悪魔はすぐそこに |
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作家 | D・M・ディヴァイン |
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出版日 | 2007年09月 |
平均点 | 6.50点 |
書評数 | 12人 |
No.12 | 7点 | 臣 | |
(2023/02/14 10:53登録) 舞台は大学。 登場人物は教授、講師、学部長、学長、事務局長、事務局員、学生など、大勢。 そんな派手な舞台設定で、事件もほどほどに派手だが、謎解き物としての派手さはまったくない。人物描写の一本勝負で、巧妙なミスディレクションを用いて読者を混乱、誘導させる、いたって地味なスタイルである。 三人称多視点で語られるが、もちろん計算づくで、いわゆる神視点ではなく、章ごとに変わっていくやり方である。そこまでしなくても、という感じがしないでもないが、読みやすいので、それによる混乱はなかった。いやあったかも(笑) タイトルにも引っ掛かった。「悪魔」という字句で、横溝のおどろおどろしさを連想してしまう。多少のどろどろ感はあれど、読みやすさも手伝ってあかるささえ感じてしまう。これは一部の登場人物たちによるものだろう。道化役とまではいわないが、なんとなく場を和ませる。 もう少し本格ミステリとしての派手さがあったほうがいいとは思うが、過去の事件の絡め方はすばらしいと思う。いたってシンプルなんだけどね。 このシンプルさは、いつも伏線も気にせず直感勝負で犯人当てに挑んでいる筆者には都合がいいはずだが、まったくダメだった。 |
No.11 | 6点 | ミステリ初心者 | |
(2023/02/07 21:01登録) ネタバレをしております。 大学内の過去のスキャンダルと、現在の2つの殺人事件が発生します。 主に4人の視点から書かれ、登場人物も多く、またストーリーの大部分は現在の事件よりも過去のスキャンダルに重点を置かれているため、なかなか読みづらさを感じました;; スキャンダルが犯人当てへの鍵になっていることはわかりますが、どうも興味がわかなくて;; 推理小説的要素について。 犯人当てのロジックはちゃんとしており、フェア度が高いです。ただ、長編にしてはささやかというか、淡泊というか、もうすこしほしかったところw この作者の作品は、犯人当てに対してのフェア度が高いがロジックは一点集中していることが多いですね。 犯人当てよりも、意外な犯人、ドンデン返しが持ち味だと感じました。私は頭ではピーターを容疑者から外しておりませんでした…が、やはり犯人が判るシーンでは驚いてしまいました。思えば、ピーターの述懐の「一度父に救ってもらった」や、ピーターの母が手紙を焼いたシーンは極めて重要なヒントでした。読了後、それに気づかず悔しかったですね! 総じて、読みづらさを感じてしまいましたが、本格度・フェア度の高い作品でした。伏線やミスリードがこまかく多くあり、高水準ではありましたが、欲を言えば犯人を断定するロジックが本全体にあるともっと好みでした。 |
No.10 | 5点 | レッドキング | |
(2021/09/14 20:06登録) ディヴァイン第五作。デビュー作を褒められたってだけで、クリスティーとは何の関係もないのに、なぜか「あのネタ」いつ出るんだと思ってしまい・・今回、やっと来た!って感じだが・・矛盾した事に、複数者視点 三人称叙述・・教授、講師、事務方、学生・・学園群像ミステリで、悪魔は「すぐそこ」どころか巧妙な「ME of them」であった。 残念なのは、せっかく密室しかけたのに「第三の鍵」トリック作り損ねちゃって・・ディヴァインにカーは無理かな |
No.9 | 8点 | 青い車 | |
(2020/03/05 21:43登録) ディヴァインはもっと多くの人に読んでほしい作家で、特に本作はミスディレクションに秀でたその特長がよく出ていると思います。犯人を疑いから逸らせるテクニックは本当に上手いの一言です。身構えていてもほとんどの読者が騙されるのではないでしょうか。人物像がひっくり返る終盤は他の作家からはなかなか得られないものです。 |
No.8 | 7点 | nukkam | |
(2016/07/18 20:26登録) (ネタバレなしです) 1966年に発表されたミステリー第5作となる本格派推理小説です。ディヴァイン自身大学の事務員だったということもあってか大学を舞台にした本書はかなりの力作です。登場人物が多過ぎで関係も複雑な感がありますがその割りには読みやすいです。謎解きに関してはミスディレクションも巧妙で結構難易度が高く事件発生前の伏線なんかはまず見落とすでしょう。物語のエンディングもきれいに締めくくっています。 |
