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ミステリの祭典

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レッドキングさんの登録情報
平均点:5.28点 書評数:943件

プロフィール| 書評

No.503 5点 跡形なく沈む
D・M・ディヴァイン
(2021/10/06 16:07登録)
ディヴァイン第十二作。良くも悪くもディヴァイン、作品ボルテージ、上りも下がりもしない。癇癪持ち女と情緒不安定男の元恋人、直情径行気味刑事の三人視点で語られる、地方市議会と役所舞台の、男女関係に不正選挙が絡んだ連続殺人(失踪)事件。終盤サスペンス展開なかなかで、相も変わらずショボいアリバイ時間トリック付き。


No.502 6点 メルカトル悪人狩り
麻耶雄嵩
(2021/10/02 22:44登録)
「残念ながら私は長編には向かない探偵なんだよ」・・・そりゃあ、あんたが非人間的なまでに事件を即解決しちゃうから、長編浪漫に絡めなかったからだよ。あと、キャラ的に・・・。
が、この拾遺+新作短編集のメルカトル、何か「丸くなった」は、言い過ぎだが、従来の「悪人(悪人狩りどころか)」から多少は人間的な顔を見せるようになり・・そこで、どうせなら、麻耶には是非に新作長編を期待したく。
個人的には、御陵みかげ(初代)過去事件帳の超ブラック物を所望。

「愛護精神」・・何故に愛犬は殺されたのかのトンデモ展開・・ブラックファルスかな。
「水曜日と金曜日が嫌い」・・長編には向かない探偵なの分るが、あの黒マント死体消失トリックメインに長編こしらえてほしかった。でも、もう一つ、中~大ネタと捻りが必要かなあ・・。
「囁くもの」・・移動した椅子とアリバイのロジックが見所。にしてもメルカトル、銘探偵どころか神探偵の可能性さえ匂わせて・・舌の火傷の仕込みネタもほしく。
「メルカトル・ナイト」・・美人作家から一夜(ナイト)の警護騎士(ナイト)依頼を受けたメルカトル。依頼者の死は防げず・・にも拘らず本来の目的は達成し・・。
「天女五衰」・・麻耶風「樽」「黒いトランク」短編版。これも長編にするには、もう一ネタ一捻り必要かな。
「メルカトル式捜査法」・・麻耶十八番のアリバイ時間ロジック。でーもメルカトル、何か心身共々弱気になり、霊の意志を受けた霊媒探偵の匂いまで仄めかし・・。

※この新作本の帯に「夏と冬の奏鳴曲」新装版の広告があった。表紙画の舞奈桐璃、おおこれだ!て久しぶりに血が沸いた。あの表紙だけのために絶対買おう。


No.501 5点 三本の緑の小壜
D・M・ディヴァイン
(2021/09/28 11:39登録)
ディヴァイン第十一作。13歳同級生少女の三連続殺人(+容疑者の怪死)事件。「五番目のコード」風○○に見せかけた~~事件でなく、ド直球のWhyダニット連続殺人物にして、実に説得力ある・・わかりやすーい・・犯人であった。
相変わらず「ブンガク」に至る程の人物描写、特に知育不全で粗暴な嫌われ者少女の一人称叙述が、魅力的。


No.500 6点 災厄の紳士
D・M・ディヴァイン
(2021/09/26 11:36登録)
ディヴァイン第十作。美形だが少しトロいジゴロ主役のピカレスク風に始まり、殺人事件ミステリへと反転し、ラストでWhoダニットパズルが見事に完成する。富豪の有名作家と二人の娘、娘婿、孫、隣家の母子、娘を慕う医師、公私にトラブルを抱えた警部、ジゴロを陰で操る黒幕・・パズルの諸破片に変に文学的なリアリティがある。「何故にハンドルの指紋だけ拭きとった?」の犯人特定ロジック付き。


