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ミステリの祭典

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不連続殺人事件
巨勢博士

作家 坂口安吾
出版日1954年01月
平均点6.92点
書評数39人

No.39 6点 みりん
(2023/07/30 14:31登録)
いやあ疲れた。名前持ちの登場人物が33人+α。今までで1番多かった『悪魔の手毬唄』の1.5倍くらいいるんじゃないか?よく多いと言われる『月光ゲーム』の2倍?
「登場人物一覧がない」とみなさんが書評で嘆いているけど、2018年新潮文庫刊行の文庫本にはちゃんと載っていました。登場人物一覧なしで読み進められた方に敬意を表します(笑)

純文学作家が探偵小説を書くって当時の本格ファンは嬉しかっただろうなあ。今なら村上春樹が急にコテコテのクローズドサークル書くようなもんか?


【ネタバレします】


「優れた犯人は心理の足跡がバレるのを嫌って密室なんて作らない」っての良いですね。この自論を主張するだけで終わるのではなく、きちんと即席の殺人による"心理の足跡"が決め手となって全ての謎が解ける構成になっているのも面白いです。

他の方の書評を見て知ったのですが、この作品があの「獄門島」と「刺青殺人事件」を抑えて日本推理協会作家賞ってまーじか。色々凄すぎるなこの1948年。

No.38 6点 okutetsu
(2021/08/30 22:00登録)
心理の足跡の推理はかなり面白く納得できるものだった。
あそこの推理は鮮やかだし、盲点だったのでこの作品の評価の高さが理解できた。
散々言われているが人物一覧表は欲しかったし、間取りもさっさと載せてほしかった。



以下ネタバレ含めた不満点



第一の殺人は最後の殺人のためのアリバイづくりと不連続に仕立てる目くらましいう目的があったのは理解できるが、あまりに多くの人を殺しすぎて犯人が複数いる、または共犯で行っているということが後半は自明になってしまっている。これではせっかく最初の事件で作った信用が最後のほうには成り立たない可能性がでてきてしまわないだろうか。実際共犯の可能性は作中の人物が指摘しているし、すべての事件でアリバイがない人物も限られてしまっている。死者が出ることによる警戒を考えたら、王仁殺しはメリットが少なすぎるのではないかと感じた。同様に秋子殺しもアリバイ作りと目くらまし目的にしてはあまりにも危険度が高く、必然性を感じなかった。

No.37 8点 モグラの対義語はモゲラ
(2021/04/10 22:15登録)
文庫のあらすじでは「独創的なトリック」と書いてあったが、個人的には割と普通な小説だったと思った。当時としては非常に斬新だったのだろうなあ。最近の作品になれているからか、色々な面で古いと感じてしまった。特に文体。あと非常に多い登場人物や、殺人が起こる場所なども、単なる私の偏見なのだが、割と古さを醸し出していると思う。
しかし古くて普通だからといって、イコールつまらないというわけではなく、古さを感じさせない面白さがあったのは確かだ。
作中で探偵役の巨勢博士がちょっとそれっぽいことを述べていたが(述べてなかったかも)、ここまで手がかりの無い、残さないという意思を感じる事件は、私が寡聞にして知らないだけかもしれないが、かなり珍しいと思う。
しかもこれに読者への挑戦状があるのだ。どっから手を付けろと。にもかかわらず推理披露を読んでみて、ちゃんと「心理の足あと」が残っていたことに気付かされ、驚かされてしまった。わかんねえよこんなん。
独創的と聞いてメタミステリすれすれの手口かと思ったが、全然そんなことは無かったので安心して読んで欲しい。

