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[ 日常の謎 ]
花の下にて春死なむ
『香菜里屋』シリーズ
北森鴻 出版月: 1998年11月 平均: 6.92点 書評数: 26件

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講談社
1998年11月

講談社
2001年12月

No.26 5点 パメル 2023/03/25 07:33
三軒茶屋の路地裏にあるビアバー「香菜里屋」。マスターの工藤は、うまい料理を振る舞い、居心地の良い空間を提供する。しかし、このバーはそれだけではない。常連客は謎好きが多く、身近で起こった不思議な話を持ち込むのだ。工藤は常連たちの話を聞くだけで、その謎の背後にある状況を読み解いていく六編からなる連作短編集。
「花の下に春死なむ」フリーライターの飯島七緒は、自由律句の結社「紫雲律」のメンバーで、同じくメンバーで亡くなった片岡草魚の故郷を訪ねその過去を紐解いていく。
「家族写真」赤坂見附駅にある本棚の時代小説の本の中に、軒並み同じモノクロの家族写真が挟み込まれている。その不思議な状況に常連たちが議論する。
「終の棲家」妻木信彦は、最近注目を集めるようになった写真家であり、銀座で個展も開かれることになった。しかし、彼の個展を告知するポスターが、街中からなくなっているという問題が起きた。
「殺人者の赤い手」笹口ひずるは「香菜里屋」で出会った飯島七緒が「赤い手の魔人」の都市伝説を調べていることを知る。小学生の間に広まる都市伝説が二つの事件を真相に導く。
「七皿は多すぎる」回転寿司屋である男が、鮪ばかり七皿も食べたという。なぜ鮪ばかり食べているのか推理合戦が始まる。
「魚の交わり」七緒宛てに手紙が届いた。手紙の主は鎌倉の人だが、とある理由から草魚は鎌倉にはいなかったのではないか、と推察された。果たして草魚は鎌倉にいたのか。いたとすれば何故鎌倉にいたことを隠していたのか。草魚の秘められた過去が明らかになっていく。
本書はいわゆる安楽椅子探偵ものだが、工藤の押しつけがましさのない、救いのある解決は優しくてよい。どの話も割と、生きていくうえで避けようがなかっただろう、あれこれが滲み出ている。そうせざるを得なかったというような状況を背景に据えた謎は、人間の機微が詰まっている。

No.25 6点 ボナンザ 2021/12/26 20:45
いわゆるバーものの安楽椅子探偵だが、話は結構多様ながら、ミステリとして唸ったかというと・・・。

No.24 5点 虫暮部 2020/01/30 12:29
 表題作と「魚の交わり」で描かれた哀切な人生と謎の絡みはなかなか読み応えアリ。この2編だけなら高評価出来た。
 しかしそれ以外は、ミステリとしても人情話としても中途半端。文章力がその不足を充分補えたとも言い難い。“わいわい語り合う推理クラブもの”と言う形式を、上手く使いこなせていない気がした。

No.23 5点 ボンボン 2017/01/28 17:32
哀愁漂う大人の、ささやかな人生を切り取る短編集。ビアバーのマスターが、カウンターの中で客の話を聞いて様々な謎を推理するのが基本だ。
謎のネタを提供する常連客達は、結構な事件に直面したり、実際に探索に出かけたりもするが、解決編は、ビアバーで交わされる会話の中で終始するので、別にコトの真相が確認されるわけではない。あくまでも、こんな解釈もあるのでは、と人生を見つめ直す感じ。
見事なまでにフワッとした中途半端さで、一般人の域を決して踏み越えないのだ。大がかりな殺人系を含む、謎解きをメインにした作品でありながら、そこがなんとも新鮮だった。
ひねり過ぎがあったり、短い話の中に詰め込んだ複数の筋を強引につなげたりと、ぎこちない部分もあるが、全体に渋い雰囲気で読ませるので気にはならない。
自分としては、あまり共感するような事件はなかったが、全編を通し、客がマスターの人柄に頼り、癒されていく様子に心和んだ。

