今だけのあの子 |
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作家 | 芦沢央 |
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出版日 | 2014年07月 |
平均点 | 5.67点 |
書評数 | 6人 |
No.6 | 6点 | 斎藤警部 | |
(2024/04/21 14:45登録) 届かない招待状 そのアレ、連城ならうまく隠し通したかも。。バレバレのチャンチャン。。なにやってんだ主人公。。でもいいんだ。あたたかい気持になりましたよ。 おっと、結婚披露宴に招待されなかった理由がね、決して不仲とかじゃないってのは予想した通りだけど、まさか伏線クッキリのそんな事象だったとは、最後まで分からなかった・・!! まあでも家族間にもズルズルの秘密ってのはあるもんさね。 6点強 帰らない理由 連城なら。。。。 頭のおかしい人が、気まずい男女二人の溝をリセットする やだー、ケテガイばばーがこわいよー ううーーーむ、この冒頭出会い頭ゴツンからスルスルと解かれ行く風変わり過ぎの設定と来たらとにかく強すぎるんだよ!! 車に轢かれて死んだ女子中学生の危険な日記(?)を巡り、生前の彼女の親友と恋人がそれぞれの思惑こじらせ対立、って構図なのか。。 結末で事件性もドラマ性も萎み、そこに出来た隙間を急襲型の感動が不意に埋めてくれました。 5点強 答えない子ども ホワイト反転があまりにそのまんま過ぎて・・・深い感動に至らず、日常生活のホッとした一幕、みたいに終わってしまう。 でも謎解きのロジックはスリリング。 ある人が突如名探偵に化けるのは笑っちゃいますけど。 ママ友どうしとその子供たちの「絵画」を巡るムニャムニャ。 5点弱 願わない少女 反転の形も意味も、前の三つと全く違う異色作。 ミステリ性は些か薄いかも知れないが読み応えはシュアー。 それぞれ違った経緯で漫画家を夢見る二人の女子中学生が謎の対立を見せる熱いオープニングから、仄暗い過去が解き出される。。。 7点弱 正しくない言葉 謎解きの所で速やかにドラマがしぼんでしまいました。 だけどすぐ持ち直した。 でも小説のバランスは少し欠いた。 とは言え佳きブライトエンディング。 老人施設に暮らす二人の仲良し老女と其々の家族。 物語のきっかけは、主人公の夫の早かった死。 文章とストーリーに素敵なおとなしさがあり、いちばん「日常の謎」っぽいかな。 6点 各作の繋がりに驚いたり想いを馳せるのも良いが、短篇集タイトルの意味の反転というか変容、これこそが一番味わい深かった。 |
No.5 | 7点 | HORNET | |
(2020/01/18 14:06登録) ダークな印象のある作者だったが、本短編集は押しなべて心温まる結末の作品が揃えられている印象。「~ない~」で統一された各話は、不穏なはじまりや展開が、イイ話に逆転されるという逆どんでん返し(?)的タイプ。 亡くなった同級生の部屋に居座って、互いに帰ろうとしない男子・女子を描いた「帰らない理由」のラストにはちょっとジンときた。絵画教室に通わせる我が子の作品がママ友の家でなくなった「答えない子ども」のラストも、「よかったねぇ・・・」と言いたくなる。「正しくない言葉」も、ふたを開けて見れば嫁姑のほっこり物語。 ささいな謎が上手く仕込まれ、適正なサイズで物語にされており、良作な短編集だと思う。 |
No.4 | 6点 | ボンボン | |
(2019/11/05 13:48登録) 学生時代、結婚、育児、老後という、女の一生の各ステージにおける「今だけ」(或いは、今この時だからこそ)の友情がテーマの短編集。 数十年という時の流れの中で、ある亡くなった子に遠く近くかかわりを持つ人たちが各話の登場人物になっている。よく読むとその子が亡くなった時点からどのくらい時が経った、または遡ったあたりの話なのかが分かって面白い。その演出からも、各話を長い人生の一場面と感じさせる効果が出ているのだろう。 ・『帰らない理由』は、この物語の出発点のような位置づけだが、何ともふざけている。5編の中で、ココ笑うところ、なのか。 ・ミステリ的には『答えない子ども』の夫探偵による謎解きが一番スッキリした。 ・『正しくない言葉』の老女の最後の気づきは、老後に向けて心に刻んでいきたいと思う。 |
