レイトン・コートの謎 ロジャー・シェリンガム |
---|
作家 | アントニイ・バークリー |
---|---|
出版日 | 2002年09月 |
平均点 | 7.09点 |
書評数 | 11人 |
No.11 | 7点 | ボナンザ | |
(2024/10/19 21:15登録) ようやく読んだが、この時点でバークリーの特色がくっきり出ていることに驚き。牛に追いかけられるシーンなんかのお約束のユーモアも清涼剤。 |
No.10 | 7点 | いいちこ | |
(2024/05/05 17:13登録) 本作の直後に執筆した「毒入りチョコレート事件」において、多重解決ものとして結実した著者の信念、すなわち物的証拠といえども、さまざまな解釈が可能であり、人間心理の洞察こそが重要という考え方が強く投影している作品。 したがって、個々の手がかりに対する探偵の推理には鋭さが感じられるのだが、それが容易に決定打とはならず、試行錯誤を繰り返す過程が、平易な叙述と相まって実に読ませる。 作品全体を貫く、明るい、ユーモアに満ちた雰囲気にも好感がもてる。 明かされる真犯人は、登場人物が少なく、また与えられた手がかりから、現代の読者にとっては意外性が感じられないものの、執筆当時とすれば相当に衝撃的な設定であったろう。 犯行プロセスのフィージビリティに若干の苦しさを感じるものの、全体に好意的に評価できる佳作 |
No.9 | 7点 | みりん | |
(2024/04/15 16:59登録) こちらも面白かった。やや拍子抜けの密室をバチっと決めてくれていたら8点以上でした。 ロジャーとアレックの軽快な会話がずっと楽しいです。ホームズ、ポアロ、レーン(くらいしか知らない笑)の推理のもったいぶり具合にイラっとする私のような読者におすすめです(国内だとこういう系の探偵代表は御手洗か京極堂?) 最後に全て明かされた方がカタルシスは増大するので一長一短ではあります… 本作は最後の推理が最も衝撃的だったので、一長の方でしたね。 あと、単行本182ページあたりの『少なくともあの女は兄さんだって言ってたね』ってユーモア部分がよく分からなかった。 【ここからネタバレ】 誰も不幸にならないラストは素晴らしいですが、今後もこの2人のホームズワトソンコンビは継続してくれるのでしょうか。それを祈るばかりです。 |
No.8 | 7点 | 斎藤警部 | |
(2023/10/21 11:56登録) "ロジャーのぼうっとした支離滅裂な返事についての記録は残っていない。" ミステリ・デビュー作から新本格魂を見せつけるバークリー! 明るい皮肉とユーモア、素晴らしい! 本筋事件とは別に(?)もう一つの大きな謎が刺さっている構造は熱い。 人の言葉と自らの想像に振り回されるロジャー。滑稽なほど詰めの甘いロジャー。 半ばに挿入されるズッ転びエピソードも、しっかり犯人隠匿&微かな(?)ヒントに繋がっていたんだなあ。。 やたら明け透けなお喋りで、懲りずに何度も失敗する探偵役。 だが、だからこその、この真犯人設定。。。。 「時にはそういう、嫌になるほど月並みな考えは捨ててくれよ!」 最後に真相暴露がこれほど爽やかに描かれるのは。。在りがた過ぎて嬉し涙を誘うほど。 被害者に全く同情の余地が無い痛快さも、一方で或る登場人物の心に残す蟠(わだかま)りも、どちらも素晴らしい。 しかし、どいつもこいつもシラッとしやかって。。(笑) |
No.7 | 7点 | ミステリ初心者 | |
(2023/10/06 19:59登録) ネタバレをしています。 国書刊行会版を読みました。たしか、私が読んだ中では4作品目のバークリー作品です。 ロジャー・シェリンガムシリーズを中心に読んでおりますが、この探偵は割と感情を表に出す探偵で皮肉屋っぽくもあり正義感や友情に熱い良いキャラクターで、シリーズ全てで読みやすいです。ただ、本作は舞台の図や殺人現場の図がなく、少々ページが進みませんでしたw それでも、シェリンガムとアレックがコンビを組んで捜査をしだしてからはわりと苦にならなくなりました。 途中、謎の凶悪な巨漢のプリンスを追うシーンは面白かったですw あとがきにも書かれておりましたが、あのドタバタぶりはH・M卿を思い出しますね! 推理小説的部分について。 早い段階で殺人はすぐに起こります。自殺に見せかけた密室殺人なのでわくわくしましたが、密室自体はさほど面白くなかったですw 徐々に登場人物の秘密が明らかになっていくのですが、ほぼすべての人間に隠し事があり、読者が犯人を当てるのは難しいでしょうねw アリバイ検証もあまりされていないようですし。 