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[ 社会派 ]
蟲の宴
水上勉 出版月: 1982年12月 平均: 5.00点 書評数: 1件

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集英社
1982年12月

No.1 5点 2011/11/20 09:45
事件に巻き込まれて、その事件の裏を探っていく民間人の視点と、警察による捜査との二つの視点を交互に描いていく手法は、この作者にはよく見られますが、本作はその手法がかなり成功していると思われます。
失業中の主人公が、偶然(?)会った男から紹介された繊維会社の就職面談担当者は、実はその会社の人間ではなく、行方をくらましてしまうという冒頭の謎は、なかなか魅力的です。その会社自体なんだか怪しいというのは、誰でも考えることでしょうが、2つの殺人事件との結びつけ方はいかにも社会派的発想です。
警部補がいろいろ仮説を頭の中で立てているところなど、作者自身どう結末をつけたらいいか、悩んでいた(大雑把な構造は最初から考えていたにしても)のではないかと思えるのですが、最後に逮捕が行われる地方の奇妙な風景もうまく使われていて、味のある作品に仕上がっていると思いました。
タイトルの意味は不明ですけれど。


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