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ミステリの祭典

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ボンボンさんの登録情報
平均点:6.51点 書評数:185件

プロフィール| 書評

No.185 5点 ししりばの家
澤村伊智
(2020/02/26 00:11登録)
ホラーに様々な家庭あるあるをリンクさせた、意外と野心的な作品かもしれない。
コミュ障害のひきこもり、守るべき生活もないのに女は家を守れと言われる主婦、長時間労働の夫、虐待や浮気や介護まで、家庭の問題がこれでもかと詰め込まれている。そのストレスがもう化け物だね。
事の発端となる橋口君家族の顛末、そして果歩のその後。ホラー以上にいやな話だ。
敢えてなのだろうが、映画的バトルシーンが長く、少ししつこいかな。


No.184 8点 白昼の悪魔
アガサ・クリスティー
(2020/02/12 22:32登録)
丁寧に作り込まれた良作だと思う。気になる出来事や発言が散りばめられていて、チェックポイントに赤線を引いていったとしたら、全編ページが真っ赤になるのではないか。ポアロが最後にそれらを豪華にまとめあげてくれるのが快感だった。
加害者の化けの皮が剥がれる反転も面白いが、被害者の人物像の評価が変化していくところも見どころだ。
実際の犯行は、ドタバタと忙しくてちょっと滑稽だが、偽真相の方は、後日談も含め、いいストーリーだった。「殺したいという願望と殺す行為とは全く別」と諭すポアロとか、「どたんばでけおとすようなまねはするまい」と言う騎士道精神の人とか。
そうだ、ほんの数行だけ、後日、ポアロがヘイスティングズに「しかしねえ、モン・シェール」と、この事件について語って聞かせているシーンがあることをメモしておこう。


No.183 6点 満願
米澤穂信
(2020/02/03 21:01登録)
もちろん寄せ集めではなく、そして連作でもない、本当の短編集というのもなかなかいいものだ。どの話もそれぞれの雰囲気に入り込んで味わうことができた。
ただ、昭和な感じや文学の風味がありそうでいて、それほど深みは無い、丁寧に描かれているようで、現実味に欠ける、というような違和感があって、どうも半端な感じがしてしまう。
そのへんをあまり気にしなければ、ミステリとしては面白い。「夜警」「万灯」「満願」が印象深い。「関守」の怖さも悪くない。


No.182 7点 キングを探せ
法月綸太郎
(2020/01/05 14:37登録)
冒頭のトランプから最後のアントクアリウムまで、一々の仕掛けに絶対に何かあると判りながら、全く答えは出せず、予想もしなかった正解を教えてもらう気持ち良さ。ほぼ数学の勉強をしているような感覚だった。
イクル君、夢の島、カネゴン、りさぴょん、といった絶妙なネーミングや各章はじめの引用句など、小道具使いも素晴らしい。
とにかく技巧に優れた作品だ。これはもう、どうしたってキングを探してしまうだろう。
ただ、正解よりも仮説や騙し部分の印象の方が鮮明で、終盤の説明がこちゃこちゃと小振りに感じられたのが少し残念。


No.181 7点 親不孝通りラプソディー
北森鴻
(2019/12/02 00:18登録)
前作の「親不孝通りディテクティブ」でも断片的に匂わされていた、テッキとキュータの高校時代の事件。予想外に壮大なギャング小説(?)だったのでビックリだ。
今回は作者が得意とする連作短編ではなく、かなりページ数のある長編なので、前作より読み心地の切れは鈍るが、その分大ネタがてんこ盛りでストーリーに厚みはある。

舞台は1985年。懐かしの小道具や世相が話の展開によく活かされている。
皆、基本的に悪いことしかしないし、とにかくキュータの部分はほとんどお笑いなので、漫画のようにドキドキワクワクと読むのが良いだろう。こんな高校生あり得ないのだが、ぶっ飛び過ぎていて、もはや爽快。

解説の近藤史恵さんが「少しやんちゃで、人懐っこくて、お酒と冗談が大好きで」、他の作品に比べこの小説が、北森鴻さん本人の顔に最も近いというようなことを書いていたので、ジンときた。


No.180 7点 親不孝通りディテクティブ
北森鴻
(2019/11/18 12:24登録)
博多と言えば、屋台と裏社会(?) そこを舞台にした、テッキとキュータの何とも魅力的なコンビによる軽ーいハードボイルド、コミカルでダサかっこいい探偵ごっこだ。博多弁が全編の雰囲気を支配していて、読後も頭にこびりついて離れない。

後は読者のご想像にお任せ、といった感じの書き方が洒落ていて、テンポよくサクサクと読めるのだが、ストーリーそのものは、重く切ない。特に最終話の結末は、よかったなあ。

