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ミステリの祭典

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ABC殺人事件
エルキュール・ポアロ

作家 アガサ・クリスティー
出版日1957年01月
平均点6.81点
書評数42人

No.42 7点 みりん
(2024/03/26 00:11登録)
クリスティ四天王の中でも最弱と噂の『ABC殺人事件』
四天王は全てネタが分かった状態で読んだが、本作が1番楽しめたかな。ABC>そし誰>アクロイド>オリエント急行の順。まあ、いずれも衝撃が薄れた状態での評価のため、あてにならないけど。(ちなみに私の42件目の書評で、これらの作品が書評数でもTOP4に^ ^)
この手のトリックに最初に出会った時は甚く感動したなあ。某推理漫画の劇場版の作品。こうした先行作を読むことで後発作品への当時の感動が薄れてしまう現象、あるあるですよね。後発作品が先行作品を完全に凌駕していた場合には、逆の現象が起こるんですけどね。

あと、法月綸太郎の解説が良い。解説ってこのくらいの平易さがベストなんだよ、もっと担当してくれ。ABCパターンという雛形を作った功績だけでなく、本作の他の魅力についても分かりやすく述べられている。解説で触れられているABCパターンの後発作品についても(E.Q,マクロイ,ディヴァイン等)もこれからゆっくり読んでいきたいところ。

No.41 7点 Kingscorss
(2020/09/07 02:01登録)
クリスティー傑作四天王の一角、ABC殺人事件(他は、そして誰もいなくなった、アクロイド殺し、オリエント急行殺人事件)。ミッシング・リンク、見立て殺人の古典なので、当然ミステリーファンなら必読でしょう。

ある日、ポワロに殺人予告状が届き、頭文字がAの場所で頭文字Aの老婆が殺される。そのあとも殺人予告状のあとに頭文字Bの場所で頭文字Bの美女、Cの場所でCの中年紳士が次々に殺されていく… 一体犯人は誰で何の目的で連続殺人を行うのか?

今作はクリスティーの作品の中では少し異色で、エンターテイメント性が他の作品より高いです。その最たる理由は、他作と同じく見えない犯人VSポワロの形式ですが、今作は犯人が最初の殺人が起こる前から挑発的な殺人予告状をポワロ宛に出して実際そのとおり殺人を実行し、その後、ポワロたちをあざ笑うかのように挑戦状的な殺人予告状を次々に送りは凶行に及ぶ、しかもA,B,Cの順で殺さていくという見立て殺人。これだけだとまるで漫画みたいな出来すぎドラマの概要ですが、そこはクリスティー、ちゃんとポワロに唸るような論理的帰結で推理させて意外な犯人を用意しています。

残念なことは嚆矢であるがために、既に後続(エラリー・クイーンにまで!)に死ぬほどこのアイディアを”リスペクト”という名のもとに模倣されまくられており、初読の人でもなんかトリック知ってて楽しめなかったとかありそうなこと… いや、トリック知ってても楽しめるんです…

また、他のクリスティー傑作四天王(そして誰もいなくなった、アクロイド殺し、オリエント急行殺人事件)等のトリックよりラストの衝撃度は明らかに少ないです。

なぜなら…

(ΦωΦ)フフフ… ABCは我らクリスティー傑作四天王の中でも最弱。四天王の面汚しよ…

No.40 8点 虫暮部
(2020/07/05 11:26登録)
 ABCパターンは(少なくともそれ単体では)机上の空論に思える。従って、メインのネタはどうしたって忘れようがないけれど、詳細についての記憶は曖昧、と言う状況で再読するにあたり、正直期待薄だったが――いやいやとんでもない。
 作者は私のツッコミなど予め呑み込んでその先を書いていたのだ。『ABC殺人事件』を名乗りつつ、実は重要なのはABCではなく裏テーマじゃないか。思い返せば全編を通じて退屈な場面が皆無だったのも凄い。でも髪に関するいじりは御手柔らかに!
 “ABCパターン”なる呼称を生み出す程に本作があのプロットの代表例として評価されている事実こそ、此度の私にとって最大のミス・ディレクション。