一番魅力的なのは、やはりワトソン役としてシェリンガムの相棒を務めたアレックが犯人だった意外な犯人でしたね! 私は花壇の足跡が消されたタイミングと、バーバラの突然の婚約解消のフラグを回収していない点から、わずかながらにアレックを疑いましたw ジェファスンの告白によって犯人候補が居なくなったことから、より疑いが強まったのですが、真相が明らかになった時はやっぱり驚いてしまいましたw 総じて、バークリーらしい明るくて読後感のよい良い作品でした。密室トリックが小粒なことや、衝撃の犯人の役柄などは現在では珍しくないことはありますが、それを差し引いてもよい作品と感じました。 今、他の方の書評を拝見しましたが、この作品ってバークリーのデビュー作なのですね! なんだかベテラン作家の往年の作品のように感じましたw |
No.6 | 8点 | ことは | |
(2023/09/10 03:07登録) 創元推理文庫から文庫版が発売された。 (喜ばしい。帯には「最上階の殺人」も、新訳で文庫発売予定とある。ますます喜ばしい) 単行本発売時に読んだが、超有名作の「あれ」に先駆けて「これ」が書かれていることに驚いた。1984年刊の創元推理文庫「ピカデリーの殺人」の解説で、「今となっては翻訳される可能性は少ないが」と書いているが、いやいや、「”すぐに訳すべし”と激推しすべき作品でしょ!」と思ったものだ。本作を未読の謎解きミステリファンは、今からでも読むべし。 本作を読もうという人が「あれ」を知らないということは考えられないので、「わかるかな?」という心配も、いらないしね。 でも、「その”あれ”を知ってたら、”ああ、あれか”と、なるんじゃないの?」と思われては困る。それ以外にも十分読みどころがある。 例えば、「毒入りチョコレート事件」の多重解決に先駆けるような、仮説の構築と崩壊もあるし、ユーモア小説のような喜劇的展開は、今でも十分楽しめる。その中でも必見なのは、捜査の過程でシェリンガムのある仮説が崩されるところ。謎解きの試行錯誤の課程で、こんなに笑ったことはない。絶対笑うよね? 全体のユーモアが、後期のバークリーとは違い、ブラックなシニカルさが全くないのもいい。ブラックな味も好きだが、この作品には、真っ白とも言える、この明るいユーモアのほうがぴったりだ。 |
No.5 | 7点 | 人並由真 | |
(2022/02/10 15:19登録) (ネタバレなし) 複数の企業を経営する資産家で60歳代の独身男ヴィクター・スタンワースは、亡き弟の未亡人で名家の出自である義妹レディ・シンシアとともに、屋敷「レイトン・コート」に暮らしていた。陽気な社交家のスタンワースは屋敷にほぼ常時、宿泊客を招き、現在も友人やさらにその関係者など、複数の人物が滞在していた。が、そんななかで、屋敷のなかで密室内の自殺と思われる事態が発生する。居合わせた青年作家ロジャー・シェリンガムは、年下の友人アレグザンダー(アレック)・グリアスンを相手に、今回の自殺が実は殺人ではないかとの推理を展開し、アマチュア探偵としての活動を続けるが。 1925年の英国作品。 バークリーの長編デビュー作で、ロジャー・シェリンガムシリーズの第一弾。 『チョコレート』『銃声』を別にして、評者が長らく手付かずで放っておいたシェリンガムもの、面白そうな趣向らしいウワサのものも結構あるので、そろそろマジメに読んでいこうと決意、どうせなら残りの未読の作品はなるべく順番通りに消化していきたいとも思う。 そういうわけでまずはこの第一弾だが、日本での紹介が遅れたことから地味めな作品じゃないの? さらにバークリーの作風や、英国ミステリ黄金時代の名探偵として、いささかメタ的な方向性を託されたシェリンガムのキャラクター(というか文芸設定)ゆえ、なんとなくやることの先が見えるような……という気分で読み進める。 それゆえラスト(事件の真相)は実は……(中略)という種類のものを予想していたが、いや、こちらの思惑を超えたサプライズ! フツーにしっかり面白かった。そーいや、その手(こちらが読みながら予想&推察していた趣向)は、その(中略)前に同じ英国の作家がやっていたな……。 なんにせよ、さすがはバークリー、いきなり初手からなかなか、という感じの一作。大ネタを機軸に、手数の多さで実に楽しめた(さすがに一世紀近く前の作品だけあって、読みながら見え見えなアイデアもないわけではないけど)。 このあとの諸作も楽しみです(嬉)。 |
No.4 | 8点 | 弾十六 | |
