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ミステリの祭典

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屍人荘の殺人
剣崎比留子シリーズ

作家 今村昌弘
出版日2017年10月
平均点7.68点
書評数40人

No.20 7点 レッドキング
(2019/05/12 19:06登録)
このサイトで知って読み、期待以上に面白かった。「二重の密室」の外壁を構成しているのがゾンビの群れって・・・少年漫画「進撃の巨人」を連想した。トリックとしては第一の不可能殺人が面白い。というよりこの部分だけをもっと徹底的に「密室=不可能」に作り込んでもらえたら、第二第三の不可能事件は別にいらないとさえ思った。
ところで、あの第一の殺人のエピソードで、子供の頃に見た円谷プロ「怪奇大作戦」の、吸血鬼になってしまった女とその恋人の男の切ないラストを思い出した。

No.19 8点 モンケ
(2019/05/05 20:15登録)
期待の新人の話題作。いやあ面白かった。孤島や吹雪豪雨山火事に閉ざされた館物ってのはよくあるが、ゾンビの群れに囲まれた山荘ってのがすごい。大満足だ。

No.18 7点 好兵衛
(2018/11/08 15:14登録)
『ネタバレ含みます』

読んでみると、こてこてなクローズドサークル物に
パニックスリラー要素も含み、
読み物としてテンポもよく、だれない作品になっていると思います。
ミステリとしても本格度が高く、
文体はとても読みやすいうえ、説明も優しくて至れり尽くせり
ミステリを読み込んだ人、読んで居ない人どちらにもお勧めできる作品。
最初の殺人では、不可解な状況からの大胆なトリック。
二番目の殺人では、端正なフーダニットが楽しめるかと。

初作で、意欲作なので色々と盛り込んであるところが嬉しいし、贅沢。
反面、ミスリードが多くそれに対する説明に対しての納得感が薄い。
(これは、個人的な感性や、好みも左右するんじゃないかな?と思います。)

*最初の殺人が、事故。一連の殺人の中で、犯人が二人居る。
 (最初は被害者が犯行に加担してる。)

*顔が判別がつかないくらいに食いちぎられていたの回答が
 至近距離で、キスしようとしたから。
 (他の人たちも、至近距離で、顔を食い破られたりしているのですが、
  顔だけ集中的にあとかたもないのは、進藤だけ。
  進藤の顔を一定時間固定するか、
  進藤が食い破られつつも抱きついて星川を固定ぐらいしないと
  こうならないのではないかな?
  ゾンビに噛み付く部分の指定はできないわけだし。
  もしかして、一定時間抱きついていた? 凄いな・・・進藤。)

*主観があえて、ヒントを隠している。関係ない犯行を隠蔽している。
 (基本は好きではないのですが、本筋に関係ないので〇。
  あまりいらないんじゃないかな?程度。好みで分かれるかと。)

*最初の殺人では、密室にする「理由」がないと、
 ホワイにこだわっているんだけれど。
 二番目の殺人のホワイには、あまりこだわっていない。
 わざわざエレベーターを使ったり、長時間の犯行を行う意味が
 推理し得ない。ひるこ式で殺す方が簡単である。
 (これも、殺人の質の違いを示す、ヒントだとは思うのですが。)

*立波殺害の犯行時、犯人はかなり時間をかけて犯行を行っている。
 銅像を移動したり、死体をひきづったり、銅像を拭いたり。
 立波が、ゾンビになるまで二度殺すために
 朝方まで長時間待ってたりしている。
 ただその時、睡眠薬を、葉村、重元、七宮は飲んでいなく。
 犯行が途中で目撃されてしまう可能性が高くかなりリスキーな
 殺し方ではないかな?と、穴を感じる。
 (実際、葉村は出目の部屋まで移動したりしている。)

自分の読みもらしや、好みもあるかもしれないのですが、
ここらへんが、ちょっと腑に落ちなかった点です。
これらがあっても、本筋の犯人あて、どうやったかはしっかりできますし。
ひるこさんの推理にも、無駄はなく、スマートです。
個人的には、第二の殺人の犯人当てが一番評価が高く。楽しめた点でした。
フェア度が、とても高く、難易度がとても丁度いい。

