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ミステリの祭典

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ブラウン神父の不信
ブラウン神父シリーズ

作家 G・K・チェスタトン
出版日1959年01月
平均点7.12点
書評数16人

No.16 7点 蟷螂の斧
(2024/06/26 20:13登録)
なんとも読みにくい文章。原文が長文や小難しい言い回しであったとしても、短文や、平易な文章にして読み易く訳して欲しいものです。
①ブラウン神父の復活 5点 神父が暴漢に襲われた・・・宗教的なことはよくわかりません
②天の矢 6点 塔の上の部屋で矢の刺さった死体。窓は開いていた。被害者は連続殺人者に狙われていた・・・どこから矢を放ったのか
③犬のお告げ 6点 飼い主が東屋で刺殺された。飼い犬は悲しげに遠吠えをあげた・・・準密室
④ムーン・クレサントの奇跡 6点 高層階の部屋から男が消えた。窓は開いていた・・・クリスティ氏の某作品でトリックに無理があるという書評が多かったような。本編の方が実行は更に難しい(笑)
⑤金の十字架の呪い 5点 金の十字架を手に入れた教授が謎の人物狙われ・・・犯人の目的がわかりません
⑥翼ある剣 8点 三兄弟の二人が殺された。残った一人は家にこもり身を護るが・・・雪の足跡
⑦ダーナウェイ家の呪い 9点 旧家にやって来た婚約者は、呪われた古い肖像画にそっくりであった・・・これぞ「逆転の発想」
⑧ギデオン・ワイズの亡霊 8点 三人の富豪が殺され、その一人が幽霊となって・・・わかりやすいが、発表された時代を考慮して

No.15 7点 レッドキング
(2022/06/09 20:47登録)
ブラウン神父第三短編集。
  「ブラウン神父の復活」 神秘否定の為の「神秘」援護をする論敵に、神秘尊重の為の「神秘」トリック暴露で返し・3点
  「天の矢」 真の神秘は、神秘化される事なく顕れ・・ミステリ(神秘)トリックが暴かれるが如く・・4点
  「犬のお告げ」 完璧な・・94%完璧な・密室の殺人。耶蘇教神父の多神教・汎神論へのイチャモンつき。9点
  「ムーンクレサントの奇跡」 高層部屋から消失した男。移動不可能な場所で絞殺体で発見され・・9点
  「金の十字架の呪い」 呪いのトリック・入代りネタやよし。犯人の設定がイマイチ・・6点
  「翼ある剣」 ん、雪密室の元祖? 死体消失と合わせて一本、見事! 作者の耶蘇教独尊チトうざく・・9点
  「ダーナウェイ家の呪い」 カー風オカルト源流? 暗い宿命を破る自由の言葉は「殺人」・・耶蘇教、ちと深い。6点
  「ギデオンワイズの亡霊」 7点。(これで、「真相・ホームズ最後の事件」てなパロディやったら・(*_*;
※第3・4・6編の三短編はミステリ史上の「何か」なんだと思う(多分)。
※ミステリ(神秘)が、「神秘」トリックの暴露であるように、真の宗教も、似非「神秘」の否定・・うーん、ブラウンてかチェスタトン、言いたい事は解るが、耶蘇教宣伝チトうざいぞ、「カラマーゾフ」レベルには遠いし。

No.14 5点 虫暮部
(2021/06/12 12:42登録)
 ブラウン神父シリーズを読みこなすのは意外と難しい、かも。“難解”とはちょっと違う。物語の流れに上手く乗る為の然るべきタイミングやポイントがあり、そこを逃すとページを戻して詳細を理解し直しても何か大切なスピリットが流失するような。そうなってしまうと、今読んだばかりだと言うことが却って障壁となり楽しみを遠ざけてしまうので、忘却の恵みによって新鮮さを取り戻した頃に再度試みるしかない。今回私は読み方失敗。

