皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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[ 本格/新本格 ] 盲目の鴉 千草検事シリーズ |
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土屋隆夫 | 出版月: 1980年09月 | 平均: 6.00点 | 書評数: 9件 |
光文社 1980年09月 |
光文社 1984年10月 |
東京創元社 2000年12月 |
光文社 2003年03月 |
No.9 | 6点 | 文生 | 2023/07/17 10:01 |
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過去作と比べるとミステリーとしては小粒な点は否めないところ。アリバイトリックはちょっとユニークですが、どちらかというと短編向きで、それだけではもの足りなさを覚えてしまいます。その代わり、田中光二を始めとした純文学作家の蘊蓄を交え、抒情性豊かに描かれた物語には引き込まれました。 |
No.8 | 6点 | 雪 | 2021/07/01 00:19 |
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酒とアドルムに溺れ、崩壊した人生を歩んだのち自ら命を絶った無頼派デカダン作家・田中英光。彼の全集解説を依頼され、新資料を求めて長野へ出向いた文芸評論家・真木英介が小諸駅付近で消息を絶った。そのわずか三日後、東京地検検事・千草泰輔は、世田谷の繁華街で不可解な毒殺事件に遭遇する。
被害者となった若手編集者・水戸大助が死に際に言い残した言葉は「白い鴉」。それに続き千曲川河畔で発見された真木の上着には、第二関節のあたりから切断された小指と、「た私もあのめくら鴉の」と書かれた便箋の断片が入っていた! 果たして二羽の〈鴉〉に繋がりはあるのか? 「週間文春傑作ミステリーベスト10」、1980年度第2位に輝く著者の代表長篇。 『妻に捧げる犯罪』に続く著者の長篇第八作で、千草検事シリーズとしては『針の誘い』に次ぐ第四長篇。二人の被害者を含め、少なからぬ関連人物が創作・出版関係者とこれまで以上に文芸味が強く、手掛かりも掴めず容疑者も定まらない中僅かなヒントを追い求め、薄紙を剥ぐ様に事件を結ぶピースに迫ってゆく。ハンカチに包まれた小指や、ストーリーを彩る謎めいた〈鴉〉という言葉など、読者に興味を抱かせるミステリアスな引きはかなり良い。毒殺トリックの弱さゆえか、プロットを支えるのは主に動機と犯人の隠し方。メインの電話トリックはなかなかのものだが、これが問題となるのが最後の三章だけなのが惜しい。 いつも以上にやるせないムードと背景でカバーしてはいるが、『危険な童話』『針の誘い』などの輝かしい過去作と比べると、やはり何枚かは落ちる。買える部分もあるが土屋作品としてはトータル二線級。 |
No.7 | 5点 | クリスティ再読 | 2020/11/15 13:20 |
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田中英光、太宰治、島崎藤村、斎藤茂吉、森鴎外、堀辰雄、メインディッシュは大手拓次....いや、名前だけ出てくる以上の言及がある作家だけでこれだけ。古き良き日本文学をベースにしたミステリである。土屋隆夫ってこういう文学青年趣味があるわけだけど、今回はこれが前面に出ている。まあ、田中英光・大手拓次、あたりだと今の人は知らないかもね。評者太宰嫌いだし、大手拓次も面白いと思ったことないなあ...朔太郎をマイナーポエットにしたような詩人だもの。そういうわけで、評者意外に本作とは相性が悪いんだけど、昔新作で出たときに買った本である。
謎は電話のアリバイがメイン。これは土屋隆夫らしくアイデア的、だけどリアルな実行可能性を感じるトリック。ただトリックとしては小粒。その他に毒殺トリックがあるといえばあるが、こっちはあまり面白いものではない。千草検事シリーズだからレギュラー陣おなじみの、地道に書かれた捜査小説、として読めば、まあそう悪いわけではない。犯人の動機とか心理とか、リアルだけどセンチメンタルな味が強い。 なのでね、評者とかは土屋隆夫と松本清張を比較したくなるのだ。「社会派」というのは、戦前からの「本格派」vs「文学派」の人脈的なものも含めた対立があって、松本清張が乱歩に「次のリーダー」として指名されたことで、実質「文学派」が「社会派」に鞍替えした、というイメージを評者は持っている。松本清張だって、もちろん文学趣味が強いし、芥川賞獲ったのも森鴎外関連の話だ。で、リアリティのある登場人物、リアルなアリバイトリックを駆使したアリバイ崩し小説を書いた....あれ、松本清張と土屋隆夫、どう違うのかしら? うん、もちろん違いはあって、それは土屋隆夫が懐旧的なセンチメンタリズムに寄りかかった小説なのに対して、松本清張はセンチメントを排したハードボイルドな苛烈さが強く出る、という点なんだろう。そうしてみると、「甘さ」の部分で土屋隆夫は古びしてしまっているようにも思う。清張は苛烈だから、万古不易な「人生」を体現しうるのではないのかな。 |
No.6 | 6点 | パメル | 2017/08/09 01:13 |
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長編では「妻に捧げる犯罪」から8年ぶりに発表された作品・・・あまりにも間をあけすぎでしょう(寡作にも程があるが好きな作家の一人なので許します)
田中英光・大手拓次など文学者たちの詩を紹介しながら文学的ロマンと謎解きの面白さを巧みに融合している 行方不明事件と不可解な殺人事件の二つを結ぶ鴉の謎が興味をそそられる 男?女?怨恨?憎悪?復讐?と動機ははっきりしないし犯人像さえも浮かんでこない展開で楽しませてくれる ただ毒殺トリックは成功するとは思う反面たわいもないトリックだったのが残念(期待しすぎた) |
No.5 | 7点 | 斎藤警部 | 2017/03/07 22:50 |
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警察と言う名の盲点! (←これいっそ、メイントリック的なものに使えるんじゃ!?)
