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[ 本格 ]
不自然な死
ピーター卿シリーズ
ドロシー・L・セイヤーズ 出版月: 1994年11月 平均: 6.71点 書評数: 7件

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東京創元社
1994年11月

No.7 6点 弾十六 2019/11/09 21:29
1927年出版。ピーター卿第3作。創元文庫、浅羽さんの訳はすこぶる快調。私の参照した原文(Open Road 2012)にはドーソン家=ホイッテカー家の系図がついてました。これがあると関係を理解しやすいですね。
本作には『誰の死体?』の一行ネタバレ(p50)あり。シリーズは順番に読んでるのが当然と作者は配慮無しです。
本作でのセヤーズさん(本人の読みはイ抜き)の話題は、癌の研究、貧困問題、英国の田舎の家族の歴史、相続法など幅広く、ジャーナリスト的というより歴史家、社会改良家の眼差し。
いや〜冒頭から良い展開ですね。小ネタも結構面白い。うわさ話の描写が上手、軽薄なピーター卿のキャラも良い… と14章までは文句なかったのですが、その後モタモタ後半にはやり過ぎ感すらあり。全体的に記述が長め、もっと刈り込めます。(『五匹の赤い鰊』以降の文庫の厚さを見ると、うう、先行きが心配…)
作中で繰り返される「結婚なんてしない」モチーフは当時、女性完全参政前夜(1928年英国普選成立)で女権拡張運動が盛り上がっていたことと関係あるのかな?(作者自身は1926年4月に結婚。1924年には未婚のまま息子を出産してます。)
大ネタは皆さんおっしゃるように有名なもの。(確実性には疑問あり。危険性は大いにあるらしい。)
CarrとAgathaがほぼ同時に登場して、もしや!と思ったけど当時Carrはまだアマチュア、偶然の一致ですね。
以下、トリビア。
作中時間は問題なし。冒頭(物語の始まり)は1927年4月中旬以降。日付と曜日(27日水曜日,p85)も一致。
現在価値は英国消費者物価指数基準(1927/2019)で62.30倍、1ポンド=8420円で換算。米国消費者物価指数基準(1927/2019)は14.76倍、1ドル=1596円。
p15 癌(cancer): 1926年に疫学的基礎となる比較研究がJanet Lane-Clayponにより発表されたらしい。
p27 火葬 (crematorium): 当時は本書の記載によると何か揉めると本人の希望でも火葬の許可が降りず、後で調べるため埋葬される。調べると、英国では墓地が混み合っていたもののWWIまで火葬への反対は強く、1930年でも英国全体で火葬は5%少々とのデータあり。
p30 探偵のホークショーです(I’m Hawkshaw, the detective): 訳注では「戯曲に登場した初の探偵」となってるけど、その劇THE TICKET-OF-LEAVE MAN (1863)ではHawkshaw, the 'cutest detective in the forceで「警察の刑事」。ここは「探偵」の意味なのでシャーロック・パロディの米国新聞漫画“Hawkshaw the Detective”(1913-2-23〜1922-11-1)を指してる可能性の方が高いのでは? (1937年の映画も見ました。英語があんまり分からなくても楽しめる犯罪メロドラマ、Webで無料あり。)
p35 おめがねさん(porcupine): 原語の意味は「ヤマアラシ」。「子供の言い方を借りれば」とある。似た語を探すとconcubine(情婦、おめかけさん)か?この訳でなんとなくわかるのですが…
p41 悠々自適の女の人(a retired lady in easy circumstances)… 年収800ポンドくらいの(about £800 a year)…金持ち(wealthy)[じゃない程度で]: 800ポンドは674万円(月56万)。ピーター卿の感覚、まーこのくらいなら金持ちじゃないのか。
p41 とりあえず50ポンド: 42万円。探偵の準備にポンとお金をばら撒くピーター卿。
p42 ペニー玉は決して切らさない… ガス湯沸かし器のことがありますから… (without pennies—on account of the bathroom geyser): コインをスロットに入れるとガスが供給される自動販売システムのことですね。集配人が来る前にコインボックスが一杯になって動かなくなる悲劇とか、別のコイン(外国製の安いやつなど)で使えちゃう場合があるとか、色々不都合はあったらしい。各戸集配とか値上げの時とか大変なシステムだと思うのですが…
p45 貴族め!吊るし首だ!(Aristocrat! à la lanterne!): フランス革命期の唄Ah ! ça ira(1790年5月ごろ)より。「サ・イラ」(wiki)参照。
p45 ノッティング・デイルの女性人口(female population of Notting Dale): Notting Daleは「ウェスト・エンドの地獄」と呼ばれたこともある最貧地区。ということは売春婦のことか。