No.13 6点 クリスティ再読
(2020/01/20 13:31登録)
本サイトの傾向だと、童心>不信>知恵になるようだ。面白いな。その理由はねえ、どっちかいうと「タダのミステリ」になってる作品が目立つから...ということのように思うんだ。
「童心」の凄いあたりは、ミステリの仕掛けがそのまま社会的な事象の反映になっていて、しかもロジックによる反転で全体が社会批判を狙った寓話になる、というのが多くの作品で成功しているあたりなんだよね。だから「知恵」はその路線を継続したのだけど、「童心」ほどには社会批判の切れ味やらミステリとのバランスやらが、今一つになっているんだ。しかし時間をおいた「不信」では社会をみる眼が何か固定されてしまって、チェスタートンという人の批評的センスや感性が鈍っているように思うんだよ。だから「ミステリ」の部分がバランスを欠いて目立つことになって、「新本格」風の突飛さになっているように感じる。展開も「探偵小説」ルーチンの展開が多いんだな。
なので、本作あたりからは、「童心」「知恵」とは別物で、「ミステリ専科」な読み物と思うことにする。そうしてみると、ロジックのナイスな「犬のお告げ」とか、大掛かりな「ムーン・クレサントの奇跡」とか、こういう作品を「突飛なミステリ」で面白がればいいんだろう。何かポエジーや香気の失せた残念さを感じるのも仕方ないんだけどねえ。

ちなみにチェスタートンのカソリック信仰、というのはヨーロッパ伝統主義みたいな「普遍」主義だから、迷信や神秘主義とはそもそも敵対的なものだからね、これは最初から一貫して変わりない。「正統とは何か」を読まないとここらの機微はわかりづらい。宗教は迷信でも神秘でもない。

No.12 7点 弾十六
(2019/09/28 22:46登録)
1926年出版。ブラウン神父ものの連載は年代順に並べると『不信』と『秘密』の収録作品が交互に出てきます。何故、単行本の編纂がこのようになったのか、ちょっと謎ですね。(Nash’s初出作品が『不信』にまとまってるので、そこら辺がヒントか。ただし⑻はCassell’s) 1925年5月&6月は2誌に新作を同時発表してます。Long Bowで中断してたお詫びかも。昔の創元文庫(1977年1月16版)で『秘密』も含め、作品発表順に読みました。本格仕立てが結構多いのが意外でした。ちょうどカトリック改宗直後なので、何か影響あるかな?と思ったら、宗教に関する態度はほとんど変わらない。これもちょっと意外。
初出はFictionMags Index調べ。カッコ付き数字は単行本収録順です。初出の順番と比べると、収録順はずいぶん変えています。いくつかの電子版を見ましたが、献辞はないようです。

⑶The Oracle of the Dog (Nash’s and Pall Mall Magazine 1923-12): 評価5点
いかにも本格探偵小説な密室殺人&安楽椅子探偵仕立て。「あずまや(summer-house)」に注目する神父、でもそのイメージはわかりにくい。手がかりが散りばめられた描写が妙に本格本格してて今までのGKCぽくない。デテクションクラブ向けかな。
(2019-8-14記載)

⑹The Dagger with Wings (Nash’s and Pall Mall Magazine 1924-2): 評価6点
前作もそうですが、冒頭から語り口がこなれてて以前のひねくれとは別人のようです。実にわかりやすい。1922年のホーン フィッシャーシリーズの後、心境の変化があったのでしょうか。(大事件としてはカトリック改宗とアイルランド独立事件ですが… ああ、今気づいたのですが、カトリック改宗とアイルランド独立(実質的には1921年12月の条約で合意)は結構、密接な繋がりあり?独立戦争中の改宗は無用な疑念を世間に持たせかねませんから…)
解決後の宗教に関する話は長すぎる無駄口です。
p210 銃口が鐘の形をした古い旧式のピストル(long antiquated pistol with a bell-shaped mouth): blunderbussのことでしょうね。
(2019-8-14記載)

⑷The Miracle of Moon Crescent (Nash’s and Pall Mall Magazine 1924-5): 評価7点
米国もの。GKCは1921年に米国講演旅行を行い、印象記What I Saw in America(1922)を発表しています。本作の不可能設定もいかにもな本格ミステリ。鮮やかな解決と人間洞察の深さが素晴らしい。
p119 二万ドルのはした金: 大金持ちのセリフ。米国消費者物価指数基準(1924/2019)で15倍、現在価値3173万円。
p124 空砲をしこんだ旧式のピストル(an old pistol loaded with a blank charge): 多分リボルバーだと思います。
(2019-8-14記載)

※間にTales of the Long Bow(1924-5〜1925-3)の連載あり、次のブラウン神父もの3作The Mirror of Death(1925-3)、The Man with Two Beards(1925-4)、The Chief Mourner of Marne(1925-5)は『秘密』に収録。

