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ミステリの祭典

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忌名の如き贄るもの
刀城言耶シリーズ

作家 三津田信三
出版日2021年07月
平均点8.10点
書評数21人

No.21 9点 ボナンザ
(2024/10/12 21:29登録)
このシリーズでは首無に次ぐ出来だと思う。田舎を舞台に扱っている以上、いつかこの手の話も出てくるとは思ったが、ここまで全体の仕掛けにしてくるとは・・・。

No.20 4点 いいちこ
(2024/08/15 16:00登録)
意外な真犯人像を追求しすぎて、却って意外性が感じられないという点が最大の難点。
そのうえで、犯行のフィージビリティは低いというより、やや無理を感じるし、真相を解明・補強するために必要な手がかりの配置という点でも不満が残る。
4点の下位

No.19 8点 hsiyehmeipo
(2024/04/14 21:38登録)
すごくおもしろかったけど、メインギミックに関してほのめかされたところでなんとなく予想がついてしまった。

No.18 6点 ミステリーオタク
(2023/09/02 23:03登録)
 忌名の儀礼はともかくとして、それ以外の民俗学や怪異伝承などの蘊蓄がとにかく多い。本筋に関係してくるものなら止むを得ないが、その9割方は無関係だった。特に葬儀から野辺送りの準備や執り行われの手順やそれぞれを担当する人々の役名やらその説明、使われたり置かれたりする多大な品物の名前や使用法、そして「送り」中の人や物の配置や進行の仕方の細かい描写などには流石にウンザリして読み飛ばした。こういう話に関心が高い人にとっては嬉しいオマケ(大マケ)の数々なのだろうが。

 ミステリとしてもシンプルな内容の割には自分にはダラダラした印象が拭えなかったし、解決編の二転三転は悪くなかったが、あのトリックには合点が行かない。あまりにもリスクが大きい。くっついたままかもしれない(そもそも眼を刺して生命を奪うためには先端が脳幹に達する必要がある)し、そうでなくとも思い通りにならない確率の方が高いと思う。個人的にはココが最大のマイナス・ポイント。

 確かに動機を含めた真相の「意外性」に関しては、非常に高い評価に値すると思うが、じゃあこれほど意外性の高いミステリは他にはないかと問われれば、「そんなことはない」という話になってしまう。

 力作であることは認めるが、一部で見られた「首無以上」という称賛は自分には理解できなかった。
 個人的には、首無>山魔>忌名
 まぁ好みの問題としか言いようがない。

No.17 10点 ひとこと
(2023/05/30 21:36登録)
三津田先生、本職はホラー作家なのになんでこんなに面白いプロット思いついちゃうの??

No.16 10点 密室とアリバイ
(2023/05/01 21:06登録)
あの「首無の如き祟るもの」を超えてしまったのではないか。まさか同じシリーズで更新するとは

No.15 8点 メルカトル
(2023/04/01 23:03登録)
「この忌名は、決して他人に教えてはならん……もしも何処かで、何者かに、この忌名で呼ばれても、決して振り向いてはならん」
生名鳴(いななぎ)地方の虫くびり村に伝わる「忌名の儀礼」の最中に起きた殺人事件に名(迷)探偵刀城言耶が挑む。
Amazon内容紹介より。

こういうのに弱いんだよなあ、だからやや甘めの8点でお願いします。
まず第三章までのインパクトが強すぎて、それ以降が霞んでしまうのが何とも悲しいやら嬉しいやら。それまで夢を見ていたのが突然夢から醒めて現実に引き戻される様な感覚とでも言いますか。いずれにせよ妙味に酔い痴れる事が出来ました。
そして第十二章で数々の奇妙な地名や怪異の由来を解き明かす刀城言耶の、本来の姿、第十五章の真相解明と終章は大変読み応えがあり、作者の本領発揮と云ったところでしょう。これぞ本シリーズの面目躍如だと思います。

