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ミステリの祭典

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まさむねさんの登録情報
平均点:5.86点 書評数:1195件

プロフィール| 書評

No.995 5点 新米ベルガールの事件録 チェックインは謎のにおい
岡崎琢磨
(2022/03/11 22:23登録)
 タイトル&表紙から、新米ベルガールがホテルで起きる事件や謎を解きまくるのかと、勝手に想像していたのですが、むしろ事件を惹起する方でしたね。
 それはそれで悪くないし、軽快で読み口もよかったのですが、連作短編中のいくつかは、ちょっと「分かりやす過ぎた」かも。伏線の記述が明確なので、その確認のために読み進めた感じもあります。一方で「こう想定させておくことが真の狙いで、その斜め上をいく反転が待ち受けているのかも」とも思わせられたから(実際に斜め上の反転はなかったけど)、まぁ楽しめたと言えるかな。


No.994 6点 香子の夢−コンパニオン殺人事件
東野圭吾
(2022/03/04 23:36登録)
 昭和63年出版の作者初期のノンシリーズ長編。バブル全盛期のコンパニオンが主人公を務める物語を、コロナ禍の令和時代に読む感慨深さ。いや、どちらの時代も「空虚感」という意味では共通しているのかも。
 内容として特筆すべき点があるかと問われると辛いのだけれども、逆に?基本に忠実でリーダビリティも高く、個人的には好みのタイプでしたね。ちなみに「カセットテープ」って、今の中高生にとっては「何それ?」って感じなのでしょうねぇ。様々に懐かしさを感じる作品だったな。


No.993 5点 もっとミステリなふたり
太田忠司
(2022/02/27 10:48登録)
 京堂夫妻シリーズ第2弾。前作同様にスラスラ読みやすかったのですが、解決に直行しすぎ(解決までの「間」が短すぎ)といった印象も。もう少し転がしてもいいような気がします。それと、「それは新太郎クンの推理云々の前の時点で、警察が調べておくべきではないのか」という点も気になったかな。忙しい合間を縫って読む分には、悪くなかったです。


No.992 6点 かまいたち
宮部みゆき
(2022/02/20 22:28登録)
 宮部さんの時代モノ。安定感がありますねぇ。
 表題作「かまいたち」がベスト。サスペンスな流れの中で、確かに存在する(良い意味での)予定調和感の心地よさ。続く「師走の客」。落語的な面白さで、尺も丁度良い。
 後半2作品には「お初さん」が登場。突然の超能力にちょっと驚きましたね。「迷い鳩」は楽しく読ませていただいたのですが、「騒ぐ刀」はもはやSFに分類すべきで、ちょっと読みたいものと違った印象。


No.991 5点 にらみ
長岡弘樹
(2022/02/16 22:30登録)
 ノンシリーズの短編集。「いつもと違う何かを織り込みたい」という、作者の狙いは伝わってきます。でも、ちょっと無理矢理すぎないか、いくら何でもこじつけすぎだろう、といった印象は否めないかな。ネタと登場人物の心情の結びつけ方が強引すぎるのかもしれない。次々とページをめくらされた点は良かったですがね。ベストは、ある意味でオーソドックスな感じがいい、表題作「にらみ」か。


No.990 6点 ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人
東野圭吾
(2022/02/12 23:20登録)
 人望のある元国語教師が自宅で殺害された。警察から捜査状況を聞き出せない中で、娘と元マジシャンの弟(娘からしたら叔父)が独自の捜査を進める。犯人は教え子の中にいるのか。教え子たちの行動にも謎が多く…という展開。
 本格度云々とは関係なく、グイグイと読まされましたねぇ。複数のサイドストーリーも効いています。作者のストーリーテラーぶりを堪能できました。ちなみに、真相自体は何とも微妙で、色々と可哀想。


No.989 6点 優しい死神の飼い方
知念実希人
(2022/02/05 22:09登録)
 ゴールデンレトリーバーに姿を変えた死神が死を控えた人間の未練を次々に解消する連作短編なのかなと思ったら、後半はサスペンス的な盛り上がりもあって楽しませてくれました。いかにも、と言ってはダメなのかもしれませんが、様々な工夫にも好印象。売れるでしょうねぇ。レオ(ゴールデンレトリーバー)と菜穂、さらに患者たちの関係性がイイ。切ないのだけれども、何とも言えない清々しさと勇気をもらえましたね。


