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ミステリの祭典

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空さんの登録情報
平均点:6.12点 書評数:1515件

プロフィール| 書評

No.1435 5点 代理処罰
嶋中潤
(2023/05/02 23:44登録)
タイトルは、「国外に逃亡した犯罪容疑者について、捜査資料を提供し母国や逃亡先の国の法律に基づいて裁いてもらう手続き」と作中で説明されています。「ブラジルでは自国民の他国への引き渡しを憲法で禁じている」そうで、本作の中でも、その憲法規定が冒頭で起こる事件のその後の展開の基本要件となっています。ただ代理処罰制度の方は、あまり重要視されておらず、その意味ではタイトルとして適切だとは思えません。
また、プロローグの後、章分けが「0(ゼロ) 手紙」から始まっているのには特別な意味があるのかと身構えてしまったのですが、そんなことはありませんでした。
と、細部にはいくつかケチをつけたいですし、前半主役岡田亨の心理、記憶の描写は少々うるさい感じがしたのですが、彼がブラジルに着いてからのサスペンスはなかなかのもので、真相には多少拍子抜けのところはあるものの、事件構造はきっちりできていました。


No.1434 7点 死を選ぶ権利
ジェレマイア・ヒーリイ
(2023/04/27 00:09登録)
ボストンの私立探偵ジョン・フランシス・カディのシリーズ第6作は、彼がボストン・マラソンに出ようという「いわばひとつの挑戦」を決意するところから始まります。彼の恋人である地方検事補のナンシーから反対されながらも、元ランニングのコーチだった男と偶然知り合い、大会を目指して練習に励んでいくことになります。
…なんて、全然ミステリじゃないじゃないかと文句をつけられそうですが、一方でタイトル(原題 "Right to Die")からも想像できる、安楽死を推進する女性法学教授に対する脅迫状の差出人調査があり、もちろんこれがメインです。可能性のありそうな人物を洗い上げ、一人一人聞き込みを続けていくという調査がほとんどなので、ずいぶん地味な展開です。事件らしい事件が起こるのはほとんど終盤になってから。マラソンの話は事件とは無関係なのですが、うまく調和している感じですし、結末の意外性もあり、楽しめました。


No.1433 7点 呪い
ボアロー&ナルスジャック
(2023/04/22 18:17登録)
大部分がパリの弁護士に当てて書かれた、フランス西部大西洋岸近くの街に住む獣医の手記という体裁をとった作品です。そのことを意識して読むと、後半なるほどと思えます。
この獣医が惹かれる女流画家の住む島と本土とをつなぐ「長さ四キロの、満潮のたびに海水に蔽われる隄道」(Le Gois)(巻頭の地図からはわかりませんが、本土と最も近い部分にあるのではありません)は、皆さんご指摘のとおり全編を通し、さらに特にクライマックスで効果的に使われています。
獣医の「優柔不断さの方が目立ち」(蟷螂の斧さん)というご意見ももっともですが、最後は彼がそのような性格だからこその悪夢的展開です。『悪魔のような女』や『死者の中から』では、そんなに都合よくいくかなと疑問に思うところもあったのですが、本作では最後に明かされる真相は衝撃的(意外性とは違う)であると同時に説得力を持った形にしてありました。


No.1432 5点 死美女の誘惑
丸山天寿
(2023/04/19 23:56登録)
秦の始皇帝時代中国を舞台とした、5話からなる連作短編集です。
巻末の初出情報によると、第2話『夢美女の呼び声』が「メフィスト」に掲載された以外は、書き下ろしだそうです。ということは、第1話の名探偵役の巫医(ふい:医者のこと)佳人の初登場シーンは、後から考えられたのでしょうか。第1話の表題作で琅邪(ろうや)の町にふらりと現れたこの探偵役は、既に死んだ町の医者佳人の幽霊と思われ、町の人を怖がらせます。この探偵役の佳人(自分でそう呼んでくれと言います)の設定は怪しげでなかなか魅力的ですが、最終話『蛇美女の嫁入り』で彼が琅邪の町から消える結末は、そんなものかという感じでした。
第2話は、上記の理由によるのでしょうか、ひとつだけ解決に非現実的な要素を取り込んでいますが、他の4編は、怪異な現象の事件に完全に現実的な説明をつけたものになっています。