流石に『首無の如き祟るもの』には及ばないものの、それ以来と言って良い衝撃を受ける作品でした。恒例の迷走する推理も存分に発揮され、翻弄される事必至。そして明かされる真実とは・・・なんとまあ。あ、これ以上は書けませんねえ。

No.14 9点 suzuka
(2022/12/26 21:16登録)
刀城言耶シリーズで久しぶりの高評価です。
ホラーとミステリーが上手く噛み合っていました。比較的コンパクトに纏まっているのもいいです。

No.13 5点 蟷螂の斧
(2022/10/09 13:42登録)
高評価な点は「最後の一行」。
以下マイナスポイント
①短編でよかったのでは?冗長で薀蓄部分もいらなかったような・・・
②途中で事件も起こらず地味。ワクワク感がなかった・・・
③主人公および周辺のキャラが、ホラーと合わずチグハグな感じ・・・
④「試行錯誤」がウリのようですが、この人物が犯人だったら、面白くも何ともないような推理が続き、読んでいて辛い・・・
相性が悪いということで、悪しからず。(なお、登場人物表に誤植あり)

No.12 9点 のぶゆき
(2022/09/24 17:07登録)
ネタバレありです。



3回読んでも気付きませんでした。7、8個は、ヒントが出ていたのに。伊津子が可哀想で、そのためか、物凄く怖く、読み終わって何日か耳もとで囁かれる妄想に囚われました。
「厭魅」より上で「首無」より下ということで、9点です。しかし、何で気づかなかったのだろう。

No.11 10点 名探偵ジャパン
(2022/07/06 08:52登録)
 これこれ、これですよ! これこそ刀城言耶シリーズ、これこそ三津田信三。
 本作の肝は、ラストで明かされる「ホワイダニット」にあるわけですが、これが凄い。少なくとも私はこのホワイダニットを初めて読みましたし、「どこかに前例がある」という話も今まで聞いていません。あれだけ古くからあるものなのに、今まで誰もそれをミステリのホワイダニットの要素として使おうとしてこなかったとは。やはり三津田信三、目の付け所が違います。
 逆を言えば、大オチ以外はそれのための前座、みたいな読み方も出来てしまうわけですが、私はそれでも満足です。久しぶりにミステリで「叙述トリックに騙された」や「構成が巧み」といった以外の、「そういうことやったんか!」という正当な(?)驚き方をしました。

No.10 6点 take5
(2022/06/12 16:14登録)
すみません、
皆さん高評価なので、
首無以来作者のものを久しぶりに読んだのですが、
民間信仰や儀礼的行事が、
あまり得意ではないと再認識した次第です。
二転三転は見事なのですが、
最後の一行の切れが私には刺さらなかったのです。
地名人名が読みにくいのも私にはつらかったです。
目が悪かったり地名の変遷が力技に感じたりもあり、
この書評で0、5ポイントも下げてしまいました。
これを書いている今現在、
10人以上の書評を有する国内作品第4位ですが、
3位の戻り川や2位の占星術が好きな私です。
私見失礼しました。

No.9 9点 雪の日
(2022/04/01 19:24登録)
刀城言耶シリーズの最新作。
首無を越える最高傑作と言われていたので、期待値も高かったが想像以上でした。

本作は刀城言耶シリーズの中でも、厭魅の如き憑くもの同様、ホラー色の強い作品です。話もこれまで同様、田舎の小さい村の因習とそれにまつわる怪異が謎の中心となっています。

個人的に、ミステリとしては首無には及ばないものの、ホラーとしてはシリーズ最高傑作ではないでしょうか。最初の儀式の描写もとても怖かったですが、最後の一行では心臓がキュッとなりました。

シリーズものにおいて、後になるにつれて作品の精度が落ちる中、このような過去のものを超える作品を書かれた著者には脱帽です。

No.8 10点 ALFA
(2022/03/24 14:39登録)
シンプルなプロット、逆説に満ちた禍々しい動機、意外過ぎる犯人。世評高い「首無の如き祟るもの」をしのぐオールタイム級の名作だろう。