或る犯行手段暴露の端緒となった時計の件、トリック側の事象はささやかなもんだが、ロジック側の、意外に伸びしろの有る推察絵巻はなかなかの鳩尾(みぞおち)連打。 あとその、トリック側の、念押しの機微ね。。 生体反応をごまかす。。。 まさか!! ぁ、そこは違ったのね。 (しかも更にもひとつ真相の奥座敷があって、とかちょっと期待しちゃった) んで、もう一つの犯行のトリックに纏わる「偶然」がね。。何とか歯を喰い縛って「必然」に持ち込めなかったかもんかと惜しまれますけどね、しかしそっすっと余程の無理が生じちゃうってワケで諦めて、まだしも有り得そうな偶然設定にしたのかな、って土屋さんの苦渋の選択に想像巡らしましたよ。 偶然と言ゃア「偶然が生み出した夜の芸術」!これゃ笑ったぞぇ(☝︎ ՞ਊ ՞)☝︎ 謎めいた表題の意味がミステリ的には決して深い抉りの軌道を見せるものでもなかったってのは、少しばかり惜しまれます。 位牌の件、、勝手なものよとその心を訝りつつも、泣けましたね。 それと、各章タイトルがね、さり気なくも唆るんだよね。 やっぱり、いい本ですよ。 |
No.4 | 6点 | nukkam | 2015/12/29 19:54 |
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(ネタバレなしです) 長編作品としては「妻に捧げる犯罪」(1972年)以来となる1980年発表の本書は千草検事シリーズ第4作の本格派推理小説です。土屋のミステリーはよく文学性が濃いと評価されますが本書は特にその特徴が強いと思います。謎解きに関しては千草検事が「犯人の自白もなく、目撃者の証言もなく、推理を裏づける物証もなかった」と事件を振り返っていますがプロットは非常にしっかりしています。トリックは失敗する可能性が高いように思いますし(但し実現性については事前に確認したそうです)、犯人の正体について読者が推理に参加する余地がないのは本来私の好みではないのですが本書に関してはそういったことも不満に感じませんでした。 |
No.3 | 6点 | E-BANKER | 2015/03/28 17:38 |
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1980年発表の千草検事シリーズ作品。
前作(「妻に捧げる犯罪」)から八年ぶりに発表された作者の第八長編に当たる。 ~評論家・真木英介が小諸駅前から姿を消した。数日後、千曲川河畔で真木の小指の入った背広と「鴉」の文字が見える紙片が発見された。一方、世田谷の喫茶店では、劇作家の水戸大助が『白い鴉』と言い残して死んだ。何者かに毒殺されたのだ。ふたつの事件の間を飛び交う「鴉」につながりはあるのか? 千草検事の推理が真相を抉る傑作文芸ミステリー~ 作者らしい“地味”だが“丹念”な本格ミステリーに仕上がっている。 ひと言で表すとそんな印象。 紹介文にもあるとおり、当初は二つの事件が別々に進行し警察は手をこまねくのだが、千草検事が「鴉」という共通項を発見するに及び、二つの事件が密接に絡まってくる。 この辺りのストーリー展開は巧みで安定感十分。 序盤~中盤は事件の背景、「鴉」の意味など、いわば「動機探し」がプロットの中心。 終盤に差し掛かるまでに真犯人はおおよそ目星がつくのだが、捜査陣の前に鉄壁のアリバイが立ち塞がる。 というわけで終盤はこの「アリバイ崩し」がプロットの中心。 電話がトリックの鍵となるのだが、時代背景とはいえ、いかにも「作り物めいた」ところがちょっと頂けない気はした。 (犯人が実質これだけでアリバイを構築したというところに納得性が薄い) とはいえ、作品全体には何とも言えない寂寥感や悲哀感が漂い、格調高い作品に仕上がっているのは間違いない。 千草検事と野本刑事の頭脳派・体力派コンビは紋切型といえば紋切型で、ともすると二時間サスペンスのような雰囲気になりやすいのが玉に瑕。 本作も堅実な作風好きの方には良いが、冗長さがあるのも否めないかな・・・ 他の佳作よりは評価は落ちる。 (本作は、短編「泥の文学碑」をベースに長編に焼き直した作品) |
No.2 | 6点 | あびびび | 2014/08/16 18:46 |
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この作者は、時間をかけて丹念に作っているのだろう。本当にブレがなく、本格推理小説にすべてを注いでいるような感じを受ける。
細かいトリックはいずれも成功率50%くらいで、偶然的要素も必要だと思ったが、この作品は映像化すれば魅力半減で、やはり活字で読みたい。格調高い文章がそう思わせる。 いつもながら、小諸市あたりが関係するのも自分的には好ましい。 |
No.1 | 6点 | ボナンザ | 2014/04/08 01:01 |
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これまでの作品に比べるとやや見劣りするが、それでもおもしろい。
これ以降社会派のようなテーマが見え隠れするようになる。 |