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ミステリの祭典

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曲った蝶番
ギデオン・フェル博士シリーズ 別題『曲がった蝶番』

作家 ジョン・ディクスン・カー
出版日1951年01月
平均点6.79点
書評数24人

No.24 8点 文生
(2023/03/05 10:49登録)
周囲に誰もいない開けた空間で、男が突然喉を掻き切られて死亡するというとびきりの不可能犯罪が登場します。しかし、このトリックはいくら何でも無理ありすぎて到底うまくいくとは思えません。エドワード・D・ホックが行った密室長編ミステリーを対象とした人気ランキングでは『三つの棺』『魔の淵』『黄色い部屋の謎』に次いで4位にランクインされているものの(5位は『ユダの窓』)、不可能犯罪という部分だけを切り取ればカーの作品の中でも最低クラスです。その代り、ケレン味たっぷりに語られ、二転三転する物語の面白さはその欠点を補って余りあります。むしろ、物語の雰囲気に荒唐無稽なトリックがうまく溶け込んでおり、欠点が欠点でなくなっているほどです。カーのストーリーテリングのうまさが存分に発揮された傑作。

No.23 8点
(2020/08/27 16:43登録)
 一九三八年夏、イギリスのケント州。二十五年近くもアメリカのコロラドで暮らし、一年と少し前に帰国して少なからぬ遺産とマリンフォードおよびスローンの領地を相続した准男爵、サー・ジョン・ファーンリー。だがそこに彼は詐欺師の成りすましであって、自分こそが本物のジョン・ニューナムだと名乗る人物が現れた。
 彼の主張によると一九一二年四月十五日の運命の夜、自分は氷山に衝突して沈みつつあるタイタニック号の中で、今はジョン・ファーンリーと名乗っている少年に襲われ、怪我はしていたがまだ息のあるところを発見されて最後の救命ボートに押しこまれたらしい。船中で意気投合した二人は事故直前に身の回りの品一切を交換しており、ありふれた日常にうんざりしていた自分はそのままサーカスの経営者ボリス・エルドリッチに拾われ、少年の名を継いだ新たな存在、パトリック・ゴアとなってアメリカのサーカスで大々的な成功を収めたのだという。
 イギリス巡業で手にした安新聞の写真で兄の死と、跡継ぎになりかわろうとした小僧の生存を知り、ペテン師の化けの皮を剥ぐために故郷に帰ってきたとゴアと名乗る男は言った。おとなしく引く気がないならそれでもいい。こちらには指紋という、疑う余地のない証拠があるのだと。ゴアと事務弁護士のウェルキンはバミューダに逼塞していたジョンの元家庭教師、ケネット・マリーを呼び、彼は沈没前に准男爵家の人々から採取した指紋帳を持ってこちらへむかっているのだ。
 ジョンとモリーのファーンリー卿夫妻、顧問弁護士のナサニエル・バローズ、そして立ち会いに呼ばれた作家のブライアン・ペイジ。彼らの見守る中、到着したマリーはふたりの相続権主張者から指紋を採り、結果が出るまで皆を読書室から締め出してしまう。早ければ十五分ほどで全ての決着がつくはずだった。
 だがそのわずか十分後准男爵サー・ジョン・ファーンリーは、イチイの垣根に囲まれた庭園の迷路の中で、喉を切り裂かれ池にうつ伏せになった死体として発見される。そして混乱の中読書室からは、何者かによってマリーの指紋帳が盗まれていた――
 『死者はよみがえる』に続くフェル博士シリーズ第九長篇。1938年発表。この年には両作の他に『ユダの窓』『五つの箱の死』等が発表されており、『火刑法廷』以下四長篇を執筆した前1937年、『緑のカプセルの謎』『読者よ欺かるるなかれ』以下三長篇を刊行した翌1939年と併せ、作者が質量伴う最盛期にあったことが推察されます。
 腰までの高さしかない迷路そっくりの垣根の中で起こった殺人で、オープンな密室では『囁く影』と並ぶ出色の設定。目撃者はいても、被害者の死亡直前の奇妙な動きだけがクローズアップされ、誰も犯人の姿を見た者はいない。凶器のポケットナイフは睡蓮の池から十フィートばかり離れた垣根に押し込んであった。いくぶん荒唐無稽な自殺か、それ以上に不可能な他殺か。
 七月二十九日水曜日から三十一日金曜日までの三日間の出来事を扱ったもので、一日ごとの三部構成。"どちらが本物のジョン・ファーンリーなのか?"という人間入れ替わりを巡る謎から一転し、不可能犯罪を扱う第二部以降では俄然、ファーンリー家に伝わる悪魔崇拝の儀式書や、十七世紀にチャールズ二世の宮廷で披露された機械仕掛けの自動人形《金髪の魔女》などがクローズアップされ、事件を覆う怪奇性が強くなっていきます。
 垣根か植え込みから聞こえてきた《ガサガサという音》。「ガラス戸越しになにかから見られているような」という証言。地面で飛び跳ねていたという素早い動きの"なにか"。姿を消し、指紋帳を手にして床に横たわったまま発見されたメイドのベティ。そして死んだジョン・ファーンリーが魘されていた「だんだん曲がっていく白い蝶番」のイメージ。これらの諸要素が一体となって、異様な迫力を持つ真相へとなだれ込んでいくその見事さ。終幕直前、モンプレジール荘の窓からすぐ先の暗闇に、ファーンリー邸の自動人形が座っている場面には思わずゾクッと来ます。
 解決も事務弁護士バローズの仮説、フェル博士がキーパーソンを追い込むために組み立てた偽の推理、そして犯人から博士宛に送られた手紙による告白と三段構え。偽証は確かに問題ですが、あの証人がいなくても不可能性は成立するので特に問題は無いかと。むしろ完全なる目撃者がいないと決着不可能な事件なので、そのために用意された存在でしょう。これも含めてカーが一番苦労したのは、作品全体の構造と緊密に結びついた犯人像の設定だと思います。
 出来は『緑のカプセルの謎』とほぼ同格で、〈2012年版東西ミステリーベスト100〉選出の『火刑法廷(10位)』『三つの棺(26位)』『ユダの窓(35位)』『皇帝の嗅ぎ煙草入れ(69位)』に『ビロードの悪魔』をプラスした、カー/ディクスン名義のベスト5に次ぐ作品。ディテクション・クラブの重鎮ドロシー・L・セイヤーズに捧げられている事でも分かる通り、カー絶頂期の自信作です。

