にはすでに依頼人は殺されていたという、いかにもな書き出しです。進んでいた時計、花壇の足跡、落ちていた手紙、ドアと鍵の問題等、手がかりを矢継ぎ早に出してくるのも、典型的な古典派ミステリという展開です。ちょっとパターンにはまりすぎているような気もしますが。
本作最大のトリックは、実は3/4ぐらいまでで明かされてしまいます。で、その後はというと『アクロイド』どころか『スタイルズ』に比べても特筆すべきアイディアがありませんし、犯人を特定する論拠も弱く、最後の謎解き部分があまり印象に残らないのです。第2の死体が出現した経緯も説明されないままです。まあ、将来のヘイスティングズ夫人が大活躍するサスペンス場面はちょっとした見どころと言えるでしょうか。

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