(2019/01/20 01:52登録) 1925年出版。国書刊行会の単行本で読みました。 献辞で「探偵小説好きのお父さん」にフェアプレイを高らかに宣誓する作者。超人ではなく、ごく普通の人間を探偵役にした、と自慢げです。当時作者32歳。なぜフェアプレイにこだわった作品が英米でほぼ同時に登場したのか。(米国代表はヴァンダイン) 本作は楽しげな雰囲気の中、アマチュアが伸び伸びと捜査出来る状況作りが上手、シロウト探偵らしい迷走ぶりの小ネタも充実、そして大ネタには非常に満足。爽やかな読後感で、文句のつけようが無いですね。 以下トリビア。原文参照出来ませんでした。 p17 ホームズとワトスン: 探偵の代名詞はやはりこのコンビ。p75あたりには作者の名探偵論が簡潔にまとめられています。 p17 馬券屋には電報が確実: 電話が普及する以前の世界です。 p21 年に千ポンド: 消費者物価指数基準1925/2019で60.36倍、現在価値846万円。 p23 半クラウンの葉巻: 現在価値1060円。 p33 小さなリボルバー: 日本版のカヴァー絵は大型リボルバー45口径コルトSAA(ただしエジェクターチューブ欠)なので全然違います。多分作者のつもりではブルドッグリボルバーみたいな短銃身の拳銃だと思います。残念ながら銃の種類がわかるような具体的な記述はありません。 p127 四千ポンド以上: 現在価値3394万円。 p211 香水…好きなもの… 一瓶1ギニー、(安物)…一瓶11ペンス、普段使っているもの… 一瓶9シリング6ペンス: それぞれ現在価値8910円、390円、4031円。 p213 舞台では執事の名前はいつもグレイヴス: そーゆーもんですか。 p256 二百五十ポンド: 現在価値212万円。 p262 ユダヤ人… 彼がこの世で最も忌み嫌っているもの: シェリンガム(バークリーも同じ?) お前もか。 (2019-10-19追記) ミルン『赤い館の秘密』を読んで、かなりの共通点がある作品だと思いました。(単行本版の解説の羽柴壮一さんも指摘しています。) 題名(館名+Mystery)、献辞、探偵の名前(GillinghamとSheringham)、殺人方法、現場がカントリーハウスの書斎、アマチュアがホームズとワトスンとなり試行錯誤して探偵する… ということはバークリーは意図的におちょくっている?となると「微笑ましい」献辞もナンチャッテなのか。(むしろその方がバークリーらしい。) そして決着のつけ方もパロディと考えれば、旧弊なモラルに砂をかけるような底意地の悪さを感じます… バークリーだからあり得る、と思ってしまいました。 |
No.3 | 8点 | nukkam | |
(2016/05/08 04:09登録) (ネタバレなしです) 本格派黄金時代に活躍した作家の中でもひときわ異彩を放っていた英国のアントニイ・バークリー(1893-1971)の1925年発表のデビュー作です。ほぼ同時代に書かれたA・A・ミルンの「赤い館の秘密」(1922年)と似たような展開の物語で、読み比べてみるのも一興かと思います。作風はかなりの違いがあり、ミルンの作品では探偵コンビが協力し合っていますが、本書では時に消極的だったり非協力的だったりと何とも心もとないのが印象的です。密室トリックは大したことありませんがこの時代の作品としては非常に大胆なプロットで、技巧派ぶりを早くも発揮しています。 |
No.2 | 6点 | 青い車 | |
(2016/02/20 15:48登録) 銃弾や書類など、ストレートなミステリーらしい手がかりは見られますが、密室の脱力ものの解決にはがっかりでした。しかし、そこはバークリー、ミステリーの骨格をしながらミステリーを皮肉ったものとして見れば傑作といえるでしょう。お粗末なトリックは言い換えれば非常に現実的なものでもあります。そして、当時としては斬新だったであろう犯人の設定と、探偵シェリンガムのモラルを疑う対処が何と言っても見どころです。 |
No.1 | 6点 | kanamori | |
(2010/05/01 23:54登録) 迷探偵ロジャー・シェリンガムの初登場作品。 いちおう密室殺人や遺書の偽造トリックなど、ミステリ趣向を凝らしていますが、アンチ名探偵ものを志向しているのはこのデビュー作も変わりません。ワトソン役に指名した友人アレックと悉く意見を対立させているのは、それを際立たせるとともに意外な犯人の設定への伏線でもあるのでしょう。 のちの作品と比べればメタ度は控えめな分、オーソドックスな本格読みにも満足がいく出来だと思います。 |