p47 週3ギニー半(3 ½ guineas weekly): 32217円。快適な寝室と居間に三食ついての料金(下宿)。月額14万円。
p48 ガイ(Guy‘s): 訳注 ロンドンの大病院。登場人物の看護師が訓練を受けたところ。Guy’s Hospitalは1721年からの歴史がある病院。英wikiにも項目あり。teaching hospital(医療従事者を訓練する病院)という位置付けらしい。
p49 赤毛の看護婦(red-headed nurse): 赤毛の看護婦は強気で警官も撃退できる、というネタ、ペリー・メイスン(『おとなしい共同経営者』1940など)に出てくるのだけど、そーゆー一般的なイメージがあったのか。
p50 ニュース・オブ・ザ・ワールド: このシリーズお馴染みの俗悪新聞。
p70 シーラ・ケイ=スミス(Sheila Kaye-Smith): 訳注 英20世紀前半の地方作家。英wikiに項目あり。The End of the House of Alard (1923)が大ベストセラーになった。著作の主な舞台はborderlands of Sussex & Kent らしい。
p73 賭け: 同時に3種の賭け(10対1、20対1、50対1)を提案するピーター卿。慎重な貧乏チャールズは半クラウン(1053円)で受けます。後段の7シリング6ペンス(3158円)はチャールズが全部負けた時の損害額。仮にピーター卿が全負けした場合は84240円の支払い。
p73 ポニー(ponies): 25ポンド。コックニー由来のようです。Cockney rhyming slang terms for money... ‘pony’ is £25, a ‘ton’ is £100 and a ‘monkey’, which equals £500. Also used regularly is a ‘score‘ which is £20, a ‘bullseye’ is £50, a ‘grand’ is £1,000 and a ‘deep sea diver’ which is £5 (a fiver).
p74 ゴール人式の発想で尋問する(apply the third-degree in the Gallic manner): 「ゴール人式」に訳注「異質なものすなわち敵とする考え方」とあるけど、単純に「フランス流に拷問する」という意味では?
p74 『詩篇』に出てくる人たちのように罠をしかける(Like the people in the Psalms, I lay traps): 訳注「詩篇69:22か」とあるように、詩篇に出てくるtrapはそこだけ(King James Version調べ)だが、内容があまり合わない感じ。全Bible(KJV)でtrapを調べると、他はJoshua 23:13、Job 18:10、Jeremiah 5:26、Romans 11:9の四箇所。なおplanetpeschel.comによると罠をしかける場面は詩篇に豊富(35:7、38:12、57:6)という。
p78 五ポンド紙幣(£5 Note): 当時の流通紙幣5ポンド以上はBank of England発行のWhite Note(白地に黒文字、絵なし。裏は白紙)。5ポンド紙幣は195x120mm。札の出どころを調査しています。White Noteの場合、銀行で番号を記録する規定があったようですね。
p82 最新のダイムラー・ツイン・シックス(The new Daimler Twin-Six): 英国ダイムラー社製のDaimler Double-Six piston engine (sleeve-valve V12)は、ロールスロイスs6と並ぶ当時の最高級エンジン。自動車は7.1-litre(Double-Six 50, 1926)と3.7-litre(Double-Six 30, 1927)あり。記述から幌付きのスポーツタイプと思われます。
p83 マードル夫人と命名(call her Mrs. Merdle): 自動車に愛称をつけるピーター卿。
p87 調理前で1ポンド当り3シリング(it costs about 3s. a pound uncooked): 高級ハム(Bradenham ham)の値段。100g当り278円。
p88 十シリング紙幣が1枚、銀貨と銅貨で7シリング8ペンス(with a 10s. Treasury note, 7s. 8d. in silver and copper): 当時の流通紙幣のうち1ポンドと10シリングはHM Treasury発行(1922-1928)。10シリング紙幣は138x78mm、緑色の印刷、表に女神ブリタニアとジョージ5世の横顔、裏は2細胞胚みたいな図案に10シリングの文字。当時の銀貨はクラウン(5シリング)から3ペニーまで種類豊富なので省略。1920年ごろから物価上昇の影響で純銀から半銀製に変わっています。(WWI前後の比較で消費者物価指数基準1914/1924だと1.9倍。)
p99 五ポンド札三枚と一ポンド札十枚(three fives and ten ones): 1ポンド紙幣はHM Treasury発行。151x84mm、茶色の印刷、表に竜を刺し殺す聖ジョージとジョージ5世の横顔、裏は国会議事堂。
