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ミステリの祭典

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江守森江さんの登録情報
平均点:5.00点 書評数:1256件

プロフィール| 書評

No.756 5点 そして扉が閉ざされた
岡嶋二人
(2010/04/29 13:54登録)
過去の事件の当事者達4人が被害者?の母親に核シェルターに閉じ込められ、推理合戦をする設定なのだが・・・・・・。
密閉型サスペンスとしてもタイムリミットが無く盛り上がらない(私なら推理合戦か脱出か、どちらか一方に専念する)
かといって推理合戦も緊迫感がなく、同じ様な推理と否定を繰り返しながら(退屈で途中ウトウトした)徐々に明かされる情報とその先の結論もパッとしない。
※要注意
ここからネタバレします。
実質殺人事件ではなく、実行者に自覚が無い事に加え、実行者を殺人犯と勘違いして庇う者、更にその人物を殺人犯と勘違いして庇う者の三重構造は、複雑なだけで犯人当てとして(実際に殺人犯は存在しないし)カタルシスを齎さず楽しめない。
辣腕弁護士なら実行者は無罪(最悪でも傷害致死で執行猶予付き)に出来るかもしれず、庇った2人は死体遺棄等で無罪にはならない(不起訴ならあり得る)だろうから、推理部分を削って、その後を加えた作品なら奇抜な構成のリーガル・サスペンスとして傑作になったのではなかろうか?


No.755 8点 変調二人羽織
連城三紀彦
(2010/04/29 08:09登録)
初期の本格ミステリを5編収録した短編集。
タイトルそのままに一人二役と二人一役で捻る素晴らしい解決だけでなく、多重な解決を提示し、最後は脱力な落語オチで締める表題作。
タイトルとアリバイ崩しの多重解決をミスリードに、脱力オチが楽しい「ある東京の扉」
過去と現在の並列描写が上手い「六花の印」
タイトル通りに、反転しながら先頭に還り循環する「メビウスの環」と粒ぞろい。
しかし、この短編集の肝は「依子の日記」だろう!
日記形式のお手本と云える作品で、今やこの手の形式が抱える弱点である、読まれる事を前提にした悪意や操りが透ける点だが、作者の技巧と捻りに「見せ方が上手いとはこの事か!」と感嘆し、全く弱点に感じない。
名作「戻り川心中」でも打ち破れなかった嗜好の壁を超絶技巧で打ち破り文句なしの満点。


No.754 5点 密やかな喪服
連城三紀彦
(2010/04/29 07:22登録)
繋がりのない5編を纏めた短編集。
思い込みと捻りが作者らしい「代役」
定評になったと云える位に昔風ヤクザの描写が上手い「ベイシティに死す」
清水の次郎長と金色夜叉のパロディ風味に、アリバイ崩しを叙述(隠し事)で捻る「消えた新幹線」と、ここまでは水準レベル。
しかし、作者らしからず先の見える「白い花」に、捻りがなく夫婦間ホラーサスペンスな表題作「密やかな喪服」は期待ハズレに感じた。
夫婦関係や恋愛に問題を抱えながら連城作品を読んだら、そのまま登場人物になりノイローゼになりそうで怖い。


No.753 4点 二つの顔
リチャード・レビンソン&ウィリアム・リンク
(2010/04/28 06:13登録)
ソックリで仲の悪い双子が容疑者で、どちらが犯人なのか?
ありふれた双子トリック作品をコロンボでもやってしまった。
しかし、コロンボらしく最後はきっちり倒叙作品に収まる。
要は、共犯だったのをコロンボが証明するだけの話。
これはノベライズよりドラマで双子を演じた俳優を楽しむ作品だと思う。


No.752 4点 闘牛士の栄光
リチャード・レビンソン&ウィリアム・リンク
(2010/04/28 05:52登録)
ドラマは珍しくメキシコ・ロケした作品。
英語以外の会話部分がノベライズではスッキリしていて良い。
しかし、ミステリとしては凡作でスペイン語にコロンボが戸惑う辺りが見所な為にドラマの方が楽しめてしまう皮肉な作品でもある。


No.751 6点 パイルD-3の壁
リチャード・レビンソン&ウィリアム・リンク
(2010/04/28 05:43登録)
前半の犯行描写とコロンボの捜査過程が噛み合っていないと思いながら読み進む。
そこにも巧妙な狙いがあり、犯人に手玉に取られたと思わせながら、犯人の行動を読み切り現場を押さえる。
何度となく使われているオチだが見せ方は上手い。


