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ミステリの祭典

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白昼の悪魔
エルキュール・ポアロ

作家 アガサ・クリスティー
出版日1951年01月
平均点6.96点
書評数25人

No.25 3点 虫暮部
(2021/12/29 12:15登録)
 何か変だ。
 ネタバレするけれども、加害者には被害者の行動をコントロール出来ない。芝居が終わるまで、見ざる聞かざるで隠れていてくれる保証など無い(被害者にしてみれば、様子を窺っていないと邪魔者が去っても判らないし)。
 であるなら、被害者が計画を知った上で敢えて殺されたと考えるしかない。惚れた弱みで知らぬフリして殺されてあげよう……しかし、そもそもこんな不自然な計画を立てるか? 被害者が協力しないと成立しないことは、事前に見当が付くのでは?
 従って、被害者加害者結託しての、“アリバイ確保の為にこういうトリックで殺されてくれ” “承知したわ” と言う命懸けの殺人劇だった、となる。いや、それなら本人が死体役をやればいいのであって(ポアロは “危険が多すぎる” としてこれを否定しているが、何が危険なのだろう?)、3人目の彼女はいらない。
 つまり、その彼女が発案・主導し、一方で共犯者側としては尻尾切りされない保険として彼女にも口だけでなく手を汚させる為にこの面倒なトリックを組み込んだ、と言うことだ。それはそれで驚きの真相ではないか。

No.24 8点 ボンボン
(2020/02/12 22:32登録)
丁寧に作り込まれた良作だと思う。気になる出来事や発言が散りばめられていて、チェックポイントに赤線を引いていったとしたら、全編ページが真っ赤になるのではないか。ポアロが最後にそれらを豪華にまとめあげてくれるのが快感だった。
加害者の化けの皮が剥がれる反転も面白いが、被害者の人物像の評価が変化していくところも見どころだ。
実際の犯行は、ドタバタと忙しくてちょっと滑稽だが、偽真相の方は、後日談も含め、いいストーリーだった。「殺したいという願望と殺す行為とは全く別」と諭すポアロとか、「どたんばでけおとすようなまねはするまい」と言う騎士道精神の人とか。
そうだ、ほんの数行だけ、後日、ポアロがヘイスティングズに「しかしねえ、モン・シェール」と、この事件について語って聞かせているシーンがあることをメモしておこう。

No.23 5点 レッドキング
(2019/08/11 17:34登録)
人物設定から「こいつが殺されるんだろなあ」と予測したのが殺されて、「犯人こいつしかいないだろう」ってのが犯人だった。また「こういうトリックなんだろうな」ってのは半分だけ当たった。
※登場人物の一人のオカルト狂い娘の蔵書の一冊が「火刑法廷」ってネタに思わずニヤリ。

No.22 6点 ボナンザ
(2019/07/31 23:15登録)
佳作の一つ。クリスティならではのロジック展開に思わずにんまりする。
アリバイトリックは平凡だが、使い方がうまい。

No.21 6点 いいちこ
(2017/09/05 09:25登録)
トリックは平凡であるものの、それを支える伏線・ディテールの巧みさに、確かな構成力が感じられた。
犯行動機に納得感が感じられないのが残念

No.20 9点 ALFA
(2017/04/01 18:17登録)
読後何年たってもこの作品はクリアに思い出せる。一触即発の三角関係、太陽がまぶしいリゾート、個性豊かな登場人物、シンプルで大胆なトリック、そしてトリックよりも鮮やかな人間関係の反転。
どれも「ナイルに死す」と同じ。違いはあちらが情景描写を含めてゴージャスなのに対し、こちらはシャープに引き締まった物語であること。あとは似ている。
真相開示も鮮やか。読者にではなく犯人にレッドヘリングをぶら下げていおいて、いきなり虚をつくやり口は数あるポアロものの中でも最上位の鋭さではないか。
敢えて難を言えば「死体」発見時がきわどいくらいか。
無駄のない本格ミステリのお手本のような作品。
「忘られぬ死」や「青列車の秘密」でもそうだったが、クリステイは似た構成の短編を先に発表している。習作と本画のような関係で、読み比べてみると面白い。
映画版、TVドラマ版ともにストーリーが整理されていて出来はいい。TVドラマ版で、ポアロの名指しを完全な無表情で聞いていた犯人がいきなり襲い掛かるシーンは名演技。
評価はTVドラマ10、映画7。映画はピーター・ユスティノフがあり得ないことと「地中海殺人事件」という改題がアホらしいから。