p110 相当な... お熱(quite a ‘pash’): passionの短縮形から。中年女の「女学生時代の言いかた」と書かれている。
p113 オースティン7(Austin Seven): 1922-1939生産の自動車。ちっちゃな可愛らしいデザインです。
p121 どこかの老成した男が言っているが、誰でも誰か別の人間について生殺与奪の権利を握っているのさ---一人だけだがね(Some wise old buffer has said that each of us holds the life of one other person between his hands—but only one): ピーター卿のセリフ。訳注なし。調べつかず。
p122 パンジャンドラム(the Grand Panjandrum with the little round button a-top): ガルパン劇場版にも登場?する英国面を代表する兵器は1943年発明。元の詩はSamuel Foote, The Grand Panjandrum (1755) 一度見たらどんな文章でも正確に暗唱できると豪語する俳優Charles Macklinを試すために作ったnonsense prose。従って元々は出鱈目な語。マクリンは挑戦を受けなかったそうです。以下オリジナルの引用
(前略) So he died, / and she very imprudently married the Barber: / and there were present / the Picninnies, / and the Joblillies, / and the Garyulies, / and the great Panjandrum himself, / with the little round button at top; (後略)
p149 一人10シリング(ten shillings each): 4210円。女中へのご褒美。
p157 これだから検視審問は困る。隠しておきたい情報を全部暴露してしまうくせに、手に入れる価値のある証拠は何も提供してくれない: 検視官の自由裁量権がかなり強いらしい。パーシヴァル・ワイルド『検死審問―インクエスト』(1940)の前文にもそんなようなことが書いてありました。
p165 クロックフォード(Crockford): (訳注 英国国教会の聖職者名簿) Crockford's Clerical Directory、初版1858(The Clerical Directory) 1876年からは、ほぼ毎年新版が出ている。
p167 僕は危険な運転はしない(I am not a dangerous driver): 当時、危険運転ネタは面白い話だったのでしょうね。ガードナーのメイスンとか、クレイグ・ライスのヘレンとか。ピーター卿も仲間入りです。
p167 白銀の馬力は口から泡を吹いて逸り(The snow-white horsepower foams and frets): 訳注では「出典不明」。Matthew Arnold “The Forsaken Merman”(The Strayed Reveller, and Other Poems 1849)にThe wild white horses foam and fretという一節があり、ほぼこのままの形でセヤーズさんのBusman's Honeymoonにも引用されてます。原詩では荒波を暴れる白馬に例えたもの。
p176 三シリング八ペンス(Three and eightpence): 1543円。二人分のビール代(two pints of the winter ale)と思われる。
p184 戦争… 税金がたまげるほど重くなって、何もかもばか高くなって、仕事がない人がふえただけ(shocking hard taxes, and the price of everything gone up so, and so many out of work): 嘆く老女。
p191 インゴルズビー:『インゴルズビー伝説集』(Ingoldsby Legends): Richard Harris Barham作、初出1837年。セヤーズのWho’s Bodyにも出てました。JDC『火刑法廷』にも引用があってちょっとびっくり。
p228 マイケル・アーレンって大好き... 『恋する青年』はお読みですか?: 若い夫人のセリフ。Michael Arlen(1895-1956)はアルメニア出身の作家。1920年代の英国で人気。Arlen is most famous for his satirical romances set in English smart society (wiki) Young Men in Love (Hutchinson 1927)は当時の最新作。
p229 エリナー・グリン夫人(Mrs. Elinor Glyn): 1864-1943。チャンネル諸島生まれの英国作家。その恋愛小説が当時はスキャンダラスと受けとられた。クララ・ボウで有名な<イット>の生みの親。でも今やその語を知る人は少ないような…
