そして医師も死す |
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作家 | D・M・ディヴァイン |
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出版日 | 2015年01月 |
平均点 | 6.00点 |
書評数 | 8人 |
No.8 | 6点 | レッドキング | |
(2021/09/06 20:08登録) ディヴァイン第二作。処女作の弁護士に続き今回は医師の一人称叙述。共同経営者の不審死を追う、容疑者でもある医師と、怪しげな人物達・・若き未亡人、医師の婚約者とその親、被害者の娘と息子、未亡人の賭博狂従兄、胡散臭い市長・・。こんどこそあのネタ?(クリスティの名がチラつく)疑いつつ、二人の女の間をフラフラ揺れ動く主人公にイライラしつつ、ラストでの意表を突くWhyWhoWhomパズル完成が見事。※医師の最後の女選択・・病める時も健やかなる時にも富める時も貧しき時も・・にグッときた(後悔すっかもしれんけどね) |
No.7 | 6点 | ボナンザ | |
(2020/04/12 19:37登録) 言われてみればなんということのない真相なのだが、それを察知させない物語の作りこみが見事。 |
No.6 | 7点 | 斎藤警部 | |
(2019/03/05 06:40登録) 文学的というより(エンタメ忖度を排除した)純文学風ラストシーンにシビレます。その凍るようでそのじつ氷を溶かさんとする意外性は充分ミステリ感覚だと思いますが、作品本来の本格ミステリ要素はこのラストの衝撃に小差で負けているかな。 踏み込んだ人物描写、心理描写がミステリ軸ではやや皮相なミスディレクション以外にあまり活きていないのも残念。しかし連続殺人&未遂事件の全体構造を見誤らせる手法はなかなか。特に、これネタバレになるかも知れませんが「殺人未遂事件」の存在が最高にヒネリ有る目くらましであり、同時に実は一つの●●●●ッ●●(読者は気づきにくい)でもあるんですよね。。大胆伏線というより大ヒントがそこかしこに実は散らかしてあったのも、顧みればなかなか凄い。貶してんだか褒めてんだかよく分からなくなって来ました。 完全ネタバレを書くと、主人公に対して最初に「アレ、事故じゃなくて殺しだったんじゃね?」と持ち掛けて来た人がず~っと嫌疑の対象外だったのが終盤突如。。。。実はまさかコイツこそ、と一定量の疑いを心のどこかにキープさせるからこその真相目くらまし、が本作のミソなんですかね。企画性は感じるけど、ちょっとこじんまり。でもじゅうぶん+αの合格点。 貶してんだか褒めてんだかよく分からなくなって来ました。 読んでる最中は面白いのに、読了直後は(純ミステリ要素は)地味な印象、でも後からじわじわ来ますね。大昔エルヴィス・コステロのファンになりかけの頃もそんな感じだった、かも。 |
No.5 | 6点 | あびびび | |
(2017/09/30 13:13登録) 主人公の医師が事件をかき回して、複雑にしている感じがあるが、「動機」に気づいたとき…。事件の謎やトリックなどはありふれたもので、全体的にこじんまりしているが、それでも面白く読めた。 最後に主人公が婚約者に告げた「本心」が、一番強烈で、心に残っている。 |
No.4 | 6点 | 蟷螂の斧 | |
(2017/03/07 16:35登録) 本作のトリックは、パトリック・クエンティン氏のパズルシリーズで一度お目にかかって以来です。結構気に入っているプロットの一つです。主人公、婚約者、未亡人の色恋沙汰に気を取られ過ぎてしまいました。それが作者の罠だったのか?(笑)。 |
No.3 | 5点 | E-BANKER | |