ああ、そんなことより、とにもかくにも、今すぐ冷えたビールが飲みたいな。

No.22 6点 いいちこ 2016/03/14 18:46
叙述が高度に洗練されている一方、登場人物に際立った個性がないことも相まって、ストーリーテリングは淡々とした印象が強く、評価が分かれそうなところ。
ミステリとしては、真相解明時の反転の手際が光る一方、真相を捻り過ぎ、推理のプロセスに大きな飛躍が感じられるなど、短編・安楽椅子探偵の限界を感じさせた

No.21 7点 まさむね 2015/07/12 21:52
 日本推理作家協会賞短編および連作短編集部門受賞作。
 表題作「花の下にて春死なむ」の美しさにまずは魅せられました。次作の「家族写真」の転換も見事。やや技巧に走り過ぎた感の短編もあるものの、全体的に綺麗で心地よい作品集でしたね。
 ちなみに、ビアバー「香菜里屋」の料理&ビールのシーンが良いですねぇ。マスター作のツマミを前に、4種類のビールを制覇してみたいものですね。

No.20 5点 蟷螂の斧 2013/03/30 15:19
日常の謎は、どうも苦手で何冊かトライしているのですが、やはり肌に合わないですね。緊迫感がないことと、安楽椅子ものは、推理が想像でしかないような気がして駄目なのでしょう。本作の雰囲気は良いと思いました。

No.19 7点 isurrender 2012/02/25 22:20
連作短編集ですが、どれも高水準
日常の謎のジャンルに入るのだと思いますが、それにしては殺人事件を扱ったものが多いのも特徴だと思います

No.18 7点 メルカトル 2010/05/22 23:59
格調高い文体、尚且つスタイリッシュ。
いわゆる日常の謎を扱った連作短編集だが、どこか一味違うのは、やはり表題作で人間の悲哀が嫋々たる文体で綴られている故だろう。
それに特筆すべきはなんといっても、バーで出される旨そうな料理の数々だ。

No.17 7点 simo10 2010/04/26 00:12
マスター工藤哲也が営むビアバー「香菜里屋」シリーズ。6つの短編で構成されています。

①「花の下にて春死なむ」:句人片岡草魚の静かな最期に秘められた過去に迫る。作中の句「人のいぬ道選びて繰り返すその町の名」が良かった。
②「家族写真」:駅の本棚の各本に挿まれている白黒の家族写真の謎に対して「香菜里屋」の客達が推理を披露。ちょっと皮肉な作品。
③「終の棲み家」:多摩川沿いの小屋に住む老夫婦の弱々しさが非常に切ない。綺麗な作品で好きです。
④「殺人者の赤い手」:推理クラブ化した雰囲気が好かない。いくら赤いっつっても限度があるでしょう、と言いたくなる。
⑤「七皿は多すぎる」:これまた推理クラブ化現象。提示された謎のインパクトの割りにイマイチな真相。
⑥「魚の交わり」:①の続編。再び草魚の悲しい過去に迫るが予測もつかなかった恐ろしい推理が…。

ミステリ的には普通ですが、非常に「綺麗な作品」という印象があり、質の良い文学作品を読んでいるかのような心地良さを覚えました。(セリフ部分がちょっとぎこちないところもあるけれど。)
次に読む作品を探して、作者の訃報を知りました。非常に惜しまれます。

No.16 6点 E-BANKER 2010/03/12 22:13
香菜里屋シリーズの連作短編集。
作者の急死を悼み、手に取る方も増えているのではないでしょうか。
①「花の下にて春死なむ」:表題作であり本書の白眉。本名も本籍も分からない老人”草魚”の生き方に悲哀を感じます。
②「殺人者の赤い手」:ラストで一気に真犯人に迫るところが良い。
③「七回は多すぎる」:暗号モノかと思いきや・・・
④「魚の交わり」:再び”草魚”の謎に迫ります。
あとの2作はいまいち印象に残らず。
主人公のマスター工藤をはじめ、すべての登場人物がどこか文学的で、たいへん品の良い作品に仕上がっています。
ただ、ミステリー的には高い点数は付けづらいですねぇ・・・