No.988 5点 悪いものが、来ませんように
芦沢央
(2022/01/23 20:10登録)
 私には珍しいことなのですが、仕掛けの一つには途中で気付いちゃいましたね。ちょっと不自然だったからかな。イヤミスではあるのですが、考えさせられる内容。両作者に失礼かもしれませんが、湊かなえさんを想起させる作品でした。


No.987 6点 はるか
宿野かほる
(2022/01/17 23:03登録)
 デビュー作「ルビンの壺が割れた」でヒットを放った覆面作者の第2作。グイグイと読まされた点は素直に評価したいのですが、ちょっと複雑な読後感でしたね。
 終盤までの「気にさせる」具合はなかなかで、様々な結末を想定しながら終盤に突入したものの、ラストでは中途半端な印象を抱きました。一方で、結局はそれでよかったのかな、という気持ちにもなっている辺りが、何とも複雑な読後感につながっています。すごく深いトコロを突いていると思うのだけれども、逆に浅くて薄っぺらい印象もなくはない。個人的には、優美さんが最も普遍的で力強く、かっこよかった。賢人さんは、賢い人ではない。よく分からない書評ですみません。総合的にこの採点で。


No.986 6点 ミステリなふたり
太田忠司
(2022/01/15 22:54登録)
 軽妙で読みやすい短編集。決して大掛りではなく、クイズレベルの短編も無くはないのだけれども、謎も一定魅力的だし、気楽に読めて良かったですね。京堂ご夫妻の雰囲気もいいな。


No.985 9点 兇人邸の殺人
今村昌弘
(2022/01/10 21:02登録)
 シリーズ第三弾。面白かったですねぇ。「屍人荘の殺人」以降、高水準の作品を確実に示してくれている作者に感謝したい。
 やはりクローズドサークルの作り上げ方が巧みですね。巨人の設定もポイントが高い。細かい点ではありますが、各登場人物の設定がスッと頭に入ってくる気配りも素晴らしい。中盤まではドキドキ、中盤以降は完全に作者の掌で転がされていました。真相も印象深いですし、全体として様々に考えられています。個人的には「屍人荘」以上の評価かも。続編も大いに期待します。


No.984 7点 毒を売る女
島田荘司
(2022/01/04 22:28登録)
 マイベスト短編は、やはり「糸ノコとジグザグ」。タイトルとともに、印象に残ります。島荘名作短編と評されることも頷けます。
 表題作のアクセル感、女性同士の心理的サスペンスも好きなのだけれども、巻き込まれ加害者となった方が可哀想すぎて、何かスッキリとしない感じもあったかな。
 「渇いた都市」は、清張作品かと思わせる設定だけれども、そこはやっぱり島荘。でも、清張であればどう捌いて、どのように幕を下ろすのか…と勝手に想像してしまいました。
 掌編を含む他の短編にも、島荘ワールドを感じることができましたね。


No.983 7点 あと十五秒で死ぬ
榊林銘
(2021/12/30 10:06登録)
 まずは、「あと十五秒で死ぬ」という縛りの中で4短編を揃えた意気込みを評価したいですね。しかも、各短編のシチュエーションはバラバラで、バラエティーに富んでいます。読んでいて楽しかった。達者な作家さんですね。
①十五秒
 ミステリーズ!新人賞の佳作受賞作。この設定自体が面白い。終盤の連続捻りには唸らせられました。
②このあと衝撃の結末が
 これも終盤の連続捻りが見事。15秒縛りと作中作形式の選択。巧い。
③不眠症
 この短編集の中では目立たないものの、作者の裾野は広いかも、と思わせられました。
④首が取れても死なない僕らの首無殺人事件
 作者名当てクイズを出されたら、私は迷わず「白井智之」と答えそう。特殊設定本格短編として秀逸。