No.39 8点 ことは
(2020/04/18 23:19登録)
私は「この人読もうっと」と決めると、発表順に読むのだけど(クイーン、ヴァンダイン、ヒル etc)、クリスティーはそうでなく、体系的に読んでいないため、自分の中でとらえ方が定まっていなかった。けれど、ここ2、3年、発表年度を気にして何作か読んで、少し捉え方がわかってきた。
クリスティーは、50年の作家生活で、作品世界の構築については驚くほど変わっていない。そのためか、作家生活を「第x期」という区分に分ける話を聞かないのだが、騙しの仕掛けとしては「前期」「後期」に分けられると思う。1つのアイディアを核にして物語を構築する「前期」と、物語の見せ方に騙しを仕掛ける「後期」だ。
そして「前期」代表作のひとつが本書になると思う。
メインのアイデアは、今では読む前に知っている人が多いと思うけど、それも模倣されてきたから。(クイーンの「九尾の猫」でも引用されていて、1949時点で既に定形とされているのがわかるが)これが嚆矢と思えば評価せざる得ない。
クリスティーの凄さはアイデアの活かし方がとてもうまいことで、本作でも謎の人物の語りを入れるなど、嚆矢でありながらこの完成度はすごい。
ついでに、クリスティー文庫の解説はただの感想が多い中、法月の解説は作品の新たな見方を提示していて流石だ。

No.38 6点 ◇・・
(2020/03/01 16:03登録)
ABCという法則にのっとって殺人が行われる。でもそこには別の意味があったという答えを聞いてみると、やはり不自然すぎる。
面白いけれど不自然だと考えた推理作家達が、後々このパターンを改良していった。自分ならこうする、という風に創作意欲をかき立てる部分をミステリ・シーンに投げ込んだという意味では重要な作品だと思う。

No.37 7点 ボンボン
(2019/08/26 23:00登録)
有栖川有栖の「ABCキラー」や法月綸太郎の「ABCD包囲網」などを先に読んでしまっていたので、まっさらの状態から楽しむことができなかったのが残念。
8回挿入される「ヘイスティング大尉の記述ではない」の章が効果的で面白く、何度か前に戻って読み返した。この部分のサスペンス感が好きだ。
ポアロに「霊感を与えてくれる」「大事な天才」であるヘイスティングズの「明晰な洞察がきらめく、輝かしい言葉」が、あまりにさりげなさ過ぎて、どこにあったのか探すのが大変だった。「わたしはどんなすばらしいことを言ったんですか」と本人が訊いても相変わらずすぐには教えてくれないお決まりの展開が可笑しい。

No.36 8点 mediocrity
(2019/05/29 18:44登録)
1日1章ペースで読んで半分ほど読んで放置していたが、再開すると後半は面白くて2日で読み終わった。フランス語部分は最初のうちはググっていたが、途中からは面倒くさくなって調べていない。

<以下ネタバレあり>

正直に言うと犯人当ては間違えた。Dと間違って殺された(と思われた)人物が、犯人が本当に殺したい人物だと思ってた。だから犯人はその周辺の人間で、そのためにABCを殺したのかと推測したのだが・・・まあ半分あってた?から満足。
細かい所では、警察署ではなくてポワロ宛てに手紙を送った理由が意外で良かったです。
気になった点は、てんかん患者に、あそこまで「存在しない事実」を「実際に起こったこと」と思い込ませる事が本当にできるのかということでしょうか。
ところで、ポワロものは初めて読んだんですが、あまり名探偵という感じがしなかったんだけど気のせいかな。

No.35 6点 レッドキング
(2018/09/10 18:14登録)
ひさーしぶりに再読。昔の古色蒼然たる翻譯だが読みやすかった。原作の力だろう、そのへんはさすがだ。でも何度も読み返してまで味わう代物でもないな。「連続=不連続もの」「操りもの」の元祖筋なんだろうか。もっと面白い物がいっぱい増殖してるしなあ。

※追記 その後、これ以前に「連続=不連続もの」の先例あると聞いた。でも「アクロイド」にも、なんと谷崎潤一郎の先行物があるって説もあるし、きりないな元祖探し。

No.34 6点 文生
(2017/11/07 17:15登録)
新しいジャンルを確立したという意味で「アクロイド殺し」や「そして誰もいなくなった」と並ぶ重要作品であり、全体のプロットもよく練られている。しかし、現代の読者にとっては初歩的すぎて作者の狙いはバレバレだろう。