No.15 6点 こう 2010/03/08 01:14
 このサイトで評判が良かったので手にとってみました。個人的には同作者のメイン・ディッシュ の方が好みですがこの作品の読み心地も良かったです。ただこういう作風と強烈な謎を両立するのは難しいのだろうなと感じました。表題作以外はミステリとしては少し物足りなく感じます。遅らばせながら作者の訃報を知り読み心地のいい作品がもう読めないのは残念です。
作者の御冥福を謹んでお祈り申し上げます。

No.14 5点 abc1 2010/02/22 06:17
玉石混交という印象。表題作は良かったが、中盤中だるみ。特に回転寿司の話は、登場人物の一人が聞いた話をさらに又聞きで聞かされる構成なので緊張感がなく、結末も期待はずれ。

No.13 5点 touko 2010/02/15 20:18
隠れ家的ビアバーのわけ知り顔のバーテンが、常連客の持ち込む謎や人生相談を解決するという連作集。

バーテンもの、それも隠れ家的バーというジャンルは、この作品に限らず、あまり得意ではないので、ムーディでナルシスティックでキザなところが個人的には鼻にきました。
とはいえ、ミステリとしてはまあまあ楽しめました。

No.12 9点 makomako 2010/01/13 21:49
短編連作推理ものは謎解きにかけるスペースが少ないのでどうしても問題と回答といった小説となりがちであまり好みではなかったが、この小説はとても切れ味がよくしかもかくし味も効いていて作者の力量が並々ならぬものであることを知らされた。

No.11 6点 2009/08/13 10:21
謎解きロジックはしっかりしているし、安楽椅子探偵のマスターの推理は冴えてるし、格調も高く、料理も美味しそう。ところが、ぐいぐい引き込まれるという感じではなく、なにか欠けているように思えます。いや欠けているのではなく、逆に詰め込みすぎなのでしょう。謎解きがくどすぎて、わずか50ページの短編なのにストーリーが歪んでしまってるように思いました。短編の安楽椅子探偵ものの宿命かもしれませんね。それと、会話文にぎこちなさが感じられました。ある意味、純文学的なのかもしれませんが、慣れていないので抵抗がありましたね(笑)。
でも、「殺人者の赤い手」のラストの少し前ではホロリとさせられたし、連作のラストつまり最終話「魚の交わり」も展開が良かったので、満足はしました。それに、食事の場面のある小説は基本的に好きですね。

No.10 6点 ロビン 2009/08/09 21:41
良作揃いの短編集。哀愁漂う物語世界は、読み手をホンワカとした気分にさせてくれる。反面、切れ味のあるロジックでピリッと引き締めてもくれる。
安楽椅子探偵的な存在がいるおかげで、とりあえず構成のフォーマットが見えて安心感はあるが、、逆にいえば突出した部分がなく、平坦というか起伏がない。登場人物に個性が感じられないのが欠点。

No.9 9点 テレキャス 2009/07/16 19:17
いわゆる日常の謎となるミステリではあるけれど、純文学の赴きも感じる喪失と再生の短編たち。
心の隙間にちょっとだけヒントをくれる小料理屋の店主が素敵過ぎます。
もちろんミステリとしても複数の点から線に繋がる工夫が随所に施されているので楽しめました。

No.8 8点 itokin 2008/11/20 19:56
短編にもかかわらずどれも格調高く心に残る。きっと、2度、3度と読みたくなる数少ない作品だと思う。

No.7 10点 kowai 2008/05/31 21:11
表題作で感動を味わい、各編の料理に舌鼓を打ち、あ~、ビールが飲めない環境で読むものではありません。こんなミステリは初めてです。蓮丈那智シリーズもそうだったけど、香菜里屋シリーズも第3弾まで連読できました。ってゆーか、マスタって何者? 誰かこの謎を解いてください。。


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