⑸The Curse of the Golden Cross (Nash’s and Pall Mall Magazine 1925-5): 評価5点
チェスタトンの本格ブームはどうやら去り、いつものGKC風味。でも寓話としても中途半端に感じます。
p169 からすみたいな(like a raven or a crow): 後段で不吉云々とあるので多分ravenだろうな、と思ったらこういう表現でした。ポオに敬意を表して「大鴉みたいな」でも良いかも。
p172 ≪こっけい版ハムレット≫(a burlesque of Hamlet): 上手な訳だと思いますが、古めかしい感じ。
p173 のろい(curse): ツタンカーメンの呪いが新聞ダネになったのはカーナヴォン卿の死(1923年3月)がきっかけ。この後、この作品の発表前までに関係者が5人ほど死んでいます。
(2019-8-20記載)

⑺The Doom of the Darnaways (Nash’s and Pall Mall Magazine 1925-6): 評価5点
本格仕立て。GKCらしい絵画的作品。締めくくりのネタはルール成立(1928)前ですが、当時から共通認識があったのでしょうね。
p236 シャロット夫人(the Lady of Shallot): テニスンの同名の詩(1833&1842)の主人公。
(2019-8-29記載)

※次作The Song of the Flying Fish(1925-6)は『秘密』に収録

⑵The Arrow of Heaven (Nash’s and Pall Mall Magazine 1925-7): 評価5点
米国もの。不可能犯罪の設定の本格もの。ただしGKCの狙いはそこにはありません。
p36 アメリカの百万長者の死体が発見されたという書き出し: 『トレント最後の事件』もそうですね。
p37 初めて… おりて(first stepped off): 初めて米国に来たわけじゃありません。神父は1890年代のシカゴで暮らしたことがあるのです。(『知恵』の「器械のあやまち」参照。)
p38 神父は前に一度もアメリカを見たことはなく(he had never seen America before): 上記の設定は無かったことになってるのですね。
(2019-9-11記載)

※次の2作The Worst Crime in the World(1925-10)、The Actor and the Alibi(1926-3)は『秘密』に収録。

⑻The Ghost of Gideon Wise (Cassell’s Magazine 1926-4 挿絵Stanley Lloyd): 評価6点
アリバイがネタ。(冒頭で作者が宣言してます。) ストライキを巡る資本家と革命家の話。炭鉱を支配する資本家は全て米国人。当時の英国はそーゆー感じだったのか。(物語の舞台が米国のような記載あり。炭鉱が出てくるので英国の話かな、と思ったのですが… 英国では雑誌発表数ヶ月後の1926-5に大規模なゼネストが起きてます。) 本格ものというよりはファンタジー系。語り口が上手で結構鮮やかにまとまります。
p271 神話にでてくるあのアイルランドの鳥(mythological Irish bird): 文脈から同時に二ヶ所に現れる鳥らしいので、神話関係を調べたのですがよく分からず、Irish bird simultaneouslyでググったらアイルランド人の政治家Sir Boyle Roche(1736-1807)が議会欠席を咎められた時の愉快な発言が引っかかりました。"Mr. Speaker, it is impossible I could have been in two places at once, unless I were a bird." ビアス『悪魔の辞典』(1911)にも引用されてる有名な言葉らしい。(こーゆー翻訳者が気づかなかったのを見つけるととても嬉しい。でもこーゆー深掘りはアマチュアの特権だと思うし、当時はWeb無かったからね。) 「アイルランドにいるらしいあの鳥」あたりが正訳か。(訳注無しだと分からんですね。)
p274 詩人のホーン(poet fellow Home): フィッシャー・ホーンの親戚筋?と思ったら綴りはHome。苗字の場合、ホームじゃなくヒュームと発音するのが正解?Douglas-Homeだけ?
p275 アメリカ合衆国憲法に違反して、強度のアルコール飲料が… : ここら辺の記述からすると舞台は米国なのか。でもブラウン神父が当然のように登場してるし…
p276 アブサンの不気味な緑色(the dead sick green of absinthe): アブサンは未体験ですが、似たようなリキュールのペルノーは飲んだことがあります。不気味な黄色で妙な味つけ。フランス人はそーゆー酒が好きらしい。
(2019-9-28記載)

