海外/国内ミステリ小説の投稿型書評サイト
皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止 していません。ご注意を!

[ 青春ミステリ ]
ヨルダンの蒼いつぼ
水上勉 出版月: 1976年08月 平均: 5.00点 書評数: 1件

書評を見る | 採点するジャンル投票


朝日ソノラマ
1976年08月

No.1 5点 2021/07/02 07:28
 明日から夏休み、そして今日は待ちに待った父が帰国する。進吉の胸は躍った。だが、父の坂根恭平博士は旅の疲れをいやす間もなく大学へ帰国報告に出かけ、そのまま行方不明となってしまった。そしてその夜、帰国の際に持ち帰った黒いトランクも書斎から盗まれていたのだ。
 オリエントの学術調査からもどったばかりの美術研究家を誘拐した犯人のねらいは何か。トランクの中には何が入っていたのか。水上勉が東京と福井の山村を舞台に展開する傑作長編推理!
 朝日ソノラマジュブナイルの初期作品で、元版は昭和37(1962)年8月集英社より刊行。昭和36(1961)年~翌昭和37(1962)年にかけ、小学館発行の雑誌「中学生の友」に載った作品らしい。同時期には北杜夫「船乗りクプクプの冒険」なども連載されていた。今回はそのソノラマ文庫版で読了。
 分量的には220P程だが良質の少年小説で、二十八歳の若手刑事・沢渡を始めとする富坂警察署の地道な誘拐事件捜査を、進吉の級友・岩野光彦ほか文化中学の七人組や、人里離れた福井の雲取山ろくに住む川田雄一・孝一兄弟がサポートする形で進行する。
 日本海のほとり武生から越前の海岸を抜け、はるか山を入った中腹にある村。炭焼きと竹細工しかする仕事はなく、背後には切り立った崖があって日本海の荒波が打ち寄せる。本書にも『火の笛』で培った取材の成果が息づいているが、ジュブナイルという事もあり筋運びはストレート。しっかりと組み上げられたストーリーの中を、児童もの特有の爽やかな風が吹き抜ける。
 この手の少年ものには案外、ケレンめいた名探偵よりも警察捜査の方が向いているのかもしれない。


キーワードから探す
水上勉
1982年12月
蟲の宴
平均:5.00 / 書評数:1
1976年08月
ヨルダンの蒼いつぼ
平均:5.00 / 書評数:1
1967年01月
修験峡殺人事件
平均:5.00 / 書評数:1
1965年01月
海の墓標
平均:5.00 / 書評数:1
1964年01月
吹雪の空白
平均:6.00 / 書評数:1
1963年01月
薔薇海溝
平均:6.00 / 書評数:1
死火山系
平均:6.00 / 書評数:2
飢餓海峡
平均:7.83 / 書評数:12
1962年01月
平均:6.00 / 書評数:2
若狭湾の惨劇
平均:6.00 / 書評数:1
海の葬祭
平均:4.00 / 書評数:1
死の流域
平均:6.00 / 書評数:1
1961年01月
野の墓標
平均:5.00 / 書評数:1
雁の寺
平均:5.00 / 書評数:2
1960年01月
火の笛
平均:5.50 / 書評数:2
平均:5.00 / 書評数:1
巣の絵
平均:6.67 / 書評数:3
海の牙
平均:6.00 / 書評数:4
平均:6.00 / 書評数:2
1959年01月
霧と影
平均:7.50 / 書評数:2