これだけ、細かく読めたのはこの作品の本格度が高く読みやすく
推理する余地やヒントが多岐にわたって盛り込まれていたから。
2018年に、こてこてな本格ミステリが
こうやって、本屋の前列にピックアップされていることを本当に嬉しく思います。
ひるこさんvs明智さんで。ガチガチのミステリオタク推理を
ひるこさんに、論破されまくる明智さんとか、見てみたかったなぁ。
続編に期待してます。

No.17 8点 haruka
(2018/11/01 01:24登録)
かなり特殊な設定を使っているが、
最低限のリアリティを保ちつつ「そんな馬鹿な」と思わずに最後まで読めた。
トリックや推理の過程にも破綻がなく、とても楽しめた。

No.16 10点 sophia
(2018/09/21 23:46登録)
特殊設定をフルに生かしている。中盤までは設定の割に地味な展開でなかなか面白くならないなあと思っていましたが、解決編に入ってからは驚愕の連続でした。クローズドサークル、緻密な論理、叙述トリック、人間ドラマ、私がミステリーに求めているものが全て入っていました。○○○の描写にはあまり筆力は使われていないのですが、多くの人が見たことがあるであろうその手の映画のおかげで具体的なイメージを持って読めるようになっています。トリックを成立させるため、あるいは展開を作るために部屋割りもよく考えられてあります。○○さんは絶対生きてると思ってましたけど、殺しちゃってよかったのかな?しかしデビュー作でこれほど完成度の高いものを書いてしまって今後大丈夫なのか気がかりではあります。杞憂だといいのですが。
追記 再読して気になったんですが、内線電話の履歴の下りで「携帯電話があるんだから内線電話をわざわざ使わないはず」というような話がありましたが、初日の夜から携帯電話は使えなくなっていたのではないでしょうか。その後の高木の証言が嘘だった場合の論理もよく分からないです。まあ評価に影響はありませんが。

No.15 8点 mozart
(2018/07/23 13:11登録)
読み始めからぐいぐい引き込まれて久々に一気読みしました。鮎川哲也賞選考委員全員が推した傑作というのもうなずけます。第2の殺人で何でそこまでするかという犯人の動機(ホワイダニット)についても「本格」作品としては十分許容できる範囲だと思います。ただ、個人的には探偵役のキャラ設定(「青春ミステリー」的味付け?)がちょっとアレでしたが。

No.14 7点 ミステリ初心者
(2018/06/06 01:47登録)
ネタバレをしています。※無駄に長い書評になってしまったため、大幅削減しました(笑)

 クローズドサークル×ゾンビパニックという、いままで読んだことのないミステリでした。非常に読み易い文章ですいすい読めてしました。現実にはありえない状況のミステリにもかかわらず、その作風はきわめて強い本格であり、大変満足です。こんなに若く、オリジナリティーを出し、それでいて本格度の高い作品が書ける作家が世に出て興奮します(笑)。

 満足度の高い作品ではありますが、難癖ポイントもあります。それは、無駄に叙述トリックが使われています。ミスリードに使われていますが、本格度が高いフーダニットと叙述トリック・意外な犯人・どんでん返しは相性が悪いと自分では思っています。つまり、叙述トリック部分は無かったほうが良かったと思います。

No.13 7点 測量ボ-イ
(2018/03/21 08:02登録)
世評も高い鮎川賞受賞作品・・・となると、いやがおうにも期待度は
高まりますが、それを乗り越えるだけのものはありました。
さすがに良作ですね。
○○○が登場しますが、その必然性もある訳ですしね。
採点は
7点(基礎点)+1点(リーダビリティ)-1点(やっぱり少し気味悪い)

(余談)
あまり仲良さそうにない大学生男女が合宿して連続殺人が起こる・・・と
なると、鮎川氏の「リラ荘殺人事件」を連想しちゃいますね。まあ中身は
だいぶ異なりましたが。

No.12 7点
(2018/03/08 09:57登録)
2017年鮎川哲也賞受賞作。
有栖川作品やクイーン作品のように本格中の本格と思い込んでいましたが、実はちょっと違っていました。
かといって、「そして誰もいなくなった」「十角館の殺人」のサスペンス風味とも違う。
ジャンルミックスには違いないのですが・・・
すごい手を使ったものです。奇抜です。

