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ミステリの祭典

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月明かりの闇
ギデオン・フェル博士シリーズ

作家 ジョン・ディクスン・カー
出版日2000年03月
平均点4.40点
書評数5人

No.5 6点 レッドキング
(2021/09/19 21:40登録)
フェル博士(カーでなく)最後の事件。米国南部を舞台にした、複数男女の情念殺人劇パズルと、足跡なき密室殺人トリック・・犯人にとっては目撃証人による二重密室トリック・・の解明ミステリ。
島荘「北の夕鶴」「人喰いの木」みたいな大仰なのより、この位の方が品位あるぞよ、トリック仕掛け。

No.4 5点
(2019/11/15 09:43登録)
 南北戦争のきっかけとなったサムター要塞から二マイルと離れていないサウスカロライナ州ジェイムズ島。兄リチャードの死により実家を継ぐため、ゴライアスから島に戻ってきたヘンリーだったが、南部の名門メイナード家には英領植民地時代から伝わる言い伝えがあった。初代リチャードが決闘で打ち倒した海賊、ビッグ・ナット・スキーンの亡霊がトマホークを振るうというのだ。約二百八十年前の当主リチャードに加え、百年前には南北戦争の英雄ルーク・メイナード提督も変死していた。いずれも頭の右側が叩きつぶされ、周囲には足跡も凶器も見つからなかった。
 裕福ながら堅苦しいヘンリー・メイナードと愛らしくセックスアピールに満ちた娘のマッジ、そして彼女をとりまく求婚者たち。人々の間に奇妙な緊張が高まる中、次々と小事件が起こる。案山子の盗難、屋敷の周囲をうろつく謎の人影、そして武器室からのトマホークの消失――
 そうしたなか月の夜浜辺に面したテラスで、ヘンリーがやはり頭の右側を潰されて殺される。だが砂のように牡蠣殻を敷き詰めた白いテラスにも下の浜辺にも、被害者の足跡以外にはなんの形跡もなかった・・・
 1967年発表のギデオン・フェル博士最後の事件となった作品。"足跡のない殺人"がテーマですが、しょぼくさいメイントリックよりも人間関係を軸とした構想がなかなか。騎士道系ラブロマンス万歳のカーでこういうのは珍しいです。この内容で引っ張りすぎとか、フェル博士がこんなハウダニットで苦戦する筈ないやんとか言いたい事は色々ありますが、黄金時代全盛期の作家としてはこの時期まずまず健闘しているのではないでしょうか。黒板にメッセージを書き残す道化者〈ジョーカー〉の存在とか、深夜の廃校での冒険とか結構楽しませてくれます。
 ただピタゴラスイッチ系のアレは脱力もの。シビアな評価の原因はおおむねこれでしょう。贔屓目に見てもギリギリ5点。個人的には「悪魔のひじの家」より楽しめたんで、そこまで低評価したくないんですが。
 カーはこの後も毎年作品の刊行を続け、ウィルキー・コリンズを探偵役に据えた「血に飢えた悪鬼」の発表後に亡くなりました。最後に構想されていた長編はダグラス・グリーンによれば「海賊の道」とのタイトルだそうで。たぶん歴史物だと思いますが、どんな物語だったのかは興味あるところです。

No.3 3点 kanamori
(2011/07/09 20:21登録)
百年前の事件と同様の”足跡のない殺人”の再現という、因縁話に絡めた展開はカーらしくていいのだけれど、いかんせん肝心のトリックがパッとしません。事件が起こるまでも冗長で、筆力の衰えが如実に現れていて残念な出来でした。
原書房版の副題には”フェル博士最後の事件”となっていますが、「フェル博士が登場する最後の作品」というぐらいの意味なので、これはちょっとどうなんだろうか。アレコレと変な期待をしてしまう。

No.2 3点 Tetchy
(2009/01/09 22:22登録)
これは敷地のレイアウトを付けてくれると非常に助かるのだが・・・。
そしてやはり一番大きいのが機械的トリックを説明しているのにそれが図解されていない事。
だいたい想像はつくが、はっきり云って十分理解しているとは到底思えない。これは正に推理小説のカタルシスであるから致命的だ。ここでほぼ90%は興趣が殺がれた。

しかし晩年においてもやっぱりカーはカーだ。
老いてなお、このようなトリックに挑むのだから。
でも一番面白く感じたのは人間関係の妙。
晩年のカーはこういう人間というものの不思議さ―特に趣味趣向の多彩さ―に後期のカーは結構魅せられていたのだな。

No.1 5点
(2008/12/15 22:23登録)
冒頭部分に出てくる謎の人物の正体が、結局事件を解き明かす鍵なのですが、これがなかなかわからないようになっています。人間関係が事件を複雑にして読者を惑わせておいて、最後にうまく説明をつけるあたりはさすがですが、最後までカーがこだわっていた不可能殺人トリックの方は、さっぱり冴えません。
それにしても、章の切れ目で毎回劇的なことを起こして、何が何でも話を盛り上げようとするサービス精神には、笑ってしまいますね。

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