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ミステリの祭典

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こうして誰もいなくなった

作家 有栖川有栖
出版日2019年03月
平均点5.00点
書評数7人

No.7 5点 ◇・・
(2023/08/08 19:31登録)
互いに見知らぬ男女の心中計画が意外な方向に転がる「劇的な幕切れ」や楽しい乱歩のパロディの「未来人F」などもいいが、やはりもっとも読み応えがあるのは、本書のうち約三分の一を占める表題作。孤島に呼び集められた九人の男女。彼らの過去の罪業を告発し、命を奪うと宣告する招待主の声。そして、九人は次々と何者かによって殺害されてゆくという展開は、クリスティーの「そして誰もいなくなった」をなぞっているかのようだが、原点を知っていても真相を見抜くのは難しいだろうし、、ミスリードも巧妙。中編なので、やや強引に詰め込んだ印象があるのが惜しまれる。

No.6 4点 E-BANKER
(2021/02/17 20:36登録)
~本書はノンシリーズものの中短編をまとめたもので、ラジオでの朗読のために書いたため初めて活字になる作品も含まれている。・・・内容も長さも様々で、有栖川有栖の見本市みたいなものだ~前口上より
ということで、作者のア・ラカルト的な作品集と言えば格好いいのかな?
2019年の発表。

①「館の一夜」=ノスタルジィだなぁー。
⑥「怪獣の夢」=男なら、少年なら、こんな夢みるよなぁー。
⑦「劇的な幕切れ」=女なんてそんなもんだよーって、ヤバイ! 今これ言うの禁句だった。(私も会長を辞任します。何の会長?)
⑨「未来人F」=江戸川乱歩作品へのオマージュだが・・・。こうしてみると、明智小五郎も全知全能だな。
⑪「本と謎の日々」=書店で起こるちょっとした日常の謎。かなりほっこりする一編。最後はやや捻る。

と、ここまでは雑文レベルの作品も混じるなど、まさに“ごった煮”。で、ラストの表題作のみが中編的分量。
⑭「こうして誰もいなくなった」=これまで数多の作家たちが挑んできた「そして誰もいなくなった」へのオマージュ。ついに作者までも・・・ということで期待したのだが、正面から正攻法で挑んだものとは言い難い。恐らく、最後の殺人に絡むワンアイデアから膨らませたのだろうけど、手練れの読者を満足させる水準ではなかった。せっかくなら、もう少し腰の据わった長編でチャレンジしてもよかったと思うが・・・

以上14編。
まぁあまり褒められた内容ではない。有栖川有栖だから活字になったのかもしれないが、他の泡沫作家なら歯牙にもかけられないだろう。
ミステリーのみならず、評論など各種精力的な活動には敬意を表するわけですが、本作については読むだけ時間の無駄(よりちょっと上)程度の評価が妥当かと・・・

No.5 5点 まさむね
(2020/09/22 21:47登録)
 掌編から中編まで、ノンシリーズの14作品を収録。「有栖川小説の見本市」との謳い文句については、そういった面を否定するつもりはないのだけれども、有栖川ファンとしては、いやいや、本物(これまでの発表作品)と比べて「見本」が見劣り過ぎでは…という気もいたします。
 ベストは表題作の中編だと思うのですが、好き嫌いは分かれそう。そもそもラジオ朗読用として書かれた複数の短編については、活字となってどうかは措いておくとして、確かにラジオで聴いたとすれば、雰囲気も倍増して楽しめそうでしたね。

No.4 4点 蟷螂の斧
(2020/02/08 21:02登録)
表題作のみの評価。オマージュ、本歌取りではなく、いわゆる「翻案」に近いのかも?。紹介では「再解釈」とありますが、どういう意味なのかよくわかりません。ラストは、それはちょっとねえ・・・というレベルでした。

No.3 4点 HORNET
(2019/09/25 21:28登録)
「有栖川小説の見本市」と帯に謳われているが、これまで各所で書きながら、適当な収録のしどころがなかったものを集めて出版した印象だった。
 「見本市」とはうまい言い方をしたと思うが、見方を変えればジャンルもサイズも統一性のない作品の集まりとも言え、ミステリではないものも含まれる。私は氏のかなりのファンで、それは極めてオーソドックスなフーダニットの本格ミステリを提供してくれるところにあるので、本短編集はイマイチであった。
 表題作でもあるラストの中編が私が思うところの「有栖川有栖らしい」作品。

No.2 6点 虫暮部
(2019/06/24 10:58登録)
 文章が良いので読まされてしまうが、それほど決定的な短編は見当たらない。
 結局、表題作が最も面白いが、作者がこういう形の本歌取りを試みた意図はいまひとつ判らなかった。それと犯人が何か変な行動をしているが、少々アンフェアでは。何故そこで被害者を制止する? 何故せっかくの好機にさっさと殺さずお喋りしている?

No.1 7点 ボンボン
(2019/03/19 00:12登録)
デビュー30周年を飾る<有栖川小説の見本市>と銘打った作品集。その名のとおりファンタジーから本格まで自由自在な有栖川ワールドを端から端まで楽しめる。

前半は2011年から2018年まで様々な注文を受けて書いてきた14の短編・掌編で、パロディものあり、ホラー風味のものあり、たった2ページにほんの二言三言を綴っただけの詩的なミステリあり。概してファンタジー色が強いかな。
後半は2019年に入って雑誌に載ったばかりの中編である表題作。題名のとおりクリスティの「そして誰もいなくなった」を下敷きに舞台を今の日本に置き換え、名探偵を登場させるなど大胆な挑戦をした作品だ。

普通、8年のも年月の中でバラバラに書いてきたものを集めたら、いかにも寄せ集めの在庫一掃セールのようになりがちだが、編集が大変良く綺麗にまとまっている。空想の世界にずっと浸っているような感覚がいい。

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