No.982 6点 メルカトル悪人狩り
麻耶雄嵩
(2021/12/19 17:47登録)
 メルカトル鮎の魅力?を味わえる短編集(掌編も含む)。
 個人的なベストは、最も”らしい”作品である「メルカトル式捜査法」。独自すぎる論理をどう捉えるか、ということにはなるのでしょうが。それと、掌編「不要不急」も何気に好き。メルカトル鮎が言うからこその、社会派的なオチがいい。


No.981 5点 居酒屋「一服亭」の四季
東川篤哉
(2021/12/12 22:07登録)
 極端に人見知りなのに居酒屋の女将を務める「安楽椅子(あんらくよりこ)」が、日本酒片手に事件を解き明かす連作短編集。推理の舞台が居酒屋とはいえ、料理ネタで引っ張ろうとしない姿勢は嫌いではない。
 4短編とも死体の一部が切断されている猟奇的事件。でも、ソコは東川さんですから、陰鬱さがあるはずはない。探偵役の「いかにも」設定も含めて作者らしさを楽しみましょう。全体的に小粒だけれど「鯨岩の片脚死体」のホワイがベストか(現実的ではないけれどね)。
 探偵役の毒舌は作者の十八番ですが、本作のベストは「いいえッ、ぶちクソ間違ってますわッ」。和服姿の居酒屋の女将に叫んでいただきたい。


No.980 5点 文豪たちの怪しい宴
鯨統一郎
(2021/12/07 22:57登録)
 作者お得意の新解釈モノ。今回は歴史ではなく、文学作品ですね。夏目漱石「こころ」、太宰治「走れメロス」、宮沢賢治「銀河鉄道の夜」、芥川龍之介「藪の中」の4作品がテーマです。
 新たな解釈は確かに面白いのだけれども、いずれの短編にも何らかの「いちゃもん感」や「こじつけ感」を感じてしまいましたねぇ。それと、個人的には、宮田の「ものの言い方」に多少イラッときたりして。嗚呼、私のおじさん化が着実に進行しているのだなぁ、そして、私とこの作者さんとのフィット感はどうなのだろうかなと、あらためて考えさせられました。


No.979 5点 超短編!大どんでん返し
アンソロジー(出版社編)
(2021/11/28 20:55登録)
 30人の作家による掌編30連発。それぞれの作者らしさを感じましたが、出来栄えはマチマチ。
 好きな作品を掲載順に挙げれば、骨なし(田丸雅智)、親友交歓(法月綸太郎)、花火の夜に(呉勝浩)、阿蘭陀幽霊(柳広司)、電話が逃げていく(乙一)ですかね。1作品2000字程度なので、ちょっとした隙間に読めます。使い勝手?はいいかもしれません。


No.978 6点 間宵の母
歌野晶午
(2021/11/26 21:23登録)
 何の事前情報もなく手にしたのですが、いやはや、何とも言えない後味を残す作品でした。心が疲れている時に読まなくてよかった。
 連作短編の最終話における伏線回収(と言っていいのか?)は、ストーリー的に複雑な心境になりながらも、なるほどと思わせられた部分もありましたね。
 しかし、全体的には、作者が時折繰り出す、ブラック歌野色に染まっています。人を選ぶ作品ですね。


No.977 6点 ルビンの壺が割れた
宿野かほる
(2021/11/21 20:13登録)
 文庫の帯にあった「日本一の大どんでん返し」との評は、さすがに持ち上げ過ぎとは思いますが、終盤のたたみ掛け具合は良いですね。最後の一文も印象的。メールのやり取りのみで構成したことが、様々な面で効果を上げています。ほぼ一気読みでした。


No.976 6点 雨と短銃
伊吹亜門
(2021/11/20 13:10登録)
 デビュー作「刀と傘 明治京洛推理帖」が好印象でしたので、手にした次第です。
 薩摩藩と長州藩が協約を結ぼうとしていた、慶応元年の京都が舞台。前作(デビュー作)同様に架空の人物・鹿野師光が探偵役を務めます。前作の前日譚の位置づけですね。坂本龍馬や中岡慎太郎、桂小五郎、西郷吉之助(隆盛)に中村半次郎、土方歳三といった人物が、重要な役割をもって登場します。ココがポイント。
 ミステリとして目立った点はないのですが、歴史的な背景とともに読み込むべき作品であり、幕末好きな私としては、ワクワクしながら読ませていただきました。

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