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ミステリの祭典

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災厄の紳士

作家 D・M・ディヴァイン
出版日2009年09月
平均点7.06点
書評数17人

No.17 6点 ◇・・
(2022/10/20 19:56登録)
登場人物は書割りだけど、しっかりキャラクターが書き分けられているから説得力がある。ある人物の性格を前提として論理的に考えれば分かるというところは、書き割り的キャラクターならではこそ可能なのでしょう。
ただ、前半で純潔を奪うことにやたら焦点が当たっていて、後半、絵解きをされると少し拍子抜けでしたが。

No.16 6点 レッドキング
(2021/09/26 11:36登録)
ディヴァイン第十作。美形だが少しトロいジゴロ主役のピカレスク風に始まり、殺人事件ミステリへと反転し、ラストでWhoダニットパズルが見事に完成する。富豪の有名作家と二人の娘、娘婿、孫、隣家の母子、娘を慕う医師、公私にトラブルを抱えた警部、ジゴロを陰で操る黒幕・・パズルの諸破片に変に文学的なリアリティがある。「何故にハンドルの指紋だけ拭きとった?」の犯人特定ロジック付き。

No.15 7点 クリスティ再読
(2020/02/03 09:21登録)
初ディヴァイン。昔は紹介されてなかった作家だもんね。評判の良さも聞いているから一番人気の本作を期待して読んだ。
評者ミステリマニアのはずなんだけど、「名探偵小説」があまり好きではないんだな。それよりも事件に巻き込まれた関係者が推理して...をうまく書いた方が、小説として好き。そうしてみると、ディヴァイン、いいじゃん。前半は一家に入り込むジゴロの視点から描いてサスペンスがある。で事件が起きてからは、一家の長女の視点になって、事件の顛末が明らかになる。まさに理想的、というものか。
このジゴロにもしっかり者の妻がいたり、長女の夫が無神経に辛辣なことを口に出して、周囲に嫌がられるキャラだったり、次女元婚約者が「会計士根性」なキャラだったり...と周囲を固めるキャラの個性も十分。小説として面白い。で、パズラーとしては犯人のトリックがある、というタイプではなくて、細かいデテールから推理するタイプ。ケメルマンの「ラビ」あたりに近い印象。視点選択が仕掛けといえば仕掛けかもしれないが、一番自然な書き方だからね。
まあだから、地味といえば地味。手堅いといえば手堅い。でも読み物としては十分。

No.14 7点 ボナンザ
(2019/12/23 22:59登録)
お見事。明かされてみるとそれしかない真相なのに、巧みにそこから誘導しているのがすごい。

No.13 7点 ミステリ初心者
(2019/02/18 18:08登録)
 ネタバレをしています。

 意外な犯人であり、大きな驚きがありました。それにもかかわらず、とてもフェアに成立していて、とても好感があります。犯人の主観がある小説特有のアンフェアさ?がありませんでした(それも好きですが)。それでいて、ページが進むにつれて、読者が自然とアルマを犯人からはずしてしまうストーリーもよかったです(自分が鈍いだけかもしれませんが)
 サラによる犯人断定シーンもよかったです。私は、"ネヴィルの車のハンドルのみ指紋が拭かれているのはおかしい。どうやって乗ったのか?"ということしか気づけませんでした。一瞬アルマを疑ったんですがね(笑)。

 以下、好みでは無かった部分。
 殺人が起こるまでかなりページ数があり、自分にとってはやや退屈な展開でした。何が謎なのかわからず、思うようにページが進みませんでした。最初のほうに、誰が犯人か?あるいはどうやって殺したのか?が提示される小説は、それを考えながら読み進められるので、ページがすいすい進むんですよね(笑)
 ストーリーや意外な犯人という良い要素はありましたが、この小説ならではの大トリックや個性は少ない気がします。サラが論理的にアルマを疑ったのは良かったのですが、フーダニットとしては他の容疑者が犯人ではない理由が足りなかった印象です。つまり、推理小説としては薄味なイメージです。

