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ミステリの祭典

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葬儀を終えて
エルキュール・ポアロ

作家 アガサ・クリスティー
出版日1976年04月
平均点7.00点
書評数28人

No.28 5点 take5
(2022/09/23 19:29登録)
斎藤警部さん他幾人かが述べている通り、
家系図がミスリードの元としても機能しています。
私の癖でこういう作品は右手の指を
家系図と表紙裏の人物一覧の両方に突っ込んで
読み進めるのですが、
ミスリード防止に役立ったかなあと。
疑問なのは犯人の動機に対して行動の整合性がとれていないと感じます。
まあ殺人とはそういうものとも言えますが。
折原一さんはこれがベストワンだそうで、
私のクリスティランキングでは、、、
選外ですねえ。
まあ好みなので。

No.27 5点 虫暮部
(2022/09/21 12:31登録)
 メインのトリックは面白いし、アレに誰一人気付かないこともあり得ると思う。しかし犯人の心理や行動が今一つ不自然で、作者は相応しい状況を設定し切れていないのではないか。
 トリックを使ったせいで → ポアロが召喚され → 真相が暴かれた。皮肉な因果関係が本作は特に際立っている。

No.26 8点 まつまつ
(2020/10/17 23:31登録)
何?この犯人は!全然ミステリの枠にはまっていないじゃないか!低評価の方はそう思っているに違いない。しかし、これがクリスティの妙技。自分はそこに唸った!さすがクリスティ、この作品は、ミステリを100作品以上読んでいる方には新鮮だと!特に、テレビドラマの最後、犯人がもらす究極のセリフで、効果倍増する。一回見てください。

上から目線ですみません。

No.25 7点 斎藤警部
(2020/10/16 19:55登録)
「だって、リチャードは殺されたんでしょう?」 なる台詞の味わい深さよ。。。これに尽きるんじゃなかろうか! んん~そうねえ、レドヘリと言えば聞こえも良かろうが、ちゎっと無駄が多過ぎひんかのう、アレの。。とは思うんですけどね。。 でも死にネタがこんだけ豊富だからこその、真相隠匿にはなってるわけで。。 芸術ってのは、罪深いもんなんですねえ。。。。 いっけん地味な物語ではありますが、後からじわじわと迫り来るものがありますよ、特にその、犯罪動機の強さとリスクのやばさとのバランスだかアンバランスだか。。 登場人物一覧には入ってなかったけど、老獪な私立探偵ゴビィ氏の造形は実に味わい深かった。 いっやー、いかにもアガサクらしい、人を騙すニクい作品!  んで最後に、この家系図、アンフェアやろ!(笑) なんちゃって。。。。

No.24 7点 ミステリ初心者
(2020/09/11 01:27登録)
ネタバレをしています。

 今回は少し読みづらさを感じました。非常に多くの登場人物にくわえ、事件としては地味な(個人的に)展開が続きます。殺された方法を議論するでもなく、登場人物もたいていアリバイがない。みんな金が欲しいので、誰がリチャードを殺したとしても不自然ではない。盛り上がり所がよくわからず、なかなかページが進みません。しかし、もう私はアガサ・クリスティーの術中にはまっていたわけです(笑)。

 ポアロが犯人を明かしたとき、これまであった伏線が見事に回収され、視点が180度変わってみえる快感はアガサ作品特有のすばらしさですね。思えば作品の雰囲気の遺産争い的なもの(家系図なども含めて)も、ミスリードだったわけですね。本当に殺人事件だったのは第2の事件であり、口封じに見せるなんてかなり大胆です。