No.36 8点
(2020/12/20 11:34登録)
 雑誌「日本小説」昭和二十二年九月号から昭和二十三年八月号まで、一万円の懸賞金付き犯人当て小説として連載。終戦直後の超インフレ期なので貨幣価値は算定し難いが、当時の公務員初任給が2,300円だった事から推し量ると、一万円はそこそこの金額だったと思われる。雑誌社ではなく、本作に絶大な自信を持っていた安吾本人が、全て自腹を切ったそうだ。
 連載は大評判を呼び、高木彬光のデビュー作『刺青殺人事件』、横溝正史『獄門島』、木々高太郎『三面鏡の恐怖』等を押さえて第二回探偵作家クラブ賞(現・日本推理作家協会賞)を受賞。戦後初期の傑作として、現在に至るまで高い評価を確立している。言わずと知れた大名作で、自分も何度読み返したか分からない。ただ各事件の詳細については流した部分もあるので、今回は腰を据えて読んだ。発表時の経緯を鑑みて、テキストは各所に安吾の挑戦状が挿入された初版準拠の青空文庫版を使用。
 物語は昭和二十二年六月、N県有数の富豪・歌川家の人里離れた屋敷に、中堅詩人にして若主人・歌川一馬の名を騙った招待状により家人と文壇画壇の招待客、総勢二十九名の男女が集められる所から始まる。彼らの関係がまたこれでもかと言うほど縺れ合っていてタダゴトではない。当主の多門は老齢ながら艷福家で家には妾や隠し子が入り乱れる上、招待される側も一馬の元妻や現妻の元愛人など、くっついたり離れたり角突き合わせたりしている連中が目白押しの有様。この手の作品を読み慣れていても、理解するのはなかなか難しいレベルである。正直ここまで凝る必要は無いのだが、そこは懸賞小説。まずは設定で読者を誑かしに掛かってくる。語り手を務める小説家・矢代の妻の京子まで、元多門の妾という念の入れようである。
 役者が揃った所で、ここを舞台に八つの殺人事件が続発する。古式床しい館ものを思わせる展開だが、肝心の中身は意外にモダン。各々の事件にも物理トリックなどの無駄な尾鰭は付いていない。少数の例外を除いては、誰にでも行えるシンプルイズベストな手口の連続。話題性とこの内容が当時は新鮮だったのだろう。江戸川乱歩をはじめ松本清張、高木彬光など、玄人筋の評価は一貫して良い。犯人の行動は悪目立ちしているようにも思えるのだが、物語の幻惑も相俟って、読んでいる最中には全くそう感じない。ここらへん作者の巧みなところだろう。
 第一と第八の殺人はセット。突発的な第三第四の事件がストーリーの骨子となる。瀬戸際ギリギリの三番目の犯行はほとんど早業だが、それ以外は無理のない展開で、第七の殺人など役割分担が自然。有名な"心理の足跡"や、第五の殺人での「人々がにわかに何人か立ちますと、それにつれて又何人か便所へ立つのはよくある現象」なる指摘など、大上段に振りかぶらない、実生活上の心理洞察を主眼に据えた小説と言える。
 同趣向でこれを超える作品はあるかもしれないが、大正モダニズム路線からいきなり登場した衝撃度と、徹底したゲーム性とを評価して加点。そういう意味で、挿絵と挑戦状の付された東京創元社の『日本探偵小説全集10 坂口安吾』は購読に理想的である。

No.35 7点 Kingscorss
(2020/11/09 21:09登録)
内容的には申し分ないのだが、やはり登場人物が多すぎて頭が回らない。本屋で試し読みして買おうとする人は最初の5ページ読んだだけでかなりの確率で買うのを断念するはず。

ただ単に人数が多いだけならここまで混乱しないのだが、すべてフルネームで登場し、夫婦なのに名字が違ったり、上の名前で呼ばれたり、下の名前で呼ばれたり、あだ名で呼ばれたりする上、登場人物の関係がこれでもかというぐらいぐちゃぐちゃで極端に把握しづらい。例を挙げると、あるキャラクターは、以前は主役Aの父親の妾で今はAの友人B(語り手)の妻でAの父の他の妾との間に生まれた娘と仲がいい設定。これだけでも混乱するが、このようなキャラクターが20人近くも登場し、作中で一箇所に集まり半月を共に過ごし、好き勝手に動き回るので斜め読みなんてしようものならすぐ誰が誰だかわからなくなる。

当然のごとく人物相関図みたいなものはないので、50ページぐらいまで読んでから登場人物表を(人生で初めて)自分で作って最初から読み直しました。
(;´∀`)

