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ミステリの祭典

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元彼の遺言状
剣持麗子シリーズ

作家 新川帆立
出版日2021年01月
平均点5.50点
書評数8人

No.8 6点 mozart
(2023/08/05 15:41登録)
このミス大賞受賞作品とのこと、選評にもあるように主人公のキャラがとても立っていてなかなか魅力的でした。伏線もしっかり回収されていてミステリーとしてもうまくできていると思いました。遺産がらみのストーリーではあるものの(かつてのこの手の作品に多く見られた)ドロドロした「昭和臭」がしないのも好感が持てました。弁護士作家にありがちな小難しい法律関連の表現が前面に押し出され(てある意味煙に巻かれ)ることもなかったし。

No.7 6点 まさむね
(2022/08/21 21:12登録)
 「僕の全財産は、僕を殺した犯人に譲る」という、元彼の残した遺言状をめぐる物語。数百億円ともみられる遺産を勝ち取るべく、「犯人選考会」に代理出席する女性弁護士が主人公。つかみも良く、次々と展開される面白さはあります。色々なタイプの女性同士のやり取りや、主人公の心情の変化は、好き嫌いはありそうだけど、個人的には悪くはないかな。巧く組み立てられていると思います。

No.6 6点 E-BANKER
(2022/06/02 21:35登録)
デビュー作にして早くも豪華キャストによる地上波ドラマ化!
これ以上ないくらい順風満帆な作家人生のスタートではないか(?)
で、この作者もまたも「東京大学卒業」という経歴の持ち主ということで、最近のミステリー作家の高学歴化はすさまじい・・・2021年の発表。

~「僕の全財産は、僕を殺した犯人に譲る」。元彼の森川栄治が残した奇妙な遺言状に導かれ、弁護士の剣持麗子は「犯人選考会」に代理人として参加することになった。数百億円ともいわれる遺産の分け前を勝ち取るべく、麗子は自らの依頼人を犯人に仕立て上げようと奔走する。ところが、件の遺言状が保管されていた金庫が盗まれ、さらには栄治の顧問弁護士が何者かによって殺害され・・・~

何ていうか、なかなかに計算された作品だなぁーという印象。
これがデビュー作なんだから、さすが最高学府卒業の弁護士と言うしかない。
まずはプロットの目新しさ。「犯人を探す」のではなく「犯人を仕立て上げる」のだ。わざわざそういう状況を作り上げるための「お膳立て」を創作する⇒そのなかで思いもよらぬ殺人事件が発生⇒登場人物のなかで「実は・・・」という人物&状況を予め作っておく、というような創作パターンなのかな?
確かに、真犯人についてもある程度のサプライズ感はあるし、現代ミステリーのフォーマットは全て押さえてると思う。

ということでまずは褒めてみたわけだが、ここから辛口・・・っておもってたけど、あまり思い付かない。
他の方が書かれている主人公・剣持麗子のキャラへの反感はあまり感じなかったなぁー
これは男性視点と女性視点の違いなんだろうけど、男性からは「なんだそりゃ!」って思うことでも、女性からは「そうそう」って思うんだろうし、女性の社会進出(こういう言葉自体が女性蔑視だろうけど)がここまで普通になった世の中なんだから、これかこれで全然ありだろう。で、女性の方が割り切りが出来ているから、「金、かね、カネ」っていう書き方もすんなり受け取れた。

続編もすでに発表されて、すでに話題になっているのだから、これからの活躍も約束されたようなもの・・・かどうかは分からない。群雄割拠のミステリー作家の世界、そんなに簡単じゃないだろう。でも期待は大。

No.5 4点 バード
(2022/05/02 10:26登録)
第19回『このミステリーがすごい!』大賞の大賞作品であるが、出来は可も無く不可も無くで、絶賛されている程かなぁとは思ってしまった。
一番の見所であるキャラ描写が個人的にそれほど好みでない。主人公の剣持麗子を含め、残念ながら今一つ突き抜ける魅力を感じなかった。ジャックナイフなキャラ描写は良いが、共感できる部分が少なく魅力が薄いのよね。