No.33 7点 メルカトル
(2017/02/22 22:25登録)
これは一種のミッシングリンクものですね、しかも当時はニュータイプだったのではないでしょうか。Aから始まる土地でAから始まる名前の人間が殺される。次はB、そしてC。一体犯人の目的は何なのか?読んだ当時、私はまだ中学生だったので作者の目論見は全く見当もつかず、まんまと騙されました。騙されたというより、翻弄されたとでも言いましょうか。正直なるほどなと感心しました、唸りました。
クリスティーという人は、トリックそのものもよりも、そのアイディアの斬新さが抜きんでており、先駆者として女王の名をほしいままにしていますね。本作にもそれは言えることで、単純な構造の中に劇場型の連続殺人事件を取り入れて、真犯人の意図をうまく隠ぺいすることに成功しています。
現在では類似する作品を書けば「ああ、例のあれね」ってことになるのでしょうが、このタイプを究極まで完成形に近づけたのは、やはりクリスティーが最初だったと思います。その意味でも私は本作を評価します。予備知識なしに読め、まだ擦れていなかった頃に本書に出会えて私は幸せでした。

No.32 6点 いいちこ
(2017/02/20 20:22登録)
他の追随を許さないキャッチーなプロットに加え、それを活かすポアロへの挑戦状や、「あて先の間違い」を利用したトリック等にはさすがの手際を見せている。
一方、犯行自体の合理性とフィージビリティの欠如(特にカスト氏の利用)、真犯人の特定プロセスにおける論理性の欠如、露骨に怪しすぎるカスト氏の人物造形等の点で大きな減点があり、この評価に止まった

No.31 5点 makomako
(2016/10/19 21:24登録)
 クリスティーはどの作品も水準が高く楽しめると思っていますが、この作品はあまり好みではありません。ちょっと無理がありすぎると思うのです。
 ABC順に予告殺人がポアロのところに届き、すべて実行されてしまう。名探偵も赤っ恥といったところですが、ポアロは全然めげずに最終的には真犯人をみつけだす。
 読んでいる途中では犯人らしき挿話がちょろっと入るのですが、これが犯人なら推理小説として成り立たないなあと若干心配になる。主な登場人物でない人物が犯人で、話の本筋とは違うところで急に見つかってでは、推理小説としてはいかんでしょう。
 当然ながらクリスティーはそんなに甘くはないのですが。
 それでも話としてはやはり無理があると思うのです。結構書評が高いようですが、私はあまり楽しめませんでした。

No.30 6点 nukkam
(2016/09/14 13:21登録)
(ネタバレなしです) 1935年発表のエルキュール・ポアロシリーズ第11作の本書は無差別連続殺人という本格派推理小説では珍しいテーマを扱った意欲作です。ポアロ宛てに殺人予告状が送られたり物語の合間合間で怪人物を登場させるなどサスペンスの盛り上げ方に力を入れた作品です。といっても単なるスリラーに終わることなく謎解きの伏線を細かく配してフーダニットとホワイダニットを実現している手腕はさすがにクリスティーです。犯人の計画がかなり粗くてあそこまで捜査陣が振り回されることに不自然感を感じもしますが、とにかく派手な状況設定を楽しめる作品ではあります。

No.29 10点 名探偵ジャパン
(2016/08/02 14:58登録)
5度ものバロンドール(世界最優秀選手賞)を受賞しているサッカー界の寵児、FCバルセロナに所属するリオネル・メッシは、かつてのスーパースター、「王様ペレ」「神様マラドーナ」らと比較される度に「時代が違う選手同士を比べられない」と「大人の対応」をしてかわしています。
現代サッカーはペレらの時代とは大きく様変わりしています。乱暴な言い方をすれば、かつてのサッカーは攻撃側と守備側の一対一のひたすら繰り返しでした。
確かにペレ、マラドーナは人類を超越したボールテクニックの持ち主ですが、現代において当たり前に行われている、複数選手からの激しいプレッシングを受けてのプレイ経験はないでしょう。

現代のヒットミステリ作家らが同じような比較質問「あなたの作品とクリスティの作品では、どちらが優れていると思いますか?」をされても、「時代の違う作品を比べられない」と答えるのではないでしょうか。