p234 オーピントン(Orpington): Orpington is known for the "Buff", "Black" and "Speckled" chickens bred locally by William Cook in the 1890s. (wiki)
p239 女の友情: 男の友情との対比で書かれています。納得の説明。なんか実感こもってる。後半の愁嘆場(p330)も参照。
p255『ロンドン市民』(The Londoner): 何の引用なのか調べつかず。
p268 公衆電話の場合、交換手が必ずそう言う(the operator always tells one when the call is from a public box): 当時の英国ではそう言う仕組みだったようです。なので公衆電話から家電を装うのは困難。
p269 煙草カード(cigarette-card): 1926年英国で調べるとクリケット選手とか有名な脱走とか海賊&追い剥ぎとか古い建物とか面白そうなシリーズが一杯。
p283 ブランヴィリエ公爵夫人(Marquise de Brinvilliers): 『火刑法廷』でお馴染み。What! all that water for a little person like me? というセリフは怖いですね… (Madame de Sévignéの1676年7月22日の手紙によるとC’est assurément pour me noyer, car de la taille dont je suis, on ne prétend pas que je boive tout cela.)
p284『おお霊感、孤独なる子よ、生まれし野生の森の歌を囀り』(O Inspiration, solitary child, warbling thy native wood-notes wild): ミルトンの詩を元にヘンデルが作曲したオペラL'Allegro, il Penseroso ed il Moderato HWV 55(1740)のNo.31 Airより。歌詞はOr sweetest Shakespere, Fancy's child, Warble his native wood-notes wild.(以上planetpeschel.comによる)ミルトンの原詩(L’Allego 1645)もこの部分は全く同じなので、原作が元ネタかも。
p300 十シリング札一枚、六ペンス玉一枚、銅貨が二、三枚(Ten-shilling note, sixpence and a few coppers): 当時の6ペンス硬貨は.500 Silver、ジョージ5世の肖像、直径19mm、2.88グラム。
p304 『ブラック・マスク』(an American magazine—that monthly collection of mystery and sensational fiction published under the name of The Black Mask): 1927年5月以降は「The」無しの「Black Mask」に改題。英国版は1923年から刊行。当時128ページ、9ペンス(=316円)の月刊誌。米版同月号(20セント=319円)に時々1・2話を追加した造り。表紙も同じイラスト。1926年〜1927年ごろはガードナーやハメットやキャロル・ジョン・デイリーなどが活躍、表紙は西部劇っぽいイラストが多い感じ。
p319 オースティン・フリーマン(Austin Freeman): ここネタバレあり?私には具体的な作品名がわかりません。
p335 ウィルキー・コリンズが「探偵熱」と呼んだもの(Wilkie Collins calls “detective fever”): オリジナルはThe Moonstone (Third Narrative, 3. Chapter III) “I call it the detective-fever”
p338 さて顔というのは見間違え易いが、背中を見誤るのは不可能に近い(Now it is easy to be mistaken in faces, but almost impossible not to recognise a back.): これは重要な真理。見慣れた人のちょっとした仕草は正体をすぐに表すものです。進化の過程を考えると誰にでも備わってるはずの認知能力。そこに配慮してない変装等のトリックは一切信じられませんね。
p361 七ポンド六シリング(seven and six): 上述p73参照。なので「7シリング6ペンス」が正しい。
p364 醜怪な黒い旗の掲揚を告げる八点鐘(the eight strokes of the clock which announce the running-up of the black and hideous flag.): black flagは訳注で「死刑執行の旗」、調べると「死刑執行完了」を知らせる旗で、ドン・シーゲルの映画『ビッグ・ボウの殺人』(The Verdict 1946) Sidney Greenstreet, Peter Lorre出演でロンドン1890年の話、ハーディーの小説Tess of the d'Urbervilles (1891)に出てくるらしい。昔の習慣のようです。