まとめるとライトでさっと読めるのは良い点なので、月9作品の原作として話題作りに読む分にはいいかもという感じ。

No.4 5点 文生
(2021/10/27 21:06登録)
語り手である女弁護士・剣持麗子の強烈な個性と「自分を殺した者に全財産を譲る」という奇妙な遺言状の謎で読者の興味を引きつける手管はかなりのものです。ただ、肝心の遺言状に関する真相は素晴らしいとは言い難いものがあります。「あれだけ強烈な謎を提示しておいて真相がそれ?」って感じで、例えるならクイーンの『チャイナ橙の謎』における逆さ殺人の真相を知った時に似たがっかり感です。

No.3 5点 ぷちレコード
(2021/10/23 23:08登録)
第19回このミステリーがすごい大賞受賞作。
「僕の全財産は、僕を殺した犯人に譲る」という奇妙な遺言を残して、大手製薬会社の御曹司・森川栄治が亡くなった。殺人を疑われる要素はなかったが、遺産目当ての犯人たちが次々と押し寄せる。弁護士の剣持麗子は英治と学生時代に交際した過去があるが、犯人候補に名乗り出た英治の友人の代理人として、「犯人選考会」に参加する。
設定も度肝を抜くが、ヒロインの弁護士像も、極めて異色。お金好きで身勝手、すぐに人を馬鹿にする性格で親しみがわかない。もちろん読んでいけば少しずつ印象が変化するように作られているし、事件の意外な展開も真相もよく考えられている。出色のデビュー作といえるが、全体的に少し受けを狙いすぎの部分が鼻につく。

No.2 5点 虫暮部
(2021/05/23 10:30登録)
 著者からのメッセージ→“令和の女は強いぞ!”
 ――でもこの主人公を“強い”と評するのはかなりのアイロニーだとしか思えない。そして、“商品”としての側面も含めたこの小説の在り方として、そのアイロニーは使いどころを間違えているんじゃないか?
 語り手が業突く張りなので、地の文で“誰だって、お金が欲しいに決まっている”等と内心が語られる。それがどうにも言い訳がましい。また、彼女の凄腕ぶりを示す場面があまり見当たらない。いちいち他者を値踏みするさまが鼻持ちならない。かといって本人にそれだけの美学も見られない。
 あれやこれやの伏線は上手く回収されているし、面白いことは認めざるを得ないが、好きにはなれなかった。あのメッセージがなければ“拝金主義者が顰蹙買いつつ大暴れ”みたいな話としてもう少し素直に楽しめたかもしれないが、広告で興味を持ったのに広告のせいで楽しみ切れないとは皮肉だ。
 と言うかこの主人公、“残念な人”キャラが売りじゃないの? GS美神令子じゃないの? 版元のサイトを見たら、推薦コメントにその手の屈託が全然無くてびっくりした。

No.1 7点 HORNET
(2021/04/04 20:07登録)
「僕の財産は、僕を殺した犯人に譲る」―弁護士の剣持麗子が学生時代にか月だけ交際していた「元彼」森川栄治が遺した奇妙な遺言状。栄治は遺言状の中で、犯人に与える財産とは別に、これまで交際してきた女性にも財産を分け与えるとし、その名前を律義に一人一人挙げていた。麗子も元カノの一人として軽井沢の屋敷を譲り受けることになっており、避暑地を訪れて手続きを行なったその晩、くだんの遺書が保管されていた金庫が盗まれ、栄治の顧問弁護士が何者かによって殺害されてしまう――。
 ミステリとしての出来もさることながら、「男が何度変わっても女ともだちは変わらない。そんな私たちの、当たり前の日常を日常を伝えたくて書きました」との筆者のコメントが示すように「元カノ」として集められた女性たちの関わり合いがなかなか楽しい。敵愾心を露わにし、マウントをとろうとする女性、はなから勝利者のように超然としている女性、さまざまなタイプの女性たちが、事件を通して次第に近しくなっていく様を楽しむのも一興。
 遺言状がらみの遺産相続にスポットが当たりながら、犯人の一番の動機の視点がそこではなかったことも上手かった。その点からももちろん、ミステリとしても上々の出来である。

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