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ミステリの祭典

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中途の家
エラリイ・クイーン 別題『途中の家』

作家 エラリイ・クイーン
出版日1956年01月
平均点6.84点
書評数25人

No.25 5点 文生
(2024/03/29 14:13登録)
中途の家という殺人現場の設定は面白く、裁判シーンなどもまずまず楽しめたのですが、犯人を指摘するロジックにはあまり感心できませんでした。なかには鋭い指摘もあるものの、どうしてもこじつけめいた推理が少なからず含まれている点が気になります。自分がロジックものが苦手なのは、こうした断定できない根拠を積み重ねて犯人を特定してしまうところにあります。ロジックの切れ味自体も『オランダ靴の謎』などに比べると劣る印象で、全体的な評価は低めです。

No.24 9点 ことは
(2023/04/02 01:31登録)
角川文庫の新訳で再読。
初期のクイーン作で唯一再読していなかった。それは初読の印象がよくて、再読してつまらないと「良い思い出が……」とがっかりすることを懸念してだったのだが、杞憂だった。推理とドラマが非常にバランスのいい傑作。
冒頭の事件は明快。視点人物がリアルタイムで遭遇するので、フランス、オランダと比べると、捜査の段取りも少ない。かわりに登場人物たちのドラマが語られていく。(フランスのある人物と比べるとなんと違うか)
中盤、法廷闘争をはさみ、サスペンスと人物ドラマが展開し、名探偵に啓示を与える手がかりが出たところで、読者への挑戦。
解決編の推理は「そこから推理を紡ぐのか!」思わされるもので、実に鮮やか。面白い!
推理部分が魅力的なのは、推理の手がかりが明快なところが大きいと思う。作品によっては、些末で記憶に残らない描写をもとに推理をすすめる作品もあるが、本作の推理の手がかりは、読んできた読者なら必ず覚えているものなので、論理展開を追うときにストレスがない。
マイナス点と思うのは、第4部の展開がやや安直なところだが、重要な手がかりを最後に出すための策ととらえて、目をつぶろう。
クイーンのベストをあらそえる傑作だと思うが、XやYと比べて分が悪いのは、全体を貫く趣向が弱いとこかな。Xのあれや、Yのあれに比べると、「中途の家で殺された男」という謎の提示以外に”趣向”と呼びたいところがないのは、やはり弱い。
他に印象に残ったシーンは、中盤の面談のシーン。ここだけ、他に比べて情景描写が細かく、登場人物の心理がせまってくる。リーが力を入れた場面なのだろうか?

No.23 6点 いいちこ
(2021/08/18 19:52登録)
犯人特定のプロセスにおける論理性の高さは、相変わらず出色のデキであり、それだけなら7~8点に相当する。
ただし、こうしたプロットを成立させている舞台設定は異様であり、それに何らの説明も付けられていない点を重く見て、大きく減点

No.22 6点 葉月
(2020/10/02 22:41登録)
中盤の裁判のシーンが最もサスペンスフルで楽しめました。その分裁判後の後半はかなり落ちてしまう印象で正直最後の謎解きまでは退屈で仕方ありませんでした。

No.21 8点 ミステリ初心者
(2020/08/25 18:26登録)
ネタバレをしています。

 "国名○○+秘密"というタイトルではなかったため、なんとなく読んでいませんでした(とはいえ、国名シリーズを制覇しているわけではなく、つまみ食い的に読んではいますが)。しかし、国名シリーズでも屈指のフェアさと論理性を兼ね備えた名作でした! ページ数が結構あり、ビルとアンドレアの恋愛パートが冗長に感じられるところもありましたが、全体的に読みやすく、不満はあまりありません(下に書いてますが(笑))。

 非常にフェアなため、やや犯人がわかりやすすぎるとは思います。しかし、論理的な犯人当てというのは犯人が犯人臭いことよりも、犯人以外が犯人ではない理由のほうが大事だと思っています。犯人ではない理由も読者に推測が可能で素晴らしいです。不満点もありますが(笑)。意外な犯人を演出しようとし過ぎる他作品より100倍は好みです。青崎有吾さんの小説もこれぐらい論点をわかりやすく書いてくれるとよいのですが(笑)。
 私は何回か読み直し、ほぼほぼエラリーの推理を当てる事ができました。実は、犯人が一番犯人らしい犯人すぎて絶対に外していると思い、フィンチ以外の人物の検証をしまくりました(笑)。

