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[ 短編集(分類不能) ]
七歳の告白
短篇集
土屋隆夫 出版月: 1983年09月 平均: 7.50点 書評数: 2件

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角川書店
1983年09月

No.2 7点 2021/06/11 10:38
 『泥の文学碑』に続く角川文庫版十一冊目の作品集。1951(昭和26)年から1958(昭和33)年まで「探偵実話」ほか各誌に掲載された短篇を収めたもので、収録作全十本を年代順に並べると 奇妙な招待状/いじめられた女/マリアの丘/狂った季節/小さな鬼たち/夢の足跡/二枚の百円札/七歳の告白/暗い部屋/白樺タクシーの男 となる。『危険な童話』張りの幼年犯罪を描いた表題作を筆頭に、「いじめられた女」「マリアの丘」「小さな鬼たち」など皮肉極まるオチで纏めたタイプが多いものの、他方では軽妙な短篇を挟んだり目先を変えたりしてバランスも取った、土屋隆夫初体験には格好の良篇集である。
 ベスト3はアリバイトリックに加え、ダイイングメッセージの謎に男女の絆を盛り込んだ「奇妙な招待状」。次いで惨くも念入りに構築されたある女性の悲劇「いじめられた女」。最後は読みながら首筋にザワザワした気配が迫ってくる妄執サスペンス「暗い部屋」。横溝正史の「鬼火」といい多岐川恭の「指先の女」といい、良く出来た準盲人or盲人の報復ネタはそれだけで鉄板の良作になる。次点は表題作か、これも皮肉な巡り合わせの奇譚「二枚の百円札」のいずれかか。
 無意識下の犯罪を扱った「夢の足跡」は成り行きが読めるのでちょっと首を捻るが、最後はこの作者らしい方法で上手く救っている。飛び抜けた傑作は無いが佳作未満の手堅い小説で固めた、安心して読める作品集であると言える。

No.1 8点 斎藤警部 2015/07/02 11:30
つらい内容の短編集。文学性高い氏の作品だけに、辛さを愉しむエンタテインメントであると同時に、本当に辛くていたたまれなくなって来る、それがまた良い。
「いじめられた女」のさりげなく残酷極まりないラストシーン。 「小さな鬼たち」のあまりにも皮肉で酷い勘違いの悲劇。
中には軽妙な味の小品や、ちょっと幻想的雰囲気が混じるものも少し挿入されており、それが救い。
表題作は泣けます。

七歳の告白/夢の足跡/二枚の百円札/白樺タクシーの男/奇妙な招待状/いじめられた女/小さな鬼たち/狂った季節/暗い部屋/マリアの丘 
(角川文庫)


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