内容を全く知らなかったため、読み始めでは、そのホラー要素で期待を裏切られた感がしたのですが、読み終えてみれば、よくぞそれを盛り込んで書いてくれたと大絶賛。
そもそも恐怖要素と謎解き要素と青春要素があるミステリですから、ジャンル的に見て個人的には嗜好のど真ん中で、さもありなんなのですが。

映像化も期待できそうです。間違いなく映えるでしょう。

No.11 8点 HORNET
(2018/02/11 15:50登録)
 C.Cの本格ミステリに、パンデミック・ホラーを材料として絶妙に組み込んでいる秀作。ゾンビ世界の設定が、アリバイやトリックにも論理的に絡んでいて素晴らしい。建物の見取り図が掲載され、その構造が重要になってくる点では「館もの」の雰囲気も備えていて、「一粒で何度もおいしい」類の作品だと思う。

 冒頭探偵役と目された男が早々に犠牲者になってしまったのは驚いたが、それだからこそ後々の展開に絡んでくるのかと身構えていたが、そうでなかったのは少々肩透かしだった。むしろ、再登場の場面はあまりにも切ない…
 ちっちゃな疑問なのだが、最後の最後に右足をゾンビに「噛まれた」男は、その後のエピローグでなぜ普通の生活に戻れているのか??と思った。

No.10 9点 まさむね
(2018/02/01 22:32登録)
 まずは、クローズドサークルを作り出した設定の絶妙さに感心。なるほど、こういう手法があったか、そしてそこから生み出される相乗的な効果!うーん、考えられています。
 フー、ハウ、ホワイを巧く融合させながら、その全てを織り込んだ志の高さにも脱帽です。伏線の配置と回収の手際、解決編の切れ味も素晴らしい。リーダビリティが高いうえに、読者への親切心も垣間見せる心憎さ。昨年のミステリランキングを席巻したことも素直に頷けます。
 この完成度はまさに「新人離れ」と言う他なく、私にとって、新作を楽しみに待つ作家さんの一人になりそうです。この探偵&助手での続編を期待します。

No.9 8点 パメル
(2018/01/29 13:53登録)
「本格ミステリ・ベスト10」「このミステリーがすごい」「週刊文春ミステリーベスト10国内編」全てで第一位。それに加え鮎川哲也賞まで受賞となるとさすがに読まずにはいられなくなりました。
この作品の設定は、現実離れしているため好き嫌いがはっきりと分かれると思うが、その点を受け入れられる方で、本格ものが好きな方は相当楽しめると思います。
合宿所近くでテロ事件が発生、同時に合宿所でも事件が発生する。この二つの事件に関係性はあるのか?また合宿企画時に届いた脅迫状の真意は?と惹きつけられる。
●●●を最大限に活用した殺人トリックは、今までにない斬新さで唸らされたし、それらを精緻なロジックで暴く推理も素晴らしい。
フーダニット・ハウダニット・ホワイダニットと最後の最後まで楽しめる。
次回作も期待せずにはいられないと思わせてくれた。

No.8 8点 名探偵ジャパン
(2018/01/14 12:06登録)
これは近年の鮎川哲也賞受賞作の中でも出色の出来です。
「受賞の言葉」によると作者は、本格ミステリ一辺倒に傾倒していたわけではない、雑食読書家だそうで、そんな人がこれほどのものを書き上げてしまうのですから、これはもう「天才現る」と言ってもよいのではないでしょうか(決してプレッシャーを与えているわけではありません 笑)。次回作以降の活躍が望まれてなりません。

作品については、色々な意見があるかと思いますが、私も作品構造を成すの「あれ」については読前の方には伏せて置いた方がよい、という考えで、ですのでネタバレ上等としなければ何も語れないため、早いですが以下「ネタバレ注意」とさせていただきます。




※ここからネタバレあり※

特殊設定ミステリの一種となるのですが、その設定とロジックが見事に融合していました。作中に登場したどの殺害トリックも「あれ」なくしては成立し得ないものばかりで、作者の気概を感じました。
決して少なくないのに、登場人物の書き分けも十分配慮されていることに加え、館の形状も特殊なため、場面がすぐに頭に浮かんできて、ほぼストレスゼロで読めました。
私は館の見取り図を眺めるのが好きなため、作中で決定的となったあの「顔を見合わせる場面」を読んですぐに「変だ」と気づき、その場で双方が何事もなかったかのようにやり取りを済ませてしまったため、「これはこのどちらか(あるいは両方)が犯人に違いない」と決め込んで読み進めてしまいました。ですが、こういうシーンを入れてくることが作者のミステリ書きとしての矜持でありましょう。そのフェアプレイ精神に拍手を送ります。

