home

ミステリの祭典

login
プラチナデータ

作家 東野圭吾
出版日2010年07月
平均点5.07点
書評数15人

No.15 4点 いいちこ
(2024/10/28 14:17登録)
まずもって、DNA捜査システムをはじめ、作中に登場するさまざまなガジェットの解説がきわめて粗雑であり、構想・考証があまりにも不十分であると感じる。
そのうえ、叙述・描写が全般に雑で粗いから、リーダビリティが高い反面、作品全体として非常に安っぽい、稚拙な印象が否めない。
明かされた真相は、確かにさまざまな謎を一刀両断にするものだが、意外性には乏しく、犯人は、特殊解析研究所のセキュリティを考えれば、半ば自明というべきもの。
代表作に見られる著者の構想力・筆力は見る影もなく、もはや何を書いてもベストセラーになる状況のなか、作品が粗製乱造されつつあり、本作もその1つのように感じられ、非常に残念。
それなりにボリュームはあっても、カンタンに読めてしまう、2時間サスペンスドラマのような読後感は、西村京太郎の晩年の作品に酷似している

No.14 6点 ぷちレコード
(2022/04/22 23:12登録)
犯罪捜査における情報を問題にしている。作品の舞台である近未来の日本では、DNAデータの提供が国民の義務になろうとしている。このデータが登録されれば、犯罪者はその網から逃れる術がなく、凶悪犯罪もすべて検挙可能になるという理屈からである。DNAデータを集めるとことそのものは難しくない。だが、問題はその膨大な情報を検索可能にするシステムの構築だ。
そのシステムにもし不備が生じたら、あるいはこのシステムを恣意的に統御しようとする者が現れたらどうなるか。作者は、お得意の超絶技巧ミステリの体裁を借りて、情報の恐怖という現代の喫緊のテーマに挑んでいる。

No.13 8点 斎藤警部
(2019/03/19 00:43登録)
「……、 煙草とか数学とか」

この物語には二人のヒロインがいる。 いや、片方はヒロインになり損ねた。国民(最終的には地球人?)全てのDNAを一元管理して犯罪捜査と犯罪抑制に役立て、薔薇色の未来を築き上げる一助にせんとする巨大計画がある。だがそこでは”プラチナデータ”なる極秘のナニモノかに関する最後の仕上げが肝腎らしい。。。。そこへ来て、巨大計画の技術側キーパースンが、長期入院中の精神科病棟内で殺害されるという重大事件が勃発。 一方でずっと下世話な背景が覗える殺人事件も連発しており。。 主人公は二人(?)。それぞれの周辺人物を含めてぶつかり合うこと組み合うこと、実に玩味に堪える。

登場人物名に何気な鮎川哲也オマージュ?(地名繋げ)を感じるのが嬉しい。個人特定と多重人格、幻影に叙述欺瞞の疑い、、と機敏に平然と畳み掛けて来るのが熱い。物語要素としてシンプルな提示やら対比やら、さり気ない取捨選択やら端の見えないレベル違いか何んかやらがタイミング良く重なり合いテンポよく立体的変貌を続けてくれる。じっくり攻めるなあ、余裕あるなあ。我が妄想よ、突き抜けておしまいな。。

3分の2ほど行ったとこで、 オー、仮にアガサならこいつで決め打ちアーハー? ってなシビれるプレシャス容疑者(その地点までは露ほども疑わなかった)と面会させれたんだけどね、いつしかウォッチリストから消えてそれが誰だったかもわからんくなりましたよ。 某シーン、誰それ?!?! 。。。 と思わせるタイミング無双、と思えば既にもう、そこに加速のしたり顔。浅草橋。。単に幻覚と言うには見え見えの線で引っ張り過ぎだなと思ったら、、そういう事か。。。。 ってまだそこでも終わるわけないんだよな、、やられた ーーー

そこで “ちらりと見た” だと!! しかもだな、その直後の地の文に息づく、妙に幸せめいた余韻。。。 え、何その、唐突な人称の、、迷い?! 惑わせ?!? 読者妄想を前提とする卓袱台ブーメラン丸返しをサリッと刻む一瞬の閃光を、無風地帯の俺は見せてもらった、そんな数行もあった。 