No.19 7点 斎藤警部
(2016/07/19 12:09登録)
有り体のミステリだったら十中八九あのジョニー(仮名)  。。って誰や?  。。が犯人! と序盤の決め打ちで満場異論無し(!?)の所だが。果たして。。。

舞台が語られ、殺人が起き、取り調べは順次進み、すっきりシンプルな物語構成。ところが終盤に至り何かしら深い所から引っ剥がされそうな暗雲の予感が。。。その挙句に解き明かされた真相は、意外と、絢爛絵巻の趣とは全く異なる堅実さ溢れるもの。それでも小説力の強さに牽引され、アガサクにしては地味目の話ながらもかな~ぁりの面白さ噴出。

ただ、中身が地味なのはOKだけど、題名のギラリ感と合ってないかもね。(原題も)



【ネタバレ】
終わり近く、ポワロが語る折角のダミー解決でもうちょっと引っ張っても。。とは思いましたが、あんまりそっちを強調すると肝心の真相の方が霞んでしまうのかも知れません。ダミーの方が、心理的により強烈で残酷で、意外性もありますものね。

No.18 8点 makomako
(2016/04/10 21:06登録)
 いつものことですが、クリスティーには見事に騙されてしまいます。この作品は氏の作品の中では有名ではない方?にも思いますが、なかなかの名作です。
 びっくりするようなトリックではなく、でもやっぱり最後には驚かされました。
 未読な方はぜひ。おすすめですよ。

No.17 9点 青い車
(2016/03/06 21:29登録)
派手な趣向に頼らずとも面白い作品は書けることを証明した作品です。
トリック自体は発表当時ですでに手垢の付いたものだったのではないかと思います。しかし、さり気ない手がかりの分散配置はまさに女流作家ならではのセンスを感じます。そしてそれらが最後すべて意味を持っていたことがわかる解決篇は快感。クリスティーの伏線を「ただのほのめかし」と批判する人もいますが、彼女はクイーンやクエンティンのようなガチガチの本格作家ではありません。手がかりになりそうにない事象を手がかりとする繊細な職人芸を素直に楽しむべきです。その最たるものは冒頭のポアロのセリフ、犯人が我々に与える先入観です。
『ナイルに死す』とシチュエーションがかなり近いのが興味深いです。しかし『ナイル』がミスディレクションで大きなトリックを覆い隠しているのに対し、『白昼の悪魔』では細かい技巧に注力しており、異なる魅力があります。

No.16 8点 クリスティ再読
(2016/02/21 21:20登録)
もうクリスティ全ミステリ長編評まであとわずかなんで、大事にとっておいた作品を投入。
本作なつかしい...中学生の頃図書館で借りてハードカバーで読んだよ。このクラスの名作だと、昔読んだだけでも、読んでいて内容が記憶に蘇る。だから本作の大技トリックとかしっかり憶えてた。
改めて読み直して、本作の凄いところ・良いところ、というのは例の大技トリックじゃないからねっ。そんなのよりも、被害者の性格についての解釈の逆転がミステリの妙味のあるところだと思うし、クリスティらしいしまたクリスティしか書けないのでは、と思わせるところだと思うよ。これがオトナの読み方ってもんだと思うんだが。
まあ実に中期クリスティらしいタイトな佳作。あと、マーシャル大尉がイイ。もう少しツッコみたいくらいなんだが、ここ突っ込むとホントはバレるのでパスするけど、クリスティにしては珍しく「男心のミステリ」になってるのがよろしい。これで「愛国殺人」の口直しになったかな。

No.15 8点 ロマン
(2015/10/20 14:19登録)
どんな男も虜にする美しき元女優の登場で、避暑地の平穏は破られた。元女優を中心に二つの三角関係が形成され、険悪な雰囲気が漂い始める。そしてついに、元女優が何者かに扼殺される事件が発生。しかし、関係者いずれにも鉄壁のアリバイがあり……。序盤にぬけぬけと張られた伏線や、シンプルながら切れ味のあるアリバイトリックが見事。

No.14 6点 了然和尚
(2015/02/16 09:58登録)
クリスティーを再読していると、推理小説論的なことを断片的に論じているのが興味深いですね。本編では推理小説(犯罪)をジグソーパズルにたとえて、わざわざ各ピースを示してくれています。出来のいい推理小説は、組み立てた後の絵も素晴らしいですね。本作は、出来上がった絵は、まあまあといったとこでした。
 登場人物の本棚にカーの火刑法廷が置いてあったので、プラス1点。カー、クロフツ、クリスティーあたりは相互に良く探偵や、書籍がこそっと登場して嬉しくなります。

