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ミステリの祭典

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三本の緑の小壜

作家 D・M・ディヴァイン
出版日2011年10月
平均点6.22点
書評数9人

No.9 6点 斎藤警部
(2022/05/25 14:34登録)
読みやすい、読ませる、面白い、ディヴァインらしい安定と信頼感。そこへ来て真犯人は確かに意外だし、しっかりミスディレクションされて、疑惑対象は或る人物中心の数名に終局間際まで寄せられてた気がするが、、ディヴァインらしい深み有る薫るミスディレクションの域までは達してなかったかな。でも「犯行再現」時の真犯人の扱い方なんかは、ちょいと大胆で良かったね。 むしろ惜しいのは、あれほどスリリングに気をもたせた「動機」が、結構な肩透かしであったこと。濃厚心理ドラマから地続きの異様な動機ではあるけれど、何気にそのまんまというか、もう一ひねり半欲しかったよねえ。「◯◯◯が近い」っつったって、長い目で見りゃ□□□ならみんな似たようなもんなんだし、そこに拘るのは犯人の頭がおかしいから、という事になっちゃうのかな。 実は何かトリッキーな数学的要素が動機の一部に潜んでいるのではないか!? なんて期待したのですがね(何しろ◯◯が重要だってんだから)。。。   田舎町で十三歳の少女ばかり三人+青年医師の連続殺人事件を追うのは、殺された医師の弟、自らも医師。 幕間を挟んで三名の一人称叙述リレー(ABCBA形式)で構成される、サスペンスと本格ミステリのハイブリッドの様な、リーダビリティ高↑の長篇。不満も並べましたが、魅力は充分です。 ところで、恋愛要素が煩くなく溶け込んでいるのは良いけど、作者、メガネっ娘に厳し過ぎないか(笑)?! かなりしつこかったよ。。

No.8 5点 レッドキング
(2021/09/28 11:39登録)
ディヴァイン第十一作。13歳同級生少女の三連続殺人(+容疑者の怪死)事件。「五番目のコード」風○○に見せかけた~~事件でなく、ド直球のWhyダニット連続殺人物にして、実に説得力ある・・わかりやすーい・・犯人であった。
相変わらず「ブンガク」に至る程の人物描写、特に知育不全で粗暴な嫌われ者少女の一人称叙述が、魅力的。

No.7 7点 ミステリ初心者
(2020/06/16 23:49登録)
ネタバレをしています。

 海外翻訳ものには登場人物の覚えにくさを感じてしまいます(笑)。100pぐらいを過ぎてから、それほど苦にはなりませんでしたが。
 マンディの1人称視点の文章が、やや冗長に感じることもありましたが、恋愛小説要素には必須であり、最後の感動(?)につながっていてよかったです。

 推理小説部分でも非常に良かったです。
 なかなか論理的に犯人を断定していて、好感が持てます。それゆえに、犯人の条件が限定されていくので、驚きは少ないかもしれません。しかしそれはフェアであるということだと思います。
 犯人のセリフ、「一度危険な目にあったら懲りるのに」的な発言はよい伏線だと感じました。ちょっとヒント過剰だったかもしれませんが。
 私は、グウェンは怪しいとは思いましたが、あまり真剣にいかにして殺せたか=どうやって被害者のいる場所を知ることができたのかを検証していませんでした(笑)。そのため、犯人を当てたとはいえません。レスリー殺害周辺はヒントがちりばめられていて、素晴らしいですね。

 以下好みでない部分。
 非常に不満点が少ない作品ですが、あえて挙げるとすると、シーリアの目撃情報があやまっていました。しかし、これはシーリアの性格や健康状態を思えば察することができますし、文中でも警部やベンおじさんが示唆(多分)していましたし、フェアだと思います。

No.6 6点 ボナンザ
(2019/12/05 20:10登録)
流石ディヴァインとうなる展開。明かされると単純ながら飽きさせずに最後まで読ませるのがうまい。

No.5 7点 あびびび
(2015/03/29 15:09登録)
3人で語られる一人称。それぞれの人物がよく書かれていて、シーラなどは、「このクソ餓鬼が!」と、思ってしまうほど。