No.1431 6点 アンサンブル
サラ・パレツキー
(2023/04/13 23:16登録)
パレツキーのデビュー30周年記念と言うことで、日本で独自に編集された短編集です。最初に「第一部 V・I・ウォーショースキーの事件簿」としてヴィクものが4遍収められています。3編はこの作者らしい硬派な作品ですが、4編目の『V・I・ウォーショースキー最初の事件』は、彼女がまだ幼い頃に巻き込まれた殺人事件のことで、三人称形式で書かれ、ヴィクは従兄からそう呼ばれている「トリ」の名前で表記されています。事件の真相が多少ハードボイルドっぽいと言えるかなというぐらいです。
後の6編はバラエティに富んでいて、『スライドショー』や『偉大なるテツジ』はミステリとは言えません。後者は、『ヴィク・ストーリーズ』の中の『高目定石』と同じく、囲碁をテーマにしています。『分析結果』や、なぜだか「ボーナス・トラック」とされている『ポスター・チャイルド』はヴィクものにも通じる作品でした。


No.1430 6点 骨と翅
サイモン・ベケット
(2023/04/10 23:04登録)
法人類学者デイヴィッド・ハンターの一人称形式で語られる、シリーズ第3作です。この作家の作品を読むのは初めてですが、前作でハンターが腹に傷を受けた顛末が書かれているのは、間違いなく前作のネタばらしになっているでしょう。どうも発表順に読まれることを大前提として書いていく作家のようです。
作者もハンターもイギリス人ですが、今回の舞台はアメリカのテネシーで、以前そこで学んだこともある「死体農場」にやって来ます。死体農場と言うと、コーンウェルの作品タイトルでもありますが、同じ実在の施設を意味しています。その近くで起こるおぞましい殺人事件は、見過ごされていた過去の数多くの殺人につながってきます。
クライマックスに向けてのサスペンスは盛り上がりますし、犯人の異常さが際立つ作品ですが、何となく、その人が犯人でなくてもかまわなかったのではと思えてしまいました。


No.1429 6点 黒の回廊
松本清張
(2023/04/07 23:35登録)
光文社文庫版の巻末解説によると、本作が雑誌に連載されたのは1970年台前半で、単行本として一般に発売されたのは1976年です。清張はこの連載開始少し前にやはりヨーロッパを舞台にした2編のパズラー系中編を書いています。その1編は、スコットランドのゴルフ発祥の地と言われる町が舞台の『セント・アンドリュースの事件』ですが、本作もやはり、セント・アンドリュースから遠くないレブン湖で殺人は起こります、殺人が起こるのは、全体の半分を過ぎるあたりで、その後、ヨーロッパ舞台のもう1編の中編『アムステルダム運河殺人事件』のモデルになったバラバラ殺人への言及もあります。
巻末解説ではビガーズの『チャーリー・チャンの活躍』が作者の脳裏にあったのかもしれないと書かれていますが、全体的な雰囲気や犯人の設定など、むしろ中近東を舞台にしたクリスティーに近いような感じを受けました。


No.1428 5点 A Bad Woman
ジェームス・ケイン
(2023/04/01 20:22登録)
ケインが1938年に書いた戯曲のアイディアを基に、最初1947年に "Sinful Woman" のタイトルで出版された作品で、このKindle版タイトルでは2015年に出ています。当然作者の許諾があったわけでもなく(アメリカではともかく、日本の法律では著作者の相続人でも勝手な題名変更はできないはずです)、しかも原題の方がいいと思われます。最初のページに、"her figure was wholly sinful" という表現が出て来るのです。
その罪深い姿の有名女優シルヴィアを、ルーカス保安官が呼び止めるところから話は始まります。彼女と離婚手続きしていた夫ヴィッキーの死は、他殺、自殺、事故のいずれなのかがミステリ的興味の中心。とりあえずシルヴィアを守ろうとする映画関係者たち、死亡保険を払いたくない保険会社、それに保安官それぞれの思惑が、予期せぬ展開を生み出します。結末は、ある意味では予想外と言えるでしょう。