 以下、不満点。
・犯人の行動は大胆で虚を突かれましたが、かなり賭けなのではないでしょうか? 私もうっすら"誰もコーラを認識できないのでは?"と思いましたが、誰が覚えているかもしれません。いまいち成功するとは思えないのですが。
※追記:コーラに化けた人間が、またその家族の元へ行くのっておかしくないですか(笑)。
・ヒ素入りケーキは結構怪しいと思ってました(笑)。それでも私は犯人から外してしまったわけですが。致死量以下の毒を飲んで容疑者から逃れるという展開は、ミステリにおいてよく見ます。しかし、これも致死量の表現があいまいですよね。せめて、すべて食べたら絶対に死に、半分残したら絶対に死なないぐらい書いてほしいです(実際にはそうではないにしても、ミステリ的ヒントとして(笑))

No.23 7点 レッドキング
(2019/08/20 06:21登録)
富豪一族の遺産相続をめぐる連続殺人のごとき展開にも関わらず、もっと何か「奥のありそな」ひんやりとしたホラー風味。「どいつもこいつも『怪しげ』に描かれてるなあ」「逆に、犯人この中にいないんじゃね?」「でもどうやって話まとめるんだ?」ときて「え? 犯人それえ?」となる。回り道一捻りされた「意外な真犯人」だった。
※「・・女はあまり親切ではありません・・」女流作家が書くと変に説得力があり・・

No.22 5点 ボンボン
(2018/03/29 22:38登録)
(ネタバレあり)
どうも、この作品とは馬が合わなかったようだ。犯人の特殊さとしては面白いのかもしれないが、そのほかの関係ないことが変に思わせぶりにたっぷり描かれ過ぎていて、わかるわけないし、最終段階で放り投げたくなった。
ポアロは、ほとんど何もしてない(元気がない)。第一、メインの犯罪について、まるで説明がない。
とはいえ、全体の構造がまるっきり大回転する迫力はさすが。犯人の動機もよく考えれば、境遇やら身分(?)の限界やらへの怒りが被害者に向かってしまったのかなあと理解はできる。また、大勢の親戚一同、使用人その他の皆さんの個性の書き分けが楽しい。まあ、大多数の人は、結局全然関係ないことになってしまうのだが。それにしても、スーザンの夫の意味の分からなさだけは、どうにも腑に落ちなかった。

No.21 6点 いいちこ
(2018/03/06 15:26登録)
プロット全体の重要な前提となる、ある事実が判明した瞬間、プロットが一挙に反転し、真犯人が特定されるという構成の妙は買う。
しかし、犯行の動機や目的に比して、その手段があまりにもリスキーであり、それが全く露見しなかったことも含めて、リアリティが感じられない。
真相解明に至る推理のプロセスにも疑問が残り、世評ほどに高く評価することはできない

No.20 2点 通りすがりのもの
(2017/03/25 19:01登録)
書評は絶賛の嵐だが・・・・・・。
クリスティーは数々の斬新なアイデアを発明しただけではなく、多作にも拘わらず、作品の平均点が非常に高い作家であることを高く評価している。
しかし、中には失敗作もある。
本作品はやりすぎのあまりに失敗、という典型的な作品。
この作品の真相は実に意外である。
それは、犯人がやらなくても良いこと、正常な思考力の持ち主であれば絶対にやらないであろうことを散々やった挙句の意外、ということに尽きる。
犯行動機と犯人がやったこととの乖離がひどすぎる。
たとえるなら、家に侵入したネズミを殺すために、家全体を爆破したような話だ。
この犯人が何のためにこんな犯罪を実施したのかを、高評価した人は理解したうえで評価しているのだろうか。
この犯行動機であれば、こんなに危険かつ面倒くさいことをしなくても、もっと簡単に解決する方法がある。
さらにひどいのは、ある事実に誰も気づかなかったという設定、そして、それをあてにした犯人の無謀すぎる計画。
発覚したら一発でアウト。まともな思考力の持ち主であれば、そんなことは絶対にしない。
ヘレンが不思議に思ったことに基づくポアロの推理もぱっとしない。
唯一優れているのは、犯人のある発言の矛盾を突いたポアロの指摘だけ。