この作者の小説世界は、いつもどこかでつながっているので、親不孝通りの登場人物もまた、他の作品に登場するらしい。
もう続きが書かれることのない北森作品だから、少しずつ大事に読み進めたい。


No.179 7点 屍人荘の殺人
今村昌弘
(2019/11/05 18:03登録)
これはやはり、既存の作家が突然書けるようなものではないと思った。“新しい人”の仕業だろう。使い古された道具や設定を使って、全く見たことのない新品が作られている。
すごいのは例の特殊設定のことだけでない。細々としたロジカルなネタが、ずーっと敷き詰められているところが力強い。
本格度だけでなく、読みやすさも切ないドラマもちょっとした笑いも含め、これがデビュー作とは、今後が楽しみすぎる。


ただ、こんなに面白いのに、犯人に意外性がなさ過ぎて、少し興奮が冷めた。逆に、敢えてミステリによくあるベタな犯人を切れたロジックで炙り出そうという趣向か。
もう一つ、震災時のトラウマの話には違和感があった。たくさんの伏線を張って、最後の大事な話に絡ませている太めの筋だが、なんだかうまくつながらない。考え方と結果の行動が、(こちらはベタとは正反対)特殊に個人的過ぎて、話の邪魔になってしまう。
なかなか難しいものだなあ。


No.178 6点 今だけのあの子
芦沢央
(2019/11/05 13:48登録)
学生時代、結婚、育児、老後という、女の一生の各ステージにおける「今だけ」(或いは、今この時だからこそ)の友情がテーマの短編集。
数十年という時の流れの中で、ある亡くなった子に遠く近くかかわりを持つ人たちが各話の登場人物になっている。よく読むとその子が亡くなった時点からどのくらい時が経った、または遡ったあたりの話なのかが分かって面白い。その演出からも、各話を長い人生の一場面と感じさせる効果が出ているのだろう。

・『帰らない理由』は、この物語の出発点のような位置づけだが、何ともふざけている。5編の中で、ココ笑うところ、なのか。
・ミステリ的には『答えない子ども』の夫探偵による謎解きが一番スッキリした。
・『正しくない言葉』の老女の最後の気づきは、老後に向けて心に刻んでいきたいと思う。


No.177 7点 カナダ金貨の謎
有栖川有栖
(2019/10/06 13:32登録)
国名シリーズ第10弾。インド倶楽部以降、表紙に国旗は描かなくなったのか。

『船長が死んだ夜』
事件発生当初に現場に入り、次々と聞き込みをして犯人を当てるタイプの話。楽しくは読めるが、こういう「なぞなぞ」やクイズのようなネタは好みではないので、少し残念。
『エア・キャット』
ちょっとしたお楽しみ短編だが、意外に謎解きがぴかりと光る。
『カナダ金貨の謎』
作者が他の作品のあとがきで、「誰も思いもつかなかった物語」より、「これまで誰かが書きそうで書かなかった物語」を書きたいと言っていたとおり、本作も発想の隙間を狙ってくるような作品ではないか。ありがちな事件のようでいて、型が少し外れているのが面白い。
『あるトリックの蹉跌』
この題名は、「蹉跌」といえば「青春の」という遊びなのかな。
『トロッコの行方』
「この集り屋!」の一言の強烈なブーメラン。これは読み応えがあった!


No.176 6点 罪の声
塩田武士
(2019/09/24 10:37登録)
勝手に硬派で神経質な大作をイメージして読み始めたが、意外に文章が若く、カジュアルな読み心地だった。
何とももどかしかったのは、どこまでが実際の事件で、どこからがフィクションなのか、知識が無くて分からなかったこと。その境目が巧妙に消されているところが、この小説の凄さなのかもしれない。NHKスペシャル取材班が『未解決事件 グリコ・森永事件捜査員300人の証言』という本を出しているようなので、読んで境目を確認してみたいと思う。

(ネタバレ注意)
あれだけ不気味な企みに満ちているように見える大事件だが、フタを開けてみれば、愚かな人たちのしょうもない判断や行為が連なってここまで来てしまったのだ、という展開。その現実味がこの小説の魅力だろう。
まず、あのテープの声の子どもたちは今どうしているか、という問いを小説の軸に持ってきたところがうまい。自分勝手に子どもを事件に巻き込んだ親たち(伯父含む)のあり様が衝撃的で、特に聡一郎の母親は無力過ぎるし、俊也の母親に至っては、恐ろしくて理解したくない。
主人公二人の成長物語として良く出来ていて胸が熱くなる。ただ、新聞記者の様子が、後半で少々美しくなり過ぎたのが残念。