No.22 7点 ◇・・
(2020/03/14 12:31登録)
トリックが明らかになった時に浮かび上がって広がっていく不気味な感覚が見事に成功している。動機のひねりも、そこまでやるかみたいな感覚。題名も絶品。

No.21 7点 レッドキング
(2019/02/02 14:08登録)
トリック自体は少年マンガレベルだろうが、登場人物ことごとくのフリークさがよい。特に主犯共犯の一見クールな異常さが素晴らしい。内容から言って「悪魔の人形」「金髪の魔女」とか妥当だろうに、このタイトル。オカルト趣味とトリックよりも、屈折した情念のドラマ重視の暗示とみた。

No.20 7点 弾十六
(2018/11/05 00:20登録)
JDC/CDファン評価★★★★★
フェル博士第9作。1938年出版 創元新訳(2012)で読了。
四十年前、創元推理文庫の旧版(中村 能三さん)で読んで、あんまりパッとしない話だな〜、という印象だったのですが、たまたま古本屋で新訳を見つけ再読。うわぁ冒頭から素晴らしい! これは実は凄い傑作だったの? と思ったら中だるみでちょっとガッカリしたものの、ラストは怒涛の超展開。いや〜JDCらしい怪傑作ですね! で読んでるうちに「中二病」が浮かんだんです。だってタイタニック、自動人形、悪魔信仰ですよ。秘密めかした態度とか、不器用な恋愛描写もまさに思春期男子。
ところでノウゾーさんの訳が悪いはずがない、と思って昔の文庫を見たら… 文章やセリフがとてもぎこちないですね。(本作をキッカケにJDC/CD再読が始まりました。なのでトリヴィアコーナーはありません。歌が出てきたかなぁ)