No.7 9点 MS1960
(2018/01/04 12:02登録)
これぞ本格という出来で非常に面白かった。特に最終章で犯人が明らかになるくだり、●●が迫りくる中での緊迫感のあるやりとりは秀逸。クローズサークルの新しいパターンを作ったという意味でも意義ある作品。但し注文もいくつかある。
(以下ネタばれあり)
犯人はもっともそれらしくないひと(大人しく目立たない人)という本格によくあるパターンからすると犯人の意外性は低かった。
ゾンビを生み出す原因となった斑目機関や何とか教授、その同調者の動きが物語の前半だけに止まり、その後まったく出てこないのが惜しい。ただ単にゾンビ発生の背景や経緯を説明するだけなら、ここまで凝った構成にする必要がないのではないか。
物語の中盤がやや冗長。腕時計の話やドアが外側に開くことによる矛盾の発生など、伏線をそこかしこに張っているのだが、もう少し工夫が必要。
いずれにしても、一読をお薦めできる快作であることは間違いない。物語の最後が続編を予感させるような終わり方になっているので、ぜひ期待したい。

No.6 8点 makomako
(2018/01/03 10:19登録)
 これは面白かった。久しぶりに一気読みしました。まさに読み始めたらやめられないお話です。
 映画作品と現実(お話の中の現実ですが)が同一視されるなど、かなり無茶な設定があるのですが、これがほとんど気にならない。作者の力があるのでしょう。
 このお話はいかにも続編が書けそうです。
 期待しています。

No.5 9点 蟷螂の斧
(2017/12/17 10:28登録)
クローズドサークルとハウダニットの設定は秀逸です。途中で、そっちの方向に行っちゃうのかい?と思わせるのですが、うまく収斂します。第2の事件のホワイダニットが惜しい。ないものねだりですが、もし血縁関係があったらよかったなどと思う次第です。

No.4 8点 メルカトル
(2017/12/16 22:04登録)
最初に断っておきますが、本作が新人初の三冠を達成したから読んだわけではありません。それは読み始めてから知りましたが、結果から言えば大変面白かったですね。読んで正解でした。

「カレーうどんは本格推理ではありません」というセリフから始まる導入部はこれから語られる本格ミステリのストーリーの楽しさを予感させ、ワクワクします。
そして異常な状況下での異常な連続殺人事件。加納朋子氏によれば、「新しい形のクローズドサークルですね」とのことだそうです。果たしてこれは人間の仕業なのかそれとも・・・。私のような能天気な読者にはとても真相には迫れません。
見事な手際で過不足なく伏線を拾い集めての解決には唸らざるを得ません。ほんの些細な出来事もおろそかにせず、読み解く覚悟が読者には必要です。これで「読者への挑戦状」でも挟まれていれば言うことなしでしたね。
プロの作家にすら「この手があったのか」と言わしめた新機軸の閉鎖空間。フーダニット、ハウダニット、ホワイダニット(これは犯人の告白によるもの)すべてを網羅した完璧なロジック。適度な緊迫感と少々のユーモア、ほのかな恋愛感情もこの傑作に花を添えています。


【ネタバレ】


主な登場人物の中に探偵らしき人物が二人いて、てっきり二人の名探偵による対決が見られるものと思っていましたが、残念ながら一人は意外な形で退場します。
個人的にははっすーさんと同じように、いなくなる探偵のほうに好感を抱いていたんですけど。それすらも作者の想定内だったんでしょうね。それにしても勿体ない気がしてなりません。
また、虫暮部さんがおっしゃるように、男に弄ばれたからといって二人も女子が自殺するのはちょっと不自然な感じがしました。