No.175 7点 ABC殺人事件
アガサ・クリスティー
(2019/08/26 23:00登録)
有栖川有栖の「ABCキラー」や法月綸太郎の「ABCD包囲網」などを先に読んでしまっていたので、まっさらの状態から楽しむことができなかったのが残念。
8回挿入される「ヘイスティング大尉の記述ではない」の章が効果的で面白く、何度か前に戻って読み返した。この部分のサスペンス感が好きだ。
ポアロに「霊感を与えてくれる」「大事な天才」であるヘイスティングズの「明晰な洞察がきらめく、輝かしい言葉」が、あまりにさりげなさ過ぎて、どこにあったのか探すのが大変だった。「わたしはどんなすばらしいことを言ったんですか」と本人が訊いても相変わらずすぐには教えてくれないお決まりの展開が可笑しい。


No.174 8点 許されようとは思いません
芦沢央
(2019/07/22 13:29登録)
どの話も「え?そっちか!そっちだったか!」という動機が楽しめる。本当に巧い。
『目撃者はいなかった』は、組織の中で働く者として、身につまされて冷や汗が出る。文庫になる際に作品の順が入れ換えられて、これが冒頭に回されたようだが、この緊張感が強いつかみとなっており、順番変更は正解だったのではないかと思う。
『姉のように』は、2度読み3度読みで味わった。大満足。


No.173 6点 などらきの首
澤村伊智
(2019/07/22 12:36登録)
『ぼぎわんが、来る』の比嘉姉妹シリーズ初の短編集。
個人的には、6編のうち「居酒屋脳髄談義」がベスト。人間性の卑しい者が断罪される面白さはあるが、とにかく気持ちの悪い空気と、負のオーラを閉所に詰め込んだ圧迫感が強烈でクラクラする。
「学校は死の匂い」は、子どもの読み物っぽい展開だが、最終的にはさすがの伊澤ワールドまで高まり、トラウマ級に怖くなる。
最もこのシリーズらしい世界観があるのは、やはり表題作の「などらぎの首」だろう。ジャパニーズホラー的な薄気味悪い雰囲気だけではなく、「怖いお化け」が、ちゃんと「やって来る」話。

短編集としては、比嘉姉妹ほかシリーズに登場する人物が各編に配置され、「あの人の過去にこんなことが」というようなことが明かされるつくりになっている。


No.172 9点 夏への扉
ロバート・A・ハインライン
(2019/06/16 23:40登録)
文化女中器(ハイヤードガール)や万能(フレキシブル)フランクが心をとらえて離さない。人型ロボットにはしない「家電」な感じが現実的でいい。
文化包丁やら文化シャッターやら万能のこぎりとか、便利でモダンで新式なニュアンスが今の若い人にはどんどんわからなくなってくるだろうが、この時代感、書かれた(訳された)当時の表現を今後も残していただきたい。どうしたってもう、「30年(+10数年)後の未来」だった2001年が、すでに遠い過去になっているのだから、いいじゃないか。

ボロボロのどん底から、頭を使って懸命に働いて人生を切り開いていく爽快感。
タイムパラドックスなどふっとばし、女の子との見方によると微妙な関係も細かいことを言わず素直にロマンティック!と受け止めれば、とにかく軽やかな展開と緻密なサスペンスにメロメロになること請け合い。
「そして未来は、いずれにしろ過去にまさる。」と力強く言える確信が気持ちいい。


No.171 7点 こうして誰もいなくなった
有栖川有栖
(2019/03/19 00:12登録)
デビュー30周年を飾る<有栖川小説の見本市>と銘打った作品集。その名のとおりファンタジーから本格まで自由自在な有栖川ワールドを端から端まで楽しめる。

前半は2011年から2018年まで様々な注文を受けて書いてきた14の短編・掌編で、パロディものあり、ホラー風味のものあり、たった2ページにほんの二言三言を綴っただけの詩的なミステリあり。概してファンタジー色が強いかな。
後半は2019年に入って雑誌に載ったばかりの中編である表題作。題名のとおりクリスティの「そして誰もいなくなった」を下敷きに舞台を今の日本に置き換え、名探偵を登場させるなど大胆な挑戦をした作品だ。

普通、8年のも年月の中でバラバラに書いてきたものを集めたら、いかにも寄せ集めの在庫一掃セールのようになりがちだが、編集が大変良く綺麗にまとまっている。空想の世界にずっと浸っているような感覚がいい。


