home

ミステリの祭典

login
まさむねさんの登録情報
平均点:5.88点 書評数:1268件

プロフィール| 書評

No.1068 5点 巨鳥の影
長岡弘樹
(2023/04/09 15:58登録)
 短編集。動物や昆虫などの「生物」を多く扱おうとしたのかな?各短編は短めで、サクサク読めます。
 評価としては、うむむ…といった感じ。専門知識を仕入れて安易に使ってないかとか、使うにしてもこじつけ感が目立つぞとか、伏線が正直過ぎはしないかとか…まぁ、他の短編集と同様の印象を抱いた次第。捻りがあって悪くない短編もあったのですがねぇ。
 ギリギリこの採点としますが、モチーフが初とかいうレベルではなくて、スパッとした作者の新たな一面も見てみたいところです。


No.1067 6点 パラダイス・ロスト
柳広司
(2023/04/08 23:14登録)
 シリーズ第3弾。前2作と比べて短編として小粒、という印象も無くはないですが、やっぱりこのシリーズは安定した面白さがあります。マイベストは、日本駐在の英国人記者が結城中佐の正体を追う「追跡」です。


No.1066 5点 古い腕時計 きのう逢えたら・・・
蘇部健一
(2023/04/01 17:12登録)
 1日前に遡る、タイムリープ系連作短編。ありがちな設定とはいえ、結末はマチマチなので、ページはめくらされます。でも、中途半端で薄っぺらい印象は否定できない。工夫は一定認めるのだけれど。
 作者のこういった系統の作品は以前にも読んだことがあるのだけれども、私としては、蘇部健一作品といえば、「六とん」系のいろんな意味でのハラハラ感?を味わう方が好きかな。


No.1065 5点 剣持麗子のワンナイト推理
新川帆立
(2023/03/30 22:28登録)
 シリーズ三作目にして初の連作短編。
 各々の短編において放りっぱなしの中途半端感が残り、さてさて、これが最終話で…と期待したものの、かなりモヤモヤした終わり方でした。続編を予定しているのかなぁ。いずれにしても中途半端な印象。サクサク読めたのは良かったのだけれど。
 ちなみに、剣持さん徹夜しすぎ。私は毎日7時間眠りたい人間なので、絶対に真似できない。「眠いだろうなぁ」とか「翌日大丈夫?」とか、こちらまで体が辛くなってきた。


No.1064 8点 ずうのめ人形
澤村伊智
(2023/03/26 20:20登録)
 ホラーながらミステリとしても面白いという、巷の評判どおり。やられたなぁ。前作「ぼぎわんが、来る」もよかったのですが、ミステリとしての側面では本作の方が上位。どんどん近づいてくる怖さもあります。個人的にホラーは得意ではないのだけれど、この作家さんの作品はもう少し読んでみようかな。


No.1063 5点 夜が待っている
西村京太郎
(2023/03/21 21:50登録)
 昭和39年から翌年にかけて発表された6作品を収録した短編集。「天使の傷痕」で江戸川乱歩賞を受賞したのが昭和40年ですので、作者初期の筆致に興味のある方はどうぞ。ちなみに、ミステリ度は低いです。また、この頃からすでに読点が多すぎて読みにくいです。何とかならないものか、とは思いました。
①女をさがせ:元プロボクサーが真相を探るハードボイルド・タッチ。平板か。
②夜が待っている:これもハードボイルド・タッチ。殺された恋人の復讐譚だが、平板。
③赤いハトが死んだ:昭和14年の上海が舞台。暗殺任務を負った女性の運命は。
④愛の詩集:十和田湖が舞台で旅情もある作品。しみじみ。
⑤死の予告:予知夢の能力のある青年の苦悩。
⑥夜の秘密:「天使の傷痕」に通じる社会派作品。


No.1062 5点 救済 SAVE
長岡弘樹
(2023/03/18 21:55登録)
 ノンシリーズの短編集。文庫化に際して改題されています。
 6短編が収録されていて、いずれも誰かを救う物語。それはいいのだけれど、どうにも回りくどいというか、「そこまでやらないでしょ」とか、違和感のある行動が多いのですよね。ネタを使いたさすぎというか、何というか。まぁ、作者らしいと言えばそうなのかもしれないけど。
 ベストは、そういった作品が多い中でストレートに読了できて沁みた「空目虫」か。