No.19 6点 makomako
(2017/03/24 22:14登録)
はじめのうちは実に面白い。主人公の友人で誰もが疑ったこともない地元の名士が偽物で、本物はこの俺だといった人物が出てきての争いとなる。そりゃ無理でしょうと思っていたら、案外名乗り出た人物が本物かもしれない。どうなることやら。
 この辺りのお話はカーのストーリーテラーの本領発揮といったところです。
 かなりお話が進んでようやく殺人がおきるのだが、殺人の方法が全く分からない。だとすると自殺なのか?読むほうは完全に作者に翻弄されてしまう。
 さすがカーと思わせる展開なのですが、フェル博士の長々とした解説がかなり凡長でちょっと嫌気がさしてきたところで、犯人ととんでもない殺人方法が提示される。
 せっかくのお話がだいなしだなあ。長々と読んできてこんなのではむちゃくちゃではないかと腹立たしく思っていたら、さすがにこのまま終わるのではなく、真相はまたもとんでもないものでした。まあ納得なのですが、無理っぽいことは否めませんでした。

No.18 6点
(2016/12/16 10:12登録)
ふたりのジョン卿の人物真偽をめぐる争いで惹きつける冒頭部分は、よくできています。そしてその後に起こる事件。突然の発生でしたが、被害者が意外な人物だったので驚きました。ここまでの前半部は絶品です。タイタニック号の沈没事故が背景にあるのにも魅かれます。
もちろん、その後の怪奇趣味絡みの展開、そして怒涛の後半のサスペンスと解決にも心躍らされます。

読む前からタイトルに関心がありました。
「蝶番」。工務店絡み?それとも日曜大工?
蝶番―>開き戸―>居室―>密室殺人、と安易な発想をしていましたが、表紙の絵を見なおすと、いやこれは密室ではないのかと、また考えなおしたりして、結局は・・・
間違いなくトリックに関わるとは思っていましたが、はたして・・・

楽しめる要素はてんこ盛り。地味なタイトル、真偽争い、オカルト、トリック、そして真相。
真相と背景との結びつけ方がやや弱い気がしますが、全体としての物語性は抜群でしょう。

No.17 6点 クリスティ再読
(2016/10/10 20:39登録)
本作好き嫌いがはっきりするようだね。物語的な流れはスムーズでいろいろ盛り上がって面白く読める。カーのストーリーテラーとしてのイイ面が出てるね。ただミステリとしては、真相が分かっていて黙ってる人が多すぎ。こういうのフェアじゃないと思う。
でまあ、本作の特色...というか、オカルトの絡めかたなんだけど、最終的に「隣の黒魔術師さん」って感じの妙にカジュアルでおどろおどろしくない結果に終わるのが、評者なんか凄い好きだ。本作カーの中でもオカルトをこれでもか!と投入した小説になるんだろうけど(トリックもちょいグロだし)陰惨にならずに、妙に能天気な軽さが出るあたり面白い。犯人の告白がナイスだね。
要するに、淀川長治老師が「私の宝」と呼んで愛した某映画を評者も大好きなんだよ....まあだから小説としては7点だけどミステリとしては5点くらいで間をとって6点。

No.16 9点 nukkam
(2016/05/11 11:24登録)
(ネタバレなしです) カーの作品を読んで現場見取り図が欲しい、と要求不満になったことが何度あることか。1938年発表のフェル博士シリーズ第9作の本書は庭にいる被害者に誰も近づけなかったという不可能犯罪ものなのですが、文章だけでは庭の間取りや登場人物の位置関係がわかりにくく、せっかくの不可能性がぴんときませんでした(私の読解力が平均レベルを大きく下回っているのも要因ですが)。ただそれを差し引いても本書は本格派推理小説の傑作だと思います。このとんでもないトリックは成立条件が極めて特殊なので、そんなの見破れるわけないじゃないかと拒否反応を示す読者も少なくないでしょうけど。二人の財産相続人候補の静かな対決も読み応えありますし、自動人形(現代のロボットとは全然異なります)の演出も巧妙です。もしも本書を映像化したらあの場面やこの場面はどう再現するのかと想像するだけでもわくわくします。