少しネタバレします。



本格ミステリーであったはずが、最後の一行でホラーのロジックが通ってしまい、それにあわせて冒頭第三章までの怪異体験がきれいに回収されるという構造は見事。
あえての難は殺人手法と凶器の隠滅に偶然性が残ること。ここが確実で強烈なものであったら文句なしだった。
ところで「先輩」の二度目の結婚はなぜ可能になったのだろう。事情が判明した今回は母親は猛反対したはず。本筋と関係無いようだが、この意識がすべての発端だから何らかの補足は欲しいところ。

初期の作品に比べて文体は格段に読みやすい。なお、民俗学の蘊蓄はいささか詳しすぎて読み飛ばしたが、ここは好きずき。周辺キャラのドタバタはもうやめたらどうだろう。せっかくの世界観を損なっているように思えるのだが。

文庫化にあたっては例によって地図をつけてほしい。

No.7 6点 ミステリ初心者
(2022/02/24 18:42登録)
ネタバレをしています。

 待ちに待った刀城言耶シリーズ新作長編です!
 相変わらず戦後の時代と民俗学の合わさった良い雰囲気です。ただ、今回はいろいろな難しい用語が多く、刀城言耶シリーズにしては意外なほどページが進まず、読了まですこし時間がかかりました。特に、場所を表す言葉がおおく、位置関係を頭の中で想像するのが大変でした。そのため、地図が欲しかったところです。

 推理小説的要素について。
 解決編前まで読み、既読の方からヒントをもらいながらあれこれ妄想しつつ推理しました。ヒントがなければとても真相にたどり着けないような、ものすごい数の伏線とミスリードでしたね(笑)。それを存分に活かした意外な犯人は、シリーズ屈指とも言えます。
 今作一番の良い点といえば、犯人のその意外な動機です。なぜ市糸郎はころされたのか? 葬式がしたかったからだとは、なかなかに狂っていますね。それを推理するためには、尼耳家が村八分にあっていることを理解しなければならないのですが、ここには読者・探偵共に与えられていない情報が隠されていましたね。すこしだけ叙述トリックのような香りのする仕掛けですね。
 村八分・葬式といった、本シリーズと相性の良い要素を、動機に絡めたところが、本作で一番気に入っております。

 以下、難癖部分。
 トリックは遠隔殺人。ヒントは出ておりましたが、尼耳家の人間がほぼ全員アリバイがないため、推理は難しいものになるでしょう(笑)。このトリック、遠隔殺人系で超有名作品にほぼ同様のものがあり、オリジナリティーという点では評価できません。凶器の処理について滝を利用するアイディアは見事でしたが、有名作品には他にも遠隔殺人があり厚みでは全く敵っていません。
 また、これは本シリーズでもお決まりのパターンですが、証言者がかなり信頼できません。今回は視力が悪いとのことなので、ある程度は予想した居ましたが。証言者がミスリードにしかならないのは、カーも一緒ですね(笑)。

 総じて。
 アリバイトリックや論理的な犯人当てを期待すると、すこし期待外れな感じがあります。刀城言耶シリーズは多重解決が売りの一つでもありますので、論理的な犯人当てができないことを許容するとしても、犯人のトリックが小粒すぎるのはいただけません。
 しかし、ガチガチの本格推理小説ではない、一冊の本としてみるならば、非常に面白い本であることは確かです。私はアリバイトリックと犯人当てが好きなので点数は低めですが、良い作品なことは確かです。

No.6 9点 mozart
(2022/02/03 16:45登録)
ホラー&ミステリーの第一人者(?)とも言うべき著者の力量に改めて脱帽しました。「黒面」とか「碆霊」でちょっと?となっていたので今作の出来は嬉しい限りです。まだ読了してから間もないためネタバレせずにうまくコメントできないのでとりあえず採点だけ。