前半はとにかく登場人物が多いので読むのが大変ですが、後半は人がガンガン殺されていくので人数も減り、そうなって初めて内容を把握できて面白さを実感。純文学の巨匠が書いたとは思えない本格ミステリーでした。

登場人物の多さ以外で内容に不満だったのは、登場人物たちが周りでガンガン殺されていくのに最後の方まであまりにみんな無警戒すぎ。もう、本当にノーガード。何事もないように生活しているのに違和感。明らかに共同生活してるやつらの誰かが殺人鬼とみんな認識してて、殺人動機もわからない、次のターゲットもわからないというのに、みんな気にしなさすぎ。のんきに逢引したり、街をぶらついたり… 普通ならいくら警察に言われてても怖がってこの家を出てくとか、頭がおかしくなるとかするはずなのに…

あと、警察が無能すぎ。すごい数の人が期日までに殺されて、犯人も内部犯行とわかっているのに全く特定できず、登場人物全員が逗留している家を警戒しているのに次の殺人も全く防げない。その上で最後まで結局犯人わからないとか。

最後にまとめの総評的なことを少し書くと、登場人物が把握できるかどうかで面白さが変わってくる作品だと思います。トリックや動機とかは現実味があって(その分人によっては淡白に感じるかもですが)好みでした。どちらかと言うと、完全に熟練された本格マニア向け作品でした。

No.34 6点 バード
(2020/04/15 07:00登録)
本書はネタバレくらった上で読んだので書評は簡単に。

角川文庫版の法月さんの解説によると安吾さんが特に重きを置いたのは合理性だそうだ。確かに犯人の行動理由には相当気を使っていたように思える。作者のこだわりがにじみ出ているのは良作の証だろう。

本作の不満点は登場人物一覧が無い事である。これだけ多くの容疑者候補が登場するのなら、ぜひ付けて欲しかった。(多分当時の日本は海外と違い登場人物一覧を付ける文化が無かったのだろうが。)
ネタバレ済みに加え一覧不備もあり、碌に考えずに読んだので、犯人を一意に当てられる構造なのかはよく分からない。発表当時には一部読者に対し「犯人当ての挑戦」があったそうだが、直感では別解もありそうな気も・・・、どうでしょう。その内時間が出来たらゆっくり検証してみたいです。

No.33 9点 クリスティ再読
(2020/01/09 22:31登録)
皆さんの評を読むと、本作「読みづらい」という声があるようだが、本作の一番の読みどころはこの軽薄で無頼で俗っぽい文体にあるようにも思うんだ。「終戦直後のポップ」だと思えばいいんだよ。独特のリズム感があって、いいな。評者読んでてニヤニヤが止まらず。安吾はそりゃブンガクシャって奴だが、高尚低廻なんてもんじゃないからね。ゲタゲタ笑って読んでも何が悪いんだ。
ミステリとしてはねえ、ミスディレクションって何となく目立たないように埋め込んで...と思うあたりを、わざわざ露悪的に面白く演出しているあたりが、さすがと思わせる。そりゃあさあ、手がかりをちょろっとわからないように仕込むよりも、派手に衣を着せて提示する方が、いかにも手品ってもんじゃないか。「面白過ぎる」あたりが全部ミスディレクションになるのが、素晴らしいと思うよ。
キャラで言えば、そうだね、「以ての外の不美人で、目がヤブニラミでソバカスだらけ、豚のように太っている」千草の扱いがなかなか面白い。ミステリでの振られた役割が、ヒネクレ心理を穿ってる。千草をキーになるキャラと思って読むと、オモムキ深い。

評者の持ってるのは中学生の時に入院したことがあって、その時にお見舞いに貰った角川文庫だった。だから表紙は映画のシーン(諸井看護婦を拷問する...)で、看護婦はロマンポルノを代表する宮下順子だ。ATGが商業主義に堕落した、なんて言われた頃の話。久々の再読だが、とっても懐かしい(映画は残念、観てないが、この頃「本陣」もATGだ)。
追記:映画見た。逐語的映画化といっていい。これほどまでに原作に忠実な映画化、もないものだ。だけど、多すぎる登場人物で原作読まずに映画だけ見たら、わけがわからないだろうな。評者原作何度読んでるかわからないくらいだから、やたらと楽しめる。メタというか企画的に実験的(苦笑)