No.7 | 7点 | ボナンザ | |
(2015/10/19 21:41登録) 直球勝負でまんまと決められた。 最初は登場人物にいらいらさせられたけど、それも伏線だったのか。 |
No.6 | 7点 | あびびび | |
(2014/06/03 17:44登録) (ネタバレ含む)最初は一人称で進行するのかと思ったが、途中で様子が変わった。中盤から犯人は5人くらいに絞られたが、特別に誰かにスポットを当てることはなく、混沌とした展開。その時に、誰が犯人なのか閃いた。70%ぐらいの確率だと思ったが、婚約者なのに、最後の線まで行っていない、それでほぼ確定ラインに! この作者は初めてだったが、アガサクリスティが、「夢中になって読んだ」らしい「兄の殺人者」をぜひ読んでみたい。 |
No.5 | 5点 | 蟷螂の斧 | |
(2011/12/19 20:32登録) 大がかりなトリックが好きなので、本作者の作品は、読み終わった後どうしても筋書きの印象(後に残るかどうか)が薄くなってしまいます。読んでいるときはページが進み面白いと思います。 |
No.4 | 7点 | E-BANKER | |
(2011/07/02 23:51登録) ディバインの第5長編。 本作もやはり正統派の英国パズラー・ミステリー。 ~大学の数学講師ピーターは、横領容疑で免職の危機にある亡父の友人ハクストンに助力を乞われた。だが、審問の場でハクストンは教授たちに脅迫めいた言葉を吐いた後変死する。次いで、図書館でも殺人がおき、名誉学長暗殺を予告する手紙までもが舞い込む。相次ぐ事件は、ピーターの父を死に追いやった 8年前の醜聞が原因なのか?~ なかなかよくできているんじゃないでしょうか。 本作には多くの人物が登場し、その分、容疑者候補にも事欠かないような展開。普通の翻訳物なら、読みながらこんがらがってしまうような状況になるはずです が、そこはディバイン! 人物描写が並じゃないです。 特に、探偵役となるラウドンと2人の女性(ルシールとカレン)の描写はスゴイ。読みながら、性格や考え方が手に取るように分かります。 フーダニットについては、途中から容疑者が5名ほとに絞られたものの、なかなか1人に特定できないというもどかしい展開。 ただねぇ・・・ちょっとしたミステリーファンなら、それ以外に「意外な犯人」がいるのには気付きますねぇ・・・しかも作品タイトルが「あれ」ですからー。 巻末解説で法月氏が「本作は再読した方がよい」旨言及してますが、まさにそのとおりかもしれません。初読時では、どうしても作者が埋蔵した伏線や仕掛けには気付かないかも? とにかく、「正統派の翻訳ミステリー」好きには堪らない作品でしょう。 (本筋とは関係ありませんが、ダメな上司に振り回されるカレンとフィニー警部補に何となくシンパシーと感じてしまった・・・) |
No.3 | 7点 | kanamori | |
(2011/01/21 17:59登録) 大学の教授・講師らのドロドロとした人間関係を背景にして、過去の醜聞、現在の殺人と脅迫事件が錯綜したミステリ。 三人称多視点で語られるストーリーは、主要登場人物の内面描写を交えながら、巧妙なミスディレクションで真犯人を隠蔽しています。(読後にアンフェアな記述では?と思ったところも読み返してみると巧みに描写していることが分かります) 探偵役をはっきり設定したスタンダードなフーダニト・パズラーではないので、評価が分かれるかもしれませんが、個人的には結構ツボでした。 |
No.2 | 6点 | ロビン | |
(2009/01/18 15:55登録) いくらなんでも、この展開でこの真相は淡白すぎる。 プロットの構築は上手いし、キャラクター造形も丹念で個性豊かだと思う。まさにど真ん中の本格パズラー。だからこそ肩透かしをくらってしまった。 関係ないけど、毎回のごとくのりりんの解説は好きです。 |
No.1 | 6点 | シュウ | |
(2008/10/20 02:05登録) 読み終えた後、のりりんの解説にしたがって最初の方読み返したら確かになるほどと思いました。でももう一回最後まで読み直す気力はないです。 事件そのものはかなり地味で、事件より登場人物の心理や人間関係を中心にストーリーが進むのですが、なんていうか嫌な奴ばっかり出てきて かなり気がめいってしまいました。こいつが一番嫌な奴だから犯人だったらいいなと思ってたら本当にそいつが犯人で笑ってしまいました。 ミステリとしてもドロドロの人間ドラマとしてもまあまあ楽しめる作品というとこです。 のりりんといえば三の悲劇はこういう三人称多視点を駆使した作品になるんだろうなあ |