No.3 8点 ねここねこ男爵
(2017/11/13 20:46登録)
これはなかなか面白い。斬新なクローズドサークル設定。

単なる目新しさだけでなく設定を完全に活かしきっている。フラグを立てる人物は分かりやすく犠牲になるw 第一の殺人の真相はすぐ見当がつくが、それすら作者の手のひらか。またフーダニット、ハウダニット、ホワイダニットとは何かを説明する場面があるのだが、それらをすべてカバー。お見事。作中で触れられている通り登場人物が覚えやすく、人数や役割が整理されていて非常によい。さらに文章が言い回しのみならず字数や読みのリズムまで考慮されているようでやたらと読みやすい。SNS世代の若い作家さんはここがいいですね。

人と人との接触が禁止された世界とか、架空の交通機関のある世界での殺人などこういった前例はあるが、ここまで設定を活かしきった作品は稀有かと。推理もロジカルでアンフェアな事もなし。それゆえ大きな世界の転換ということはないが衝撃成分もしっかり確保されていて好印象。

若い作家さんらしい圧倒的リーダビリティと職人芸的上手さを感じさせる優秀作。続編を期待させる人物設定ですし、作者さんもそのつもりでしょうから是非。続篇ではどうにかしてあの人を生き返らせて下さい。

ちなみにタイトルと宣伝文で公開設定だと思っていたので、「設定か?ネタバレか?」議論の存在を知って驚いた(何の事かは皆さんご存知でしょう)。巷では「○○だと思ってたのに読んだら理屈っぽい小説だった!低評価!」という逆転現象も起きたりしているらしい…今思うと、隠すつもりならこんなタイトルにしないでしょうから、最初からネタバレ狩りによる宣伝を狙っていてあからさまなタイトルにしたのかな、とも思います。商売上手?

No.2 8点 虫暮部
(2017/11/13 09:53登録)
 わははは。こんな手があったとは。
とても面白かった。諸要素が上手く噛み合って、“怪作”にとどまらない立派な本格ミステリに仕上がっている。
 気になった点は、犯人の動機に関わること。男女間のいざこざで自殺者まで出るとは随分な話だし、そんな不祥事を招いた合宿をしれっと再度敢行する面々の発想も不思議だ。ほとぼりが冷めるまで待つくらいOBだって考えるだろう。“去年の合宿で撮影中に集団レイプが発生して退学者、自殺者が出た。映像を公開すると脅されて告発出来ない。部長は加害者の一員だったのでOBに逆らえない”くらいの、各人の動きが取れなくなるような鬼畜な裏事情を想像していたんだけど、結構さらっと流しちゃってるね。

No.1 7点 はっすー
(2017/10/14 15:54登録)
神紅大学ミステリ愛好会の葉村譲と会長の明智恭介は、曰くつきの映画研究部の夏合宿に加わるため、同じ大学の探偵少女、剣崎比留子と共にペンション紫湛荘を訪ねた。合宿一日目の夜、映研のメンバーたちは肝試しに出かけるが、想像しえなかった事態に遭遇し紫湛荘に立て籠もりを余儀なくされる。
緊張と混乱の一夜が明け――。部員の一人が密室で惨殺死体となって発見される。しかしそれは連続殺人の幕開けに過ぎなかった……!! 究極の絶望の淵で、葉村は、明智は、そして比留子は、生き残り謎を解き明かせるか?!
奇想と本格ミステリが見事に融合する第27回鮎川哲也賞受賞作!

今年の鮎川哲也賞もかなりの力作
こんな状況下のクローズドサークルは前代未聞でしょう
そしてこの特殊環境でしか成立しないトリックの数々は必見です
中でも第2の殺人のホワイダニットは個人的にかなり衝撃的でした
ただこの状況下でしか成立しない事件のため犯人の思惑通りにどんどん事が運ぶのでご都合主義と言った批判は避けては通れないでしょう
しかしこの作品に対してご都合主義という言葉はナンセンスな気がします
この奇想を基に本格ミステリ作品を見事に成立させた作者には素直に拍手を送るべきだと個人的には思います


ネタバレ
ただ物語上仕方がないものの明智さんだけは生かしておいて欲しかったです…
正直比留子より明智さんの方がカッコよくて好きでした…


追記
他の方からセオドア・ロスコーの『死の相続』が先例としてあると指摘がありそう言えばそうだなとなりました
ただ『死の相続』のゾンビと今作のゾンビは少し種類が違い今作ではその違いをトリックに上手く取り入れているという考えは変わらないので点数も変更無しです
あと『死の相続』もとても面白いので未読の方は是非
『』

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