No.15 9点 青い車
(2016/01/22 22:30登録)
カーはまだまだ未読のものも多いですが、今まで読んだ中ではベストと考えるのは本作です。はっきり言ってトリックはかなり無茶です。クイーンがこれをやったら読者は怒り出すでしょう。しかしカーはそれをケレン味たっぷりな筆致で最大限魅力的に演出しており、僕は不思議と許せてしまえます。最終章で語られる真相には大袈裟でなく驚愕し、犯行シーンを想像すると背筋が凍りました。他のカー作品ではあまり見られないパターンの幕引きも印象的です。

No.14 8点 ロマン
(2015/10/24 23:05登録)
二人のファンリー、動き出す人形、魔術への傾倒、先行して起こった殺人、屋根裏の秘書、自殺と判断するのが妥当な状況での殺人事件。そのどれもが狂言的な雰囲気を創りだし、氷山にかかる晴嵐の如く真実を覆い隠す。真相は聞いてしまえば不思議すらも覚えないものでありながら、不可能犯罪とホラー的雰囲気を作り出すカーのストーリィテリングは流石。曲がった蝶番とは。動機は。犯人は。フェル博士の真意は。その全ての謎に対して斜め45度前方への飛躍が必要である今作は、何も分からずとも読ませてしまう文章の上手なカーだからこその作品。

No.13 5点 斎藤警部
(2015/10/23 12:40登録)
本屋の背表紙の題名と著者名だけ見て、密室物かとしばらく思っていたものです。固く鍵の掛かった書斎のドアを探偵警察家の者総がかりの力づくでぶち破ったら、はずみで蝶番がひん曲がってしまいました。しかし、よく見ると、ありえない方向への曲がり方をしており。。 みたいなね。
いっそ本当にそういう物語だったら良かった(?)。不可能事象の解明はなかなかに拍子抜け。とは言えどこか土埃の匂う古風な因縁物語の雰囲気は悪くなく、読ませてはくれる。

No.12 5点 ボナンザ
(2014/04/08 16:19登録)
これは玄人好みですね。
実に渋い魅力です。

No.11 4点 蟷螂の斧
(2013/12/10 19:59登録)
導入部分は非常に惹かれ期待が高まりましたが、読むうちに、だんだん中だるみの感が強くなってしまいました。1年前の殺人事件が、何回も中途半端に語られるのでメインの事件に集中できませんでした。人形の登場も今一つピンときませんでしたし、オカルトチックな雰囲気もあまり伝わってきませんでした。犯人像の伏線もほとんどないし、証言は?????。要は肌に合わなかったということです。

No.10 4点 mini
(2012/12/20 09:55登録)
本日20日に創元文庫からカー「曲った蝶番」の新訳版が刊行される、創元ではクイーンなどと同様にカーも新訳版への移行を着実に進めておりその一環
一方の早川書房は「三つの棺」の新訳をやる気無いのかな、どうする早川?
* 「曲った蝶番」は以前に書評済だけど一旦削除して再登録

以前からある傾向がある事に気付いていたのだが、カー作品で「曲がった蝶番」の評価が高い人ほど「三つの棺」の評価が低い傾向があって、この両作どうやら反比例の相関関係が有るようだ
私は「三つの棺」を極めて高く評価していてその理由は書評時の機会に譲るが、言わば反比例するように私は「曲がった蝶番」をあまり高くは買わない
「曲がった蝶番」はカー作品中でも物語性が豊かという意見が多いが、終盤の過去の経緯の章を除くと物語性が豊かと言うより色々な出来事がゴチャゴチャと繰り出されてるだけに思えるのだよな、なんか纏まりが悪いちゅうか
終盤のタイタニック号の件も、要するにドイル長編に見るように後半に動機に繋がる経緯を後付けした感じで、ホームズ長編の構成パターンを批判しながら「曲がった蝶番」を絶賛するというのは矛盾を感じる
舞台設定もお屋敷もの館もの風なんだが、私はCCや館ものという舞台設定に全く興味が無い読者なのでこの面でも魅力は感じなかった
あと特殊なトリックだが、まぁこれは読者側が推理出来るような代物で無いのは大目に見る、これはこれで別にいいのだが、トリックが説明されても”だから何?”みたいな感心するようなトリックじゃないしなぁ
私にとってはカーの最高傑作と言ったら、なんたって「三つの棺」なんである