追記:もうもめるのはイヤなので、ご指摘にあった個所は消します。別に誰か攻撃しようという意図はまったくないのだけど...そもそもの文意は tider-tiger さんがまとめたそのものです。

No.32 4点 imnottheonlyone
(2019/11/17 10:37登録)
手がかりは面白いけど、それだけっていう感じ。
角川文庫の表紙はあざとくてイヤだ。

No.31 9点 モンケ
(2019/10/15 07:25登録)
埴谷雄高だか大岡昇平だかが「推理小説だとちゃんと構成された小説書けるんだなあ、坂口安吾」って訝しがっていたが、この作品でもちゃんと「坂口安吾」してますよ。出だしの人物紹介の怪描写からして坂口安吾作品を読んだことの無い方には「なにこれ?」となると思います。
テーマは「不連続」ですが犯人と意図は「連続性」を維持しているので、物語の破綻はないと思います。ただ坂口安吾には、小説中でもっともっと遊んで欲しかったと思います。登場人物ことごとく奇人変人なのは良いのですが、展開においても「これぞ奇書」と言うぐらい思う存分に暴れてほしかった。

No.30 5点 青い車
(2019/07/14 07:43登録)
 『堕落論』を読んで、そういえばとこの本の書評を投稿していなかったことに気付きました。それまで忘れていたのはこの『不連続~』の印象があまりに薄かったからでもあります。TSUTAYAで借りた映画を観てあまり面白いと思えず、いや原作なら違うはずだと買って読んでもやはり感想は変わらなく、その後はすっかり本棚の奥に眠ったままでした。
 毒舌な安吾に失礼ながら毒舌で返すと、彼には推理小説を書く才能はなかったと思います。とにかく人物の整理の拙さが気になる所で、癖のある人ばかりなのに、それがろくに整理されてないうちに死に出すのでストーリーが窮屈に感じます。トリックもイギリスの古典を連想したのですが、向こうのものの方がはるかに分かりやすくてスマートに書かれています。こちらの方は同じアイデアを悪戯に複雑にして書いたというような印象を受けました。マニアが好きが高じて書いた習作のような未熟さがあります。

No.29 7点 レッドキング
(2019/07/13 22:28登録)
「葉を隠すなら森の中」 ある一つの殺人の目的を隠すためには、不要な連続殺人を起こして、そこに紛らわせてしまえばよい。その目的に4人の死体が必要ならば、さらに多くの死体を作って、もっと多くの役者を集めて何の目的かワケわからぬ様にしてしまえばよい。だが限られた舞台の中で多くの連続殺人が起これば、全ての犯行が可能だった人物が絞られて来てしまう。しかし犯行が単独者でなく複数者で行われたとしたら・・・。目的の「不連続」と犯人の「不連続」。共犯者の「人間関係トリック」が、不慮の事故によってあからさまに演じざるを得なくなり、逆にあぶり出される結果に・・・。犯人が自分を摘発した探偵にラストに贈る言葉「汝、賞賛あるべし」が最高にカッコイイ。

(以下、ロコツにネタバレ)
40年前のATG映画「不連続殺人事件」を池袋の名画座で見た。故:内田裕也追悼特集の一本で、映画の出来自体はいかにも貧乏くさい昭和日本映画だが、「ピカ一」を演じた若き内田裕也と「あやか」の夏純子が見事に役に嵌ってて、以来、坂口安吾の小説読んでも、「ピカ一」の偽悪的かつ詩的なセリフことごとくが内田裕也の口調に脳内変換され「あやか」の顔が全て夏純子にイメージされてしまう。そしてそれが実にいいのだ。