⑴The Resurrection of Father Brown (単行本初出1926): 評価7点
おまけピースと思ったらどっこい力作。お調子者の作者の自戒でもあるような感じ。
p8 数多い任地のうちで… もっとも遠隔の土地… 南アメリカ北岸…(the most remote, of his many places of residence... the northern coast of South America): 私が米国を「アメリカ」と表記しないのは、南アメリカも立派な「アメリカ」で、南米人のセリフ「私はアメリカ人だ。」という映画字幕を見て、あーそーだよね、と思ったからなのです。ブラウン神父って、意外と海外経験があるのですね。舞台はBritish Guiana(現在のガイアナ)か。
p9 メレディスなら冒険好きの鼻と呼ぶ(Meredith called an adventurous nose): He[George Meredith] called Mr. Joseph Chamberlain's nose “adventurous” at a time when Mr. Joseph Chamberlain's nose had the ineffable majesty of the Queen of Spain's leg. [Arnold Bennett, “Books and Persons”(1917)から] ただならぬ威厳の鼻…「スペイン女王のお御足」とはスカートに隠れて決して見ることはならず又想像すら許されないものの意味らしい。鼻のイメージはSir Max Beerbohm作のイラストS. Sebastian of Highbury (Joseph Chamberlain)参照。
p10 愛称ソール…ポルと自称… : 訳注では「聖パウロ(英語読みポール)は初めサロー」とカタカナ表記がむちゃくちゃ。ユダヤ人迫害の急先鋒Saulが突然イエスの声で回心し、使徒Paul(聖パウロ)となった故事より。
p15 シャーロック・ホームズ… ワトソン先生書くところの<最後の事件>: ホームズの第三短篇集を意識した表現。
(2019-9-28記載)

BBC2013のFather Brownを1話(神の鉄槌)だけ見ました。1950年代の英国風景が興味深いのですが話にチェスタトン風味がありません… フランボウ出てくるのかな?(「ヴァレンタイン」警部が地元の警部で多分レギュラーとして出てきました。その設定で『秘密の庭』やる気なら面白い…)
(2019-8-14記載)
第1シーズン第10話「青い十字架」を見ましたがフランボウが全然魅力的じゃない… 残念。話の脚色も変てこ。GKC風味は全くありません。
(2019-9-28記載)

No.11 7点 ボナンザ
(2018/09/18 20:18登録)
三冊目ながら相変わらず高水準な内容で驚かされる。
犬のお告げはあちこちで評価されている代表作だが、それ以外も粒ぞろい。

No.10 7点 ALFA
(2018/04/29 18:32登録)
個人的な好みでいえばブラウン神父は夕暮れのロンドン郊外やイングランドの田園やスコットランドの荒野で活躍してほしい。「不信」の中のいくつかではブラウン神父をハリウッドのTVドラマの中にポツンと立たせたみたいな感じがする。まあチェスタトンのことだからアメリカ文明批評を書いてみたくてブラウン神父を「赴任」させたのだろう。
とはいえ派手目なストーリーはそれはそれで楽しい。
尺は短いが意外と大仕掛けな「ギデオン・ワイズの亡霊」がフェイバリット。
「犬のお告げ」も短編ならではの味わい。
有名な「ムーン・クレサントの奇跡」はトリックだけが突出気味。

それにしても翻訳はひどい。ちくまやハヤカワの新訳が待ち遠しい。

No.9 10点 青い車
(2016/09/23 19:17登録)
 面白かった。ブラウン神父らしい推理の冴えもすばらしいし、何よりこの『不信』はイメージ的に派手な短篇が多かったように思えます。8話ともぜんぶ好きですが、強いてお気に入りを挙げるなら、かなり大技ですが逆転の発想が気持ちいい『ムーン・クレサントの奇跡』と、不可能を可能にするシンプルなロジックが決まった『ギデオン・ワイズの亡霊』です。人気作の『犬のお告げ』の、凶器をめぐる推理のキレも出色。あと、アガサ・クリスティーが応用したとみられるトリックの作品もあり、チェスタトンの影響力を感じました。