No.1427 5点 おばちゃまは香港スパイ
ドロシー・ギルマン
(2023/03/28 22:18登録)
既読の『おばちゃまはシルクロード』に続くシリーズ第6作です。その前作や、それより前の作品から引き継いでいる登場人物などの設定がかなりありますが、『~シルクロード』を読んだのも8年近く前で、記憶も既に大部分消えている状態。2作続けて(発表は2年間を置いた1985年ですが)東アジアが舞台ということになります。
1997年の中国への返還について、開幕早々、おばちゃまことミセス・ポリファックスに説明させていて、実際事件そのものも返還を前提としたところがあります。気の早い話で。その香港を舞台にした、インターポールも目をつけているテロリストたちも関係してくる連中の計画は、ずいぶん派手で乱暴なもので、まあおもしろいとは言えるのですが、既読2作ほど感心はしませんでした。おばちゃまに出番が回って来る原因の、香港にいるCIA情報員が連絡を絶った原因が、どうも平凡なのです。


No.1426 4点 天命の扉
遠藤武文
(2023/03/25 09:42登録)
作品紹介には「渾身の社会派密室ミステリ」としてありますが、松本清張以来のリアリズム文学的意味での社会派では全くありませんし、殺人現場である長野県議会議場には議員や報道陣が多数いたわけですから、銃が発見されないという謎はあっても、密室とまでは言えなさそうです。
狭義の「トリック」ということでは、この消えた銃の謎に関するものだけで、これは某米国作家の短篇と同じアイディアです。さらに日本では有名作家にその米国作品以前に別方法を使った似たトリックがあります。そんなわけで、殺人事件直後の調査結果の段階で、このトリックについてはすぐわかってしまいました。
まあ、中心となるのは善光寺の秘仏蘊蓄を絡めた犯人の動機の方でしょうが、相当無茶(異常)な動機設定です。ダミー犯人の思い込みも大げさすぎますし、クライマックスのサスペンスは悪くないのですが…


No.1425 7点 帰ってこない女
M・R・ラインハート
(2023/03/19 21:29登録)
1938年発表、かなり後期の作品です。夏を島の別荘で過ごす若い女マーシャ・ロイドの一人称形式で語られますが、彼女の直接体験だけでなく、後で聞いたことだがとして、検事(これがいやな奴)や警察官による容疑者の尋問等も描かれます。
巻末解説ではHIBK(もし私が知ってさえいたら)派の創始者としてのラインハートについて、「この手法は実は多かれ少なかれ話の巧い作家なら誰でもやっている」ことだとして擁護しています。実際本作は一人称形式だからということもあって、たとえば「あの時それが物語っていたことに気づいていたら、落とさずに済んだ命や…」(p.97)といった表現がかなり出てきます。しかしこれは読者に期待を持たせるための「文章表現」であり、プロットのタイプではありません。
本作は様々な登場人物の思惑が絡み合って複雑化した事件に、うまく決着をつけていて、おもしろくできています。


No.1424 6点 ウサギ料理は殺しの味
P・シニアック
(2023/03/15 21:48登録)
ミステリの論理って、普通は桶屋がもうかったという既に起こった事実を前提とし、その原因を追究していったら意外にも風が吹いたからだったといったもので、偶然そうなることも確かにあり得ないことではないと納得できるのです。しかし本作では、それが毎週繰り返されることで、逆方向の風が吹けば(必ず)…というバカ論理になっているのです。で、連続殺人の決着が一応ついた後でのあることを「止める方法」模索展開が、さらに輪をかけたバカさ加減で、HORNETさんの評に書かれているとおり。特別会合で何週間もの討議の末提案された対策方法など、普通誰でも即座に思いつきます。
こんなプロットが危うく成立して、しかもおもしろいのは、登場人物たちが非現実的な変な奴らばかりだからで、これをリアルな設定でやったら、目も当てられません。
なお、原題の意味は「蒼白い女たち」で、邦題に比べると魅力に欠けます。