ラストシークエンス、いくらなんでもホンヮヵし過ぎでね? と思いましたが最後の一文できっちり落とし前、泣かせてくれました。”米国側”意図の重さが全く無視されて終わったのはおかしいけれど、まあエエ、社会派ミステリじゃないんだし。何故某人物が犯人に?! という一つのメインテーマが有耶無耶の濁流に押しやられたのもヘンだが、まあエエ、社会派サスペンスじゃないし。ただね、あの奇蹟のミスタッチ解決シーンだけはちょっと都合良過ぎでリアリティを部分撃墜。にしても妙にブライト過ぎる終わり方がまさかの東野流ブラックジョークだったりしてな。文系に優しい理系ミステリ、最高だな。

”モーグル”の命名由来が堂々明言されないのはちょっと残念。 先読みし易く興醒めとの評が多いのは納得。でもわたしは本作が放つ独特のワクワクヒューヒューにどっぷり浸りたいのです。

No.12 7点 Tetchy
(2015/08/16 20:47登録)
情報を操る者は情報に操られるというのが高度情報化社会での皮肉な現象だが、今回の主人公神楽もまた高度なDNA情報を利用したファイリングシステムを構築していながら、自分自身が容疑者として検出される実に皮肉な運命が待ち受けていた。
このDNA捜査システムを読んで想起したのは住基ネットである。これは単に住所、氏名、年齢といった本人を取り巻く外的情報でしかないが、これもまた警察と政府によって仕組まれた国民管理構想の一端のように思えてならない。従ってもしDNA情報まで保存・管理・検索できるスーパーコンピューターが開発されれば本書のような捜査システムが構築されるのは時間の問題なのかもしれない。

エンタテインメントの手法としては古くからハリウッド映画でも題材にされてきたテーマだろう。しかしこれを絵空事と思っていいものだろうか?上に書いたように、既に我々の情報は公共機関によって管理されている。それが機械のミスで、いや故意に人為的に操作されて自分がある日突然犯罪者に仕立て上げられる可能性もあるのだ。このデータは嘘をつかない、機械はミスをしないと信じる盲信性こそが現代社会に生きる我々の最大の敵ではないだろうか。

完璧な正義など存在はせず、大なり小なりの悪が存在しながら社会は機能している。東野氏は自身の公式ガイドブックの諸作の自己解説でところどころ上のようなことを述べている。従って東野作品は個人の力ではどうしようもないことに対して非常に自覚的である。それが故に彼の作品は勧善懲悪的に悪が必ず罰せられる結末を迎える作品は少なく、どこか割り切れなさと現実の厳しさというほろ苦さを読後に残す。
本書もその例に漏れず、本質的な解決は全く成されていない。例えばハリウッド映画に代表されるエンタテインメントならばこのような近未来の歪んだシステムは主人公の活躍によって壊滅され、大団円を迎えるのが通例なのだが東野氏はそれを選択していない。
果たしてこれは来るべき未来に対する東野氏からの警鐘なのだろうか。裁かれるべき者が、巨悪がさらに大手を振って世間に幅を利かせる世の中になっていく。ここで書かれた未来はなんとも暗鬱だ。

No.11 5点 初老人
(2014/04/30 00:35登録)
(ネタバレあります)全国民のDNAデータをデータベース化して冤罪を0の社会にしていく、実際は不可能でもその未来像を描き出している点は評価する。しかし肝心のプラチナデータとそれを抽出するモーグルの謎に全く魅力を感じる事が出来ず、後は蓼科兄妹を殺害したのは誰なのか、という興味のみで読み進めた。その黒幕にしても犯行のカモフラージュの仕方がとても科学者のものとは思えない稚拙さで落胆した。しかし値段分は楽しめたのでこの点数。

No.10 4点 りらっくま
(2014/03/30 23:27登録)
①スズランのもう一つの釜飯の駅弁はどうなったのかな?幻がたべ
 ちゃった?
②あのセキュリティの厳重な病院内での犯人の絞り込みで、簡単に 水上が犯人だってわかりそうだけどな。だって静脈認証で入れる
 人物って警備員と水上と神楽だけだったはず。

