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[ サスペンス ]
追跡者
パトリック・クェンティン 出版月: 1962年01月 平均: 6.00点 書評数: 4件

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東京創元新社
1962年01月

東京創元社
1962年12月

No.4 7点 人並由真 2021/08/07 07:18
(ネタバレなし)
 ニューヨーク。 元ボクサーで、今は鉱山技師として活動するチェコ系の青年マーク・リドンは、およそ三か月前に社長令嬢の美人エリー(エリノア)・ロスと結ばれた。しかし結婚直後、大きな仕事が入り、ヴェネズエラに単身、赴いていたマークは、ようやくふた月ぶりに愛妻のもとに戻る。だがエリーが待つはずのアパートに彼女の姿はなく、そこにあるのは、かつての妻の彼氏の一流会社の支配人ユーリイ・ラスロップの死体であった。何らかの事情から、妻が元カレを死なせて行方をくらましたのか? 疑念に駆られたマークは消息を絶った妻の行方を探し始めるが。

 1948年のアメリカ作品。
 主人公マークの叙述は三人称だが、全編ほぼ一視点。焦燥に駆られながら愛妻を追い、次第に予測もしていなかった事態や事実に次々と向かい合うことになる筋立てのリーダビリティは最高級である。
 
 意表をつくタイミングで山場が設けられたのちに、後半の展開に突入。人間関係は入り組んでいるが悪い意味での煩雑さなどはあまり感じず、サブキャラまでかなり無駄なくお話作りに奉仕させて、効果を上げている感が強い。
 クエンティンのメインストリームといえる、ウェッブ&ホイーラーコンビの晩期の作品だけあって、作劇やキャラ造形の練度が高く、そういう意味では完成度は高いだろう。

 しかし作者たちの一番の狙いは、さるキーパーソンの人物造形とそこに込めた文芸味だろうね。これはいろんな意味で相応に驚いた。

 後味を書くと作品の方向が見えてネタバレになりそうなあやうさがあるので、その辺にはココではあまり触れないが、もっと(中略)などという思いも生じたりした。

 終盤は、事態の全貌を知りすぎている某キャラの説明で事件のアレコレが語られすぎじゃないか、という気もしたが、この辺はまあギリギリ。

 とにかく、とあるポイントで、妙に(?)メンタル面を刺激する長編ではあった。評点はこのくらいに。

No.3 6点 蟷螂の斧 2015/09/23 18:02
主人公が出張から帰ってくると、自宅には新婚の妻の姿はなく、代わりに男の死体が転がっていた。妻の行方を追うという題名通りの追跡劇で、冒険活劇要素の方が強い作品です。パズル・シリーズにはないコメディタッチの場面(脇役のホテルボーイがアクセントとなりいい味を出している)もあり楽しめました。

No.2 5点 mini 2012/06/01 10:00
* 1912年生まれ、つまり今年が生誕100周年に当たる作家は意外と多い、今年の私的テーマ”生誕100周年作家を漁る”の第5弾、クェンティンの2冊目
合作コンビの内の1人、ヒュー・ホイーラーも生誕100周年である(コンビのもう1人リチャード・ウェッブの方は少々年上)

「追跡者」は中期から後期にかけての頃のノンシリーズ作である
題名通り追跡する話なのだが、結構紆余曲折が多い
て言うかさ、そそもクェンティンには話が錯綜するプロット自体が多い、読んだ中ですっきりしたプロットって「二人の妻」くらいだ
「二人の妻」は後期のホイーラー単独執筆時代の作だから、やはり合作ってややこしいのかね
そんなわけで読んだのが相当昔ということもあり、細かいプロットなんて覚えてねえや、まぁとにかく単純なプロットじゃなかった印象だけはある
どうもパズルシリーズなんかだと持ち味の複雑なプロットが上手く機能してない感じなんだよなぁ、その点この「追跡者」はまぁまぁ良い方向に働いているのかな

No.1 6点 こう 2012/01/30 00:14
 はじめに発見される男性死体の扱いがあまりにもとってつけているのは不満ですが主人公の消えた妻の追跡劇や最後の展開は流石パトリック・クェンティンと思える作品です。
 ボクサー上がりの主人公が単独でここまでロジカルに行動できるのか、途中でなんで殺されないのか、あまりにも都合よすぎる展開でストーリーは進行していきますが楽しめました。


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