No.1423 5点 嗅覚異常
北川歩実
(2023/03/09 23:53登録)
祥伝社文庫の書下ろし中編小説の愉しみシリーズの1遍として書かれた作品です。
北川歩実はこれまで読んできた作品からすると、複雑なプロットとどんでん返し連続の作家のようですが、その点からすると、中編では持ち味を生かしきれないのではないかと思われます。実際のところ、メインの事件は実験用のウサギ殺しですし、真相は悪くはないのですが、シンプルなものです。そのわりに、脇役の谷本真千子教授に関する設定で、不要ではないかと思える部分もありました。真相解明部分、「専門的な知識が、逆に働いて、真実を見抜く妨げになったのだ」という説明は、さすがですが。
テーマはタイトルどおりのもので、作者お得意の医学・生理学系ですが、最後に添えられた作者注には、「この作品はフィクションです…(中略)…嗅覚に関する記述等にも虚構の部分があります」と書かれていて、SF的な設定と言えます。


No.1422 6点 マイ・フェア・レディーズ
トニー・ケンリック
(2023/03/07 00:10登録)
『スカイジャック』等、タイトルを知っている作品はいくつかありましたが、ケンリックを読むのは本作が初めてです。『スカイジャック』もそうですが、ケンリック作品の多くは原題と邦題がまるっきり異なっていて、本作の原題は "The Chicago Girl"。邦題の元ネタは当然あの映画ですが、女性二人の内一人はあっさり失敗しますし、もう一人はオードリーとは逆パターンです。
第5作ということで、訳者あとがきにも、「全体的には初期のナンセンス・ユーモアをかなり押さえた」作品になっていることが書かれていますが、危険な詐欺をたくらむ主役の二人がマルクス兄弟のことを語り合うシーンがあり、やはりこの作家のルーツはそんなところにあるんだろうなと思えます。
次々に予期せぬ出来事が積み重なり、おもしろいことはおもしろいのですが、個人的にはほとんどが想定内の飛び方に思えた点が少々不満でした。


No.1421 6点 異形の花嫁
ブリジット・オベール
(2023/03/03 23:12登録)
オベール第6作は、トランスセクシャルがテーマです。ただ、「あたし」こと主役のボー(ボードワン)は、同一性障害とか同性愛だけではなく、マゾでもあるところが、最初から居心地の悪さを感じさせます。「SMクラブでは、おまえが最高だとみんなに言われた。いちばん苦痛に強い、と。」(p.83) といった人物。彼(彼女)のジョニーに対する愛がまた、マゾヒズムゆえというだけでなく常軌を逸しているのです。ジョニーの方は、自分は女にしか興味がないと言ってボーを拒否するのですが。その一方で起こる娼婦連続殺人事件がまた、この作家らしいグロテスクさです。ボーが新たな殺人の死体に次々出くわす偶然は、映画的な感じがしました。
ボーが犯人に監禁されてというクライマックス部分で明らかにされる犯人の人物設定と生活については、いくらなんでも不自然ではないかと思ったのですが…
最後はもう一ひねりされています。


No.1420 6点 明治探偵冒険小説集(2)快楽亭ブラック集
快楽亭ブラック
(2023/02/22 23:56登録)
明治~大正時代のイギリス人落語家、本名ヘンリー・ジェームズ・ブラックの講談を口述筆記した中編4編です。まず語り口で読ませる(『幻燈』の冒頭部分に「お聴取り否お読取りを願います」と書かれています)作品群と言えるでしょう。実際どこを強調するかといった小説構成バランスはあまりいいと思えません。どれも黒岩涙香と同じく、ヨーロッパを舞台に、登場人物名は日本名にしています。
最初の『流の暁』は悪の道に堕ちる真面目男を描いた犯罪スリラーですが、他の3作には謎解き的要素があります。『車中の毒針』は解説では原作不明としていますが、2020年に原作のボアゴベ『乗合馬車の犯罪』完訳が出版されました。『幻燈』は指紋(掌紋)を扱ったごく初期(1892)の作品。『かる業武太郎』はイギリスが舞台で冒頭「実際有りました出来事でございます。」と書かれていますが、実はこれもボアゴベ原作で、原題は "Le pouce crochu"(曲った親指)です。