No.750 6点 二枚のドガの絵
リチャード・レビンソン&ウィリアム・リンク
(2010/04/28 05:34登録)
絵画の強盗殺人に見せかけるのを盗まれた絵画の価値の差から気付く辺りは普通だが、コロンボらしい意地悪な証拠の提示は見せ方も合わせて秀逸で、今でも何度となくアレンジ(転用)されている。
これは傑作の部類。
※追記
先日録画放置していた日本のミステリー系ドラマで二枚の絵を双子にアレンジしたエピソードを観て嬉しくなった。


No.749 5点 逆転の構図
リチャード・レビンソン&ウィリアム・リンク
(2010/04/28 04:20登録)
カメラマンの犯人を落とす決め手がタイトルになっている作品。
途中までは平凡な作品だなと思っていたがラストでタイトルの意味に気付き唸らされる。
でも、それだけとも言えるので評価は水準レベル。


No.748 6点 権力の墓穴
リチャード・レビンソン&ウィリアム・リンク
(2010/04/28 04:13登録)
コロンボの上司が犯人で、立場を利用して捜査妨害してくるが、それを逆手に取り落とす。
取り立てて凄い訳ではないが私的に好きな作品。


No.747 6点 別れのワイン
リチャード・レビンソン&ウィリアム・リンク
(2010/04/28 04:09登録)
ミステリ部分は水準レベルな作品だが、ストーリー的には傑作の部類だろう。
この作品を観て、酒(ワイン)の品質と味覚をテーマに数多の後続作品が生み出された事だけでも非常に意義のある作品だと云える。
ノベライズでも作品レベルが維持されている。


No.746 4点 溶ける糸
リチャード・レビンソン&ウィリアム・リンク
(2010/04/28 03:59登録)
海堂尊「チーム・バチスタ~」に先駆ける事数十年、手術後の病死に見せかけて殺す医療ミステリーにコロンボが挑む。
実際に完全犯罪が成立してしまうと社会問題になりうる微妙なテーマ。
実際に解剖すれば判別は可能だろう。
溶ける糸の隠し場所の灯台下暗し的なオチが好きかどうかで評価が割れる。


No.745 5点 構想の死角
リチャード・レビンソン&ウィリアム・リンク
(2010/04/28 03:42登録)
合作のミステリ作家の解消が動機になる作品。
合作作家の実態が、実作者と営業担当に別れているパターンの原点なのだろうか?「相棒」「古畑」でも同様なネタの作品がある。
ミステリ的にはアリバイ崩しで平凡だと思うのだが、合作作家の実情を気付きに用いていて世間の評価は高い。


No.744 4点 美食の報酬
リチャード・レビンソン&ウィリアム・リンク
(2010/04/28 03:31登録)
英語以外の会話部分がスッキリしている事のみがドラマよりノベライズの良い点。
レストランでの殺人なのでタイトルに美食とついているがグルメな感じはしない。
犯人に行動させて証拠を引き出すタイプで、どちらかと云えば凡作寄りだろう。


No.743 6点 歌声の消えた海
リチャード・レビンソン&ウィリアム・リンク
(2010/04/28 03:18登録)
コロンボには珍しい豪華客船内でのC・C設定。
捜査道具も代用品で賄いながら、相変わらずの洞察力としつこさで犯人に肉迫する。
オチも含めて傑作の一つ。
コロンボ・マニアで知られる大倉崇裕もお気に入りな作品なのか福家警部補でも同様の設定な作品が書かれている。


No.742 4点 悪の温室
リチャード・レビンソン&ウィリアム・リンク
(2010/04/28 03:07登録)
私的にドラマ・ノベライズ週間に入ってしまった。
狂言誘拐が殺人にシフトする。
過去の事件からの気付きと弾丸探しをオチにした作品で、ミステリ的には水準レベル。
コロンボらしさを楽しむならDVD化されたドラマを観る方が断然良い事に気付く。
‘洞察力’と‘しつこさ’が名刑事の必須条件で、今でも綿々と受け継がれている。


No.741 3点 小説 LIAR GAME 2
浜崎達也
(2010/04/28 02:56登録)
基本設定は前作に同じ。
原作漫画をかなりアレンジしたドラマ版シーズン2のノベライズ。
前半の3回戦は団体戦で、お約束的なチーム分けになり、各種ゲームで知的に騙し合い、気付きと操りに見所があり楽しめる。
一方で後半のセミファイナルは、ドラマオリジナルな敵役がお金で支配する手法な為に今一つ盛り上がらない(同様なゲームでも原作漫画はもう少し知的)
前作でも感じたキャラ立ちの悪さは今作も同様で、わざわざノベライズにしなくても良かったと思う。