No.170 8点 希望荘
宮部みゆき
(2019/02/24 22:59登録)
長編3作をかけた長い長い助走の時代を経て、ついに「私立探偵」杉村三郎の誕生である。
これまでのように偶然事件に巻き込まれてしまう一般人としてではなく、調査会社の下請けで調査員をしながら「探偵事務所」を開業し、探偵として、着手金5,000円で(ことによってはタダで)人探しなどを請け負うのだ。そこに至るまでの経緯も丁寧に物語られて、大河ドラマは続いていく。
今後は、事件ごとの中・短編になるようだ。

本作4編の調査依頼は次のとおり。
『聖域』:ご近所のアパートで亡くなったはずのおばあさんを街で見かけてしまった。これってどいうこと?
『希望荘』:老人介護施設に入居していたおじいさんが亡くなる前、「昔、人を殺した」と言っていた。真相が知りたい。
『砂男』:蕎麦屋夫婦の夫の方が突然の家出。妻は「夫は不倫をしていた」と言うが、どうも様子がおかしい。どうなってるの?
『二重身(ドッペルゲンガー)』:東日本大震災のその日、東北の方に出かけていたと思われる行方不明の商店主を探してほしい。

呑気な日常の謎だと思ったら大間違い。ご近所さんや知り合いの知り合いに持ち掛けられるちょっとした人探しや調査モノから、宮部みゆきワールドのとんでもなく複雑な人間ドラマが掘り出され、結構な大事件として解決していく面白さ。
特に表題作の「希望荘」は、杉村探偵の地道な聞き込みと観察力が活きて、見事な解答にたどり着く良作だ。


No.169 7点 ずうのめ人形
澤村伊智
(2019/02/10 20:06登録)
本当に抜群のネーミングセンスだ。内容も『ぼぎわんが、来る』からさらにパワーアップして重量級。たっぷりと楽しむことができた。
一部に動機の弱さや都合がよすぎる人間関係など、普通ならちょっと引っかかるところがあるのだが、それすら怖さ不気味さ薄ら寒さに取り紛れて気にならない。
なぜ関連の見えない人まで次々に犠牲になるのかという謎の答えが衝撃だった。こういうところがホラーなんだな。容赦がない。


No.168 6点 禁断の魔術
東野圭吾
(2019/01/27 12:46登録)
短編「猛射つ」を長編化したものを文庫本で読んだ。(短編「猛射つ」はまだ読めていない。どんなふうに違うのだろう。)
数々の理不尽に耐えて、道を外さずに生きていかなければならない苦悩の物語。大人のグレー対応や薄汚い本音が建前に勝つ現実を次から次と並べられて、フラストレーションが溜った。気晴らしの楽しい読書とはいかない重さがある。ただ、その割に意外と一つ一つのエピソードはありきたりで、読み心地として浅く感じられてしまうのが残念。
それでも、湯川准教授が自分自身をかけて若者を救おうとした覚悟、責任の取り方にはグッときた。

※「虚像の道化師」と「禁断の魔術」、単行本と文庫本でここまで内容が異なると、評価が入り混じって混乱しますね。まあ、他の作家でも時々あることだし、仕方ないですかね。


No.167 6点 虚像の道化師
東野圭吾
(2019/01/10 23:27登録)
文庫本で読んだのだが、これは、ここに書評をしてもいいのかな?単行本『虚像の道化師』と『禁断の魔術』を(1編を除き)合本しているので、7つの短編がまとまっていて豪華。つまり、単行本の『虚像の道化師』とは、だいぶ違ってしまう。

久々に読んだガリレオシリーズの短編は、単純に面白かった。やはり、草薙刑事と湯川先生のコンビは安心して楽しめる。特に草薙刑事が多めだと肩の力が抜けて良い。トリックも推理も科学も人間ドラマも短編であるためにサクサクしており、傑作!という訳ではない。どちらかというと、疲れた時の現実逃避に適している。
それにしても、湯川先生のキャラがどんどん変わっていくなあ。こんなにいい人になっちゃってどうするんだろう。


No.166 8点 ペテロの葬列
宮部みゆき
(2018/12/18 22:35登録)
衝撃的。このシリーズ、積ん読していた間にこんな大河な巨編になっていたとは知らなかった。
優しく生真面目な読み心地に反して、容赦ない人生活写のオンパレード、いや葬列。
「火車」や「理由」に連なるような堂々の社会派であり、心をつかんで放さない幾つもの謎とそれを追う熱い<私立探偵>の物語でもある。その上に、シリーズとしてのドラマも最高潮に盛り上がってしまうのだからとんでもない。
しかし、先に「誰か Somebody」と「名もなき毒」を読んでおかなければならないので、本作にたどり着くまでの道のりは長い。前2作ともかなり地味だし、続編が出ても何となく後回しにして今まで手が出なかった。あー、思い切って読んで本当によかった。

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