No.3 | 5点 | まさむね | |
(2019/09/07 11:22登録) 「女の友情」を共通のテーマとした短編集、と言ってよさそうですね。「女の…」という点もポイントで、典型的なイヤミス設定からの展開具合が読みどころ。個々の短編としては巧さが見えましたが、全短編の基本線が同じであることによるデメリットも感じたかな。 ちなみに、「いやいや、自分だったらそんなことはしない(そんなことは悩まない)」って思ったことに対し、自分自身で一抹の哀しさを感じたりして。単にあなたが男性で、かつ中年になったからだろう、と指摘されると、確かにその通りなので。 |
No.2 | 5点 | 虫暮部 | |
(2019/08/30 10:00登録) こういう作風の人が同系統の作品を求められるのはしかたないが、収録短編のムードがどれも似通っていると感じた。個々の短編としては面白いのに、こうして一冊にまとめると良さが相殺されているような。 ところで、各編が緩くリンクしているけど、これって何か裏設定みたいなものの伏線になっていた? 全然判らない。 |
No.1 | 5点 | E-BANKER | |
(2018/05/13 10:36登録) 「罪の余白」「悪いものが、来ませんように」など、ヒットを連発する若手女流作家・芦沢央(よう)。 初めて東京創元社から出版した短編集がコレ。(芦沢央も初読み。) 2014年発表。 ①「届かない招待状」=一番仲の良かった親友の結婚式に呼んでもらえない女性・・・。考えたら、これほど不幸で居たたまれない女性もいないかもしれない。で、そこには当然理由があるわけで、こんな偶然ってドラマ以外有り得ないでしょう・・・ ②「帰らない理由」=「親友」そして「彼女」を交通事故で失った女と男が主亡き部屋で対峙することに・・・。理由は「主」が書いていた日記だった。で、当然問題は日記の中身ということなのだが、それってそんなに隠さなくてはいけないことなのか? ③「答えない子ども」=長い不妊治療のうえやっと授かった我が子。その我が子を大切に大切に育てようとする母親・・・。我が子(娘)が一生懸命描いた絵が別の子ども(やんちゃな男!)に盗られたと知ったとき・・・。しかし、この旦那はスゲえな!我慢強さの極地だ! ④「願わない少女」=受験に失敗した余波で嘘をついてまでも設定した「漫画家になる」という夢。一緒に頑張ってきたはずの親友に裏切られたと知ったとき・・・。しかし、そこまで「他人」に合わすかねぇ・・・ ⑤「正しくない言葉」=舞台は老人ホーム。そして今回の謎は「手土産のロールケーキに生えたカビ」だ!(すげぇ謎!)。「なぜカビが生えたのか?」・・・正直どうでもよい。ただし、最後はとってもいい話になる(と、フォローしておく)。 以上5編。 『女性脳は周りのみんなと同じ価値観を持ったり、同程度だと思うと安心感を得られる・・・』-最近見た地上波のバラエティ番組で女性評論家が話してたけど、本作を読んでるとまさにその通りだなと納得させられる。 本作の主人公はすべて女性。 例えば①の主人公は、「同じグループの他のみんなには招待状が届いているのに私には来ていない」ことに、④の主人公は、「クラスの他のみんなは仲の良いグループがあることに」・・・“自分だけ違う”ことに強いストレスを感じるわけだ。 うーん。メンドくさい・・・って思ってはいけないんだろうな。今のご時世では。 なにしろ主役は女性である。職場でも家庭でも・・・。男は黙って我慢するしかない! (って・・・ついつい自分自身に置き換えてしまう) 作者の“旨さ”はそこそこ感じられた作品。①~⑤で世界観を緩やかに繋がらせる技巧もニクイ。 でも、こんな手の作品は結構多いから、どうも既視感が拭えなかったのも事実。 評価はこんなもんかな・・・ |