まさむねさんの登録情報 | |
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平均点:5.87点 | 書評数:1227件 |
No.1027 | 5点 | 時計屋探偵の冒険 アリバイ崩し承ります2 大山誠一郎 |
(2022/09/28 21:52登録) テレビドラマ化された「アリバイ崩し承ります」の続編。死亡推定時刻が都合よすぎるだろうとか、こねくり回しすぎではとか、なぜ犯人はそこまでするのかとか、突っ込みたくなる部分はあるものの、その辺りを割り切って、アリバイクイズものといった感覚で読めば、楽しめると思います。サクサク読めるのもいい。 |
No.1026 | 6点 | 出版禁止 長江俊和 |
(2022/09/25 21:15登録) グイグイ読まされました。一方で、何かスッキリしない印象もあったかな。根本となる設定の一部に釈然としない所があるのですよねえ。敢えて多くは書かないですけど、私だけなのかなあ?それとも私の読み方が足りなかっただけなのかな。 |
No.1025 | 5点 | 隠花の飾り 松本清張 |
(2022/09/24 21:06登録) 昭和53年から54年にかけて、小説新潮に連載された11作品を収録した短編集。晩年期の作品集ですね。 テーマは女性と愛。私のセンスの問題もあろうかと思うのですが、平凡と評さざるを得ない短編も正直ありました。一方、いかにも清張といった短編もあって、そういう観点では読みごたえがあると言えるのかも。一定の齢を重ねて読むのがいいような気がしますね。 |
No.1024 | 6点 | ビブリア古書堂の事件手帖III ~扉子と虚ろな夢~ 三上延 |
(2022/09/20 23:36登録) 扉子シリーズも3作目。「扉子と虚ろな夢」との副タイトルも付されているのだけれども、メインは扉子の後輩に当たる「樋口恭一郎」か。いや、扉子の母・栞子なのか。否、祖母の智恵子が正解かもしれない。 その点は別としても、まぁ綺麗に纏めていますね。その纏め具合(綺麗さ加減)の好き嫌いはありそうだけれども。次作への繋ぎ(と思われる)も織り込んでいたので、シリーズ読者としては、次作も期待したいと思います。 |
No.1023 | 5点 | 化学探偵Mrキュリー8 喜多喜久 |
(2022/09/11 20:50登録) Mr.キュリーこと沖野准教授と、大学庶務課職員・七瀬舞衣のコンビのシリーズ8作目。今回の短編集は、「いかにも」という話ばかりで、とってつけ感も強く出過ぎていたかな。シリーズがここまで続いていることには、一定の敬意を表するものですが。 |
No.1022 | 7点 | 歪んだ朝 西村京太郎 |
(2022/09/10 10:19登録) デビュー作や新人賞受賞作など、作者初期の作品を収録した短編集。個人的には、作者の原点を感じられたので収穫大。 「歪んだ朝」:第2回オール讀物推理小説新人賞受賞作。山谷を舞台とした社会派小説で、口紅の謎が響く、好作品。水上勉は選評の中で「この作者のリアリズムには歌がある。文書もいい。」と記しています。現在に通じるテーマ性。 「黒の記憶」:第2回宝石賞候補作。入選は果たせなかったものの、作者にとっては活字化された初の小説(のはず)。結末には、ちょっと無理があるかな。 「蘇える過去」:想定の範囲内の流れではあるものの、「歪んだ朝」と同様に社会派小説としては好印象。 「夜の密戯」:実際の事件をモチーフにしたようで、推理の過程は悪くないけれど、中途半端な印象は拭えない。 「優しい脅迫者」:エラリー・クイーン編の「日本傑作推理12選」に選ばれた作品。転換が効果的かつ印象的。 |
No.1021 | 7点 | あやし~怪~ 宮部みゆき |
(2022/09/03 14:46登録) ホラーとも、怪奇小説とも、怪談とも言えるのだけれども、人情も絶妙に挟み込まれていて、市井の人々の人生を感じることができます。その辺りは流石に宮部さんといったところ。 陰湿ながらミステリとしての味付けもある「影牢」、怖いながら温かさも感じる「布団部屋」、人生の機微を感じずにはいられない「安達家の鬼」、カボチャが心に沁みる「女の首」、鬼とは何か「時雨鬼」あたりが印象的。 |
