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ミステリの祭典

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ペテロの葬列
杉村三郎シリーズ 3

作家 宮部みゆき
出版日2013年12月
平均点7.00点
書評数4人

No.4 7点 猫サーカス
(2023/07/30 18:29登録)
あるグループ企業の広報室に勤める杉村三郎は、取材の帰りに乗り込んだバスで思わぬ凶悪犯罪に巻き込まれた。拳銃を持った老人がバスジャックをしたのだ。事件はわずか三時間で解決っしたものの、あとに大きな謎が残った。老人は何者か。一体何のために騒ぎを起こしたのか。やがてかつて世間を騒がせた集団詐欺事件との関係が浮かび上がる。本作のテーマは「悪は伝染する」というもの。嘘がより多くの嘘を新たな悪を生み出していくのである。主人公とその家族や職場の人間、そんな集団の中で生まれた悪意やトラブルが増幅し、周囲を巻き込み展開していく。そこに今の日本のゆがみが如実に映し出されている。この物語を読んでいると、単なる傍観者ではすまされない思いがしてくる。自分が主人公と同じ立場だったらどうするか、突き付けられているようだ。何より、わが身可愛さのあまりに嘘をついたり、自分の嘘に気が付かなかったりする浅ましさが描かれていて身につまされる。

No.3 8点 ボンボン
(2018/12/18 22:35登録)
衝撃的。このシリーズ、積ん読していた間にこんな大河な巨編になっていたとは知らなかった。
優しく生真面目な読み心地に反して、容赦ない人生活写のオンパレード、いや葬列。
「火車」や「理由」に連なるような堂々の社会派であり、心をつかんで放さない幾つもの謎とそれを追う熱い<私立探偵>の物語でもある。その上に、シリーズとしてのドラマも最高潮に盛り上がってしまうのだからとんでもない。
しかし、先に「誰か Somebody」と「名もなき毒」を読んでおかなければならないので、本作にたどり着くまでの道のりは長い。前2作ともかなり地味だし、続編が出ても何となく後回しにして今まで手が出なかった。あー、思い切って読んで本当によかった。

No.2 6点 小原庄助
(2017/08/16 10:30登録)
生きている限り、絶え間なく選択をしなくてはならない。
間違うことは誰にでもある。深い悔恨を長く引きずることもある。
作者はこの作品で「間違いに気づいた人は、その後どう生きるか」を描いている。
平凡な暮らし、ささやかな幸せを望んでいた善良な人物を「悪」がむしばんでいく。
作者は淡々と、しかし正確に悪の正体をつづり、それが周囲にありふれていることに気づかせてくれる。
そして正しく歩むのが困難で、なんとも恐ろしい世の中に生きていることを見事に描いている。

No.1 7点 白い風
(2014/03/13 23:59登録)
「誰か」「名もなき毒」の続編ですね。
宮部作品には珍しく(?)後味の悪さを残す毒(悪)が作品の隅々に染み渡っていましたね。
その毒が読者に伝わった気がします。
このラストならもう続編は無いのかな?
(続編は読みたいような、読みたくないような・・・(笑))

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