No.499 6点 紙片は告発する
D・M・ディヴァイン
(2021/09/24 09:44登録)
ディヴァイン第九作。町というより小さな市の役所を舞台にした、役人の女がヒロインのWhoダニットパズル。2件の殺人事件容疑で逮捕された書記官・・実質町長・・の冤罪を救おうと奔走する愛人の副書記官。薹が立ちかかったヒロイン始め、屈折した過去と自己を持った登場人物達の描写が魅力的。私的には「二番目に怪しいキャラ」が犯人のパズル完成だった。アリバイ時間トリックくずしのネタも付いてる・・相変わらずショボいが。


No.498 5点 運命の証人
D・M・ディヴァイン
(2021/09/22 15:20登録)
ディヴァイン第七作。殺人の罪で被告席に座る弁護士。不利な容疑状況らしいのに、何故か本人は裁判進行に投げやりな様子。5年前の第一の殺人と5年後の第二の殺人。気難し屋で激しやすい主人公と、彼を取り巻く弁護士、医師、会計士・・ひとかどの立場の男達・・とその妻、娘、愛人達。5年の歳月を隔てた物語が、裁判の進行に重ねて語られる。T・H・クックならばウェットな「文学」に仕上がって行きそうな展開だが、そこはディヴァイン、カー風トリックもクィーン風ロジックもなく、被害者Whomミステリから法廷サスペンスへと話が進み、クリスティー風人間パズルが、犯人Whoダニットへとシンプルに決まる。


No.497 6点 月明かりの闇
ジョン・ディクスン・カー
(2021/09/19 21:40登録)
フェル博士(カーでなく)最後の事件。米国南部を舞台にした、複数男女の情念殺人劇パズルと、足跡なき密室殺人トリック・・犯人にとっては目撃証人による二重密室トリック・・の解明ミステリ。
島荘「北の夕鶴」「人喰いの木」みたいな大仰なのより、この位の方が品位あるぞよ、トリック仕掛け。


No.496 5点 悪魔はすぐそこに
D・M・ディヴァイン
(2021/09/14 20:06登録)
ディヴァイン第五作。デビュー作を褒められたってだけで、クリスティーとは何の関係もないのに、なぜか「あのネタ」いつ出るんだと思ってしまい・・今回、やっと来た!って感じだが・・矛盾した事に、複数者視点 三人称叙述・・教授、講師、事務方、学生・・学園群像ミステリで、悪魔は「すぐそこ」どころか巧妙な「ME of them」であった。
残念なのは、せっかく密室しかけたのに「第三の鍵」トリック作り損ねちゃって・・ディヴァインにカーは無理かな


No.495 3点 こわされた少年
D・M・ディヴァイン
(2021/09/11 10:31登録)
ディヴァイン第四作。原題は「His Own Appointed Day=己自身の宿命の日」だが、内容は「スコットランドから消えた少年」。優れた知性と詩的感性を持ちながら、自身が養子であることを知らされ「屈折」し、ある日突然に行方不明となった少年。前三作までの一人称叙述は姿を消し、事件を追う警部と義姉の二視点三人称叙述で話が進む。容疑者達・・養父母、義姉、教師達、少女、友人、実父、養父の愛人、刑事・・のパズル完成ビックリ感がイマイチ。


No.494 4点 ロイストン事件
D・M・ディヴァイン
(2021/09/09 20:11登録)
ディヴァイン第三作。第一作の弁護士、第二作の医師ときて今回またも弁護士(元だが)が主人公。「ロイストン事件」て題だが内容は「父の殺人者」で、過去の「不正」裁判事件をめぐり殺された父親弁護士の事件。父親殺しで逮捕されたエリートぼんぼん異母弟(義弟ちゃうぞ)を助けるべく、真犯人捜しに奔走する主人公。犯人摘発ロジック相変わらず冴えてるが、前二作に比べてミステリアスな緊迫感に欠け、アリバイ時間トリックのショボさは第一作を上回る。一人称叙述なのに、今回は「あのネタ」頭をよぎりもしなかった。ところで、お題の「ロイストン事件」の方だが・・あんな奴を糾弾するためなら、あれ位の「不正」ありじゃないの? 熱血主人公や被害者父には悪いが・・・


