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ミステリの祭典

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構想の死角
刑事コロンボ

作家 リチャード・レビンソン&ウィリアム・リンク
出版日1974年01月
平均点6.25点
書評数4人

No.4 7点 青い車
(2019/09/14 23:40登録)
 よく練られた第一の殺人と対照的に、あまりにお粗末な第二の殺人。そのお粗末さがドラマの中で必然性を持っている、という点に感心しました。そして、犯人が本来不十分な証拠で罪を認める、そのくだりでもう一捻り加えられている嬉しい意外さが楽しめます。スピルバーグによる唯一無二のカメラワークも大きな見どころ。

No.3 6点 tider-tiger
(2017/04/16 20:02登録)
ベストセラーとなったミステリのシリーズを共作で書いていたジムとケン。だが、ジムはこれからは一人でやっていきたいと主張。それにより、いくつか問題を抱え込むことになりそうなケンはジムを殺害する。アリバイ工作を施し、罪をシンジケート(マフィア)になすりつけようとするケンだが、コロンボ警部の登場ですべての歯車が狂いはじめるのだった。

コロンボはドラマで観るものだろうと思っていたが、本作はこのノベライズ版を読んで良さがわかった作品。
描写に活きや伸びがなく、画面の中で起きていることの説明以上にはなっていないなど欠点も目立つが、登場人物の心の機微、ドラマ版では影の薄かった被害者の妻視点で描かれた部分等なかなか面白かった。また、ドラマ版だと動機がわかりにくく、犯人がなぜ自白してしまうのかがいまいち理解できないのだが、ノベライズ版ではこの点が改善されて、犯人の人物像もはっきりと浮かび上がる。コロンボが同情まではしないが、犯人に憐憫を覚えるのも理解できる。描き方は下手だと思うが、ドラマ版を補完するものとしては有用。

ミステリとしては、二つの殺人を比較して犯人を貶めていく流れそのものは面白いと思うのだが、第一の殺人ははたして優れた犯罪計画といえるのか? かなり大きなリスクがある。そのリスクを低減させるための工夫があって然るべきだったのでは。
コロンボ警部「あたしはね、あんたに会ったとたん、こいつが犯人だと思ってたんだ」(原文ママ~この文章日本語としておかしくありません? 大事なセリフなのに)
コロンボの捜査法の際立った特徴は上記のセリフに集約されている。
コロンボシリーズの肝は倒叙ものからさらに発展?して、コロンボ警部も最初から犯人を知っている(確信している)ことではないかと。故にこのシリーズは心理的な駆け引き~細かなことでつついて、平衡を失った犯人を罠に嵌める~が特徴的で面白いものとなる。
リアルの世界ではこういう刑事がいそうな気がするが、ノベルの世界では珍しいタイプでしょう。読者も探偵も最初から犯人がわかっているミステリ。犯人を「はじめジワジワなかパッパ」で、こんがりとイジメ抜くミステリです。

No.2 7点 斎藤警部
(2015/10/22 12:21登録)
「自白のホヮイダニット」ですよねえ~、これはちょっと、切ないです。 厳密に言うと「何故犯人は、第一の殺人の方を自白したのか」というなかなかの趣向。 遡ればコロンボによる(第一の殺人も第二の殺人も同時に)「自白させのハウダニット」だね。こっちはちょっと、優しくないと言うか、辛辣だねえ。
凡庸な書き手なら”第一と第二の殺人方法に違和感が云々。。”でプロット完成に満足してしまいそうな所、この作品が温存する’もう一押し’は、”倒叙ミステリが如何にして結末まで謎を秘め通すか”という問いに対する回答のお手本だね。

全体通して見ればオリジナルTV版のスピルバーグ演出が光ってるとも思えますが、上記の自白を巡る機微の描写はね、小説の方がより胸に刺さると思います。
時々「高層の死角」や「抗争の刺客」と混同する人がいますが「香草のパクチー」と間違える人は多分いませんね。 

しかし第二の被害者の殺され損ぶりと来たら! 長いコロンボ・シリーズの中でも記憶に残る側杖被害者。

No.1 5点 江守森江
(2010/04/28 03:42登録)
合作のミステリ作家の解消が動機になる作品。
合作作家の実態が、実作者と営業担当に別れているパターンの原点なのだろうか?「相棒」「古畑」でも同様なネタの作品がある。
ミステリ的にはアリバイ崩しで平凡だと思うのだが、合作作家の実情を気付きに用いていて世間の評価は高い。

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