No.12 8点 斎藤警部
(2016/10/29 00:18登録)
共犯者って誰だよ? 家族ぐるみの絶交騒動??
騙すべき側、騙されるべき側それぞれの内面描写の奇妙に大きな齟齬。と思えばそのバランスにも予想外の追い上げ逆転レース。かと思えば。。ん、まさか? 頭が弱ってる人の配置も、流石だよな。。
前半ラブコメ調犯罪小説、後半イーイミでガチガーチの本格ミステーリ。

感情の反動って。。 指紋、バカだな。。(あの犯人特定ロジックは確かにエジ十を思わせた!) しかし参った、この犯人設定は! そしてその目くらましの大胆な手法! この人、クリスティの後継者って呼ばれてないんですか?  
これ言うだけで本格神経過敏な人には一種のネタバレになるかも知れないですけど、、 これぞ構成の妙だよねえ。。。。

ガーネットさんの仰る「もうちょっと大げさに容疑者をふるいにかけても」「最後のセンテンス」どちらも同感です。

No.11 7点 nukkam
(2016/07/13 13:27登録)
(ネタバレなしです) 1971年発表の第10作となる本格派推理小説です。創元推理文庫版の巻末解説では過去作品との類似性が指摘されていますが小説としてもしっかり作られているだけあって単なる二番煎じには感じません。初期の作品に比べると人物関係がやや整理不十分に感じるところもありますが大きな欠点というほどではなく、過去の出来事にまでさかのぼっていく複雑なプロットですが読みやすいです。

No.10 6点 初老人
(2015/12/24 21:14登録)
ディヴァインの作品を読むのはこれが三作目ですが、他の二作に比べて一段見劣る様な印象を受けました。
何よりも残念なのは、真犯人の造形が他の登場人物に比べ浮いている様な感覚を覚えた事です。これでは真犯人に注目するなという方が無理というものでしょう。
ハンドルのロジックは充分に納得のいくもので楽しめはしたのですが。

No.9 8点 あびびび
(2014/12/18 00:46登録)
少ない容疑者の中で驚きの犯人…。途中からアガサ・クリスティを読んでいるような錯覚に陥った。

ハンサムな詐欺師が、綿密な計画を基に恐喝を成功させた。しかし、事件は一転、二転し、殺人者の恐怖があたりに蔓延する。どこにも『馬鹿』いなかった…。

No.8 8点 あい
(2013/03/20 10:45登録)
前半の部分がテンポが良く、物語に入りやすかった。特別な派手さは無いが絡み合う謎と、犯人を特定するロジックは面白かった。

No.7 7点 蟷螂の斧
(2011/12/19 20:34登録)
物語の構成が面白かった。前半は結婚詐欺(喜劇っぽい展開でテンポがいい)、後半は殺人事件。急にミステリーとなりますが、まったく犯人が解りません。解決編での犯人判明には驚きがありましたが、それに至る過程(指紋うんぬん)にはあまりピンときませんでした。フーダニットがうまいと思います。

No.6 6点 E-BANKER
(2011/11/19 14:27登録)
1971年発表、作者の第10長編。
「本格ミステリーベスト10(2010年度)」第1位(!)作品。

~ネヴィル・リチャードソンは、見た目は美男子だが根っからの怠け者。ジゴロ稼業で何とか糊口を凌いでいたところ、さる筋からうまい話が転がりこんできた。今回の標的は、婚約者に捨てられたばかりの財産家の娘・アルマ。我儘でかつ気の強いアルマに手を焼くが、共犯者の的確な指示により、計画は順調に進んでいた。彼は夢にも思わなかった・・・とんでもない災難がわが身に降りかかることを・・・~