 以下、好みではなかった部分。
・犯人が女性でない理由がやや不満。"犯人が女性であれば自身の口紅をペン代わりに使っただろうし、アンドレアの口紅を使うという発想も出たはず"というのはどうでしょうかね? また、女性がパイプをやったっていいはずです。さらに、ギンボール夫人がパイプをやらないという描写はなかったような…?(勘違いならすいません)。
・アンドレアの犯人でない理由は、心理的アリバイだと思います。クロロホルムを嗅がされたとき、近くにクロロホルムがしみ込んだハンカチ的なものが落ちていない(たぶん)ので、狂言ではないとは思いましたが。まあ話の流れ的に犯人ではありえないのですが(笑)。
・題名は"スウェーデン燐寸の秘密"のほうが絶対に良いとおもう(笑)。

No.20 7点 ◇・・
(2020/08/01 16:38登録)
探偵エラリイの推理によって正体を暴露された犯人が男性なのか女性なのか判明する瞬間をギリギリまで引き延ばしてみせる。日本語と比較して男言葉と女言葉に差がない英語の特性を利用したギミックだけに、その部分を邦訳で読むといかにも不自然だが、むしろその不自然さこそが図らずも、クイーンの執念が尋常の域ではないことを逆照射する。事件の真相を限りなく読者の目から遠ざけようとする執念には恐れ入る。

No.19 4点 レッドキング
(2019/07/26 08:43登録)
「もしAが女ならばAは口紅を持ってる」「もしAが女ならばAはパイプを吸わない」・・こんなのロジックとして「あり」か? 最初から一番くさい奴が犯人で終わったが、一歩前のダミー犯人の方が面白かった。
「・・僕らは推理小説の中の登場人物ではないし・・」には笑った。明らかに「三つの棺」の「わしらは皆、推理小説の中の登場人物なんだから・・」への返しネタ。
ところで、あの凶器の指紋だが、あんなもん残ってたら我が日本の裁判では、間違いなく有罪の「疑い得ない」証拠とされてしまうだろう。弁護士が必死に由来の「ロジック」で反証してみても。

No.18 7点 虫暮部
(2018/09/10 11:08登録)
 良い意味で読み易くて面白かった。
 しかし有罪判決が出るほど彼女は疑わしかっただろうか? ストーリー展開を優先した作者が検事や陪審員を少々馬鹿に設定した、と言う印象。また、厳しく見るなら、現場に遺留品を残すのはやはり無用心であって、“それを回収出来なかった理由”が欲しかった。

 因みに、カーター・ディクスン『プレーグ・コートの殺人』には、語り手の婚約者がアレを嗜むとの設定がある。

No.17 9点 蟷螂の斧
(2018/04/16 10:19登録)
裁判、恋愛、ミスディレクション(以上、大の好み)+著者の得意なロジックとくれば9点献上せざるを得ない(笑)。感心した点は、ダイイングメッセージからの反転(一番びっくり)、ロジック面では犯行に使用されたナイフの先にコルクが刺さっていた理由と口紅の関係ですね(これには参った)。著者の自薦ベスト3とのことですが納得。私にとってもX・Yより上位にランクする作品となりました。

No.16 7点 ねここねこ男爵
(2018/01/30 22:54登録)
新訳版を強く強くおすすめします。新訳版のあとがきにもありますが、旧訳は趣旨を理解していないネタバレに近い迷訳が多く、魅力を大きく損なっています。

個人的には「災厄の街」よりこちらの方が上。必要十分条件でなく、必要条件を重ねに重ねた上十分性の検証は推理によってではなく実証にて行われるという点で違和感を感じる人は多いでしょうが、これはこれで。

以下ネタバレ。
特に説明無く単独犯ということになっているがこれはどうなのか。加えて被害者の一言がミスリードにすぎる。衝撃成分の確保のため仕方ないのかもしれないが…。贈り物の描写が見え透いているのでそれを汲んでくれということなのだろうが、「主犯男実行犯女、男の影響で女もアレを嗜む」でも矛盾しないのではと思う。

