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ミステリの祭典

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いいちこさんの登録情報
平均点:5.67点 書評数:541件

プロフィール| 書評

No.501 4点 乱鴉の島
有栖川有栖
(2023/03/28 18:48登録)
まず、相応の紙幅を割いているにもかかわらず、その造形がまるで描けていない登場人物が多く、そうした人物が犯人と指摘されても、何らの感慨も呼び起こされない。
次に、登場人物たちが本島に集まっている理由は、端的に言ってリアリティに欠けるが、それをカバーするような雰囲気づくり、舞台装置の準備が不十分であり、まして、それが犯行動機とは無関係という点に至っては脱力モノと言わざるを得ない。
最後に、犯行プロセスは一貫して偶然の産物であり、真相解明プロセスにも見るべき点が乏しい。
プロット・叙述の双方において、著者の作品としては最低クラスの出来栄えであり、4点の最下層と評価


No.500 5点 ZOO
乙一
(2023/03/23 08:35登録)
独創的・トリッキーな舞台設定・作風の短編ばかりであるが、いずれの作品も水準に達しており、著者の力量の高さは疑い得ない。
ただ一方で、突き抜けるものがないのも事実で、上手さは感じるが、それ以上ではない
5点の上位


No.499 4点 十三角関係
山田風太郎
(2023/03/23 08:35登録)
プロットそのものに若干の無理を感じる。
本件真相であれば、実証的な捜査を丹念に続ければ、必ずや解明できるであろうし、犯行動機のリアリティが弱い点でも不満が残る。
全体として平凡な印象


No.498 5点 invert 城塚翡翠倒叙集
相沢沙呼
(2023/03/07 16:32登録)
第1話は、地味な印象は拭えないものの、全体として堅牢な造りの佳作であると感じた。
第2話は、それより落ちるものの、やはり同様の印象。
第3話は、プロットそのものが荒唐無稽であり、かつそれが読物としての面白さにもつながっておらず、率直に言って論外。
これらを全体として5点の最下層と評価。
第3話がなければ、異なる評価を下していたのは間違いないが、倒叙形式であることの難しさを割り引くとしても、前作の水準には遠く及んでいない


No.497 6点 山魔の如き嗤うもの
三津田信三
(2023/02/27 12:55登録)
導入部をはじめ、著者の確かな力量を感じさせる力作ではあるが、アラも相当に目に付いた。
まず、舞台装置としての超常現象があまりにも多すぎる。
それらの一つひとつをことごとく、極度の恐慌状態に陥っていた登場人物の誤認と認定していくのだが、かなり無理も感じられ、読者の納得感は得にくい。
ここまで丁寧に説明するアプローチをとるのであれば、これほど大量に設定する必要はなく、却って逆効果になっている。
また、最終盤に二転三転の展開にもっていくのであれば、ここまで皆殺しにするのは得策ではなかったように感じる。
残された容疑者が非常に少なくなり、いずれの真相も予測の範囲を出ないうえ、真相解明プロセスに論理性が乏しく、説得力にも欠けた。
以上、世評が高い点も理解できるものの、やや批判的な立場から6点の下位


No.496 4点 ボトルネック
米澤穂信
(2023/02/06 19:13登録)
本作のタイトルとエンディングから大きな違和感を受け、それゆえに本作の主題がよくわからない。
「ボトルネック」といえば、そのとおりだが、それが何なのか。
そのように感じる必要はないと言いたいのか。
ただ、このエンディングを提示されてしまうと、そのようには解釈しにくい。
結局のところ、著者がこの物語を通じて、読者に伝えたかったメッセージが何なのかが非常に見えにくくなっている。
これは私の読解力不足かもしれないが、書評を拝見する限り、同じように感じている人も多い。
パラレル・ワールドという思い切った飛び道具まで使うからには、もう少し明確なメッセージがほしかったところ。
4点の上位


No.495 6点 巡礼者パズル
パトリック・クェンティン
(2023/01/23 11:30登録)
著者と翻訳者の、いずれの力量に負うのかは定かではないが、闘牛・カーニバルといったメキシコの異国情緒満載のガジェットを活かしつつ、登場人物の息遣いさえ聞こえてくるような描写は、ミステリとしては出色のデキであり、とにかくよく描けている。
探偵が足下のトラブル解決に振り回され、真相解明が後回しになっていくのだが、そうした展開を通じて、登場人物の造形を掘り下げつつ、その複雑な人間関係がどのように収拾されるのかという興味で引っ張っていく。
多重解決風の趣向は、登場人物が非常に少ないがゆえに、難易度が高かったことと推察するが、読み応えが感じられた。
明かされた真相はサプライズに欠けるものの、十分な納得感を演出しており、また最後にもたらされた人間関係の清算も非常に印象深い。
一読の価値のある佳作であり、6点の上位と評価