No.19 8点 ALFA
(2017/03/16 10:10登録)
お屋敷、富豪の死、遺産相続、連続する死者、と絵にかいたような古典本格派ミステリの構成。
しかも開始早々、たった一言のセリフでいきなりミステリモードに突入する。
比較的後期の作品のわりに人間ドラマの要素が少ないので落ち着いてフーダニット、ホワイダニットが楽しめる。登場人物がいささか多すぎるが。
どの作品でもそうだが、現実世界のリアリティとミステリ内のリアリティとの距離をどうとるかによって楽しみ方は変わってくる。現実寄りにリアリティを設定すると、この犯人がフェルメールを換金することは全く不可能だから、この作品は評価できなくなる。同様に入手方法としてこんな仕掛けをするかという疑問もありうる。そして例のトリック、ミステリではおなじみだが、現実ではまず使えない(厳密な意味では)。
私はここでは、いずれもミステリ内のリアリティ基準としてアリとする。ただしクリスティも多用する例のトリックは作品によって、またその前提条件によって評価は変わってくると思う。
なお、デヴィッド・スーシェ主演のドラマ版ではストーリーが若干改変されていて、個人的にはより楽しめた。
細かいところでは、フェルメールがレンブラントになっているし、きわめて礼儀正しい犯人が最後の最後にタガが外れたような壊れっぷりを見せる。鬼気迫る演技で見ごたえがある。
ドラマ版もおすすめ。(こちらは10点)

No.18 6点 nukkam
(2016/08/27 09:12登録)
(ネタバレなしです) 1953年発表のポアロシリーズ第25作はポアロの出番を控え目にしてアバネシー家の人々が織り成すドラマを中心にしたプロットになっています。謎解きとしても凝っていて、メイントリックにはちょっと無理もあるかなとは思いますがこのトリックが成立することによってある前提条件が大きく変わってしまうのが見事なアイデアです。多くの方がご講評で賞賛されていますがまさにミスリーディングの見本と言えるでしょう。1950年代のクリスティー作品の中で高く評価されているのも納得できます。

No.17 7点 青い車
(2016/04/27 22:32登録)
 メイン・トリックとそれに伴うミスディレクションの巧みさはクリスティー作品中随一。わかってしまえば実にシンプルな話なのに、読んでいる間はそれを悟らせません。そういう意味では『ナイル』に近いところがある作品といえるかも。
 それにも関わらず7点に留めたのは、ロザムンド、スーザン、マイクル、グレゴリー、ジェームズといった主要人物を頭の中で整理するのに時間がかかり、なぜか作者の小説にしては珍しく読みづらさを感じる部分があったためです。

No.16 9点 ロマン
(2015/10/20 12:00登録)
大富豪の葬儀を終えて、遺言公開の場で発せられた「だって、リチャードは殺されたんでしょう?」この鮮烈なひとことがすべてを支配する。大胆かつ周到に構築されたミステリ。本作の素晴らしいところは「トリック」が「ミスディレクション」であり「伏線」であり「手がかり」でもある不可分な物語構成にあると思う。老獪なクリスティーは更にその語りの中に罠を仕込む。意外な犯人にも文句なし。実に巧い。傑作。

No.15 8点 HORNET
(2015/10/12 08:22登録)
アバネシー家の当主リチャードの、病気療養中であったとはいえ、あっけない突然の死。その葬儀の席で、末の妹のコーラが無邪気に口にした一言―「だって、リチャードは殺されたんでしょう?」・・・すると次はそのコーラが惨殺される。不信を抱いたリチャードの親友でもある弁護士は、ポアロに真相の究明を依頼する—

 物語が進むにつれて輪郭が明らかになっていくリチャードの親族の人物像が、さらに謎を深くしていくとともに、一方で次第に真相に近づいていく予感でゾクゾクする。ヘレンが葬儀の場で感じた「違和感」に気付いた場面は読んでいて背筋が寒くなった。