No.1020 | 5点 | 天使はモップを持って 近藤史恵 |
(2022/08/23 20:34登録) 連作短編集。女性視点でのお話が多く、好き嫌いは分かれそう。個人的には、若くお洒落な清掃人キリコと、社会人1年生の大介のキャラもよく、二人の会話も楽しめました。でも、ミステリとしては薄味か。 最終話「史上最悪のヒーロー」で、短編集として一応の区切りはついているのだけれど、何と続編もあるようですね。そのうち読んでみようかな。 |
No.1019 | 6点 | 元彼の遺言状 新川帆立 |
(2022/08/21 21:12登録) 「僕の全財産は、僕を殺した犯人に譲る」という、元彼の残した遺言状をめぐる物語。数百億円ともみられる遺産を勝ち取るべく、「犯人選考会」に代理出席する女性弁護士が主人公。つかみも良く、次々と展開される面白さはあります。色々なタイプの女性同士のやり取りや、主人公の心情の変化は、好き嫌いはありそうだけど、個人的には悪くはないかな。巧く組み立てられていると思います。 |
No.1018 | 7点 | 午後の脅迫者 西村京太郎 |
(2022/08/15 21:23登録) 「西村先生の短編集って、トラベル系しか読んだことがないのではないか」と気になってしまい、講談社文庫の新装版を手にした次第です。 9作品で構成。嗚呼、いいな。まずは表題作「午後の脅迫者」の鮮やかさ。ラストのセリフもグッとくる。「密告」の締めの一言もいいが、これは「二一:〇〇時に殺せ」も併せて警察小説としての妙味か。「美談崩れ」は横山秀夫を彷彿(その随分前の作品であることがすごい)。「柴田巡査の奇妙なアルバイト」のブラックさも印象的。「私は職業婦人」は、男女雇用機会均等法施行のずっと前の時代の作品であると考えると凄い。個人的には、ラストを飾るショートショート「マルチ商法」に唸った。最後の一言の切れ味が素晴らしい。 そうでもない短編もありつつも、総合的にこの採点で。西村短編は、もう少し読んでみようかな。 |
No.1017 | 7点 | 虚像のアラベスク 深水黎一郎 |
(2022/08/11 21:39登録) 中編2本で構成。 1作目「ドンキホーテ・アラベスク」。冒頭からバレエの専門用語の解説が山盛りで、結構辛いのですが、諦めずに読み切るのが吉。お話としては、まぁ普通。 2作目「グラン・パ・ド・ドゥ」。語り口から一定の想定はしていたのですが、その遥か上から一気に叩きつけられた感じ。この類の読書は久しぶりだぁ。何やら清々しいぞ。エピローグ「史上最低のホワイダニット」も含めて、私は好きです。 |
No.1016 | 5点 | うまたん ウマ探偵ルイスの大穴推理 東川篤哉 |
(2022/08/07 13:14登録) この間、様々なキャラクター(マイベストは「ゆるキャラ探偵」なのだけど)を登場させてきた作者。とうとう人間を超えて元競走馬(15歳・牡馬)を探偵役に据えてきました。関西馬だから関西弁というのは、ちょっとアレのような気がしますが、相棒が女子高生といった設定は作者らしいかな。 最終話の一捻りは嫌いじゃないのものの、ネタは総じて小粒。疑問に思うネタも無くはない。採点はこの辺りで。 |
No.1015 | 6点 | クスノキの番人 東野圭吾 |
(2022/08/02 22:27登録) 不思議なクスノキを巡る人間ドラマ。 次々とページをめくらされた辺りは、さすが東野さん。安心して読めるイイ話で、特段の不満がある訳ではないのですが、最後の方は少し書き急いでいる感じも受けたかな。皆の「その後」も気になったのだけれども、読者として欲張り過ぎかな。 |
No.1014 | 7点 | 幻月と探偵 伊吹亜門 |
(2022/07/25 22:02登録) 昭和初期の満州国を舞台とした作品。岸信介氏も登場します。衝撃的な事件があった今こそ読んでみようかと、手にした次第です。 探偵役・月寒三四郎のハードボイルドタッチの探偵譚としても楽しめたのですが、真髄はホワイダニットの部分。この時代の、この国(地域)だからこその物語。歴史の結末を知っている自分が言うのはおこがましいのですが、極寒の乾いた満州の風景とともに描かれる、儚い一時期の夢(と表現していいのか?)が印象的。今では語られることも少なくなった、当時の満州国に対して想いを巡らせていただいた点に感謝して1点加点。 |