手抜き作品です。駄作。


No.9 5点 測量ボ-イ
(2013/04/14 09:50登録)
妻が図書館で借りた本の回し読みです。
出来はそのものは悪くはないんですけどね・・・
結構社会派っぽい内容なのに、SFっぽい描写もあったり
して何かチグハグなのかな。そんな印象です。
でもこの人気作家の作品なのに、世間の評判良くないです
ね。そっちの方が以外です。

No.8 5点 蟷螂の斧
(2013/04/02 14:13登録)
ありそうで、実際は不可能?という近未来(SF)的設定。2013.3映画化されたので拝読。監視システムなど、ハリウッド映画によくあるような感じでしたね。ストーリー自体は楽しめましたが、全体にアッサリしていて深みがないのかな~。まあ、多重人格がオチでなく、ホッとしたというところです。

No.7 5点 ayulifeman
(2012/04/30 15:23登録)
DNA情報を犯罪捜査の中心に据えるとどんな問題あり、小悪党はそれをどう利用しようとするのか?
多重人格や麻薬的電気刺激装置などの問題が絡み合い展開する物語。
登場人物がそんなに魅力的ではなかったがやはり楽しい読書になりました。
もう少しスパッと切れ味のいい作品にもできたと思う。

No.6 4点 江守森江
(2011/02/09 00:52登録)
所得格差拡大に不景気も相俟って図書館利用で新刊購入しない人々(私も当然含む)が急増した昨今、図書館予約に出遅れた「白銀ジャック」(購入意欲は無)しかも、いきなり文庫だから文庫化での新規予約という奥の手まで使えず、二年近くは読めないだろう。
そんな折り、昨年やや出遅れ程度で予約した本書と先日発売で発売日予約に成功した「あの頃の誰か」が借りられた。
正直な話、ガリレオ・シリーズの長編と加賀シリーズだけしか(作品の方向性も含めて)期待出来ない作家になってしまった。
この作品など読みやすく楽チンなのだから私の読書方針にピッタリなハズなのだが、それが逆にやっつけ仕事感の増幅を齎してしまう。
半分程度読んで先が読める作品でもネームバリューでベストセラーになるのは如何なものだろう。
図書館利用で、出版不況に貢献している身だが、いっそのこと電子書籍化が加速すれば良いと、作品とは関係ない感想が先立ってしまった。
※余談
電子書籍化が完全普及したら地域の図書館はどうなるのだろうか?(地方予算の都合で大半が閉館すると予想)
完全電子書籍化時代が到来したら私は、ミステリはドラマ視聴のみに移行し書籍離れするつもりで今から対応している。

No.5 5点 白い風
(2011/02/08 23:32登録)
作品自体は読み易かったけど、ストーリーも先読みしやすかった(爆)
犯人も謎の少女スズランの正体も比較的前半で何となく分っちゃった。
それに主人公神楽の逃亡生活も他の作品に比べ緊張感も無かったな。
テーマ自体もそんなに斬新とも思えなかったので、この評価。

No.4 5点 VOLKS
(2011/01/05 14:50登録)
読みやすさは「さすが東野作品」ではあるが、あまりのめり込めなかったのも事実。
近未来的な描写は、まぁそれなりに面白く読むことが出来ていたが、ラストになって犯人の殺人の意図や経緯が雑でがっかりした。

No.3 4点 kanamori
(2010/10/16 20:37登録)
登録されたDNAデータによって殺人捜査が容易になった近未来を舞台にしたサスペンス小説。
主人公である男性研究員の特異な病症など、扱われているネタがいずれも陳腐で、中盤以降のあまり意味のないような逃亡劇も単なる水増しのためのエピソードとしか思えなかった。
人気作家ゆえのやっつけ仕事という感じを受けました。

No.2 6点 いけお
(2010/09/02 04:47登録)
やはりプロットは上手いがミステリ的には普通。

No.1 3点 こう
(2010/07/14 23:50登録)
 近未来SFミステリといった印象の作品でした。相変わらず読みやすいですしおそらく売れると思いますが個人的には最近の東野作品とは嗜好が合わなくなってきました。
 神楽龍平の秘密は今では簡単に予想されるもので、プラチナデータの真相もいかにもありそうな内容で正直ほとんど予想通りでした。
 自分が楽しめてないだけで面白い作品なのかもしれませんが現時点では加賀シリーズだけが楽しみになってしまっているのが少々残念です。

15レコード表示中です 書評