 見事にしてやられた。やはりクリスティは天才だ。

No.14 8点 makomako
(2015/07/26 08:10登録)
 登場人物がやや多いが、表に系図と人物像が載せてあるので読むのに苦労はなかった。
 意外な犯人、巧みな伏線など過不足なくくわえているのに(しかもこれが伏線ですよといわんばかりの書き方!)犯人は全然わからず、見事にやられました。
 こういった内容であると途中で緩むと急に面白くなくなるのだが、本作品はそういったところもなく、登場人物もあまり極端な人間はおらず(最終的には変な人間だが、まあ変でなければこんなことはしないが)、読んでいていやな感じは全く受けなかった。
 クリスティーの作品の中でも好きなもののひとつです。大変面白かった。

No.13 7点 了然和尚
(2015/04/29 12:43登録)
10年ぐらい前に、ドラマ「名探偵ポワロ」で本作が放送されたので、見る前に読んだ時以来の再読でしたが、犯人や絵に絡むその動機は覚えていたのですが、なぜかメインの入れ替わりトリックはすっかり忘れていて、それなりに楽しめました。富豪殺人疑惑にかかわるすべての人物や事象がカモフラージュの捨て駒とは、相変わらず大胆な構成で、手抜き感がまったくありません。

No.12 9点 クリスティ再読
(2015/03/29 14:58登録)
さて傑作の森に足を踏み入れますか。
評者にとって「クリスティってスゴいなあ」と最初に感じたのは、「アクロイド」でも「そして誰も」でも「オリエント」でもなくて、この「葬儀を終えて」である。

要するにこれ「ミステリを読む読者」が内心「ことあれかし」と期待していることについての「ウラ」を狙った若干メタな作品という読み方ができるんだよね。疑惑は隠れた犯罪であって欲しいし、犯罪は出来心ではなくて綿密に考え抜かれた冷酷な計画殺人であって欲しいし、殺人は1件にとどまらず残忍な連続殺人であって欲しい...そういう読者の隠れた欲望を逆手にとったネタに高評価をしたいところだ。

だから、最後のヘレン殺害が未遂に終わったことさえも、実はちょっとしたレッドへリングになっている...と読めば、実にきめ細かい仕掛けではないだろうか....さらに評者の琴線に触れた最高のポイントを一つ。ギルクリストの毒殺が未遂に終わった理由である。「結婚式のケーキを枕の下に入れて寝ると、未来の夫の夢を見るという....あの年でこんなことをするのが恥ずかしくって、私たちには黙っていたんですね...」これぞクリスティ。

No.11 8点 sophia
(2014/05/30 22:39登録)
ポアロシリーズ最後の名作。
これ以後のは正直凡作ばかり。

No.10 7点 ボナンザ
(2014/04/08 17:40登録)
意外にも犯人を外してしまった・・・。
隠れた名作だと思う。

No.9 9点 蟷螂の斧
(2013/10/21 17:59登録)
解説は折原一氏。氏のクリスティ・ベスト1とのこと。読み終わった瞬間、「さすがクリスティ、うまい!」と思いました。一氏のベスト10の中にも未読の作品があり、今後の楽しみとします。



                                                            (以下ネタバレあり・注意)自宅の近隣の夫人とは顔見知りで、挨拶をする程度です。仕事上、ある会社を訪問した時、女性から「○○さん」と声をかけられました。見ず知らずの女性なので、きょとんとしていると「お隣ですよ」と言われましたが、その段階でもまだわからず「△△ですよ」と名前を言われ、初めて近隣の夫人とわかりました。普段着とは違い制服を着ており、化粧も違い、まさかその会社にいるとは思いもよらなかったことから大変失礼なことをしてしまいました。こんな経験があるものですから、本作のプロットは許容範囲ですね(笑)。なにしろ、フェルメールですから、今だったら値段は見当もつきませんね。                                                                     

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