「ABC殺人事件」は、画期的パイオニア作品です。先駆者は真似されるのが宿命。本作をお手本にした後生の作家が、これ以上の作品を生み出せるのは当たり前なのです。(そうする義務があります)
クリスティは他にも、「アクロイド」「そし誰」といった「ひな形」も世に出しています。これらは、「クリスティがやらなくても、いずれ誰かがやっていた」ことに間違いはないでしょうが、それでも初めて世に出した(もしくは認めさせた)という功績は讃えられてしかるべきだと思います。

本作のプロットは、「シリアルキラーの犯罪に見せかけて、本命殺人を紛れ込ませる」というものですが、さすがにクリスティも「それだけでは弱い」と感じていたのでしょう。「真犯人による操り」というもうひとつのプロットを平行させてストーリーを作っています。先駆者からしてこうなのです。後続の作家が、前者のプロットだけを取りだしてフォロー作品を書く、というのは、すでに初代に対して負けています。(前者のプロットがあまりにも有名なため、それだけを見聞きして実作を読まず、後者の「操り」を知らずにフォロー作品を書いている作家もいるのではないでしょうか)

そして、他の方も書いておられますが、真犯人に対してポワロが見せる「フェアーではない」という激情も本作の見所です。
本作でも、「交通事故で死ぬのも、殺人鬼に出くわして死ぬのも、不慮の事故、という点では同じ」といった内容の発言をし、「面白い事件でも起きないかなー」といつも考えている「道楽探偵」的な側面が強いポワロですが、「無辜の弱者に殺人罪を着せようとする」この犯人には強い憤りを見せます。

「逐一届く、犯人『ABC』からの挑戦状」「探偵を敵視する警察官」「ヘイスティングスの何気ない一言から謎を解くポワロ」といった、本格ミステリお約束の「待ってました展開」もたっぷりとあり、全編に渡って読者を飽きさせません。

クリスティ、いえ、本格ミステリ最大級の傑作のひとつ。若いファンにもぜひ読んでいただきたいです。

とりとめのない文章になってしまいましたが、結局何が言いたいかというと、ペレ、マラドーナもメッシもどちらも凄い、ということです。

No.28 6点 mini
(2016/05/07 10:02登録)
C・デイリー・キングの「いい加減な遺骸」の書評をしたのだが、「いい加減な遺骸」がABC3部作の1冊なので、ついでだからABC繋がりで「ABC殺人事件」の書評もしてしまおうと思い付いた

「ABC殺人事件」は確かに私もベタな感じはする、その点では同感だ、確かにベタだ、間違いない
ベタですよ、ベタだ!

だがしかし問題は、何が理由でベタに感じさせられるのか?ポイントはそこだな
ベタな理由は?

多くの読者は、そりゃ、あのミステリ的な仕掛けでしょ、と思うでしょ、しかし私はミステリ的趣向仕掛けがそれ程ベタだとは思わないのである
仕掛けに関しては、これは要するに「三幕の殺人」の改良版だと思うんだよな、作品名を出しちゃったけど、別にネタバレでも何でもないから大丈夫
「三幕の殺人」が1934年、「ABC殺人事件」が1935年、「ABC」の方が後発だし、その割には間髪を入れずに書かれている
この両作の間に出た長編は、ポアロもマープルも出てこないノンシリーズ「大空の死」1作のみなのだ
つまり「ABC」が「三幕」の改良版を想定したのではないか?という疑いは捨てきれないのである
「三幕」がミッシングリンクの範疇に留まっているのに対して、「ABC」では演出効果として”見立て”の領域にまで踏み込んでいる感じなんだよね
私は「三幕の殺人」がそれ程完成度が高いとは思わない、どちらかと言えば出来損ないの部類ではないかと感じている、そこを改善しようと作者が目論んだと思うのは穿ち過ぎだろうか

で、そこでさ
じゃあ、論題に戻って「ABC」がベタに感じさせる理由は何なのか?