No.494 6点 氷菓
米澤穂信
(2023/01/18 13:05登録)
タイトルに秘められた謎だけは拍子抜けであるものの、主要登場人物4人の人物造形、各短編の造り、連作短編集としての構成等、デビュー作としては出色のデキといえるのではないか。
いかにも小品であるゆえに、6点の最下層と評価するが、好感がもてる作品


No.493 4点 謎のクィン氏
アガサ・クリスティー
(2023/01/18 13:04登録)
非常に世評が高い作品であるが、真相解明プロセスに論理性がまるでなく、ファンタジーのような印象を受ける。
読者をかなり選ぶだろう


No.492 6点 ミステリー・アリーナ
深水黎一郎
(2023/01/04 15:40登録)
きわめて個性的なプロット・着想から、「最後のトリック」と同様に、本格ミステリへの深い愛情と、その本質的な限界へのチャレンジング・スピリットを強く感じ取れる作品。
上記作は構想そのものに無理も感じたところ、本作はミステリの従来のありようを、容赦なく、徹底的に考え抜いた先に辿り着いた、そんな印象を受ける。
「伏線だらけ」と銘打っているとおり、これだけの解決を成立させるべく、叙述が周到に、計算し尽くされており、一見して脱線としか思えない蘊蓄までもが伏線になっている。
にもかかわらず、それを感じさせない、よい意味で緊迫感のない筆致も見事であり、完成度の点でもはるかに上と評価。
エンターテインメントとしてみたときには、一定の限界があり、6点の最上位と評価するものの、一読の価値はある佳作


No.491 6点 骨と髪
レオ・ブルース
(2023/01/04 15:37登録)
ムダのない叙述で、サスペンスとユーモアを両立させる作品世界を演出しており、ストーリー・テリングの腕は確かであるものの、真相が非常に見えやすくなっている点は、大きな難点。
トリックの独創性の高さや、真相解明プロセスの論理性で勝負する作品でもないだけに、本格ミステリとしてのスケールの小ささは否定しがたい。
好意的に捉えている作品ではあるが、6点の最下層というところ


No.490 4点 アリバイ崩し承ります
大山誠一郎
(2022/12/22 15:16登録)
そもそもアリバイトリックは、言わばネタが出尽くしている状況にあり、ジャンルそのものが行き詰っているとはいうものの、既視感の強い既存トリックの応用や、他のミステリジャンルとのあわせ技ばかりで、独創性が感じられない。
そして何より、示された真相に合理性やフィージビリティがまるで感じられない。
各話ともに探偵が瞬殺で真相に到達するのだが、その解明プロセスは論理性が皆無で、「このように考えることもできる」というインスピレーションでしかないにもかかわらず、それを指摘された犯人が例外なく自白して事件が解決するという枠組みそのものにも納得性がない。
本作をライトノベルと位置付けるなら、そうしたありようもある程度是認できるのだが、探偵を筆頭に、各登場人物の造形もまるで掘り下げがない。
本作の本質は「アリバイトリック問題集」とでもいうべきものであるが、そのように位置付けても凡庸なデキと言わざるを得ない
4点の下位


No.489 7点 スナーク狩り
宮部みゆき
(2022/12/13 17:56登録)
まるで映像を見ているかのような優れた叙述に加え、私的正義の是非を問うプロットの組み立てが見事。
全体としては、やや軽量コンパクトな印象を受けるものの、著者の充実した力量が発揮された佳作


No.488 6点 逃げる幻
ヘレン・マクロイ
(2022/11/28 20:14登録)
まず事件の発端そのものが、真犯人を大胆かつ巧妙に隠蔽している。
人間の消失と密室殺人の真相そのものには見るべき点がないが、残されたノート、ダイイング・メッセージ(欧米人以外には通じないのが難点であるが)、数式等、数々の手がかりと、巧みなミス・ディレクションは見事で、真相解明に至るプロセスはよくできている。
明かされた真相、そして読後に浮き彫りになるテーマも十分な説得力をもっている。
作品全体としてインパクトには欠けるものの、細部に至るまで確かな構築力を感じさせる作品