(追記2019-11-10)
最後の日蝕(eclipse)について書くのを忘れてた。日蝕の記録は部分蝕を含め正確に残ってるはずなので調べたらラストシーンの日付が確定するはず… なんですが、面倒なので調べていません。上のトリビアで時々参照してるPlanetPeschelのホームページの注釈でも項目立てしてるけど答えがまだ書いてないし。
Bill Peschelさんのページにはウィムジーシリーズ各作品の注釈や写真が豊富に載ってます。第2作目まで完成してますが、それ以降は作成中。英語がもっと上手なら参戦したいなあ。(アガサさんのスタイルズと秘密組織の注釈本やシャーロック同時代のパロディ集成も出版してるようです。)

(2020-2-2修正)
Bank of Englandに紙幣のサイズを明記したページWithdrawn banknotesがあったので修正しました。

No.6 5点 ボナンザ 2018/04/22 20:45
ピーター卿三作目。相変わらずコミカルな展開と意外にも単純な真相。

No.5 6点 nukkam 2016/08/12 10:48
(ネタバレなしです) 1927年発表のピーター卿シリーズ第3作は何とも不思議な魅力の異色本格派推理小説です。犯人については早い段階でこの人しかありえないだろうと絞り込まれるのでフーダニットの面白さはありませんが代わりに犯行方法と動機、そして証拠探しが謎解きの中心になります。人物の役割が独特で、例えば最初に死因に疑問を抱いたカー医師は本来なら真相究明の功労者でもおかしくないのですが、この人の中盤以降での扱い方には驚きます。大胆な行動力を持ち合わせた犯人やピーター卿の助手をすることになったクリプスン嬢など個性豊かです。前半は事件性がはっきりしないこともあってのんびりと流れていきますが終盤はどんどんサスペンスが増していきます。技術的には実行上問題があるそうですが大変有名なトリックが使われており、犯人逮捕時のパーカー警部の一言の重みも忘れがたいです。

No.4 8点 ロマン 2015/10/22 15:35
ある老婦人の死を調査する事になったピーター卿。担当医師ですら、明らかに出来なかった不審な死を明らかに出来るのか。トリックは現代ではよく知られる様になった古典的なものだが、この作品の頃は驚異的だったと思う。むしろ被害者は末期ガンであり、放っておけば自然と亡くなる病状であるのに、何故殺人のリスクを負う必要があるのか。誰が犯人かより何故に重点が置かれている作品。会話が楽しい、場面の情景が直ぐに浮かぶ、心に長く残る、詰まりはストーリー・テリングが抜群に良いという事なのだ。

No.3 6点 蟷螂の斧 2013/08/29 17:44
(ネタバレあり)倒叙に近い形で、ハウダニット、ホワイダニットに重点が置かれています。ホワイダニットは理解できますが、ハウダニットについては、現在では不可能なはず。しかし、当時としては斬新な手だったと思います。犯人の描写(特に心理描写)がほとんどなく、それがなんとも不気味な感じがします。伏線の扱い方が面白かったですね。バイク事故の修理場面(伏線とは分かりませんでした)や、有閑マダムの誘惑後のキスシーン(これはピンときました(笑))。1作目は、バンター(従僕)がいい味を出していましたが、本作はクリンプスン(女性・聞き込み代理人)の行動(懺悔のメモを読むべきか読まざるべきかなど)が楽しめました。表紙(創元推理文庫)を読後(決して前はダメです)じっくり見ることをお勧めします。あることがわかります。

No.2 6点 kanamori 2010/06/13 16:17
ピーター・ウィムジイ卿シリーズ第3作。
料理屋で知り合った医師の話から、ピーター卿がある老譲の不審死を追求していくストーリー。
真犯人は序盤からほぼ明らかになっていますが、自然死に見せかけた殺人方法の謎と第2の殺人のアリバイが壁になって遅々として物語が進展しない。例によってシェークスピアなどの古典からの引用癖にはもどかしく感じましたが、終盤ある偶然から、次々と謎が明らかになる展開はなかなかスリリングです。
殺人者の肖像はある意味現代的で古さを全く感じさせないのはさすがです。最後の日蝕のエピソードはピーター卿の心情を表現したものでしょうか。

No.1 10点 Tetchy 2009/02/22 19:29
セイヤーズは凄い!本統に現代のミステリに通じるセンス・オヴ・ワンダーがある。今回も例によって発端の事件は地味。いや料理屋で隣り合わせた医師が非難にあった事件にもなっていないある老嬢の死から始まる。

気に入ったのは3点。
まずピーター卿が単純な自然死の真相を暴こうとする動機。「この世には犯罪で殺されるよりも普通に亡くなる人の方が多い。だが普通に死んだ者達の中にも殺された人がいるかもしれない。それはただ単純に発覚しなかっただけで完璧な犯罪だったんじゃなかろうか。6人殺した毒殺魔が7人目を殺した時に捕まるのも、6人目までの手際が良くて発覚しなかっただけなんだ」という趣旨の台詞を述べる。おもわず頷いた。
次に動機が斬新。P.D.ジェイムズが多分にこの影響を受けたように思える。
そして明かされる真相。この手の趣向は某有名作家が多用していたが、セイヤーズのそれは正にメガトン級。あまりの衝撃にどこか矛盾が無かったかと読み返したが、十分配慮がなされていた。

発端からこんな凄惨な事件が繰り広げられようとは全く予想だにしなかった。いやあ、全くセイヤーズは素晴らしい!


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