気になる点があったので再読しましたがやはり疑問な点。

(ややネタバレ)
先輩はともかく御母堂はそれで納得できたのでしょうか。
であるなら彼女のやったことの意味は…。余りに不憫(と思うのは彼女が「マトモ」だったと思いたいからでしょうかね)。

No.5 8点 人並由真
(2022/01/31 06:26登録)
(ネタバレなし)
 これでシリーズのうちで読んだのは、長編と短編集あわせて6冊目。

 序盤の「早すぎた埋葬」ネタの逸話で盛り上げたのち、一転、中盤は手堅いが、やや地味目な感じ? と思っていた。

 が、終盤での二転三転……どころかそれ以上の、フーダニットパズラーの謎解きが鮮烈。実のところ、(中略)番目に名前があがったトンデモナイ犯人の設定は、こちらも予想はしていた(まあ結局は……なのだが)。

 で、本当の勝負所は、最後の最後の真犯人の判明と同時に明らかになる<あの構図の反転>であろう。
 思わず息をのんだが、まあこれはこれ以上書いちゃいけないね。
 
 ラストもコワイ。そっちの方向で、このシリーズの中でこれまでに読んだなかでたぶん一番怖い。
 当然、半分徹夜で、イッキ読みでした。

No.4 8点 虫暮部
(2022/01/05 14:36登録)
 これはかなり良い。その理由は、推理の試行錯誤が飽きる前に終わって、過剰さがいい塩梅に抑制されていたおかげ、かも。いや、それ言っちゃあシリーズの個性全否定?
 冒頭の儀礼~葬儀の話が滅法怖い。出番少ないけど井津子のキャラが程好くピシッとした感じでナイス。

No.3 7点 レッドキング
(2021/09/04 13:22登録)
「~の如き~もの」シリーズ長編第八弾。山間寒村の旧家の秘密・・「厭魅の~」思わせる・・に、リレー式目撃証人の「密室」殺人トリックを絡めて、長いがスッキリとしたWhoWhyHowミステリに纏まる。最後には「首無の」同様にホラーどんでん返しオマケも付く。どっこい、まーだまだ終わってなかった三津田信三。
(ここいらで麻耶雄嵩にも長編力作を一発期待したい・・・)

No.2 10点 HORNET
(2021/08/23 22:15登録)
生名鳴(いななぎ)地方の虫絰(むしくびり)村に伝わる「忌名の儀礼」。8年前にその儀礼で九死に一生を得た女性・尼耳李千子と、言耶の大学の先輩が結婚することになった。二人の結婚を認めてもらうために、李千子たちの帰省に同行することになった言耶。奇しくも同じ時、虫絰村では李千子の腹違いの弟・市糸郎の「忌名の儀礼」が執り行われていた。ところが、儀式の途中に市糸郎が何者かに殺される。いったい、村では何が起こっているのか―

 刀城言耶シリーズの第11作目。
 終末にかなり近づくまで事件は1件のみで、途中も民俗学の薀蓄に多くを割き、第十五章「事件の真相」で語られる言耶の推理と真相もこねくり回したうえでの飛び道具のような着地で、正直残りのページ数を見ながら不安に思いながら読み進めたのだが・・・
 最後まで読んで、大満足!
 そういえばこうした手法こそ、三津田氏の真骨頂だった!!

 「本格ミステリ・ディケイド」(2012・原書房)というガイド本に挿入されていたエッセイで、三津田氏は、「(ミステリには)絶対に伏線は必要になる。にも拘らず伏線のない、または弱すぎる作品が増えている気がする」と、昨今(当時)のミステリ情勢に対してかなり辛辣な見解を述べ、本格ミステリの衰退に警鐘を鳴らしていたが、さすがその三津田氏である。
 上に描いた物語前半の展開も、そこに実は隠されていた伏線を最後に思い知らされ、その緻密な創作手腕に脱帽。
 シリーズ中でも強く印象に残る作品だった。

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