No.740 4点 小説 LIAR GAME
浜崎達也
(2010/04/26 07:28登録)
ヤングジャンプ連載の漫画をアレンジしてフジテレビでドラマ放送された作品のノベライズ。
舞台設定のリアリティの無さは、この手の知的サバイバル・ゲームではスルーがお約束。
連作短編的でゲーム自体は一回戦毎に完結する。
全体的にカイジ程の緊迫感が無いゲームが続き、主人公が無傷で次に進むお約束な展開なのでスリルは全く無い。
但し、ゲーム設定その物よりも本格ミステリ的騙しと鋭い洞察力からXを見切る秋山の推理が素晴らしい「少数決」は侮れない。
ゲーム設定と騙しの部分が込み入ると、ドラマでは繰り返し観なければならないがノベライズではジックリ読めるのが有り難い。
ドラマではキャラが際立つキノコ(フクナガ)を含めてノベライズでは全体的にキャラ立ちが弱いのが惜しい。


No.739 3点 トリックー劇場版ー
蒔田光治
(2010/04/26 07:00登録)
新作公開に向けて盛り上がって来たトリックの劇場版ノベライズ。
映画だと時間の制約でミステリーとして内容の薄さが際立ってしまう。
それをノベライズにすれば二百ページを切り、薄い内容に見合った中編になる。
持ち味である笑いの部分での細かなクスグリはレベルを維持しているのが救い。
ダイイング・メッセージや暗号は使い古しの推理クイズだし、マジックのタネ明かしや論理パズル問題もミステリ部分の補強にすらならない。
しかし、このレベルの作品をノベライズにする商魂の逞しさだけは見習いたい。
それを揃えている地元図書館もある意味凄い。
※余談
上記を見習い、払った地方税の元は図書館利用で取り戻すぞ!!


No.738 5点 蝦蟇倉市事件2 
アンソロジー(出版社編)
(2010/04/24 18:55登録)
このアンソロジーではなく、普通に独自の作品集で「さよなら妖精」の後日談を発表していれば、もっと高評価だっただろう。
せめて、不可能犯罪物とストーリーの反転系で1・2を纏め直し反転系の方に収録されれば据わりは良かった。
1に収録の大山誠一郎作品からキャラや不可能犯罪路線を引き継ぎ八百屋お七オチをかます村崎友、この作品を締めにしたい秋月涼介、バークリー・毒チョコのパロディな桜坂洋は企画に適していて良かった。
北山猛邦は本来の物理トリック作品の方がアンソロジーに馴染んだと思えるし、越谷オサムも反転系に収録するべきだった。
企画意図と収録バランスが滅茶苦茶な為に、水準レベルな作品を揃えながら纏まりを欠き据わりが悪く残念(上手く収録してたら各編1点以上加点可能)
※楽しむ為の読者側の工夫
1・2を続けて読み1シリーズと捉え、脳内で収録順を入れ替えれる事を勧める。


No.737 5点 蝦蟇倉市事件1
アンソロジー(出版社編)
(2010/04/22 13:37登録)
不可能犯罪が多発する架空の地方都市を舞台にする縛りによる書き下ろしアンソロジー。
作家毎の推敲時期に幅があり、企画段階から出版に至るまで三年以上経過している(なんとかお蔵入りを回避した感じ)
道尾は、普通に上手いのだが、短編での騙しは長編に比べ何か物足らない。
その道尾作品を読んで設定を自作に取り込む伊坂は手馴れたもの。
福田栄一も、教授を尋ねる辺りで狙いが透けるが読ませる点で同系統。
しかし、これらは不可解な事件ではあるが不可能犯罪ではなくテーマに即していない。
一方で、相変わらず不可能犯罪に拘る大山誠一郎は、所々発想に素晴らしさが垣間見えるが全体的には現実味の薄いバカミスになり、それを読んだ伯方雪日(格闘技ミステリのファンには作品が発表されるだけでも嬉しい)が同系統で締めた。
各作品単独ではどれも「可もなく不可もなし」で、縛りを考えれば関連性もこの程度で仕方がないのだろう。
あとは2も含めた収録と掲載順で、作家に責任はなく出版社の販売戦略と編集者のセンスの問題だろう。
私的な見解では、ネームバリューによる売上バランスを無視して大山・伯方を2に廻し、2では噛み合わない米澤と1でも問題ない北山を此方に収録すれば纏まり良くなっただろう(←1は売れるが、2は売上不振間違いない)

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