No.9 5点 HORNET
(2012/12/01 17:39登録)
 読み進めている間は楽しめたが、読み終えて満足感というか納得した感じはあまり得られない。これが率直な感想。
 准男爵である良家の真の後継者を判定するという始まりは話に引き込まれる。その真贋が見極められる最中に起こる殺人。展開としては申し分ない。が、その後に付加されていく様々な要素、悪魔崇拝や機械人形など・・・確かに怪奇要素が盛り込まれることによって物語に面白みは増してくる(だからこそ「読み進めている間は楽しめた」)が、読了してみると結局それだけのものだった気がする。つまり、極端な言い方をすると不要、いやむしろ推理という点から言えば惑わせる要素になっていただけと感じる。
 誤解があるといけないので、私は別に物語性を廃した純粋なパズラー至高主義ではない(嫌いではないが)。無駄な恋愛要素を除いては、怪奇的な雰囲気、背筋が冷たくなるような恐怖感はむしろ好きである。ただ、本作の場合は、そうした要素を追求していく場面にかなり力点が置かれているにもかかわらず、真相とのつながりが希薄すぎた感が否めない(悪魔崇拝がやや関わっていたが、それもそうでなくともいけると思う)からだ。だから決して面白くなかったわけではないが、この評価とした。
 そう思うと、「三つの棺」こそが、両者が融合した傑作だと私は感じる。

No.8 6点 あびびび
(2012/10/06 14:03登録)
タイタニック号の遭難で、名家の後継者が入れ替わった…という設定はわくわくした。現在、ジョン卿として君臨している人物が本物なのか、それとも「私こそ純粋な血を引く真のジョン卿」であると、いちゃもん?をつけて裁判も辞さないというゴア(現在の名前)がそうなのか?

両者が顔を合わせ、指紋鑑定まで進んだところで当然のように?殺人が起きる。しかし、フェル博士の推理は常人には考え付かない、現実味のないトリックだった。いつもこの作家の結末は丸め込まれてしまった感が強い。

No.7 6点 E-BANKER
(2010/09/05 15:05登録)
フェル博士探偵譚の一作。
タイタニック号沈没に端を発する主人公(ジョン卿)の入れ替わり疑惑や、「悪魔崇拝」「自動人形」など事件の周辺に見え隠れするいかにもカーらしい怪奇趣味が見どころの作品。
「犯人の姿が全く見えず、周りに複数の目撃者がある中で、なぜ被害者は喉を掻き切られたのか?」という、いわば開かれた密室の謎が最大のポイントでしょう。
ただ、真相を見破るのはなかなか困難・・・そんな不思議な○○があったなんて・・・と思わずにはいられません。
2人のジョン卿の真贋についても、割とあっさり片が付いてしまったり、悪魔崇拝についても何か中途半端な気がするなど、評判ほどでもないかなという感想。
まぁ、ラスト(第Ⅳ部)での捻りはなかなか効いていて、トータルでは「さすが」と思わせます。

No.6 9点 kanamori
(2010/06/23 20:31登録)
怪奇趣味が存分に発揮されたカーの個人的ベスト作品。
二人のジョン卿の真贋に関するスリリングな展開は最後まで物語に惹きつけられました。
トリックについては賛否が分かれるかもしれませんが、タイタニック遭難による後遺症がダイレクトに不可能トリックに結びつく趣向に感心しましたし、頭に浮かんでくるその状況から受ける衝撃は他の作品を圧倒していると思います。

No.5 9点 りゅう
(2010/05/02 20:03登録)
 傑作。
 どちらのジョン卿が本物なのか、自殺か他殺か、といった謎が二転三転し、興味をかきたてられた。2人のジョンの口頭対決や検視審問でのデイン女史の弁論などの見せ場もある。しかし、何といってもメインになるのは、被害者の周囲に誰もいなかったのに殺されたという不可能犯罪の解明だ。若干ネタバレになるかもしれないが、この作品では2つの種明かしが行われている。1つ目はアクロバチックで確実性に疑問はあるが、十分納得できるもの。2つ目は奇想天外なトリックで、これには意表を突かれた。どちらの種明かしについても巧妙に伏線が貼られている。
 不満に思ったのは、1年前に起きた変死事件の背景がわかりにくかったこと。早い段階で背景の説明がほしいと思った(キリスト教の素養がある人は説明が不要なのかもしれない)。

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