私はその理由は”題名”だと思う

”ABC”ですよ、ABC!
これってさ、日本で言ったら、例えば「アイウエオ殺人事件」とか「いろは殺人事件」って事でしょ、そりゃベタだわな
もっと他に無かったのか?
例えばギリシア文字使って「αβγ殺人事件」にするとかさ、そうするだけでも印象は結構違ってくるのになぁ、某国内作家ぽくなるし(笑)
つまりはさ、「三幕」よりも完成度を高めたのは良かったのだが、作者の限界か”ABC”などという安易な演出しか思い付かなかったが為に損をしている作品に思えてしまうのだよね

No.27 10点 青い車
(2016/02/21 21:32登録)
 ちょっと高得点すぎるかもしれませんが、大好きな作品なので。リアリティはまるでない事件ではあるものの、だからこその魅力というか、なんでもアリの推理小説のロマンが詰まっています。スピーディーかつサスペンスに溢れた展開は現代でも模範となるものといっていいのでは?クリスティーにしては珍しいサイコ・キラーものですが、陰惨さはなく、あくまでもプロットに勢いをつける効果を果たしているのも素晴らしい。そして何よりもポアロの「フェアではない」という犯人への糾弾の言葉、爽快な結末は最高です。
 もうひとつ。この『ABC』には同じクリスティーに原型とでもいえる作品が存在するのは衆知のことです。つまり本作は下手すれば「焼き直し」「二番煎じ」と評されかねません。ただ、クリスティーは元ネタにさらにスケープゴートの用意というネタを加えることで完成度を高めています。見事な発展を遂げた名作です。

No.26 8点 ロマン
(2015/10/20 20:35登録)
クリスティーを「読んだ事がない」という人でも、『ABC殺人事件』の名前くらいは聞いたことがあるだろうか。灰色の脳細胞を持つ、名探偵エルキュール・ポアロ。そのポアロの元に、ある日届けられた「ABC」を名のる人物からの手紙。ABCのイニシャルを持つ人間が次々と殺され、現場に残された「ABC鉄道案内」。やがて、ABC殺人事件と名づけられたその事件は、大衆を揺るがす騒ぎとなっていく。「有名すぎるから」という理由で、手に取らないのはあまりに勿体ない面白さ。クリスティーの傑作ミステリ。

No.25 5点 斎藤警部
(2015/09/30 00:53登録)
ちょっとした叙述や構成のミスディレクションもあって興味深そうなんだけど、決して詰まらないわけじゃないんだけど、犯人も意外な陰から出て来るんだけど、ん~~なかなかに緩い結末だねえ、ABC順に殺人を重ねるなんていかにもアガさんらしい企画性の高いネタを提示して来る割にどうもガツンと来る豪快さを感じない。いとも簡単に舞台の裏側は見えちゃうし、かと言って諸々の弱点を補うほどの中盤のサスペンスやら何やらは求め得なかった。なのにどこか憎めない。「まぁ面白かった」くらいは言える。

と言ったわけで個人的にさほどの高評価も出来ませんが、これからの世代のミステリ好きにも読んで欲しい一冊ではあります。やはり憎めない作品って事です。

↑ まさかこんなに長く語るとは思わなかった

No.24 6点 クリスティ再読
(2015/07/05 19:45登録)
これはやはり「三幕の悲劇」と対比しないわけにはいかない作品なんだろう。ミステリとしてはやはり圧倒的に「三幕」の完成度が高いために、評者的にはこっちのがスピンオフみたいな印象を受けてしまう...

しかし、一般知名度は全然逆だよね。「ABC」は代表作扱いされるにも関わらず「三幕」は...というのは、そりゃ「三幕」が名うての地味作品だから、というのは、ある。とはいえ「ABC」はキャッチーを狙って書いて(初出が雑誌掲載だから、連載だったのか?)ウケた作品だというのが真相だろう。実際読んでいて、時代劇を思わせるベタさだよねこれ。名探偵大活躍な「探偵小説を読みたい」読者に提供された「お望みどおりの商品」という感じのモノだ。ヘイスティングスの今更な再登場も、ホームズ=ワトソン軸を狙った意図的なベタなのかもよ?

まあそこらがクリスティという一筋縄でいかない大衆作家のフトコロ深さでもあるわけで、一概にベタさを否定するわけにもいかないだろう。「ABCパターン」という言葉があるだけでも大勝利というものだ。

そういやCの殺人の舞台であるチャールストンとかトーキーってあたり、クリスティ本人の出身地だ... あまり感傷みたいなものはないようだね。

No.23 7点 itokin
(2015/06/18 13:17登録)
さすが古典の教科書というべき作品ですね。物語の導入、展開、登場人物のキャラ、終盤のまとめ方など今でこそ少しまだるっこさも感じられるが最高と思います。比較的簡単に犯人が分かってしまうのが難点ですが読み易く推理小説のバイブルだと思います。

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