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ミステリの祭典

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水の眠り 灰の夢
ミロシリーズ番外編

作家 桐野夏生
出版日1995年10月
平均点6.20点
書評数5人

No.5 6点
(2023/10/11 21:24登録)
『天使に見捨てられた夜』のコメントでは、ミロが「美術に詳しすぎ」と書きましたが、番外編の本作を読んで納得。母方の血筋なんですね。シリーズ第1作は未読なので、その中で経歴がどこまで描かれていたのかは知らないのですが。
最後に「なお、この話はフィクションであり、実在する個人、団体等とはいっさい関係ありません。」と書かれていますが、ジャーナリスト村野が追う2つの事件のうち一方は、実際に1962~3年に起こった草加次郎事件をそのままの名前でモデルにしています。実際に脅迫状が送られた吉永小百合の名前も出てきます。なおこの脅迫事件に対する警察の対応、犯人を罠にかけるはずが、犯人も現場に入り込みにくい警戒態勢をとっては、話になりません。
論理的にはそんな問題点もありますし、2つの事件の結びつきが偶然に過ぎないのも気になりますが、時代の雰囲気が感じられ、全体的印象はなかなかのものでした。

No.4 6点 レッドキング
(2021/08/10 20:33登録)
女探偵ミロシリーズの外伝で、ミロの義父(と実父)の若き時代が舞台。私立探偵ではなく「トップ屋」(=週刊誌特ダネハンター)達が主役のハードボイルド。若き義父が偶々遭遇した連続爆破事件と、やはり偶々遭遇した女高生殺人事件。事件の真相を追ううちに、二つの事件が一本の糸に紡がれて、いかにもハードボイルドなフー・ホワイ・ホワット顛末が鮮やかに決着。
※ミロって、ジョアン・ミロとは無関係と思ってたが、祖父は画家でママもイラスト屋だから、意外と関係あるかも。

No.3 7点 猫サーカス
(2018/12/11 19:52登録)
舞台は1963年、前回の東京オリンピックの前年。世の中は連続爆弾魔、草加次郎で持ち切り。主人公は今でいうなら文春砲(?)に該当する「トップ屋」。彼は偶然地下鉄爆破に遭遇するが、そこから先は心地いいほど予想を裏切られる。謎の女子高生の面倒を見たり、殺人事件の容疑者にされたり・・・。心理描写がリアルだからこそ、読み手までが複雑な事件の渦に引き込まれていく。未読の方は「顔に降りかかる雨」から最後の「ダーク」まで順々に読んでいってほしい。「読み手の予想を裏切る」とのフレーズをよく使いがちだが、このシリーズを読み終えると「裏切る」とはこれくらい大胆でなければならないと思わせてくれる。

No.2 5点 itokin
(2014/01/18 19:55登録)
犯人が早い段階で推測できるのと物語の節々で設定に違和感が有りまたそれほどスリルもサスペンスも感じられなかった。最後の盛り上がりのみ期待したがそれほどでもなかった。採点通りまあ楽しめたというところか。

No.1 7点 TON2
(2012/11/05 22:14登録)
私立探偵村野ミロの父親ムラゼンこと村野善三の若いころの物語です。ミロの出生の秘密が明かされます。
時代は昭和38年、彼は東京オリンピック前夜の高度成長時代のトップ屋です。連続爆弾魔・草加次郎事件、エログロナンセンスを地でいく狂乱のパーティーを繰り広げる新進デザイナーなどが描かれています。
男の作家が書いているのではと思うほどのハードボイルドです。

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