No.1013 | 5点 | さよならに反する現象 乙一 |
(2022/07/23 22:45登録) 5編を収録した短編集。うーん、どうなのだろう。総じて中途半端な印象を受けました。 最も作者らしい設定の短編が「悠川さんは写りたい」。心霊写真を作ることが趣味の青年と交通事故で亡くなった女子大生のやり取りが、何かホッとします。でも尻切れトンボ感が否めず。「そしてクマになる」も嫌いじゃないのだけれど、もうワンパンチほしかった印象。 |
No.1012 | 6点 | シェルター 近藤史恵 |
(2022/07/18 22:38登録) 整体師シリーズ第3弾。 安定的に面白いのだけれども、1作目、2作目と比較すれば、多少下がるか。力先生と恵・歩姉妹、さらに小松崎のメインメンバーの関係性が固まってしまっているので、やむを得ない部分もあるとは思うのですが、真相を知って振り返ってみると怪しげな人物の置き方があざと過ぎて、何かうまく流された感じも受けます。 とはいえ、メインメンバーのキャラは魅力的。今後続編はないものか。 |
No.1011 | 7点 | 茨姫はたたかう 近藤史恵 |
(2022/07/11 23:26登録) 前作「カナリヤは眠れない」の読み心地の良さから、早速シリーズ続編も入手して読んでみました。 前作に引き続いて好印象。力先生をはじめ、登場人物たちの雰囲気が何とも好ましいのですよね。主人公の成長も好ましく、うまく言えないのだけれども、嬉しい気分で読み終えました。力先生のコトバも沁みる。このシリーズ、いいな。 |
No.1010 | 5点 | 寝台特急(ブルートレイン)八分停車 西村京太郎 |
(2022/07/09 16:16登録) 相当前に読んだはずなのですが、ほとんど記憶に残っていないので再読。 腎臓結石で入院した亀井刑事が、夜のレントゲン室から漏れる男女の会話を耳にします。寝台特急は八分間停まる。八分あれば人殺しもできる。今週の日曜日には必ず奴を殺す。 序盤から中盤まではグイグイと引っ張られました。中盤以降は、犯人が明らかなこともあって、ちょっと中だるみの印象もあったかな。ラストは、レントゲン室で自身の犯行を思わず叫んじゃうのかな?と思ったら、結構あっさりとした幕引き。亀井さんの石が早めに出てきてくれたことは良かったけどね。 ちなみに、有名な話では、あるのですが、作者の、文章は、読点が、多すぎて、とても、読みにくいですよね。 |
No.1009 | 6点 | 珈琲店タレーランの事件簿7 岡崎琢磨 |
(2022/07/03 23:08登録) 4つの短編と3つの掌編で構成されています。うち4短編については、全て実際の出来事を題材にしたとのこと。その方針のきっかけとなったらしい「ビブリオバトルの波乱」がベストかな。一方で、4短編ともに無理やり感が漂うような気がしましたね。実際の出来事を用いただけに、やむを得ない部分もあるのかな。 ちなみに、今回の美星バリスタは、一部の掌編を除いて、純粋に探偵役に徹しています。これはこれでいいかも。でも、美星バリスタはお客の話を盗み聞きし過ぎでは?それを言っちゃあ短編集にならないか。 |
No.1008 | 6点 | スクイッド荘の殺人 東川篤哉 |
(2022/06/30 21:19登録) 烏賊川市シリーズ13年ぶりの長編。鵜飼探偵&流平コンビ、さらに砂川警部&志木コンビ等々、とても懐かしい気分で読ませていただきました。その点は素直に嬉しかったですね。(朱美さんが顔を出す程度にしか登場しなかったのは少し残念だったけど。) 一方で、ミステリ的な側面についての積極的な評価はしにくい。端的に言えば、長く引っ張るだけのネタだったのだろうか、といったところ。伏線も含めて巧くまとめているし、スイスイと楽しく読ませてはいただいたので、全体として悪い印象ではないのですが、もうワンパンチほしかったかな。 ちなみに、「烏賊」の英訳が「スクイッド」らしいですね。烏賊押しの姿勢は嫌いじゃないです。 |