No.28 5点 好兵衛
(2018/10/31 12:43登録)
『ネタバレあります』

ミステリを読む最初の頃に読んでおいた方がよかったと思った古典。
文体は、個人的には読みやすく。
乱痴気騒ぎ的な登場人物や、現代離れした状況の雰囲気は大好物です。
人数もそんなに気になりませんでした。

ただ、一番大事な謎の部分が。
分かりきっているというか、驚きがあまりなかった。平凡な感じ。
もっと、謎があるのかと、これじゃないだろうと思って。
ずっと、解決編前に、考えていたんですが。ずばり、それで…
推理小説としては、すこし肩すかしでした。

共犯という時点で、やれることが、かなり広まり。
事件を追っていると、大体この二人にしか一連の殺人ができないことが
分かります。独創性も感じませんでした。

ただし、読んだ後なんとなくですが、忘れられなくなる作品。
書き手がいいのでしょうか…時代もいいのかもしれない。

No.27 9点 ボンボン
(2018/08/04 09:31登録)

(ネタバレあり注意)


何だこのハチャメチャな世界感、気持ち悪いなと呆れていたが、何とそこに大仕掛けがあったとは。「木の枝は森の中に隠せ」と。作品全体そのものを道具にしたトリックなどというものが存在するとは、ミステリ読み実績の浅い私には大変勉強になった。「心理の足跡」という一発の本塁打でパァっと目が覚める。
しかし、煙幕みたいに同じような人がゾロゾロぞろぞろ。異様に濃すぎる人々で埋め尽くされ、しかも皆、出力100%で活き活きしている。それがそのまま著者の気概を表しているようで、読み終えてみれば、この人海戦術?も悪くなかったかなと思う。

No.26 8点 まさむね
(2017/06/10 22:35登録)
 登場人物が異様に多く、しかも物語のスタートから次々に登場するものだから、人間関係も含めて、人物把握が結構しんどかったですね。登場人物一覧が欲しい…と何度思ったことか。そういった観点では、あまり読みやすいとは言えないでしょうね。また、現在では決して書かれないであろう差別的用語も満載でございました(個人的にはその時代の社会的認識に触れられるという意味で、否定的には捉えないけれども)。
 とは言え、フーダニット作品として実に面白い。解決篇で探偵役が語る「心理の足跡」にも納得。確かに、ソノ場面を読んでいる際には何となく違和感を抱いたのですよねぇ。「木は森の中に隠せ」。まさしくそのとおりで、私は隠された木を見つけることができませんでした。
 何より、坂口先生は明らかに楽しみながら書いたのであろうなぁ…という感じが伝わってきて、好感を持ちましたね。

No.25 8点 ロマン
(2015/10/22 21:30登録)
開始数ページで10人以上の人物が登場し、その人間関係が紹介され、しかも、全てが事件関係者になり、追うだけで精一杯の状態で、殺人事件が連続して9件も起きるという始末。警察が登場して、容疑者も拡大して、30人近くの人間が名を挙げるに至っては混乱必至。しかし、皮肉なことに事件によって人が減り、対象が絞られることで、明確で論理的なミステリに収束していく結構は実に見事。金持ちと文士達の淫乱極まる男女関係をベースに、一種軽薄とも言える独特な文体、ロジカルな真相と、懐かしき探偵小説の趣にして、ミステリとしても良作。

No.24 10点 斎藤警部
(2015/07/21 21:20登録)
(ネタバレ的表現含む)

読了後、職場の友人に読ませたくて読ませたくて、老婆心で登場人物一覧表を作ってしまったものです。
犯人は誰か、(次に)殺されるのは誰か、に加えて事件を解決する探偵役になるのは誰か、の興味まで重なったフーxxxイットの三面鏡状態に、そして異様な人物描写の連続に目眩ましされた巧妙な叙述(犯人隠匿)トリックに最後まで騙され通し!
文学臭がきついわけじゃ無いが、流石に良い文芸小説に仕上がっている。そこもやはり大きな魅力。
兎に角、これほどずっしり重い『やられた』感を背負わされたミステリーは今のところ他に無いですかね。「葉桜」でさえここまでは。 私にとってはまず完璧な作品です。

因みに、海外の某作品より先に読みました。某作品の方は、ほとんど最後まで犯人像に気が付きませんでした。 が、ふとこちらの作品を思い出し、「もしや。。」と。 そちらも相当に好きな作品ですが、こちらの比ではありません。  

「Friend族殺人事件」じゃないよ!