No.1419 5点 列のなかの男―グラント警部最初の事件
ジョセフィン・テイ
(2023/02/18 15:06登録)
テイが最初別名義で発表したこのグラント警部シリーズ第1作は、最後にどんでん返しのある作品になっています。それまではnukkamさん、人並由真さんも評されているように、クロフツを思わせるような捜査小説ですが、文章が淡白なクロフツに比べると、グラント警部の日常や内面、捜査上の悩みなどがじっくり描き込まれています。ただクロフツほどの試行錯誤はなく、容疑者が特定されると、後はその容疑者の隠れ場所を突き止め、どうやって逮捕にこぎつけるかというストレートな展開です。
それでいて、最後にもう一ひねりあるだろうなということは、容疑者逮捕の時点でもう明らかです。そのひっくり返し方がグラント警部の推理によるものでない点、真相は意外であるにもかかわらず、釈然としませんでした。
なお、翻訳にはこの人犯罪捜査について知らなさすぎじゃないかと思える点が散見されました(特にp.43「有罪の評決」)。


No.1418 5点 灰色の魔法
ハーマン・ランドン
(2023/02/12 12:00登録)
スウェーデンに生まれ、子どもの頃両親と共にアメリカに移住したハーマン・ランドンのグレイ・ファントム・シリーズ長編は、フランス語版Wikiによると(英語版はない!)5冊あるようで、本作はその最終作です。並行して書かれていた作者のもう一つのピカルーン・シリーズは短編が多いようです。
グレイ・ファントムは本作中で宿敵マーカス・ルードに「現代によみがえった豪華版ロビン・フッド」と評されています。本作を読むかぎり、探偵役を演じるルパンをより通俗的にしたようなとも言えるでしょう。ルードは宿敵とされていると言うことは、以前の作品にも登場していたのでしょうか。
未知の毒物による殺人は、同じ物を全員食べたのに一人だけ死ぬといった状況ならともかく、本作の方法では全く無意味だとか、声の出所は現実には不可能だとか、いいかげんなところはありますが、とりあえず楽しめました。


No.1417 7点 胡蝶殺し
近藤史恵
(2023/02/09 22:44登録)
タイトルの「胡蝶」とは、歌舞伎の演目である「鏡獅子」の中で通常は、子役二人により踊られるらしい胡蝶の舞のことで、歌舞伎の世界が舞台となっています。実は和妻(日本手品)にも「胡蝶の舞」と呼ばれる手品があるのですが。ではその胡蝶の役を演じる役者が殺されるのかと思っていたら、全然そんな話にはなりません。
半分近くなってやっと不穏なことが起こりますが、それも伝染性の病気であり、犯罪めいたことはありません。最後まで読んでも結局、タイトルの「殺し」の普通の意味、「殺人」は起こらないのです。確かに一応ミステリ的な構造を持ってはいて、最後にはある謎が解き明かされることになるのですが、犯罪とは無関係なのです。作中に悪意のある登場人物も全く出てきません。
そんなわけで、ジャンルとしては「その他」に入れざるを得ないのですが、ラストは感動的で、広義のミステリとしてはこの点数で。


No.1416 6点 銀の墓碑銘(エピタフ)
メアリー・スチュアート
(2023/02/03 23:41登録)
70年台からはアーサー王伝説を題材にしたマーリン・シリーズを5冊発表し、また『メアリと魔女の花』に始まる子ども向けファンタジーも何冊か書き、さらに詩集まであるというメアリー・スチュアート。しかし最も多いのは、デビュー作以来の「ロマンティック・サスペンス」で、英語版Wikipediaを見ると15冊あります。
論創社からの第2弾である本作は、その第5作です。『霧の島のかがり火』と違い、原題は邦題との共通点が全くない、"My Brother Michael"。内容に合っているのは原題の方で、邦題は意味不明です。主役コンビの一人サイモンの兄マイケルは第二次大戦中にギリシャのデルフィ近くの山中で死んでいて、その死にまつわる経緯を探っていくというのがプロットの中心になるのですが、彼の墓碑とも関係なさそうです。
サスペンスと言うよりゆったりしたスリラー、冒険系の作品として楽しめました。

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