自分としての犯人は、第3位にランクされる人物だった。これまで何百冊もミステリを読んで来て、どれだけ鈍いのやろ…と思ってしまう(苦笑)。しかし、この作家は、ストーリーも展開も、本当にクリスティによく似ている。これは自分が感じただけかも知れないが…。

No.4 6点 蟷螂の斧
(2015/02/17 20:18登録)
1人称は本人以外の心理が中々伝わってこないのですが、本作は3人によるそれぞれの1人称で語られているので良く伝わってきましたね。犯人の心理以外は(笑)。一見本格風な展開ですが、心理サスペンス要素が強い作品でした。本格物としては5点、心理サスペンスもので7点といったところです。姉マンディ(20歳)と義母妹シーリア(13歳~やや発達の遅れた少女)の一人称で語られる心の閉鎖部分が、片や恋愛物語へ、片や事件の真相に繋がっていくところは、さすがにうまいと感じました。

No.3 5点 E-BANKER
(2012/07/03 22:33登録)
生涯で13の作品を発表した作者後期の長編。
タイトルはマザーグースのタイトルから取っているようだが、特に事件との関連はなし。

~夏休み直前、友人たちと遊びに出かけた少女ジャニスは帰ってこなかった・・・。その後ジャニスはゴルフ場で全裸死体となって発見される。有力容疑者として町の診療所に勤める若い医師ケンダルが浮上したものの、崖から転落死。犯行を苦にした自殺とされたが、やがて第二の少女殺人事件が起こる。犠牲者はやはり13歳の少女。なぜ殺人者の歯牙にかかってしまったのか? 真犯人への手掛かりは思わぬところに潜んでいた~

引っ張った割にはちょっと肩透かし。
というのが正直な感想か。
さすがにディバインらしく一人一人の人物描写は素晴らしい。その人物の性格・人間性すべてが読者にも手に取るように分かるほど綿密に書き込まれているし、それだけ作品世界を堪能できる。
章ごとに視点人物を変え、いろいろな角度から事件に光を当てる手法というのも、物語に重みや深みを与えている。
そして、ラストに向かって徐々に盛り上げるやり方も熟練の味わい・・・

ただねぇ・・・真犯人があまりにも平凡なのが致命傷。
「動機」もこれだけ引っ張ったにしては表層的で今一つ納得感はない(これでは「狂気」ということになってしまう)。
そもそもいつのまにか、クローズドサークルのように容疑者が一家の関係者に絞り込まれてしまった過程が不明。
もう少しロジックの裏付けが必要なのではないかと思った。

ストーリーテリングの上手さは感じるけど、全体的には他の作品よりは劣るかなという印象。
(とにかく人物描写はこわいぐらいエグイ。)

No.2 6点 kanamori
(2012/01/03 18:52登録)
”一列に並んだ三本の緑のガラス壜。あの有名なかぞえ歌のように、一本ずつ落ちて割れていく。”

タイトルはマザーグースからのようで、同じ学校の13歳の少女ばかりを狙った連続絞殺事件を象徴しているわけですが、童謡殺人といったケレン味はなく、後半部でさらりと触れられているだけというのがいかにもディヴァインらしい。
本書の特徴は、3人の登場人物によって割り振りされた一人称多視点の採用でしょう。特に情緒不安定の少女シーリアによる語りの第三部はミステリの趣向にも寄与しているところが巧妙だと思った。
ただ、今回は犯人当てとしてはやや分かり易いかな(動機の線から”この人物しかありえない”と思いその通りだった)。

No.1 8点 nukkam
(2011/11/14 14:38登録)
(ネタバレなしです) 1972年に発表された本格派推理小説の傑作です。少女が全裸死体で発見されるという猟奇的犯罪を扱っていますがエログロ雰囲気は全くなく、(性犯罪の可能性は検討されますけど)誰にでも勧められる作品として仕上がっています。コリン・デクスターの傑作「ウッドストック行最終バス」(1975年)に影響を与えたのではと思わせる印象的な出だしから、悲劇的な事件を扱いながら(やや強引だけど)救いを暗示する幕切れに至るまでよく考えられたプロットです。謎解きの巧妙さも読者の期待を裏切りません。

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