No.1061 6点 中野のお父さんは謎を解くか
北村薫
(2023/03/13 23:29登録)
 シリーズ第2弾。文学ミステリとでもいうべき短編が中心ですが、その中でも「水源地はどこか」がピカイチ。
 松本清張の短編集「隠花の飾り」に収録されている「再春」が発端。この作品は自分も既読で記憶にも残っているのですが、その根底に作者自身の過去の盗用疑惑があったとは知りませんでした。時を経て、その疑惑を見事に物語に仕立て上げた清張の力にも感嘆。さらに、それこそ全体の「水源地」を探ろうとする推理(調査?)の結果が、これまたお見事。
 この短編だけで評価すれば8点。でも、収録短編ごとに個人的評価はマチマチなので、総合的にこの採点で。


No.1060 7点 逆転美人
藤崎翔
(2023/03/07 21:52登録)
 採点も含めて書評が難しい作品。余計な事前知識なく、素直に読み進めた方が楽しめる作品であることは間違いないでしょう。

【以下、余計な事前知識となる可能性があるのでご注意ください】
 肝となる点については、確かに先例というべき複数の作品が思い浮かびますし、「史上初の伝説級のトリック」なのかと問われれば、消極的な評価。一方で、ソレを施した必要性をストーリーとして巧く結びつけた点については評価したいと思います。一捻りした後の肝突入、という展開も嫌いじゃない。こういった系統を読むのも久方ぶりで、刺激に?なりました。評価は分かれると思いますが、記憶には残りそうな作品です。


No.1059 8点 仕掛島
東川篤哉
(2023/03/02 22:23登録)
 ド直球の本格作品と言ってよいと思いますし、愛すべきバカミス系でもあります。斬新なトリックが…という訳ではないものの、過去の事件との関係も含めてしっかりと練られていて、最後まで楽しく読ませていただきました。新鮮味というよりも、安定感で勝負といったところか。個人的には、結構好きなタイプの作品。
 ちなみに、ユーモア度については、作者の他作品と比べれば低めかも。でも、内容的にもこの辺りが丁度いいような気がしますね。読み心地は大変に良かったです。


No.1058 5点 化学探偵Mrキュリー9
喜多喜久
(2023/02/23 23:29登録)
 シリーズ9作目。続いてますねぇ。
 大学庶務課職員・七瀬舞衣とMr.キュリーこと沖野准教授のコンビも、2年4ヵ月という設定らしい。二人の雰囲気はもとより、七瀬の社会人としての成長が垣間見えて微笑ましい。
 ミステリとしては総じて薄味ながら、三話目の「化学探偵とフィクションの罠」はちょっとした捻りもあって良かったかな。


No.1057 5点 珈琲店タレーランの事件簿8
岡崎琢磨
(2023/02/13 23:37登録)
 京都市内で新たなコーヒーの飲み比べイベントが開催されるとのことで、珈琲店「タレーラン」にも出店依頼が。過去の関西バリスタ大会での事件も頭をよぎる中、2日連続で妨害事件が発生して…という展開。
 ミステリとしては薄味。シリーズものとして捉えたとしても、バリスタ兼店長の切間美星とアオヤマの関係を含めて、どうにも面倒な人たちが揃っているなぁ…という印象。
 このシリーズも10周年とのことで、新展開を期待したのだけれども、結果としては少し残念。読み心地は悪くなかったのですが。


No.1056 7点 私の頭が正常であったなら
山白朝子
(2023/02/10 21:12登録)
 このサイトでの評判が良かったことから手にしてみたのですが、読んで正解でした。主人公の多くは大切な何かを失った方でしたが、救いのようなものも感じることができて、結構沁みましたね。マイベストは「首なし鶏、夜をゆく」ですが、他の短編もイイです。


No.1055 5点 いけないII
道尾秀介
(2023/02/04 19:13登録)
 連作短編。「その写真を見たとき、物語は一変する」という謳い文句で、各短編終了後に写真が示される構成。直ぐには気付かなくても、その後の短編を読み進めていくうちに、真相に気付けるような配慮はなされています。
 作品の趣旨はよくわかるし、嫌いではないのだけれども、正直、写真を見せられた時の驚きが希薄というか、個人的にはカタルシスが得られなかったです…。私の読み方が悪いのかもしれませんが…。
 好き嫌いの評価は分かれるような気がします。あまりにも理不尽な哀しみを背負う方が多いのも、個人的には辛かった。


No.1054 7点 名探偵のいけにえ 人民教会殺人事件
白井智之
(2023/01/29 20:52登録)
 作者のこれまでの特徴であるエログロは、ほぼ封印(でも、決して「嘔吐物」などとは表記せず、「げぼ」で通すところは作者の拘り?でしょうか)。封印しながらのこの展開&結末は、素直に素晴らしいと思います。カルト宗教を舞台とした効果が絶大、というか、だからこその舞台設定であって感心しました。そもそも、実際の事件をモチーフにしたこと自体が効果的。
 無駄のない巧さに感心しつつ、一方で何だろう、ロジックとは違う面でもの悲しさを感じたりもしたので、7~8点の気持ちの中で、この採点とさせていただきます。