No.23 5点 了然和尚
(2015/05/19 16:26登録)
30年ぶりぐらいの再読です。登場人物が多く文章は翻訳物より読みにくいですね。同時期に本陣や獄門島が書かれているわけですから、作者の趣向なんでしょう。100ページぐらいで理解も限界に達しそうなときに、屋敷見取り図が部屋割り付きで出てきて(この人名一覧の方が役に立つのだが)助かりました。特に問題ないと思うので、この図表を最初にもってきたほうが親切ですね。内容は、まあまあといった感じですが、前に読んだときから、犯人は推測可能で、30年覚えていられるほど本格の王道でしたね。ただ、最後の事件の前に神山弁護士がほとんど真相に到達している点は、再読してみると不思議な展開でした。

No.22 9点 いいちこ
(2015/02/25 16:22登録)
「木は森の中に隠せ」の王道を地で行く作品で、本来のターゲットに、やむを得ざる殺人と無関係な殺人が混然一体となったプロット、「不連続殺人事件」のタイトルは非常に秀逸。
一方、犯人当て懸賞付小説として発表されたフーダニットという経緯からして、ある程度やむを得ないものの、登場人物が極めて多く整理不足、全員が個性的すぎて書き分けが不徹底である点は難点。
従って、犯人の行動の非合理性からその心理を推測し、真相解明に向かう手筋は鮮やかであるものの、登場人物の普段の言動がトリッキーすぎることで効果が半減している点は事実。
文体の独特さと読み辛さが指摘されることが多いが、概ね当時の仮名遣いや言い回しの慣習によるものであり、筆致自体は簡潔で非常にわかりやすかった。
反面、異様な連続殺人にもかかわらず緊張感には乏しいのだが。
以上、毀誉褒貶相半ばする作品だが、個人的には壮大なスケールの連続殺人を僅かな手掛かりから解明する手際の良さ、随所に散りばめられた伏線の妙を高く評価

No.21 9点 蟷螂の斧
(2014/07/24 09:44登録)
(再読)<東西ミステリーベストの19位>内容は忘れ、、若かりし頃すごい小説を読んだという記憶のみでした(笑)。登場人物相関図を作成しての再読です。なんと乱れた関係なのでしょう!これを眺めているだけでも楽しい?。トリックの前例(不連続という題名に係るトリック?)があるということですが、チョットそれは違うのではという感覚ですね。ネタバレになるので詳しくは書けませんが、それはトリックでもなく、もしトリックとして捉えても趣旨が違うと思います。かの松本清張氏に「日本の推理小説史上不朽の名作で、・・・・・・・欧米にもないトリックの創造である。人間の設定、背景、会話が巧妙をきわめ、それに氏の特異な文体が加わって、その全体が一つのトリックだと気がつくのは全部を読み終わったときである」と言わしめています。つまり本作の最大のトリックは別のところにあるということだと思います。なお、角川文庫(昭和52・16版)の解説は高木彬光氏で「メイン・トリックには一つの前例が存在する。しかし、・・・・・その作品より、この「不連続」のほうがはるかに上なのだ。」~トリック部分の解釈では、松本説を支持しますね。まあ、いずれにしても傑作であると思います。全体として10点満点としたいところですが、ある点で、ポリシー通りマイナス1としました。

No.20 6点 sophia
(2014/04/12 22:43登録)
殺される人数は多いですが、トリックらしいトリックはひとつだけです(それも金田一少年にパクられてましたが)。登場人物が多いのに登場人物表がないのがきつかったです。人物の書き分けがあまり出来ていないのも苦痛に拍車をかけます。何せ終始いるのかいないのか分からない人物も何人かいますし。ミステリーファンだったら話の種に一度読んでおくといい、という程度の作品。とにかく読みづらい。

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