No.8 8点 nukkam
(2016/09/07 12:26登録)
(ネタバレなしです) 「ブラウン神父の知恵」(1914年)から随分と久しぶりの1926年発表のブラウン神父シリーズ第3短編集で8作品が収められています。チェスタトンはジョン・ディクスン・カーに大きな影響を与えたとして有名ですが、特に本書では不可能犯罪やオカルト的雰囲気を持った作品が多数揃っています。世評の高い「犬のお告げ」は密室トリックがやや肩透かしながらも犬を巡る推理が見事で代表作とされるのももっともな出来映えです。説明がやや冗長ながらも「翼ある剣」は(実現性はともかくとして)凄まじさを秘めたトリックが使われています。奇想天外さでは「ブラウン神父の復活」がイチ推しで、何を書いてもネタバレになりそうなので詳細は書けませんがとてつもない怪作です。他にも大胆な仕掛けやどんでん返しの作品がずらりと並んでいます。

No.7 7点 斎藤警部
(2016/02/08 13:18登録)
ブラウン神父と符合を見せる音楽家と言えばジミ・ヘンドリクスだ。右利きであるにも関わらず、右利き用のギターをわざわざ上下(当然だが左右も!)逆さまにして左手で弾く(※)。この逆転の逆転が必ずしもそのまま元に戻っては来ない不思議なねじれの逆説性はミステリの世界で喩えれば間違いなくかの神父領域の味わいでしょう。ましてあの革新性と完成度のマリアージュぶりです。
※但し弦は普通に弾けるよう逆張りにしていました。やろうと思えば弦そのまま(つまり上下逆)でも弾けたって説もある。

さて有名作も揃って派手目なイメージの纏わる本短篇集。幾つかの類似性からホームズの「復活」と並び語られる事も多いですが、わたくしの感想は、ホームズ「復活」と似てシリーズ先行作に較べると少なからず色褪せているかな、と言った所。それでなお充分「かなり面白い」の範疇に記憶を留めさすGKCの底力には感服しきりでございます。  
個人的に感慨深いのは最後の二作「ダーナウェイ家の呪い」「ギデオン・ワイズの亡霊」でしょうか。

No.6 7点 ミステリーオタク
(2015/10/24 12:54登録)
一番できがいいのは犬のお告げ
らしいのは翼ある剣
しかし何といっても笑えたのがムーンクレサントの奇跡だぜ

No.5 7点 mini
(2012/09/28 09:56登録)
本日28日に論創社から、G・K・チェスタトン「法螺吹き友の会」が刊行となる、未訳長編で残っていた内の1つだ、論創という事はあの「マン・アライヴ」以来か
付録として短篇3編が同時収録されているが、その内1篇が目玉商品であろうブラウン神父ものの各短篇集未収録の短篇なのだ
もしかすると本邦初紹介かもしれないから、ブラウン神父譚をコンプリートしたい人には見逃せない

第1短篇集『童心』(1911)に続く第2短篇集『知恵』(1914)があまり間を開けずに出たのに比べると、ブラウン神父ものの第3短篇集『不信』(1926)は10年以上とすご~く間隔が開いている
このお久し振りであることが重要である
『童心』『知恵』と比較して『不信』が持つ際立つ特徴は次の2つだ

1つは、短篇集の題名にもなっている神と信心への懐疑
形而上学的な要素はそもそもチェスタトン作品に共通する面で、それは『童心』『知恵』にも有るのだが謎解きと融合してはいた
しかし『不信』では近代文明と信心との対比が正面から語られ中には謎解きとは遊離し本質的に無関係に語られる短篇すらある

2つ目は、英国人チェスタトンから見たアメリカという国
このアメリカという要素は『不信』ではしつこく語られ、舞台もアメリカに移る
これは『童心』『知恵』にはあまり見られない特色だ
やたらとトリックに関してばかりが注目されがちなブラウン神父だが、アメリカという国家に関するテーマ性・文明論について言及している世のネット上の書評は少なく、誰も目を付けないのが残念だ
『不信』という短篇集はアメリカと文明論について切り離せない、いったい『童心』『知恵』と『不信』との間に何が有ったのか
そこで登場するのが世界史の流れである
丁度『知恵』が出た1914年から1918年にかけて第一次世界大戦が勃発し、欧州の権威は失墜した
この間に世界の一等国にのし上がったのがアメリカで、欧州人からは成り上がり者と罵られようがアメリカが世界の中心的国家へと変貌していく事実は否定出来なかったのだ
『不信』刊行の1926年はミステリー史的には本格長編時代の幕開け時代だが、同時に主導権が英国からアメリカへと移る過渡期でもあったのである
『不信』が強くアメリカという国家を意識せざるを得なかったのも当然と言えよう
ところでチェスタトンに目に映ったアメリカとはどんな国なのか、文明論的にはどうも賛美も批判もせず客観視に徹しているようにも感じるのだが