No.15 7点 クリスティ再読
(2017/07/17 23:43登録)
一言で言えば良作。中盤に裁判を持ってきてうまく小説の核を作り、その後の落ち着いたところで最終的な手掛かりを得るための恋愛&駆け引きがあり、最後に関係者一同を集めた現場再現...と構成面でうまくまとまった作品だと思う。作者お気に入り、というのは小説とパズルのバランスがうまく「手にはいった」手ごたえを感じたんだろうな、と思わせる。
皆さんはマッチのロジックばかり指摘するけど、二重生活をする被害者が「どちらの人格として殺されたのか?」というエラリーが指摘する問いが小説としてうまく解決されているのに、評者は一番感心した。これがこの評点の理由だね。後期的な「人間的な謎」についての関心が本作で出ているわけだ。「中途の家」というのは、クイーン自身にとっても国名からライツヴィルへ至る「道半ばの家」ということで、狙ったわけではないのだろうけども、作家論的にも面白い位置にある。
本作評者の手元にあったのは、1967年の創元の5刷。子供のころ古本屋で買った50年前の本だよ...訳は井上勇なんだが、意味不明な訳文がたまにある。困ったな。けど、67年の時点でさらに50年前の本、と考えたら第一次大戦直後大正時代の本なので文章習慣とかかなり違うことを考えたら、つい最近になって新訳が増えたという、海外ミステリ受容の長期的なサイクルみたいなものを考えてみても面白いのかな。

No.14 7点 あびびび
(2016/09/18 02:03登録)
ちがう視点から犯人はこの人しかいないと思ったが、後から考えると、自分が難しくしていただけで、意外と事件は単純だったなと思う。

それだけ入りやすくて、読みやすいミステリだった。

………

(ネタばれ)…自分的には、保険会社の親切な秘書が犯人とデキていて、犯人の指導のもとに役割を果たしていたものと考えていた。なにしろ、犯人は「女性」だったから。

No.13 7点 nukkam
(2016/07/29 08:40登録)
(ネタバレなしです) 国名シリーズの最終作「スペイン岬の秘密」(1935年)に次いで1936年に発表された本書から「ドラゴンの歯」(1939年)に至る5作品はクイーンの第二期作品と位置づけられています(もちろん異説もあります)。もっともこの第二期の5作品は作風的に共通部分は意外と少なく、例えば本書と探偵エラリーが女性にメロメロ状態になっている「ハートの4」(1938年)では全く雰囲気が違います。どうもこの第二期はパズル・ストーリーの書き手として壁にぶちあたったクイーンが新たな作風開拓のために色々試行錯誤していた時期と言えそうです。さて本書の感想ですが人物描写が類型的ながらも人間ドラマを意識したようなところに新たな工夫を感じさせます。その一方で国名シリーズでの論理的な謎解きへのこだわりもまだ健在で「読者への挑戦状」も用意されています。過渡期の作品というとどうも半端な印象を与えそうなので国名シリーズスタイルに新たな工夫を加えた作品と誉めておきましょう(笑)。

No.12 9点 青い車
(2016/02/20 22:12登録)
散々言われていることではありますが、初期のクイーン作品より人物描写の深みがぐっと増しています。それに加え、中期以降薄れていったパズラーの魅力も損なわれることなく盛り込まれた、非常にバランスのいい作品。個人的に国名シリーズのAクラスの作品群に匹敵する傑作として推したいです。マッチ、コルク、ナイフといった何でもなさそうな物証から思わぬロジックで犯人の特性を導き出す推理は、最初期のたとえば『フランス白粉』『オランダ靴』を思わせます。特にマッチの本数から、当然付随すべきあるものの存在について考察する推理には感動を覚えました。タイトルがまえがきで触れられた『スウェーデン燐寸の謎』でもまったくおかしくないほど上質の本格推理小説であり、国名シリーズが気に入った、という人に是非お勧めしたいです。

No.11 7点 makomako
(2016/02/16 21:24登録)
 こんな作品の犯人を理論的に見破ったなんてすごい方もおられますねえ。私は読者への挑戦のところではたと考えてみたのですが、全然犯人は分からず(まあいつものことですが)、回答となるエラリーの話を読み進み、犯人が死んでしまったところでもまだよくわからずという情けない読者でした。
 作者にとってはうまく騙され、さらに次も読んでくれるのですから、良い読者ということとなるのでしょう、と思っていることとします。
 終わりは余韻がありなかなか素敵なのですが、今回のエラリーはことに理屈っぽく感じが悪い。もともと好感が持てるというほどのキャラクターではないのですが、本作品では今まで読んだ作品と比べてもだいぶん悪い。さらに初めのほうに出てくる警察署長も相当嫌なやつで、読み始めのあたりでは妙に感じの悪い同士が意味なくぶつかり合っているようで、ちょっといただけない。
 それにしてもクイーンはよくここまで精緻な小説をたくさん書けたものだと感心します。

