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[ 本格 ]
死体をどうぞ
ピーター卿シリーズ 旧題『死体を探せ』
ドロシー・L・セイヤーズ 出版月: 1957年01月 平均: 6.57点 書評数: 7件

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現代文芸社
1957年01月

東京創元社
1997年04月

東京創元社
1997年04月

No.7 6点 弾十六 2025/05/12 13:33
1932年出版。創元文庫で読みました。浅羽さんのお陰で上質な翻訳のピーター卿シリーズが読めるのは、本当にありがたいことだと思います。
皆さんの評価が何故か高い。これがオッケーなら前作『五匹の赤い鰊』も同じくらいの作品では?と思いました。あっちは方言(の翻訳)が足を引っ張ってるのかな?
私の不満は、ちゃんと絶体絶命シチュエーションを作ってるのに、そっちにフォーカスせず、スリルを盛り上げていないこと。どう考えても最重要容疑者はあの人だよね… 当初は、そこから救出、という話だったのでは?と思うのだが(その片鱗が第13章にある)、それじゃ『毒』の二番煎じだし、そんな関係を繰り返したくない!という事だったんだろう。それで、ピーター卿の振る舞いがワザと自己模倣してるみたいで乗れないし、ハリエットの反応もなんだか空々しい。無理にわちゃわちゃしてる、という結果になっちゃった。
犯人の計画もなんだか詰めが甘いし、訴追側もこれではヒヤヒヤものの裁判になるだろう。まあ何かの証拠が後から出てくるんだろうね…
トリビアはとりあえず項目だけ。あとで膨らませますよ。
p31 六月十八日、木曜日◆ 1931年が該当。
p61 女らしさへの回帰
p63 週に十二ギニ
p63 外科医の手術代が百ギニ
p63 地方税やら国税やら
p66 体の在り無し
p68 新聞の渾名
p70 コーナー・ハウス
p70 マフェット嬢の話
p81 デ・レシュケ
p81 バーリントン・アーケード
p84 デブレット
p94 オートバイに乗る
p97 結婚許可証… 二週間後には結婚… しばらく教区に住む必要がある
p98 フローラ
p102 ボルシェヴィキの仕業
p125 あくび… にきび
p131 速度制限が廃止されて
p170 モーガン
p176 ソブリン金貨
p178 インドの王さま
p180 イングランド銀行券
p180 紙幣のほうが確かに安全
p195 あおひげごっこ… 塔の上のアン姉さん
p195 お茶の時間(四時)
p195 六ペンス◆ 子どもへの情報料
p198 映画館に改造する
p211 クォーンやパイチリー
p211 ロシアの小麦がばかすか、安値で輸入され
p211 手間賃や国税、地方税や教区税や保険料
p211 小麦… 一エーカーあたり九ポンドの経費… [収入は] 運がよくて五ポンド
p251 五ポンド… 銀行券で
p251 F・ハルム
p251 一回二ペンス半で
p264 トーキー映画
p271 賄いこみで週に二ギニ半、もしくは家賃だけで十二シリング
p272 おばさん
p273 国会制定法
p274 パントマイム
p275 プリンシパル・ボーイ
p285 煙草のカード
p310 年収三千ポンド◆ 13万ポンドの利子か?
p315 旅券… 査証
p345 結婚許可証
p347 赤いベントレーのオープンカー
p357 コンサート
p383 多数評決(A majority verdict is sufficient)◆ インクエスト
p396 チェンバース英語辞典
p402 フリス写真館
p402 ドレ&シー社
p416 付加税だの相続税だの
p458 出典不明
p465 All is known, fly at once
p474 わしが十八の時ゃ、週に五シリングの給料で
p528 聖マーティンズ・イン・ザ・フィールズ教会の地下
p529 エドガー・ウォレスの小説
p529 離婚沙汰
p531 ほんとに機能する電気式の通話装置
p531 十シリング札
p532 フロリン銀貨
p532 コーナー・ハウス
p533 流行り歌
p534 映画館… 三シリング六ペンス席
p535 背中をごまかす
p546 金本位制
p580 探偵作家
p584 ジョン・ロード
p586 ベルサイズ・ブラッドショー

No.6 4点 レッドキング 2023/10/20 09:47
ドロシー・セイヤーズ第七作。人好きのしない気難しい女流作家と、贅を極め、女の嗜好も悪食珍味(「フクザツなお味ぃ」)志向になったか、彼女のストーカーと化した大富豪「貴族探偵」。偶然出くわした死体を巡る真相を求めて、計34章に及ぶ「証言?」が続く。退屈な前作「五匹の鰊」と違い、超高級(一見お断り)床屋などユーモア小説として面白い。ミステリとしては・・クロフツtrafficアリバイトリック標準。あの時、女が死体を見つけていなければ、犯行目的は外していたが、ばれることもなかった、てなヒネリ落ちがgood。
※最新中華ミステリの「色覚異常」、90年前の当作の「血友病」、相も変わらず優性遺伝ネタが好きね、ミステリ。

