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ミステリの祭典

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死の扉
キャロラス・ディーン

作家 レオ・ブルース
出版日1957年01月
平均点6.44点
書評数9人

No.9 6点 いいちこ
(2024/04/22 15:01登録)
事件後における犯人の不用意な言動等には違和感を感じるものの、プロットがそれらを巧みに隠蔽している。
その骨格は現代の読者には既視感があるものの、二人の被害者の人物設定や犯行の状況が絶妙で、非常に強力なミスリードとして機能している。
与えられた解決は、死体の移動や「右足を引きずる男」の謎を十全に説明するもので納得感がある。
単調な真相解明プロセスを退屈させないユーモアも感じられ、水準以上の作品と評価

No.8 8点 YMY
(2022/02/18 22:08登録)
探偵コンビの掛け合い、漫才めいた謎解きがひたすら愉快。人の生き死にをパズルとして扱ってしまえるミステリならではの不謹慎な楽しみに満ちている。
丁寧な伏線や真相の意外性も好印象。

No.7 8点 人並由真
(2021/08/12 16:42登録)
(ネタバレなし)
 新訳版も購入していると思うが、これも散らかった家の中からすぐに見つからない(汗)。それで今回は「現代推理小説全集」版(あとから叢書をまとめ買いしたので2冊持ってる)で読んだ。
 旧訳は清水俊二だったのか! マーロウものの大半を訳して、『そして誰もいなくなった』やポケミス最初のナンバーの『大いなる殺人』も担当してコレも訳したと。いやたしかに、レオ・ブルース研究家かつビッグネームファンの小林さんによる新訳のほうがいいんだろうけど、旧訳は旧訳でなかなか読みやすく味があった。

 ただし旧訳は目次に並べられた各章の見出し、その終盤部に結構ネタバレ的な言葉が、使われている(新訳はそこはどうなっているのだろう)。これから旧訳で読む人はそんなにいないだろうが、(一応新訳もふくめて?)目次には注意、とアドバイス。

 しかしおかげで頭が「そっちの方」に向かってしまったせいか、予断に引きずられて犯人はかなり意外であった。当サイトではかなり正解率も多かったようで、みなさんさすがである。
 ところでこの作品の真相って、ずっと後年の日本の……(以下略)。

 のちのキャロラス・ディーン(旧訳ではカロラス・ディーンとカタカナ表記)シリーズでは、ディーンのアマチュア探偵活動についてほとんど常に批判的なお約束キャラのゴリンジャー校長が、この段階ではプライベート寄りの一面でディーンの名探偵ぶりに関心を寄せているのが興味深い。
(ロボットアニメ『闘将ダイモス』の序盤では、普通にいい人だった三輪長官か。)

 あとは、最初はコワモテの田舎オヤジ風にディーンに接するものの、彼がアマチュア探偵だと知った途端、推理小説についての持ち前の知識を怒涛のごとくまくしたてるミステリマニアの農場主リムブリック氏がケッサク。現代推理小説全集版では巻頭の人物紹介一覧にも記載されてないサブキャラだけど、この人のおかげで本作の評価を1点プラスしたい。ほほうグラディス・ミッチェル、そんな感じですか。そのうちまた一冊読んでみます(笑)。

 やっぱり面白いわ。キャロラス・ディーンもの。もっともっと翻訳してくれ。10年以上前に同人で翻訳刊行されたきりの長編も、どんどん一般販売の文庫化してくれ。

No.6 6点 ボナンザ
(2019/12/17 22:43登録)
キャロラスの地道な捜査とユーモラスな展開、中々意外な真相と見どころの詰まった一作。

No.5 8点 ロマン
(2015/10/20 17:39登録)
英国のとある小間物屋で深夜、二重殺人が発生。店主のエミリーと、巡回中のスラッパー巡査が犠牲となった。歴史教師をするキャロラスは、教え子プリグリーに焚きつけられて、事件を調べることに。読みやすく英国らしさを感じれる。推理やトリックより魅力的なキャラクターによる解決までの冒険小説として読むほうが楽しめるかもしれない。しかし二重殺人の真相には驚かされた。お気に入りのキャラクターは教え子のプリグリー、偏屈だがミステリに目がない農場主 リンブリック氏、勿論名探偵 キャロラス・ディーンも素敵だった。

No.4 5点 mini
(2014/09/29 09:56登録)
一昨日27日に創元文庫からレオ・ブルース「ミンコット荘に死す」が刊行された、戦後のキャロラス・ディーンシリーズの第3作目である
ブルースに詳しい小林晋氏によれば、全体に仕掛けが小粒になったディーンものの中では第1作と第3作が比較的に仕掛けが大掛かりらしいので第2作目を跳ばして選ばれたものと思われる