集中で好きな作だが一番はやはり断然「犬のお告げ」、次点で「ギデオン・ワイズの亡霊」かな
でもどうせ「ムーン・クレサント」が人気なんだろうな
私はこの短編集中で「ムーン・クレサント」が一番好きと言う読者の書評は信用しないことにしている、ミステリーに求めるものはトリックのみ、みたいな読者が多そうなのでね(笑)館ものが大好きって奴も多そうだな(大笑)

No.4 7点 E-BANKER
(2011/02/25 23:13登録)
飄々とした名探偵、ブラウン神父シリーズの第3弾。
作者の独特の感性が垣間見える作品が数多く集録された佳作です。
①「ブラウン神父の復活」=シリーズの舞台がアメリカ大陸へ移動した様子。導入部のような1篇。
②「天の矢」=かなり仰々しい舞台設定&タイトルですが、真相はかなりライトなもの。それくらい他の誰かが気付いてもよさそうですけど・・・
③「犬のお告げ」=名作(らしい)。一読後は意味がよく分かりませんでした。準密室の設定自体はミステリーっぽくて好感。
④「ムーン・クレサントの奇跡」=これは密室からの死体の消失を扱ってます。発想はたいへん面白いですが、相当強引な気がする。(島田荘司的発想)
⑤「金の十字架の呪い」=ブラウン神父お得意のロジック。まさに「逆説」的解決です。
⑥「翼ある剣」=これも名作の誉れ高い1篇。確かに面白いし、やっぱり「逆転の発想」そのもの。でも、これって読者には表現的に分かりにくいけど、ブラウン神父にとっては「見え見え」だったということですよねぇ・・・とするとかなりアンフェアな気もする。
⑦「ダーナウェイ家の呪い」=再三再四触れますが、これも「逆転の発想」。
⑧「ギデオン・ワイズの亡霊」=これもロジックの効いた小品。面白いですね。
以上、8編。
さすがに「名作」ぞろいの作品集。読み応えのある作品が並んでいます。
ただ、「ひたすら読みにくい!」
このシリーズだけは「ながら読書」では理解が絶対に不可能。どなたか、もう少し読んですっと頭に入る訳をしてくれないかな?
(個人的ベストは④か⑥で迷う。③は今ひとつ理解しきれなかった。あとは⑤)

No.3 7点 kanamori
(2011/02/08 18:12登録)
ブラウン神父シリーズの第3短編集。収録作の知名度では「童心」にも引けを取らないラインナップです。
各種アンソロジーに取り上げられることの多い安楽椅子探偵もの「犬のお告げ」、島荘的な豪快トリックの「ムーン・クレサントの奇蹟」、ディクスン・カーが書きそうな不可能トリック「天の矢」、クリスティの某作を連想させるトリックが印象深い「ギデオン・ワイズの亡霊」など傑作ぞろい。
個人的お気に入りは「翼ある剣」で、作者お得意のメイン・トリックに加え、死体の隠し方がなんともブラックな味わいがある。

No.2 8点
(2009/04/17 22:39登録)
12年ぶりのブラウン神父ということで、冒頭作の『ブラウン神父の復活』はホームズの生還を意識していると言われていますが、これはほとんど冗談みたいなとんでもない復活劇です。『犬のお告げ』(密室というほどのものでもないでしょうが、お告げの意味が素晴らしい)、『ムーン・クレサントの奇跡』(この殺人方法のアイディア自体が奇跡的)等有名作の他、クリスティーあたりが使いそうな単純なトリックの『ギデオン・ワイズの亡霊』が好きです。

No.1 7点 Tetchy
(2008/09/24 20:57登録)
前作から12年も経って発表された第3短編集。
長いブランクからの復活を象徴するかのように「ブラウン神父の復活」で幕を開ける。

全体的に奇抜なトリックが目立つが、理論派のチェスタトンらしからぬ、実現性の浅い物もある。有名な「ムーンクレサントの奇跡」、「翼ある剣」、「ダーナウェイ家の呪い」など。
特に「翼ある剣」のトリックは作者自身もお気に入りなのか、この後再三再四に渡って、同趣向の作品が登場する。

また有名な「犬のおつげ」や「天の矢」も収録されている。
チェスタトン独特のロジックと世界は健在で十分楽しめる。

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