「うまい」が、ちょっとインパクトには欠けるという読後感。
ディヴァインというと、家族や職場といった限られた人間関係の中で発生した事件を、卓越した心理描写で読ませる・・・というイメージですが、本作もまさにその通り。
主要な視点人物であるサラを通して、登場人物の造形が鮮やかに浮かび上がります。
ただ、他作品に比べると、落ちるなという印象は拭えない。
特に、フーダニットについては、確かに意外なのだが、何となく「ディヴァインのパターン」というものがあって、本作の真犯人もそのパターンに当てはまっているのだ。
ミスリードもあからさま過ぎるのが玉に瑕。
ということで、世間的な評判ほどではないかなという評価ですねぇ。
(ジョンはちょっと可哀そうだね・・・)

No.5 6点 りゅう
(2011/05/02 21:49登録)
 ジゴロのネヴィルが金持ちの娘アルマに接近し、目的を達成したと思った矢先に殺害されるのですが、アルマの姉サラが傷ついた妹のために真相の解明に尽力します。前半はネヴィルの策略はどういったもので共犯者は誰なのかという謎、後半は殺人事件の犯人は誰なのかという謎で、興味を引っ張っています。非常に読みやすい文章で、巧みな人物造形と人間関係の設定、前半と後半で視点を変えた構成など、物語としては良く出来ていると思うのですが、ミステリとしてみると物足りなさを感じました。犯人はこの人物だと思わせておいて最後はひねってあるのですが、登場人物が限られていることもあって、意外と言うほどのことはありません。犯人を特定するロジックも示されるのですが、説得力にやや欠け、感心するほどのものではありませんでした。

No.4 7点 kanamori
(2010/09/11 15:06登録)
ディヴァイン後期の作品ですが、相変わらず人物造形を逆手にとったミスディレクションが巧妙で、読者の目を真犯人に向けないように構成されています。前半のジゴロ青年視点の倒叙形式から、一転してフーダニットに変わるプロット自体が仕掛けになっているなど騙しのテクニックは面白く読めました。
初期作ほど物語に深みがなく、後半の構図は「こわされた少年」とダブるなどの不満もありますが、まずまずの佳作だと思います。

No.3 8点 こう
(2010/08/02 00:30登録)
 「悪魔はすぐそこに」が期待したほど楽しめなくて新刊の2冊は積読になっていたのを最近読了しました。
 パトリッククエンティンかと思わせるような家族内の悲劇を扱い明らかなクラシカルフーダニットではありますがサスペンスに近い印象がありました。
 はじめ倒叙ぽかったストーリーが後半一転する所などこれまでと違う構成で人物設定、ストーリー展開は「こわされた少年」に近い印象で個人的に「こわされた少年」はあまり楽しめませんでしたがこの作品は楽しめました。

No.2 8点 ロビン
(2010/03/29 01:46登録)
なんとも地味で、かつド直球の本格作品。展開や描写による演出には問題ありだとは思うが、普通に読んでいれば、この犯人の招待には驚くはず。

個人的には、「なぜ、犯人は車のハンドルだけ指紋を拭き取ったのか?」に対する回答のロジックが秀逸。これだけシンプルかつ明快で、核心を突くロジックでありながら、現代でも通用するものなのに既読感はゼロ。素晴らしいです。

余談ですが、このサイトも昔はいろんな人の書き込みが見れて楽しかったんですけど、最近は毎回同じ人による大量書き込みばかりで、なんだかぁ、と思ってしまいますねぇ。

No.1 8点 teddhiri
(2009/10/30 20:23登録)
小悪党のジゴロが大富豪の令嬢を手玉に取る。そんな導入から始まり、事件が起こるそういうストーリー。とにかくこのジゴロの小物感が絶妙で勘違い気味の心理描写が何ともいえない。また探偵役の令嬢の姉や警部が味があって好感が持てる。真相そのものはシンプルにして驚きがあり非常に良くできている。ミステリーとしても小説としても面白かった。

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