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ミステリの祭典

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歪んだ朝

作家 西村京太郎
出版日2001年05月
平均点6.33点
書評数3人

No.3 7点 まさむね
(2022/09/10 10:19登録)
 デビュー作や新人賞受賞作など、作者初期の作品を収録した短編集。個人的には、作者の原点を感じられたので収穫大。
「歪んだ朝」:第2回オール讀物推理小説新人賞受賞作。山谷を舞台とした社会派小説で、口紅の謎が響く、好作品。水上勉は選評の中で「この作者のリアリズムには歌がある。文書もいい。」と記しています。現在に通じるテーマ性。
「黒の記憶」:第2回宝石賞候補作。入選は果たせなかったものの、作者にとっては活字化された初の小説(のはず)。結末には、ちょっと無理があるかな。
「蘇える過去」:想定の範囲内の流れではあるものの、「歪んだ朝」と同様に社会派小説としては好印象。
「夜の密戯」:実際の事件をモチーフにしたようで、推理の過程は悪くないけれど、中途半端な印象は拭えない。
「優しい脅迫者」:エラリー・クイーン編の「日本傑作推理12選」に選ばれた作品。転換が効果的かつ印象的。

No.2 6点 斎藤警部
(2016/04/19 01:08登録)
第一長篇「四つの終止符」より更に前、最初期の隠れた名短篇である表題作は、社会的テーマをミステリ興味そのもので染め上げており秀逸。叙情性が強く、それなりの文学的感慨もある。

歪んだ朝/黒の記憶/蘇える過去/夜の密戯/優しい脅迫者
(角川文庫)

表題(作)のインパクトの割にバラけた雰囲気の統一感無き作品集だが、悪くはない。
ドタバタサスペンスからちょっと感動の終結に至る「優しい脅迫者」は(締まりが甘く、さほど出来が良いとは言えないが何故か)忘れ難き味わい。 読ませるデビュー作「黒の記憶」が収められているのも特筆事項。

No.1 6点 kanamori
(2016/03/19 22:11登録)
初期中短編集。昭和36年から48年に発表された5作品が収録されています(角川文庫版)。長編『四つの終止符』の系統に連なるような社会派寄りの2作品が個人的にマルでした。

表題作「歪んだ朝」は、扼殺死体で発見された少女の事件を、浅草署の刑事が追う捜査小説。山谷ドヤ街という社会の底辺で生きる人々を背景にした社会派の要素と、口紅を塗った少女の行為の謎とが結びつくプロットが秀逸な力作中編。やるせない気持ちにさせる哀切なラストの数行が非常に印象的です。
「蘇える過去」は、「歪んだ朝」同様に社会派の要素が前面にでた作品。週刊誌の記者を主人公にした本作のテーマは、米澤穂信の太刀洗万智シリーズとかなり重なる部分がありますね。
「黒い記憶」は、宝石誌の懸賞に応募したデビュー短編で、誘拐事件によって精神に障害を受けた少年の奇矯な行動を精神分析で謎解く話。しかし、この真相は素人目に見ても説得力がないように思う。
「優しい脅迫者」は、エラリー・クイーン編のアンソロジー「日本傑作推理12選」の第1集に採られ、米国・フランスでも翻訳出版されたという西村京太郎の海外デビュー作w ヘンリー・スレッサー風のツイストが効いていますが、脅迫者の職業が明らかになった時点で、オチが見えてしまうのではという気もします。
「夜の密戯」は、マンションの自室で女性が殺された事件を巡って状況証拠から推論を重ねていく話で、習作もしくは実験作のように思える作品。

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