No.487 7点 黒牢城
米澤穂信
(2022/11/17 12:27登録)
まず、信長に叛旗を翻し、有岡城に立て籠もる荒木村重を助手、そして村重に幽閉された官兵衛を安楽椅子探偵とした舞台設定そのものが傑出している。
通説との間で違和感が全く感じられず、日本史に造詣がある人ほど抜群の奇想と評価するのではないか。
そのうえで、本作を連作短編集として歴史の流れを追っていくという構成が実に巧み。
村重の息遣い、戦場に立ち込める血の匂いまでも、再現するような筆致は、円熟の極みに達している。
各短編のミステリとしての底の浅さゆえに、評価はこの程度にとどめたが、各賞を総ナメするのも当然で、一読の価値のある佳作


No.486 6点 救国ゲーム
結城真一郎
(2022/11/17 12:26登録)
ミステリとして、真相解明に至るプロセスの論理性はある程度評価する。
ただ、この真相に到達するのであれば、十分な説得材料が必要で、提示された社会派としてのテーマ、課題認識は悪くないものの、そこに特段の主張がある訳でもなく、掘り下げが圧倒的に足りないと感じる。
全体として一定の水準には達しているものの、それ以上の迫力はない


No.485 6点 硝子の塔の殺人
知念実希人
(2022/10/20 08:09登録)
最初に与えられる解決が、フィージビリティを無視した平凡な内容であるのは、言わば当然である。
それにしても提示された謎の不可解性に対して強く見劣りがするのは残念であるが。
ただ、それ以上に、それを覆して与えられる真の解決を評価することはできない。
リアリティがないのはよいとして、納得感がまるでないのである。
これほどまでに特殊な登場人物を置けば、どのような不可解な謎にも説明が付くのは当然で、ある種のファンタジーでしかない。
このファンタジー、すなわち登場人物の存在そのものが、ミステリというジャンルのありようや歴史に対する、深い認識から生まれていることは十分に承知しているが、それは言わばよくできたミステリ評論でしかなく、ミステリとは言えない。

本作に込められた著者の野心、稚気、チャレンジング・スピリットは大いに買うのだが、読者の想像を大幅に凌駕するものではない。
あらゆる変化球が投げ尽くされているなかで、突拍子もない変化球を投げると宣言されれば、打者として十分に読めてしまう球種。
ミステリというフォーマットのなかで、このようなアプローチを試みる限り、これが限界なのであろう。

そのような意味で、本作に対して批判的なスタンスに立つつもりはないのだが、一方で激賞されるべき作品であるとは到底思えず、6点の最下層


No.484 7点 13・67
陳浩基
(2022/10/17 18:36登録)
まるで香港に滞在しているかのように、臨場感・熱が伝わってくる筆致から、抜きんでた筆力の高さが窺い知れた。
一方で、社会派ミステリとしては、警察の正義というテーマそのものがありふれているし、とくに目を見張るような主張もない。
また、本格ミステリとして、連作短編集としては一定の水準には達しているものの、突き抜けた印象はない。
これらを俯瞰すればミステリとしては水準クラスであるものの、言わば香港のドキュメンタリーとして一読の価値がある佳作という印象


No.483 6点 第四の扉
ポール・アルテ
(2022/09/29 14:44登録)
本作の核となる事件と、その真相はトリックを含めて平凡。
プロットはサプライズを演出しているものの、独創性は認められない。
海外ミステリの翻訳とは思えないリーダビリティの高さ、冗長さを廃したスピーディな展開は大いに好感がもてるが、作品全体にご都合主義が強く散見される点は減点。
全体として一読の価値はあるものの、世評ほどの傑作とは思えなかった


No.482 6点 透明人間は密室に潜む
阿津川辰海
(2022/09/22 12:35登録)
表題作がズバ抜けたデキ。
透明人間が他の人物には見えないことを考慮し、透明人間自身を視点とした倒叙ミステリとして構成する等、非常によく考えられているのが印象的。
メインの謎に設定されている隠れ場所も秀逸であるが、それ以上に、そこから明らかになる真犯人の実像、そして動機等、透明人間という特殊な設定を最大限に活かしきった傑作と言ってよい。
それ以外の作品の評価も含めると、短編集としてはこの評価

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