「ミンコット荘」が第3作ならばシリーズ第1作が「死の扉」である
新たなシリーズ開始という事でレギュラー登場人物の紹介も含め心機一転な感じが出ている、特にワトソン役を務める生徒などは印象的だ
また非レギュラーと思われるが、当サイトでkanamoriさんも言及しておられるミステリー趣味の農場主もマニアには楽しいところ
例の森事典によれば、ブルースの弱点はレギュラー登場人物以外の人物描写が薄っぺらだと指摘されているが、たしかに初期のビーフものでは顕著だ
しかしディーンものでは容疑者の群れ達も印象的な人物造形を施しており、これは進歩したという事なんだろうか

ただしブルースの本領はと言えば、すれからし読者向けの捻くれた仕掛けである
実は私は「死の扉」については真相の8割方は看破しちゃった、作中で肝となるあるミスリードについてはもしかしたら真の狙いはこうかな?と思ったら合っていた、真犯人も半分は正解だった
なぜ見抜けたかというと、私は邦訳された初期のビーフもの4作品は全て既読なので、ブルースだったらこの位は仕掛けてくるんじゃないかと予想出来たからだ
ディーンシリーズの中では「死の扉」の仕掛けも大掛かりなんだろうけど、やはりビーフもののあのメタな大仕掛けを知ってしまうと、小粒感有るんだよなぁ
邦訳されたビーフもの4作は1冊も文庫化されてないのだが、ハードカバーだからと敬遠せずに多くの人に読んで欲しいものだ

No.3 5点 nukkam
(2014/09/15 10:46登録)
(ネタバレなしです) ビーフ巡査部長シリーズの執筆をやめて新たなシリーズ探偵ものとして20作以上発表することになったキャロラス・ディーンシリーズの1955年発表の第1作の本格派推理小説です。ビーフ巡査部長シリーズに比べると探偵役の個性や謎解きの技巧という点で控えめになった感があります(といってもシリーズ第9作の「骨と髭」(1961年)は結構技巧的でしたが)。本書の推理手法は、ある仮説を前提にしてその裏づけをしていくという演繹的手法でした。仮説が最後の場面まで伏せられているので意外性を狙いやすい長所がある一方、それほど論理的に考えられていない仮説だったため思いつきが結果的に正しかったような印象を与えている面も否めません。

No.2 6点 E-BANKER
(2012/04/01 16:32登録)
英国の正統派本格ミステリー作家、L.ブルースの長編第9作目。
素人探偵・キャロラス・ディーンの初登場作品。最近、創元文庫で出版されたものを読了。

~のどかな英国のニューミンスターにある小間物屋で発生した二重殺人事件。深夜の凶行によって店を営む強欲な老婦人エミリーと、地区を巡回していたスラッパー巡査が犠牲となった。町にあるパブリックスクールの歴史教師で犯罪研究を趣味とするキャロラス・ディーンは、事件の調査に乗り出すことに。町の嫌われ者だったエミリーのおかげで、容疑者にはこと欠かないこの事件を、素人探偵はいかに推理するのか?~

実に正統派な「英国本格推理小説」という評価がピッタリ。
一夜にして二人の男女が惨殺されるのだが、重々しさや暗さは一切なく、ただ純粋に謎解きが楽しめるプロットは賞賛できる。
そして、このL.ブルースという作者。ものの本には、英国でA.クリステイと並び称される「ミス・ディレクションの名手」とのこと・・・
本作もその評価を地でいく作品なのは確か。
素人探偵・ディーンが、多くの容疑者や関係者たちに順番に丹念に話を聞くのだが、そこには伏線と読者を誤った道へ導くべく罠が待ち構えているのだ。

そうやって書くと、何だかスゴイ作品のように思えるが、正直な感想「そこまでスゴクはない」。
パズラーものとして、連続殺人を犯す「動機」としては有りだとは思うが、現実的ではないよなぁ・・・
あと、殺害時刻前後の登場人物の絡み具合が複雑すぎて、ちょっと途中で整理がつかなくなってしまった点、ちょっとやり過ぎかも。

まっ、でも決して嫌いなジャンルではありませんし、他作品にも手を伸ばしたくはなった。
(英国本格物で「意外な犯人」というと、なんで「この職業の人」が多いんだろうか? 単に思い過ごし?)

No.1 6点 kanamori
(2010/04/12 18:08登録)
歴史教師キャロラス・ディーンが探偵役を務めるシリーズ第1作。
デビュー作以降の探偵役ビーフ巡査部長シリーズは、本格ミステリ読みをおちょくったバークリーに通じるメタな作風が多いですが、ディーン教師ものはどちらかと言えばオーソドックスな本格編。
しかし、登場人物のとぼけたキャラは相通じるものがあり、本編でもミステリ好きの農場主がディーンにミステリ談義を吹っかける場面など笑える。こういったお遊び的な横道に逸れるプロットは英国新本格に共通するものと言えそうです。

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