皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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[ 短編集(分類不能) ] モンタギュー・エッグ氏の事件簿 エッグ、ピーター卿、ほか |
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| ドロシー・L・セイヤーズ | 出版月: 2020年11月 | 平均: 5.50点 | 書評数: 2件 |
![]() 論創社 2020年11月 |
| No.2 | 5点 | クリスティ再読 | 2025/12/04 09:37 |
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| ピーター卿の残りで「アリババの呪文」を収録するという、何とも困った短編集。で「アリババの呪文」がつまらない、というのがさらに困ったあたり。確かにピーター卿というと短編とか「殺人は広告する」に見られるような冒険者的体質はあって、ある意味ホームズの後継者ポジションがしっかりある人なんだけどもね。何か「ビッグ4」を読まされたみたいな気持ちになる。
でプラメット&ローズ酒造の販売員として地方を回るセールスマン、モンタギュー・エッグ氏の探偵譚6編は、それぞれ短いパズルであまり面白味がない。「販売員必携」を引用しつつ...というキャラも日本人からすると妙にスベってる。「訳者あとがき」によると宗教的なパロディの側面もあるみたいだが。しいて言えば不思議な凶器である「毒入りダウ'08年物ワイン」か。まあ業種を問わずにビジネスホテル(というか「商人宿」という昔風の言い方がハマる)で互いに交流するセールスマン仁義といったものは興味深いか。 さらに6編のノンシリーズ短篇。これは後半3篇がいい。「ネブカドネザル」はセイヤーズらしい衒学が前面に出ている作品だけど、「連想ゲーム」を大がかりなパントマイムでステージにして、隠し言葉を当てさせるオアソビを巡る話。語り手がどんどんと追いつめられて...のサスペンス。「屋根を越えた矢」は広告のつもりが脅迫になるという皮肉な味わい。「パッド氏の霊感」は犯罪逃亡者をお客に迎えた美容師の秘策が炸裂!いやこれは名作。パッド氏の美容室はこりゃ流行るよ(苦笑) というわけで、面白い作品がないわけではないのだが、全体的にはセイヤーズの中でも二線級。編集意図がなかなか不思議。 |
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| No.1 | 6点 | 空 | 2023/11/09 21:30 |
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| 本書タイトルに異議あり。この編集ならばということです。収録13編中、モンタギュー・エッグ氏のシリーズは6編だけで、本書に収録されていないシリーズ作も、訳者あとがきによれば5編あるからです。そのどれも翻訳権が取得できなかったのでしょうか。
という文句もつけたくなりますが、収録作品そのものに特に不満があるわけではありません。いや、『ネブカドネザル』だけは、非常に翻訳しにくい作品ですし、だから実際頭文字がなぜそうなるのか理解できないという点では、別作品(エッグもの)に置き換えてもらいたかったと思いますが。 ひとつだけ長いウィムジイ卿ものの『アリババの呪文』は、ごく早い段階でホームズ短編2編を思い出しました。実際、あの人の名前も言及されます。展開の必然性に欠けるのが難点。エッグ氏もの他の短い作品は、説明不足な点もありますが、だいたいオチがきれいに決まっていると思いました。 |
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