跡形なく沈む |
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作家 | D・M・ディヴァイン |
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出版日 | 2013年02月 |
平均点 | 6.00点 |
書評数 | 6人 |
No.6 | 5点 | レッドキング | |
(2021/10/06 16:07登録) ディヴァイン第十二作。良くも悪くもディヴァイン、作品ボルテージ、上りも下がりもしない。癇癪持ち女と情緒不安定男の元恋人、直情径行気味刑事の三人視点で語られる、地方市議会と役所舞台の、男女関係に不正選挙が絡んだ連続殺人(失踪)事件。終盤サスペンス展開なかなかで、相も変わらずショボいアリバイ時間トリック付き。 |
No.5 | 7点 | 青い車 | |
(2016/05/31 22:30登録) 思い出深いアガサ、クイーンなどを除き、翻訳ものはどちらかと言えば苦手だったのですが、これはなかなか良かったです。犯人の見当が付きやすいとの意見も多いですが僕は綺麗に騙されました。そしてその犯人の執念が生み出した動機にはぞっとするものがあります。登場人物の恋愛模様も邪魔でなく、ほどよいアクセントになっておりドラマとしての厚みもプラスに評価。特にハリーとアリスのふたりの関係が面白く読めました。 |
No.4 | 6点 | あびびび | |
(2015/10/08 23:24登録) ジェフリー・デーヴァーのように、現代感覚の先端を行く話も好きだが、根本的にはアガサ・クリスティーのような、英国本格ミステリーが好みである。 この作者はそれを満喫させてくれる。この物語の犯人なんて、まさにクリスティそのものではないか。やや、意外性、キレ味には欠けるけど…。 |
No.3 | 6点 | E-BANKER | |
(2014/12/20 21:19登録) 原題“Sunk without Trace”。 作者の没年(1980年)の2年前、生前最後に発表された長編ミステリーに当たる。 個人的にもディヴァインの作品は久々に読むような気がする・・・(そうでもないか?) ~ルース・ケラウェイは父を知らずに育った。母の死後、彼女はスコットランドの小都市シルブリッジに渡り、父親を標的とした周到な計画に着手する。一方、人生を立て直すため故郷の役所に勤めたものの、同棲相手との荒んだ生活に憔悴しきっていたケン・ローレンスは同じ職場で働くルースの美貌に似合わぬ狷介な性格に興味を惹かれるが、彼女が父親を探しながら数年前の選挙における不正を追求していることを知る。ルースの行動は街の人々の不安を煽り、ついに殺人事件が発生する・・・~ さすがディヴァイン。 しかもキャリアの最終段階という円熟期ということで、作者の“旨さ”を堪能させられた。 何といっても、登場人物たちの心理描写が見事。 複数の男女が複雑に絡み合い、それぞれがそれぞれに複雑な感情を持ち合わせる。 夫婦、親娘、恋人、片思いの相手etc・・・ ストーリーが進む中でもなかなか本音、真意が見えてこない展開が続いていくのだ。 そして終章に入って判明する真の姿、真の構図。サスペンスフルなガジェットも加えられており、飽きがこないような工夫が成されている。 ただ最初から最後まで一本調子だったなぁーという印象は残った。 視点人物が次々入れ替わることもあり、なかなか本筋が見えないもどかしさというか分かりにくさもあるだろう。 他にもフーダニットにキレがないなど、絶頂期に比べればやや「老い」を感じさせる作品かもしれない。 というわけで、あまり高い評価というのは難しいけど、作者に期待するレベルにはギリギリ達しているかなっていうレベル。 次は是非、絶頂期の作品を出していただきたい。 (って思ってたら創元から新刊が・・・) |
No.2 | 6点 | nukkam | |
(2014/08/29 17:38登録) (ネタバレなしです) 「三本の緑の小壜」(1972年)から久しぶりの1978年に発表された本書がディヴァインの生前に発表された最後の本格派推理小説となりました。創元推理文庫版の巻末解説で指摘されているように謎解きの完成度は(ディヴァインとしては)粗削りと思いますが、多彩な人物描写と彼らが織り成すドラマで読ませます。ルース、ケン、ジュディ、そしてハリー(部長刑事)と視点が何度も切り替わります。後半登場の脇役ながら実は安楽椅子探偵的な役割を果たしている女性の存在感も印象的です。この人に全部の謎解き説明をさせていれば一本芯の通った謎解きになったと思いますが。 |
No.1 | 6点 | kanamori | |
(2013/03/26 23:16登録) スコットランドの小都市を舞台に、ある人物の秘密を抱えた女性が移り住んできたことを契機に、殺人事件に続いて女性の失踪事件が発生する.....といった粗筋のディヴァインの生前最後に発表された作品です。 自治区役所の議員・職員を中心に登場人物が大人数で男女の関係が幾層にも絡まっていますが、主人公格の元婚約者男女をはじめ、脇役までの人物描写の書き分けはさすが円熟期の巧さを感じます。 物語の最初のうちは本筋が掴みずらかったのですが、主人公のひとりジュディスの一家が物語の中軸とわかってスッキリしました。ある女性の失踪事件以降やや中だるみを感じる部分もありますが、ミスリードを交えた終盤の展開が結構スリリングに仕上がっています。フーダニットとしてはやや恣意的で弱いかなと思いますが、読み応えのある作品でした。 |