No.493 6点 そして医師も死す
D・M・ディヴァイン
(2021/09/06 20:08登録)
ディヴァイン第二作。処女作の弁護士に続き今回は医師の一人称叙述。共同経営者の不審死を追う、容疑者でもある医師と、怪しげな人物達・・若き未亡人、医師の婚約者とその親、被害者の娘と息子、未亡人の賭博狂従兄、胡散臭い市長・・。こんどこそあのネタ?(クリスティの名がチラつく)疑いつつ、二人の女の間をフラフラ揺れ動く主人公にイライラしつつ、ラストでの意表を突くWhyWhoWhomパズル完成が見事。※医師の最後の女選択・・病める時も健やかなる時にも富める時も貧しき時も・・にグッときた(後悔すっかもしれんけどね)


No.492 6点 兄の殺人者
D・M・ディヴァイン
(2021/09/05 18:49登録)
ディヴァイン処女作。夜遅くに共同経営者の兄に呼び出された弟弁護士。そこには兄の殺害死体が・・弁護士として「男」としてヤリ手だった兄は恐喝屋でもあった。審査員アガサ・クリスティー推奨のコンクール応募作品。第一人称叙述ものなので、まさかあのネタ?・・てことはなく、あっちの方のネタのアリバイトリックもので、兄嫁・別居妻・元カノ・秘書と美女4人の豪華容疑者メニューから、まるでクリスティー作品の様な人物入代りオチが待っていた。
※こんな事を言うのヤボだが、「他にはいません、犯人はこの部屋にいるのです」とはいい切れなくね?


No.491 7点 忌名の如き贄るもの
三津田信三
(2021/09/04 13:22登録)
「~の如き~もの」シリーズ長編第八弾。山間寒村の旧家の秘密・・「厭魅の~」思わせる・・に、リレー式目撃証人の「密室」殺人トリックを絡めて、長いがスッキリとしたWhoWhyHowミステリに纏まる。最後には「首無の」同様にホラーどんでん返しオマケも付く。どっこい、まーだまだ終わってなかった三津田信三。
(ここいらで麻耶雄嵩にも長編力作を一発期待したい・・・)


No.490 6点 碆霊の如き祀るもの
三津田信三
(2021/08/31 13:08登録)
「~の如き~もの」シリーズ長編第七弾。陸の孤島の様な極貧漁村に伝わる怪談伝承。四つの怪談発祥場所で起きる四つの事件・・不可思議な餓死、目撃による密室事件、足跡なき密室殺人、そして完全な密室内の死。怪談と連続事件の関係は何なのか。四つの怪談語りの冒頭と、伝承に隠された村の秘密解明は実に魅力的だが、事件の方は・・うーん、第一事件のHowが面白いかなあ。第四の完全な密室事件の真相には逆の意味で驚いたが(それをやんのか)・・


No.489 5点 バトラー弁護に立つ
ジョン・ディクスン・カー
(2021/08/28 15:32登録)
ちょいと席を外した瞬間に刺殺されていた謎のペルシア人。二人の視線の壁をくぐり抜けた「密室」殺人・・てっきり「孔雀の羽根」やポール・アルテ「カーテンの陰の死」トリックだと思ってたら・・・あらら。
フェル、メリヴェールにできないからって、バトラー出すと、まあ、ジェイムズ・ボンドかドラゴンかとばかりに動くこと動くこと、カーが最も精彩放つのって、実はアクションシーンではあるまいか。