(2016/04/02 00:35登録) 1962年発表。 「兄の殺人者」に続いて発表された作者の第二長編。 原題は“doctor also die”とそのまんま・・・ ~診療所の共同経営者ヘンダーソンが不慮の死を遂げて二か月がたった。医師のターナーは、その死が過失によるものではなく、何者かが仕組んで事故に見せかけた可能性を市長のハケットから指摘される。もし他殺であるなら、かなり緻密に練られた犯行と思われた。ヘンダーソンに恨みや嫌悪を抱く者は少なくなかったが、機会と動機を兼ね備えた者は自ずと限られてくる。未亡人ともども最有力の容疑者と目されたターナーは独自の調査を始める・・・~ いつものディヴァイン節だが・・・ 名作の誉れ高い前作(「兄の殺人者」)や後の著作に比べると、出来としてはイマイチかな、と感じた。 ごく限られた世界(いわゆるクローズド・サークルだな)で展開する物語、奇をてらったトリックや複雑なプロットは全くないシンプルな謎解き、類まれなる人物描写の技・・・etc 本作でも作者の強みはいかんなく発揮されてはいる。 されてはいるのだが、何ともまだるっこしい・・・ 主人公のアラン・ターナーがこれまたとびっきりの優柔不断ぶり。 二人の美女に挟まれて、行ったり来たりしながら、事件の調査にも真剣になったり、投げ出したり・・・ と思うと、残り二十頁ほどになってようやく真相に思い当たるのだ。 確かに「論理の穴」をめぐる推理は旨いし、それなりの納得性はある。 あるのだけど・・・今さらそれに気付くか? という気がしてしまうのは私だけだろうか? 解説の大矢氏も書いているとおり、非常にトラディショナルな純英国風ミステリー。 こういう奴が好きな人には堪らないのかもしれない。 個人的にディヴァイン自体は決して嫌いではないのだが、本作はあまり評価できなかった。 (皮肉の効いたラストがやや印象に残った・・・) |
No.2 | 6点 | kanamori | |
(2015/02/19 22:01登録) 診療所の共同経営者ギルバート・ヘンダーソンの不慮の死は実は計画殺人だったのではないか。市長からそう示唆された「ぼく」アランは、事件を洗い直そうとするが、現場の状況から、ギルバートの後妻エリザベスとの不倫関係を噂されるアラン自身が、彼女と共に周囲から疑惑の目を向けられることに---------。 小さな地方都市を舞台に、狭いコミュニティー内の複雑な人間関係が醸し出す緊迫感と、その中に巧妙に張られた伏線やミスリードがクリスティばりで読ませる。主人公アランの内面描写を中心に展開される物語は、やや起伏に欠けるきらいはあるけれど、渋い英国本格ミステリ好きには申し分のない内容と言えるでしょう。 被害者ヘンダーソンがアランの同僚医師であるとともに、市議会議員、少年クラブの理事、エリザベスの夫という複数の顔(側面)を持っていたことで、殺害動機を絞らせず、ミスディレクション(=マンロー警部補の言う「論理の穴」)に繫げる手法がもう巧妙というしかない。 ディヴァインの2作目にも拘わらず邦訳が後回しになっていたので内容を危ぶんでいましたが、最良作とまでは言えないまでも、十分満足できる出来栄えと評価したい。 |
No.1 | 6点 | nukkam | |
(2015/01/27 10:27登録) (ネタバレなしです) 1962年発表の長編第2作の本格派推理小説です。前作の「兄の殺人者」(1961年)と比べると主人公が容疑者となっているのが特徴で、そこに複雑な人間関係を絡ませて地味な展開ながら退屈しないプロットになっています。色々な場面で周囲との対決姿勢を隠さない(ある意味不器用な)主人公の将来がどうなるのかも読ませどころです。ミスディレクションが巧く、真相説明で語られる「論理の穴」はなかなか印象的でした。ただ真相説明が「兄の殺人者」に比べて十分とは言えず、容疑者を残り3人に絞ったところで2人を犯人候補から外した理由は明らかでないように思います。まあそれは全体から見れば些細な問題で、水準の高い謎解き小説だと思います。 |