No.1053 7点 廃遊園地の殺人
斜線堂有紀
(2023/01/22 19:49登録)
 プレオープンの際の銃乱射事件により廃園に追い込まれた遊園地「イリュジオンランド」を舞台にした、ド直球の本格作品。廃園後20年を経て招待されたメンバーの顔触れからして、堪らない王道の薫り(?)が漂ってきます。終盤になって、自分の中で何やらごちゃごちゃしてしまった面はあるのですが(まぁ私のせいなのでしょうが)、よく考えられた作品だと思います。廃遊園地という舞台設定も好印象で、優等生な本格パズラー。
 ちなみに、冒頭シーンの表記についてはsophiaさんと全く同じ意見です。その件に関する真相判明後、即「あれ?」と読み返し、「うーむ」と首を捻った次第であります。


No.1052 7点 コージーボーイズ、あるいは消えた居酒屋の謎
笛吹太郎
(2023/01/15 18:27登録)
 荻窪のカフェ「アンブル」で月に一度開催される「コージーボーイズの集い」。それは、コージーミステリ好きな出版関係者が、お茶とケーキを囲んでゆるゆるとミステリ談義を行う催し。メンバーやゲストから謎が持ち込まれ、皆で推理合戦。メンバーの推理が行き詰まったところでカフェのマスターが…という展開の短編集。
 「コージーミステリとは何か」と明確に説明できる知識は自分にはないものの、この作品がその範疇のど真ん中で、かつ良質であろうことは理解できます。ユーモアもあって極めて読みやすく、終盤にアッと言わせる手腕は素直に素晴らしい。重厚な本格作品や派手なエンタメ作品も好きなのだけれど、単品で唸らせるこういった作品集もやっぱりイイ。軽みの中の奥行きの妙。
 マイベストは、昨夜自分が行った居酒屋(酔いすぎて覚えていない)を探す表題作か。アレルギーの謎も好きなタイプだけど、途中で気付いてしまう方もいらっしゃるかも。


No.1051 7点 マスカレード・ゲーム
東野圭吾
(2023/01/10 21:19登録)
 ホテル・コルテシア東京を舞台としたシリーズ第4弾。警部となった新田浩介は、またまたホテルマンを装い、潜入捜査を開始します。ロサンゼルスから呼び寄せられた山岸尚美とのコンビも復活。
 まぁ、巧い。論理的に犯人を突き止めるという構成ではないため、好き嫌いはあろうかと思うのですが、物語を紡ぐ作者の力量は流石で、次々にページをめくらされました。最後の最後まで楽しめましたね。
 シリーズを通じての新田&山岸の人間的な成熟も好ましく読んだのですが、さてさてこのシリーズの今後は?


No.1050 6点 探偵少女アリサの事件簿 さらば南武線
東川篤哉
(2023/01/08 21:22登録)
 名探偵として世界に名をはせる母と、国内では有名な探偵らしい父を持つ、10歳の美少女・有紗(アリサ)。多忙な両親不在の際に、アリサの子守役を依頼される便利屋、31歳の橘良太。この2人のコンビで溝の口周辺の事件を解決していく連作短編集の第3弾。そしてシリーズ完結編。
 4短編を収録。いずれも本格ミステリとしての根幹は守っています。でも出来栄えはマチマチ。個人的には、2話目の「名探偵、金庫破りの謎に挑む」に好感。
 アリサの両親も含めて拡張させやすい設定だろうなぁと思っていたし、読み心地もよかったので、この作品がシリーズ最終巻となったことは正直残念。このシリーズは「10歳のアリサの1年間」を描いたともいえるので、何らかの形で「その後」を読んでみたいものですが、無理なのかなぁ。


No.1049 6点 断罪のネバーモア
市川憂人
(2023/01/02 21:55登録)
 時間軸を現在(または近未来)に置きつつ、「民営化された警察」を描くあたりが、まずはこの作家さんらしいところ。最終話までの各短編パートも悪くはないのだけれども、やっぱり最終話の展開が面白かったですね(3年ほど前の某ベストセラーを思い出したりもしましたけど)。ロジカルな面と警察小説的な面が上手く融合していると思いますね。
 一方で、最終盤で周りが皆で「主人公推し」になる展開って、昔の少年漫画を無理やり読まされたような印象もあって、その分採点はちょっとマイナスしておきます。

1268中の書評を表示しています 201 - 220