以下ネタバレ

 推理小説として読めば犯人の追及も理論的で素晴らしいのですが、この犯人まったく魅力がないように書かれている人にずっと惚れていたなんて、あとで考えると変だなあ。

No.10 4点 斎藤警部
(2015/08/11 13:11登録)
世評も良く、かなりの期待を載せて読んでみたら、好みに合わず。
ただ、よく出来たA級推理小説ではあるように思えます。

No.9 6点 HORNET
(2015/01/17 20:48登録)
 国名シリーズ以外の作品では最も有名(?)なカンジだから国名シリーズ制覇を待てずに読んだ。不可解性満点の事件の発生からクイーンワールド全開で、もちろん大いに楽しめた。
 がしかし、自分が真相を看破したからそう思うのか、クイーン作品の中でも評価の高い作品、という期待に見合う「そういうことだったのか!」はなかった。いわくありげな部分をやたら量産して読者を煙に巻くようなことをせず、無駄のない展開でありながらきちんと伏線が隠されているのがクイーンのうまさ。だが、今回は真相に結び付く場面ではすぐにピンときてしまった。それがわかればそのことから直接示される人物は一人しかいないので、犯人はすぐにわかってしまった。
 まぁ、ロジカルな仕掛けが最大の魅力のように言われるクイーンだが、私はそれだけでなく作品世界自体が好きなので、期待外れとかは全く思わなかったが。

No.8 6点 ボナンザ
(2014/04/08 17:30登録)
国名シリーズ以外では最高の傑作。
様々な要素を詰め込んだ実験作。

No.7 7点 E-BANKER
(2013/11/17 16:03登録)
国名シリーズからライツヴィルシリーズにつなげるための、まさに「中途」の作品として有名な本作。
これまでよき“相棒”だったクイーン警視も登場せず、エラリーが孤軍奮闘。ニューヨークとフィラデルフィアに挟まれた「中途の家」に関する謎を解く。

~ニューヨークとフィラデルフィアの中間にあるトレントンのあばら家で正体不明の男が殺された。その男はいったいどこの誰として殺されたのか? 美しいフィラデルフィアの人妻とニューヨークの人妻を巻き込んだ旋風のなかに颯爽と登場するクイーンは、「中途の家」と中途半端な被害者の生活からいかなる暗示を得て、この難事件を解決するのか。美と醜、貧と富の二重性。ひとりであってふたりの被害者という異常な設定のもとに会心の推理が進行する~

なかなか味わいのある良作、という読後感になった。
国名シリーズでは、NYという大都会を舞台に、劇場や百貨店、病院、競技場といった一種の閉鎖空間で殺人事件が起こり、クイーン父子が華々しい活躍をする・・・という派手めな印象だった。
それが本作では一変。
トレントンという地方都市のあばら屋という地味な舞台設定となった。

終盤まで、エラリーの捜査過程というよりは、法廷をはじめとする登場人物たちの動きが中心となり、エラリーの推理が開陳されるのは、「読者への挑戦」が挟まった後の終盤以降。
そこでは、真犯人足り得る6つの条件が提示され、容疑者ひとりひとりをふるいにかけ、消去法が試みられるなど、従来の国名シリーズの名残ともいえる展開。
燃えカスのマッチに関するロジックもクイーンらしさ全開っぽくて良い。

しかし、本作への評価はそういういわゆる従前のクイーンっぽさではなく、パズラーミステリーからの脱却を図り、エラリーを事件の渦中に飛び込ませることとした作風の変化についてなのだろう。
ただし、ライツヴィルシリーズほどその辺が徹底されていないところが、まさに「中途」の作品という評価に落ち着く。
個人的には好きだけどね。
(作者が本作を好きな作品のひとつとして言及したことは有名だが、何となく分かる気がする・・・)

No.6 6点 りゅう
(2011/12/11 08:17登録)
 相変わらず、井上勇氏の訳は読みにくく、序盤は特に読み進めていくのに苦労しました。被害者の意外な二重生活が判明してからは、意外な事実が次々と明らかになり、引き込まれる展開でした。「災厄の町」もそうでしたが、法廷場面は面白く、読みやすく感じました。肝心のロジックですが、やはりこじつけ感は拭えません。真相説明で、エラリーは犯人の9つの特徴を挙げて絞り込んでいるのですが、最後の2つを除くと推測の域を出ず、最後の2つの特徴も犯人を絞り込むだけの十分条件とは言えません。特に1番目の特徴をエラリーは絶対的な条件として論理を進めているのですが、この特徴を導き出した物証とその特徴との関連性に関しては、現在の読者から見れば全く必然性を感じないでしょう。

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