No.13 7点 バード
(2014/11/09 14:26登録)
クリスティ作品の標準やや上くらい。最後の最後まで裏のある構成、完璧に当てるのはできなかった。最初の日焼けのくだりとか伏線はあっただけに悔しい。

登場キャラもかぶっている人が少なく読んでて混乱しにくかったのも好印象。比較的コンパクトにまとまっている良作。

No.12 8点 蟷螂の斧
(2013/04/24 19:52登録)
クリスティ作品は、余計な薀蓄や描写がないので、非常に読みやすいと思います。日本クリスティ・ファンクラブ員のベスト10(1982年)とのことで拝読、楽しめました。メイントリックの最初の発案者(作品)は誰(何)なのだろうか?・・・。

No.11 7点 あい
(2013/04/09 05:18登録)
事件の起こる島の絵が物凄く簡単で笑えた。トリックはすぐに分ったが、全体的にまとまっていて良かった

No.10 6点 ミステリー三昧
(2011/08/29 10:56登録)
<ハヤカワ文庫>ポアロシリーズの20作目(長編)です。
以前読んだ『メソポタミヤの殺人』と同じ趣向であり、対比させて読むと面白い作品。『メソポタミヤの殺人』と本作の共通点は「絶世の美女」を主軸とした恋愛模様と人物描写にあると思います。初めてその美女が登場するシーンがとても印象的で、それから男性は虜になり餌となり、女性は嫉妬し憎み敵となりと、彼女を中心としてあらゆる感情が剥き出しになり、序盤からある兆し(殺人の予感)を感じずにはいられない展開となっています。
私的には、珍しくトリックを当てることができ、同時に犯人の正体も暴くことができました。トリックは単純だし、それが分かれば犯人の正体もおのずと分かるので難易度はそこまで高くないと思います。さすがにすべてのパズルのピースを完璧に当て嵌めることはできませんでしたが・・・

No.9 7点 りゅう
(2011/03/26 07:42登録)
 謎解き重視の作品で個人的には好みなのですが、この真相を見抜くには飛躍した推理が必要で、ポアロの推理にはなるほどと思う反面、必然性に欠けているようにも感じます。大技トリックはありませんが、複数トリックの組み合わせは中々のものだと思います。作中で、ポアロがこの事件の断片をジグソーパズルのピースに例えているように、複数の謎が絡まっていて、真相部分が見えにくくなっています。ピクシー湾で発見された物品、暖炉から発見された燃えかす、洞窟で発見された麻薬、風呂を使用した人物とその理由、窓から投げられた瓶など様々な謎が提示されますが、読者がこのピースをはめこんで、パズルを完成させるのは困難です。


(若干のネタバレをしています。)
 ポアロは、本当の真相を告げる前に、エセ真相ともいうべきことを語っています。ある意味、この可能性もありうるわけで、真相の必然性が感じられなくなっています。
 ポアロは、暖炉に残った燃えかすとリンダの部屋にあった本の内容から、リンダのやったあることを推理していますが、英国人の読者ならこれは推理可能なのでしょうか。日本人には到底無理ですね(作品中では、本の内容にも触れていませんし)。

No.8 6点 seiryuu
(2010/12/30 11:32登録)
トリックは笑えるところもあってお見事とは思わないけど
ミスリードがすごい。
楽しめました。

No.7 7点 toyotama
(2010/12/03 07:55登録)
kanamoriさんも書かれてますが、舞台設定を思い出そうとすると、ブランドの作品の挿絵を思い出してしまう。

No.6 7点 E-BANKER
(2010/09/25 22:18登録)
中期のポワロ物。
派手な設定はありませんが、丁寧に作りこまれた雰囲気のある良作という感じ。
孤島(陸路はありますが)のリゾートホテルを舞台とする、クローズドサークルでのフーダニットがメインですが、単なるアリバイ崩しかと思いきや、ラストで想像以上の「爆弾」が炸裂します!
タイトルもなかなか気が効いてます。「悪魔」という言葉が読者のミスリードを誘うようにできてるんですね(ポワロは最初から気付いていたと言ってましたが・・・)。
ただ、トリックの”肝”である「あのこと」はかなりリスク(バレる)があるんじゃないですかねぇ? 作品中ではみんな納得してますけど・・・

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