No.488 4点 雷鳴の中でも
ジョン・ディクスン・カー
(2021/08/25 19:20登録)
かつて「ヒトラー山荘」に招かれた程の伝説の女優。時を経て容色衰え、なお益々盛んな男への情欲。山荘でのかつての容疑者が自屋敷では被害者として謎の死を遂げて・・。見どころはただ一つ、殺人トリック・・「薔薇の名前」の「舌」以前に、この作品では「鼻」がポイント・・で、殺人現場に「いた」事が無罪のアリバイになる、という画期的な殺人トリック。※奇しくも皆川博子と同じく「薔薇とナチス」が物語の背景を彩っている。


No.487 4点 象は忘れない
アガサ・クリスティー
(2021/08/21 12:30登録)
十二年後に掘り返される元軍人夫婦の心中事件。「あれ一体何だった」Whatダニット。双子とカツラときたら「あれ」で、当然そのまんまのはずなく驚きのツイスト予想するが・・・まんま「あれ」で逆に驚かされた。象は忘れない、でなく、犬は忘れなかった、のオチであった。クリスティー長編最後の採点で1点オマケ。
 
  てことで、アガサ・クリスティーの全長編ミステリ66作(メアリなんたらロマンス除く)の採点修了したので
  大変に僭越ながら、私的アガサ・クリスティー長編ベスト15
     
     第一位:「ポワロのクリスマス」
     第二位:「シタフォードの秘密」
     第三位:「ゼロ時間へ」
     第四位:「ゴルフ場殺人事件」
     第五位:「メソポタミヤの殺人」
     第六位:「書斎の死体」
     第七位:「忘れられぬ死」
     第八位:「予告殺人」
     第九位:「葬儀を終えて」
     第十位:「 アクロイド殺し」
     第十一位:「ホロー荘の殺人」
     第十二位:「そして誰もいなくなった」
     第十三位:「死との約束」
     第十四位:「終わりなき夜に生れつく」
     第十五位:「五匹の子豚」


No.486 7点 薔薇密室
皆川博子
(2021/08/16 20:36登録)
第一次~第二次欧州大戦期ポーランドを舞台に、人体と薔薇の合成(!)がテーマのSF風怪奇手記と、ポーランド人少女の戦時手記の二視点叙述で語られる歴史奇譚ミステリ。薔薇と梅毒とナチズム、耽美と異形とホワットダニット、熱情と狂気とフーダニットの華麗なるモザイク。おぞましくも素晴らしい「孤島の鬼」「ドグラ・マグラ」・・1点オマケ。
※「死の泉」のゲーリングに続き、今回はヒムラーのみならずヒトラーまで登場の出血大サービス付き。


No.485 5点 ローズガーデン
桐野夏生
(2021/08/11 11:54登録)
女探偵ミロシリーズ短編集
 *「ローズガーデン」・・タイトル作だがミステリではないので採点対象外。
 *「漂う魂」・・水商売女とオカマだらけのマンションに現れる自殺した女の幽霊の正体は?・・3点
 *「独りにしないで」・・超美人中国人ホステスに入れ込み殺された冴えない青年の事件のツイスト&ホワイ・・7点
 *「愛のトンネル」・・SM女王バイトでひと財産築いた「天使の様な」女学生の事故死を巡るフー・ホワイ・・4点 
で、全体で、5点。 ※探偵含めて汚れた世界を這いずりまわる鼠達の話って心地よい。


No.484 6点 水の眠り 灰の夢
桐野夏生
(2021/08/10 20:33登録)
女探偵ミロシリーズの外伝で、ミロの義父(と実父)の若き時代が舞台。私立探偵ではなく「トップ屋」(=週刊誌特ダネハンター)達が主役のハードボイルド。若き義父が偶々遭遇した連続爆破事件と、やはり偶々遭遇した女高生殺人事件。事件の真相を追ううちに、二つの事件が一本の糸に紡がれて、いかにもハードボイルドなフー・ホワイ・ホワット顛末が鮮やかに決着。
※ミロって、ジョアン・ミロとは無関係と思ってたが、祖父は画家でママもイラスト屋だから、意外と関係あるかも。

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