No.5 8点 クリスティ再読 2023/07/02 13:47
文庫600ページある大長編なんだけども、つるつる読めて楽しめる。
それでいて冗長じゃないし、しっかり「謎の解明」に焦点の当たった小説で、ある意味「これぞ本格」と言いたいくらいの作品。イギリスの「パズラー長編」というものを考えたときには、モデル的な作品としてもいいかもしれない。
セイヤーズの犯人は、決して超人的な悪の化身でもないし、犯行プラン通りに奇抜なトリックを決めてみせることもない。平凡な悪意をもって綿密なプランを立てたつもりでも、いろいろな偶然に翻弄されて、その結果「きわめて異常な状況」に陥る。それをピーター卿とハリエットが、あーでもないこうでもない、といろいろな方面からこねくり回して見せる「ミステリ」であり、実際その推理も一瀉千里とはいかずに、試行錯誤とミスや誤解の集積だったりする。
このリアルで平凡なあたりに、セイヤーズの筆が冴える。ピーター卿もハリエットも犯人も被害者も、それぞれ想像が絡み合った世界に生きていて、それぞれの「想像」がリアルとズレながらも、時にはヘンな構図を取りながらも次第に噛み合っていく....そんなプロセスの小説。だから真相が極めてアイロニカルなものになるのは当然。
だからこそ、そんな中に光る人間性をうまく掬い取り、さらにはアイロニカルな状況に置かれた人々の醸すユーモア、そしてツンデレなハリエットとピーター卿の恋の駆け引きが、長い小説を彩って飽きることがない。
(個人的には被害者の同僚のジゴロが「僕たちが売り買いされる人間だからといって、眼も耳も持たないと思ってはなりません」という人間の矜持が、実は真相に照応しているあたりとか、素晴らしいと思う)

No.4 6点 ボナンザ 2014/12/13 20:27
所々冗長な部分があるのは否めないが、傑作ではある。

No.3 6点 kanamori 2010/09/10 18:38
ピーター・ウィムジイ卿シリーズの第7作。
探偵作家ハリエットが旅行中の海岸で発見した死体を巡るオーソドックスな探偵小説で、長尺の割に女史の作品の中では読みやすいのが良。
警察とハリエットにピーター卿が参戦し、延々と推理合戦が繰り広げられるのが一応の読みどころですが、容疑者たちのアリバイに関する幾多の推論が、たった一つの事象によって崩壊する様は結構インパクトがありました。

No.2 8点 Tetchy 2009/02/27 22:45
※ネタバレ感想です!

またもセイヤーズ、恐るべし、と手放しで歓びたい所だが、今回はどうもそうは行かない。

まず賞賛の方から。
岸壁で1人のロシア人が殺されている、このたった1つの事件について600ページ弱もの費やし、さらにだれる事なく、最後まで読ませたその手腕たるや、途轍もないものである。事件がシンプルなだけにその不可能性が高まり、今回ほど本当に真相解明できるのか、危ぶまれた事件は(今までの所)ない。
しかも最後の章でまたも驚きの一手を示してくれるサービスぶりはまさに拍手喝采ものである。
血友病を持ってくるとは思いませんでした。この1点でトリックが全てストンと落ち着くのが非常に気持ちよかった。

しかし―ここからが批判である―、腑に落ちないのは結局動機が何なのか判らなかった事。
意外な犯人という点では今回は申し分ないだろうが、単なる一介の仲介業者が流れの理髪師に扮して殺人の供与をする動機が判らない。
動機らしい動機といえば、直接手を下したヘンリー・ウェルドンの、姉の財産を独占すべく結婚させないために手を下したというのが最も強いのだろうが、どちらかと云えば彼は共犯格であるから主犯格であるモアカムの動機が全く見えないのだ―読み落としたのかな?―。

余談だが、今回は表紙の装画に非常に助けられた。この装画がなければ現場の状況を克明にイメージできなかっただろう。イラストを描いた西村敦子氏に感謝。

No.1 8点 mini 2008/10/30 10:47
「ナイン・テイラーズ」だけしか読まれていない感じだが、そもそも「ナイン」はセイヤーズを初めて読むのに適していないのは明らかだ
ではセイヤーズ入門にはどれが向いているか、私のお薦めは「死体をどうぞ」である
「死体をどうぞ」は「ナイン」のような重厚感がないので物語展開が分り易く、ハリエットの登場もうざくなく読み易さに貢献している
しかもそれでいてセイヤーズの特徴が十二分に発揮されているという稀有な傑作なのである
頁数は多いほうだが長さを全く感じさせないのは、作者の驚異的な筆力のなせる技だろう


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